福島第一原発事故に関して福島県が行っている2巡目の子どもの甲状腺検査について、いつものことながら今回は「元新聞記者」という肩書で「福島の甲状腺がんは原発事故原因が決定的に」という超低次元の甲状腺がんデマが「拡散」されています。同記事がデマであるゆえん(したがって、私は、「元新聞記者」という今回のデマ元の肩書にも胡散臭さを感じています)を2本のメディア報道を紹介し、そのうちNHK記事に注をいれる形で検証してみます。

注:私がここで批判しているのは「デマを煽る」「脱原発」主義者の人たちです。誤解を避けるために「脱原発主義」「脱原発主義者」一般を「超低次元」などと思っているのではないことを注として述べておきます。それに私自身「脱原発主義者」を自称もしています。

さて、2巡目の子どもの甲状腺検査とはどういうものか? 1本目のメディア報道は「2巡目検査でがん疑い4人、福島の『県民健康調査』」というスポーツ報知の記事(他紙よりも比較的詳しい)。

東京電力福島第1原発事故の影響を調べる福島県の「県民健康調査」の検討委員会が25日、福島市で開かれた。子どもの甲状腺検査で事故直後の1巡目検査では「問題ない」とされた4人が、4月からの2巡目で「がんの疑い」と診断されたことが報告された。調査主体の福島県立医大によると、4人は事故当時6歳男子、10歳男子、15歳女子、17歳男子で、腫瘍の大きさは7~17・3ミリ。会合では「1巡目でがんを見逃した可能性がある」「1巡目の後に腫瘍が急激に大きくなったのではないか」「(検査を受ける子どもの)平均年齢が上がれば、がんの人数が増えるのも不思議ではない」などの意見が出た。検査対象は1巡目が事故当時18歳以下の約37万人で、2巡目は事故後1年間に生まれた子どもを加えた約38万5000人。それぞれ1次検査で超音波を使ってしこりの大きさや形状などを調べ、程度の軽い方から「A1」「A2」「B」「C」と判定、BとCが血液や細胞などを詳しく調べる2次検査を受ける。2巡目は、来年度までの2年間の計画で、これまでに約6万1000人の1次検査の結果が判明。2次検査に進んだのはB判定の457人で、がんの疑いはこのうちの4人。また、1巡目で約30万人の1次検査の結果が確定し、2241人が2次検査に進んだ。がんの診断が「確定」した子どもは8月公表時の57人から27人増え84人に、がんの「疑い」は24人(8月時点で46人)になった。

2本目は「2回目の検査で『子ども4人にがんの疑い』」というNHKの報道(この報道も他メディアよりも比較的詳しい)。この記事に注をいれて検証してみます。

東京電力福島第一原発の事故のあと福島県が行った子どもの甲状腺検査で、1回目の検査で「問題がない」と判定された人のうち4人について、県の専門家の会議はことし行われた2回目の検査で、がんの疑いが見つかったと発表しました。専門家の会議は「被ばく線量が大幅に低いとみられることなどから、これまでの検査結果と同様に現時点で放射線の影響とは考えにくい」と述べたうえで、症例が少ないため引き続き慎重に調べることにしています。

原発事故を巡って福島県は、事故で放出された放射性ヨウ素が子どもの甲状腺に蓄積するとがんを引き起こすおそれがあるとして、事故当時18歳以下だった38万人余りの子どもを対象に継続的に甲状腺の状態を調べる検査を行っています。事故のあと行われた1回目の検査では、108人にがんやがんの疑いのあるという検査結果が出ていますが、福島県がつくる専門家の会議が25日午後、福島市で会合を開き、1回目の検査で「問題がない」とされた、当時6歳から17歳の男女4人について、ことし4月から始まった2回目の検
査でがんの疑いが見つかったと発表しました。この4人について、県の専門家の会議では、▽
被ばく線量が大幅に低いとみられることや▽放射線量の高い特定の地域に集中して見つかったわけではないことなどから、これまでの108人の検査結果と同様に「現時点で原発事故による放射線の影響とは考えにくい」としています。また、検査器具の性能の問題などで1回目の検査でがんの疑いを見落としていた可能性も否定できないという考えを示しました。そのうえで「症例が少なく、子どもの甲状腺がんの発生のメカニズムに分かっていない部分も多い」などとして引き続き慎重に調べることにしています。

