本日の毎日新聞の社説は「元秘書起訴 小渕氏の約束はどこへ」というものです。標題から見て小渕氏を批判する社説かと思えばそうではありません。
 
たしかに「事務所関係者が起訴されたことを重く受け止め、政治的責任を痛感している」という小渕氏の「短いコメントだけでの幕引きは許されない」という一応の小渕氏批判はあります。が、社説の結論は、「政治団体の代表者である政治家は「会計責任者の選任と監督双方に相当な注意を怠った場合」でなければ罰せられない。小渕氏の場合、2人の元秘書は父の恵三元首相時代から仕えてきた人たちだ。選任の責任を問うのは難しいだろう」というものです。結果として、「容疑不十分」という理由で小渕氏を不起訴処分にしてしまった「はじめに小渕氏無罪の結論ありき」の検察の「身内の論理」の主張をジャーナリズムとしての批判的視点もなく、ただ追認するものになっています。
 
しかし、「小渕氏の場合、2人の元秘書は父の恵三元首相時代から仕えてきた人たち」だから「選任の責任を問うのは難しいだろう」という社説子の認識はおそらく検察の不起訴処分の理由をなぞっただけのもので、筋の通った主張ということはできません。

社説子のいうような論理が通用するとするならば、国会議員職を世襲したいわゆる二世議員が親の代の資金管理団体や同団体構成員(役員)も実質的に承継している場合(ほとんどの二世議員の場合がそうですが)、同団体の会計責任者の「選任」は先代の決定事項ということになり、世襲議員の「選任」責任はすべからく問えないことになってしまいます。
 
それではなんのために政治資金規正法第25条2項の規定があるのかということになります。同条2項の規定は「前項の場合(引用者注:会計責任者が政治資金収支報告書に虚偽の記入をした場合)において、政治団体の代表者が当該政治団体の会計責任者の選任及び監督について相当の注意を怠つたときは、五十万円以下の罰金に処する」というものです。そして、ここでいう「政治団体の代表者」は「現在の政治団体の代表者」を指しており、いうまでもなく先代のことではありません。

政治資金規正法第6条には「政治団体はその組織の日又は団体となつた日から七日以内にその旨を選挙管理委員会又は総務大臣に届け出なければならない」という規定もありますから、小渕優子議員は同議員の資金管理団体が発足した時点で選挙管理委員会または総務大臣にその旨の届け出をする法律上の義務があります。であれば、小渕議員の資金管理団体が発足した時点の同団体の代表者は小渕優子議員自身であり、同団体の会計責任者の「選任」責任も小渕優子議員自身にあるということになります。毎日新聞の社説子のいうような論理は成立しようもないのです。
 
毎日新聞はなぜこのような愚かな、また、愚にもつかない検察べったりの主張をするのか。それも社説というメディアのレーゾン・デートル(存立根拠)ともいうべきメディアとしてもっとも重要な主張を述べる場において。先日も金平茂紀さん(TBS記者)が自戒の弁を述べていましたが、毎日新聞は、権力を監視する番犬「ウォッチドッグ」としての役割を忘失して、無念ながら権力の番犬としての愛玩犬「ウォッチドッグ」に成り下がってしまった、としか評価しえません。ここにも現在ただいまのメディアの危機は目に見える形で現われています。
 
以下、毎日新聞の社説。
 
社説:元秘書起訴 小渕氏の約束はどこへ(毎日新聞 2015年05月02日)
  
政治とカネをめぐる不信はますます増したというべきだろう。小渕優子前経済産業相の関連政治団体の元秘書2人が、政治資金規正法違反の罪で在宅起訴された。支援者向けの観劇会の収支など政治資金収支報告書への虚偽記載の額は、2013年までの5年間で3億2000万円に上る。資金管理団体の多額の簿外処理をごまかすために、関連団体間で架空の寄付行為を繰り返し、偽装していたという。小渕氏本人は、不正を認識していた証拠がないため、容疑不十分で不起訴になった。「事務所関係者が起訴されたことを重く受け止め、政治的責任を痛感している」とのコメントを小渕氏は出した。昨年、この問題が公になり小渕氏が経産相を辞任する前、説明責任を果たし、国会へ資料を提出することを約束していた。小渕氏は自らの言葉に責任を持つべきだ。昨年末の衆院選でみそぎが済んだと考えているわけではあるまい。短いコメントだけでの幕引きは許されない。簿外処理された金は、飲食や他の議員に対する陣中見舞いなどの交際費に充てられたという。形式犯で済ませられる事件ではない。政治資金規正法の限界が事件で浮き彫りになったと言える。複数の政治団体を政治家が都合よく使い分けることができるため、収支の全体像が外から見えにくい。
 
日本歯科医師会の政治団体をめぐる疑惑にも似た構図が見られる。自民党の参院議員を支援する政治団体に対し、直接の献金以外に、別の政治団体を経由して迂回(うかい)献金した疑いがもたれている。事実とすれば、献金額は法律の上限を超える。東京地検特捜部が強制捜査に乗り出した。いずれも、複数の政治団体の介在が不明朗な資金操作を招いた可能性が強い。まずは全ての関連政治団体の収支を一覧できる仕組みを、国会は検討すべきではないか。国民が外からチェックしやすくなる。小渕氏の事件について言えば、政治家本人が刑事責任を問われにくい法律の規定も問題が大きい。政治団体の代表者である政治家は「会計責任者の選任と監督双方に相当な注意を怠った場合」でなければ罰せられない。小渕氏の場合、2人の元秘書は父の恵三元首相時代から仕えてきた人たちだ。選任の責任を問うのは難しいだろう。このままでは、「秘書がやった」との言い訳が繰り返される。公明党は09年、会計責任者が虚偽記載などで有罪になった場合、政治家の公民権を停止する規定を盛り込んだ政治資金規正法の改正案を国会に提出した。廃案になったが、その実現を改めて検討すべきではないか。
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