下記に私が批判する前田朗さん(東京造形大学教授・ヘイトスピーチ研究)はいわゆる「論客」の人ですから、後の論争のための資料として以下の私の前田朗さん批判をエントリしておきます。
 
前田朗さんの先の投稿の内、「探検家松浦武史郎」問題に絞ってコメントをしておきます。
 
> 1)松浦武史郎ではなく、松浦武四郎です。
> 2)松浦は侵略者です。
 
前田さんは「松浦は侵略者」だと断定しますが、私たち日本人は、日本人として過去の負の遺産をも継承する「歴史の子」であることをすべからく免れない以上、総体として、近代天皇制国家がアイヌの土地を植民地化し、アイヌ人に対して同化政策を行った歴史的事実について「侵略者」としての歴史的責任を負っているといわなければならないだろうとは私も思います。が、松浦武四郎が、そうした日本人総体としての責任以上に特別に「侵略者」としての責任を負っているとは私は思いません。
 
花崎皋平著「静かな大地 ―― 松浦武四郎とアイヌ民族」が2008年2月に岩波現代文庫として再刊行されることになったときの岩波編集部の同著の内容説明には次のように記されています。
 
「本書の主人公は幕末の探検家,松浦武四郎です.探検家のみならず学者,文人としての顔も持ち,明治初期には北海道,樺太,千島の行政にも短期間関わりました.松浦を変えたのはアイヌ民族との出会いでした.幕末の「蝦夷・樺太」を十数年間にわたって探検調査した松浦は,アイヌ民族の風俗・文化を克明に記録すると共に,和人による虐待を告発するようになりました.アイヌの心の輝きと苦悩に深く共感して自らを変革していった松浦武四郎の足跡が,いきいきと本書では再現されています」
 
上記の説明では松浦武四郎は「侵略者」であるどころか「和人による虐待」の「告発」者であるとされています。
 
同著の文庫化の際の「解説」に作家の池澤夏樹さんも以下のように記しています。
 
「もしも松浦武四郎がいなかったら,今のぼくたちは当時アイヌが置かれた状況について何も知らないままだった.なぜならばアイヌには苦境を訴える手段がなかったから.松前藩の場所請負制度によって,生きる自由のほとんどを奪われた人々.アイヌに生まれついたという以外に何の理由もないまま,終身刑に処せられた人々.後世の自分たちがそれを知らないという事態を思って,ぼくは戦慄する.知るべきことを知らないままでいるというのは恐ろしいことだ」
 
後世の私たち日本人は松浦武四郎によって当時の「アイヌの苦境」を知ることができる、と池澤夏樹さんも松浦を評価しています。
 
上記の岩波現代文庫の解説から読みとれることは、松浦を「侵略者」というのは前田さん及び一部の人たちの主観的な解釈でしかない、ということです。
 
それとも松浦武四郎侵略者説を裏づけるなんらかの信頼するに値する史料を前田さんはお持ちなのでしょうか? お持ちであればお示しいただきたい。「花崎は、中国侵略戦争を正当化してきた人物」だという資料も含めて。それができないのであれば、前田さんの「松浦は侵略者」という主張も「インチキ民衆思想家」という花崎皋平批判も単なる悪罵にすぎないということになるほかありません。
 
また、「現在の日本の運動圏でも、インチキ花崎を持ち上げる異常な集団」云々という批判もありますが、その「異常な集団」とは、青山薫、天野恵一、大橋成子、小倉利丸、海棠ひろ、梶川彩、白川真澄、鶴田雅英、遠野はるひ、武藤一羊、山口響各氏が運営委員で、 秋山眞兄、李泳采、太田昌国、金井淑子、金子文夫、川本隆史、齋藤純一、斉藤日出治、塩川喜信、ダグラス・ラミス、田中利幸、中村尚司、花崎皋平、弘田しずえ、古田睦美、武者小路公秀各氏がアドバイザーの「ピープルズ・プラン研究所」のことですね。(参照:[CML 036980] ★PP研新連続講座★ 再検証!〈敗戦70年―原発震災から4年〉)
 
上記の「松浦武四郎侵略者説」が当たらなければ、当然、その批判を根拠にする「ピープルズ・プラン研究所」批判もまったく当たらないということにもなります。
 
最後に逆説的に言えば、「ヘイト・スピーチが絶えないのは、こういう異常な人物が多いから」ではなく、あなたのような異常な主張をするヘイト・スピーチ「学者」がいるからだと私は思います。
 
【参考:前田朗さんの「探検家松浦武史郎は侵略者」説】
 
前略。
1)松浦武史郎ではなく、松浦武四郎です。
2)松浦は侵略者です。
 
アイヌ民族に対する侵略者の松浦を持ち上げるのは日本人です。卑劣な日本人です。特に花崎何とかと言うインチキ民衆思想家が松浦を持ち上げて来ました。ひたすら侵略を正当化してきました。いろいろと勝手な理由をつけて、松浦は素晴らしかった、と褒めたたえます。そして、侵略を正当化します。
 