甲状腺検査とは

東京電力福島第一原発の事故を受け、福島県は住民の被ばくの影響を調べる調査の一環として、事故の7か月後から甲状腺検査を行っています。対象は、当時の年齢で18歳以下だった人と、事故後1年間に産まれた子ども、合わせて38万人余りで、20歳までは2年ごと、それ以降は5年ごとに繰り返し検査を行う計画です。これまでに検査を受けたおよそ30万人のうち、今回の4人を含む112人にがんやがんの疑いが見つかっています。これについて検査を行っている福島県立医科大学は、チェルノブイリ原発の事故と比較して、▽被ばく線量が大幅に低いとみられることや▽がんが見つかった子どもの年齢の層が異なっていること、それに▽原発事故のあと、国内の別の複数の自治体で行われた調査と比べてがんが見つかった確率がほぼ変わらないことなどから、「現時点で原発事故による放射線の影響とは考えにくい」としています。

1番目の注は環境省がこの3月に発表した「最近の甲状腺検査をめぐる報道について」というプレスリリース。NHKを含むメディア全般の「甲状腺検査」報道に対する行政の考え方を知る上で重要です。この中で環境省は世界保健機関(WHO)や国連科学委員会(UNSCEAR)の見解を援用して「甲状腺がんの罹患は原発事故によるものとは考えにくい」としています。WHOや国連科学委員会は福島原発事故の放射能影響をどのように見ているか、ということを知る上においても注目すべきプレスリリースということができるでしょう。

2番目の注は福島県の今回の2巡目の子どもの甲状腺検査を科学的データに基づいて解析した論攷。本論攷の解析者は2回目の検査結果の解読の結論として「被ばくと関係なく、検査時年齢が上がれば、甲状腺がんは増える(大きくなる)ので、当然見つかる人数は増えますね」と述べています。当たり前のことを当たり前に述べているだけのデータ解析の論ですが、当たり前のことを私たちは忘れがちなので注意喚起として肝に留めておく必要がある指摘だと思います。 

3番目の注は2番目の注を補足するものとしてこれまでのもっとも大規模な遺体解剖で日本人の甲状腺の全組織を解剖調査したところ28%に甲状腺がんが見つかったという医師の報告。だとすれば、1巡目の検査では「問題ない」とされた4人の検査対象者が2巡目で「がんの疑い」と診断されたとしてもそれは日本人全体のがん罹患の特徴であって、それを福島県に特有の現象とみなすことはできないでしょう。なおさら、それが「原発事故が原因」とみなすこともできないでしょう。

4番目の注は昨日25日の福島県「県民健康調査」検討委員会の配布資料

5番目の注は「被ばく線量が大幅に低い」という福島県「県民健康調査」検討委員会と同様の見方、認識を示す医師の見解と同医師のその見方を裏づける内部被曝検査結果に関する相馬市と南相馬市の現状を示す最新データ。 

6番目の注は2011年10月から2012 年11月にかけて32,811人を対象に行った「福島県内における大規模な内部被ばく調査の結果」。このホールボディーカウンター検査結果では同地域の住民の内部被ばくがチェルノブイリ事故で得られた知見をあてはめた年に数mSvという予想よりも遙かに低いことが明らかになっています。 

以上の注から、今回の2巡目の検査であらたに4人の「がんの疑い」と診断された患者が出た問題を福島の原発事故の影響とを関連づける見方は科学的根拠のまったくないデマといってよいことが証明されるでしょう。
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