キョウ4  

NHK日曜討論公式ツイッターの木村草太(首都大学東京法学系准教授)発言改ざん事件については一昨日Blog「みずき」としても速報としてすでにエントリしているところですが、そのNHKの木村発言改ざん問題について朝日新聞が9月14日付けで記事にしています。短い記事なので全文を転載しておきます。
NHKの報道番組「日曜討論」の公式ツイッターが13日、安全保障関連法案を議論する番組の紹介の中で「反対意見って理解しにくいのに、賛成意見はすごく頭に入りやすい」と書き込んだところ、批判を受け、同日にツイッターで訂正する一幕があった。この書き込みは13日午前、法案について有識者に意見を聴く「日曜討論」の公式ツイッター上で、番組開始の直前に行われた。この書き込みに対し、法案への反対意見はわかりにくく、賛成意見はわかりやすいと受け取れるなどとして批判がツイッター上などで相次いだ。その後、公式ツイッターには「自分の意見と違う人の意見は耳に入りにくく、同じ意見だと理解しやすいと言う意味で書いたのですが、『賛成』『反対』という言葉を使ってしまったので、法案に『賛成』『反対』かのように誤解された方もいたようです。お詫(わ)び致します」と書き込まれた。(「NHK日曜討論公式ツイッターが謝罪 安保巡り批判集中」朝日新聞 2015年9月14日

が、この朝日新聞記事は本質をまったく穿っていません。NHK日曜討論公式ツイッターのツイートに市民の批判が集中しているのは朝日新聞が記事にしている同ツイートの「反対意見って理解しにくいのに、賛成意見はすごく頭に入りやすい」という書き込みの部分ではありません。もちろん、その部分も関連してはいるのですが、同ツイッターのツイートの中でとりわけ批判が集中しているのは、木村草太氏がNHKの日曜討論で安保関連法案に関して「多くの憲法学者が違憲としており、多くの国民も反対している。そして政府も丁寧に説明する気も無いということがハッキリしている。廃案しかないということで議論は尽くされている」と発言した部分を日曜討論公式ツイッターが「きょうは反対代表としてご出席頂いた木村氏が採決について『機は熟している』と言い切ったのが印象的でした」と「木村さんの発言にも、質問したNHKの司会者の言葉にもない『採決の』という言葉をわざわざ挿入して、木村さんは『採決の機は熟した』と言ったとまとめたのである。これを悪質だと言わないで何を悪質と言うのか」(住友陽文大阪府立大教授)というNHK日曜討論公式ツイッターの悪質な改ざん部分です。

これだけ明らかな悪質な改ざんである以上、朝日新聞記者はその改ざんを容易に見抜けたはずです。しかし、そうしたメディアとしてあってはならない重大な改ざん問題は素通りして朝日記事にあるような日曜討論公式ツイッターの「誘導」の問題に事件をすり替えて記事にしている。朝日新聞の責任はNHKの改ざんとはまた別の意味できわめて大きなものがあるといわなければならないでしょう。
 
また、朝日新聞記事がおそらく意図的にすり替えている「誘導」ツイートの問題にしても、朝日は「NHK日曜討論公式ツイッターが謝罪」と報道していますが、「今朝のツイートについて。自分の意見と違う人の意見は耳に入りにくく、同じ意見だと理解しやすいと言う意味で書いたのですが、「賛成」「反対」という言葉を使ってしまったので、法案に「賛成」「反対」かのように誤解された方もいたようです。お詫び致します」という一文はおよそ「謝罪」といえるしろものではありません。「自分の書き方が悪かったのに素直に解釈した方のことを『誤解』とするのはお詫びしたことに」ならないからです。この点について前出の住友教授は「間違いを訂正しているようで、全然訂正しないのだし、顔文字つけるのも相変わらずだし、ヘラヘラ笑いながら「めんご、めんご」と言ってるようなもの」と謝罪文としてまったく失格であることを指摘しています。「改ざん」問題を「誘導」問題にすり替えたことに加え、まったく「謝罪」の体をなしていないものを「謝罪」などと報道する。この記事を書いた朝日新聞記者のジャーナリストとしての資質に大きな疑問符をつけざるをえません。

この朝日新聞の「NHK日曜討論公式ツイッターが謝罪」というメディア記事の中でもさらにサイテーをいく記事は、先の記事でも紹介した元朝日新聞記者(現週刊金曜日編集委員)の本多勝一さんの指摘する「マスコミの中立病」という病い。すなわち、「殺す側と殺される側を『公平』に扱い、強姦者と強姦される側、加害者と被害者を『公平』に扱う。良いこと(プラス)と悪いこと(マイナス)をたして二で割り、ゼロにする。(略)こんなことなら、せめて何も書かない方がいい。となれば、まさにこのような新聞こそが「これはファッショを助けるものだ」と結論せざるを得なくなる」というメディア批判を改めて想起もさせます。

そして、さらに「こんな絶望的なメディア状況が戦後70年の今年、目の前にある」(「毎日新聞」2015年09月11日)という金平茂紀TBSキャスターの指摘をも改めて想起させます。また、ニューヨーク・タイムスのインタビュー(2009年5月28日付)に応えて述べた上智大学でジャーナリズムの教鞭をとる田島泰彦教授の「ニュース・メディアは権力の監視者(Watch dogs)であるべきだが、彼らはむしろ、権力の番犬(guard dogs)のように振舞っている」という指摘も想起させます。これが低きに低きに流れて戦後70年ただいまのメディア状況であるとするならばその状況は金平記者ならずとも「絶望的」というほかありません。
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