現在の日本の運動圏でも、インチキ花崎を持ち上げる異常な集団がいます。インチキ花崎は、自分がベトナム戦争に反対したと言うただそれだけの理由で、自分が平和主義者で正義であると盛んに主張していますが、デタラメです。花崎は、中国侵略戦争を正当化してきた人物です。にもかかわらず、こういう人物を宣伝する人物・集団がこのMLにもいます。民族差別とジェノサイドを称揚・絶賛するのが、日本の市民運動団体なのです。
 
ヘイト・スピーチが絶えないのは、こういう異常な人物が多いからです。完全に狂っています。以上。
CML 038108「Re: 探検家松浦武史郎」より)

追記:
前田朗さんの反論的返信と私の再反論的返信を追記しておきます。
 
【前田朗さんの反論的返信】
東本さんのニュースピークと植民地主義(1)(CML 038126 2015年6月26日)
 
「戦争は平和である」「武力行使は積極的平和主義である」「良い侵略は侵略ではない」「過酷な侵略者はよくないが、温情溢れる侵略者はよろしい」「残忍な奴隷主は駄目だが、親切な奴隷主は素晴らしい」。
 
東本さんのお好きなニュースピークでは、「良い侵略と悪い侵略」について語るのでしょうが、侵略には「悪い侵略ともっと悪い侵略」しかありません。
 
レトリックでごまかそうとするのは、自らの植民地主義をごまかそうとしているか、無自覚なのか。
 
岩波書店編集部や池澤夏樹を持ち出しても無意味です。特に池澤夏樹は、かつて沖縄に移住したものの、植民地主義的ではないかと批判され、北海道に逃げ帰ったことで知られる人物です(池澤の文学者としての資質を私は否定しませんが)。
 
東本さんのご主張は、「侵略者を持ち上げる侵略者がいるから侵略は正当である」と言っているのとさして変わりません。
 
「記録を残したから素晴らしい」などというのは、西欧植民地主義の尖兵となった宣教者や文化人類学者を称揚するレトリックそのものです。
 
[aml]時代から長いことお付き合いしているのでよくわかりますが、これ以上議論しても意味がありません。植民地主義を必死で擁護する東本さんの主張を私が認めることはありませんから。
 
 
花崎の植民地主義に対する批判は下記をご参照ください。
 
虚妄の民衆思想(1)
虚妄の民衆思想(2)
虚妄の民衆思想(3)
 
アイヌ先住民族の権利(1)
アイヌ先住民族の権利(2)
アイヌ先住民族の権利(3)

「北方領土」とアイヌ民族の権利(1)
「北方領土」とアイヌ民族の権利(2)
「北方領土」とアイヌ民族の権利(3)
 
それと、花崎の植民地主義に追随する多くの花崎教徒の名前を教えていただきありがとうございます。エピゴーネンまで取り上げて批判するほど暇ではありませんが。
 
【私の再反論的返信】
 
前田さん
 
ニュースピークとは要は証明の必要のない「ニセの語法」のことです。オーウェルによれば、旧語法は「全く異質のものに変わっているばかりではない、実際にはもとの姿とは正反対のものにさえ変わっている」(オーウェル『1984年』)わけですからそもそも証明しようにも証明できない。そういう語法をニュースピークといいます。だとすれば、「松浦は侵略者」というスピークにとってこれほど都合のよい語法はないでしょう。証明しなくてもよいわけですから。
 
前田さんは案の定、松浦武四郎侵略者説及び「花崎は、中国侵略戦争を正当化してきた人物」説を裏づける史料、資料を提示されませんでした。もちろん、もともとそういうものはないから提示できないのでしょうが、ニュースピークではそういうことは問題にされません。したがって、ニュースピークは、根拠のない悪罵のし放題というニュースピーク論者にとってはきわめて都合のよい話法ないしは語法ということになります。史料、資料を提示されない以上、ニュースピークという言葉は前田さんに献上するのがもっともふさわしいことになるでしょう。したがって、標題は、「東本さんのニュースピーク」ではなく、「前田さんのニュースピーク」とするのが適当です。
 
私の応答はこれで終わりです。「これ以上議論しても意味が」ないという点では前田さんと意見を同じくします。
 
なお、私も、かれこれ5年前の花崎皋平さんの評価をめぐる前田さんとの議論の私の側の論を参考として以下に提示しておきます。
 
・前田朗さんの花崎皋平さんの最新刊『田中正造と民衆思想の継承』批判について(上)(Blog「みずき」 2010.08.18)
 
・Blog「みずき」 前田朗さんの花崎皋平さんの最新刊『田中正造と民衆思想の継承』批判について(下)(Blog「みずき」 2010.08.18)
 
・補遺 ――花崎皋平さんの『田中正造と民衆思想の継承』について(Blog「みずき」 2010.11.05)
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