沖縄県知事選は各メディアの世論調査の結果どおり保・革協同候補の翁長氏の圧倒的勝利。NHKも当地の琉球新報も予想どおり20時ジャストで「翁長当確」のゼロ打ち報道でした。最終的には約10万票の大差がついたようです。
 
喜ばしいことですが、喜んでばかりもいられません。水を差すようですが、「保・革協同」というのが曲者です。この「保・革協同」路線がこの先どのように転ぶか。凶と出るか吉と出るか。沖縄だけでなく、全国でもはじめての試みだけに予断を許しません。
 
同知事選の結果をうけて共産党の小池晃議員(党副委員長)は以下のようなツイートを発信しました。
 
翁長雄志さんに当確!沖縄県民は「新基地建設ノー」の民意を疑問の余地なく示した。これでも安倍政権は新基地建設を進めようというのか。新基地建設はきっぱり断念せよ。普天間基地は無条件撤去を。基地のない平和で豊かな沖縄に。たたかいはここから、たたかいはいまから。本土は総選挙でこたえよう!
 
しかし、「保・革協同」の原点としての確認事項である建白書には「米軍普天間基地を閉鎖・撤去し、県内移設を断念すること」とあるだけで「無条件撤去」とあるわけではありません。そして、翁長氏は、沖縄タイムスの11月1日付けに掲載された「政策比較①普天間」という記事の中で「沖縄の基地問題の解決は、県内移設ではなく国外・県外移設により解決が図られるべきである。・・・県外・国外移設、県内移設反対の『建白書』の精神で取り組んでいく」と述べています。「国外・県外移設」を条件にするのであれば、その「撤去」を「無条件撤去」ということはできません。「保・革」には現段階においてもこれだけの認識の差異があるのです。私が「どのように転ぶか」と突き放した言い方をするのは、たとえば左記に述べたような認識の差異を「保・革」は今後どのように調整していのくかなどなどについて少なからぬ懸念を持っているからです。「翁長氏勝利」で第1幕は終わりました。しかし、第1幕は序章であって、第1幕はうまくいっても第2幕以後の展開しだいではブーイングの鐘の音だけが聞こえる、という幕引きになるということだってありえないわけではありません。この問題はウチナンチューだけの問題ではなく、おおいにやまとんちゅうの問題でもありえるでしょう。心して今後の展開を見守りたいものだと思います。
 
以下、この問題についての保立道久さん(歴史学者)と宮台真司さん(社会学者)の問題提起のさわりの部分をご紹介しておきます。
 
沖縄の知事選挙がどのような結果となるか、固唾を呑んでいる。
(保立道久の研究雑記 2014年11月15日)
 
多くの人もそうであると思うが、沖縄の知事選挙がどのような結果となるか、固唾を呑んでいる。とくに保守と革新の協同候補がでているというのが、日本の第二次世界大戦後の政治史のなかで大きな変化であると思う。そして、これが沖縄からでているということの意味を考えなければならないと思う。ただ、私は、「保守と革新」ではなく、「保守と進歩」という軸で問題を考えたい。(略)「進歩」というと、最近では、それをもっぱら近代思想の枠組であるとして不評である。19世紀ヨーロッパの「進歩思想」が現実には、世界の帝国的分割と他文明に対する野蛮な抑圧を意味した。進歩というのは私有の発展であるという論理である。そのような「進歩思想」が「進歩思想」としてはいまだに圧倒的な影響力があることは事実であり、それを拒否することの重要性は明らかであると思う。 しかし、それとは区別された真の意味での進歩というものは、私はあると思う。(略)沖縄の「保守」と「進歩」の協同の方向は列島全体にとって大事な意味をもっていると思う。もちろん、そしてその協同は(政治的な協同という点でいえば)まだ決して幅広い流れではないだろう。それは出発点ということであろうと思う。「保守←→進歩」の協同が政治的な姿をとるというのはほぼ初めてのことであるから、それ自身で議論され、調整されるべきことは多いだろう。と同時に、「保守」の側も「進歩」の側もおのおので詰めるべき点が残っているに違いない。この道は相当に複雑な問題をはらんでいるのではないか。(略)おそらく問題が複雑になるのは、「保守←→進歩」という軸が、さらに他の軸線との関係で複雑な諸問題を抱えているからだと思う。その軸線とは第二の軸としての「左翼←→右翼」軸と、第三の軸としての「インターナショナリズム←→ナショナリズム」軸であろう。これを考えるためには、日本の「右翼」思想といわれるもので思想態度として取るべきものがあることを追跡してみることだろうと思う。アメリカになかば占領され、国家の独立を侵犯されているという状況のなかで思想としての「右翼思想」は成立しがたいものになっているが、しかし、一つの共同体主義としての右翼思想というものがすべて無意味であるというようには、私には考えられない。いま、この国にとって恐るべきものは、むしろ、無思想であり、虚偽の思想であり、詐欺瞞着であり、公然と表明される悪意であり、それが許されている状況であると思う。
 
宮台真司が語る沖縄の生きる道「問題は基地反対の先にある」
(リテラ 2014.11.02)
 
──まずは今回の沖縄県知事選についてお聞かせください。今度の選挙は、保革を超えて「基地反対」でつながったことで、沖縄のアイデンティティを取り戻す戦いだという機運が高まっていると思うのですが。
 
宮台真司 まず強調しておきたいのは、今回の知事選における翁長雄志氏の「オール沖縄」運動は、根本的な問題を沖縄の人たちが共有する従来にないチャンスだということです。しかし、左右対立を超える「オール沖縄」は良いが、沖縄アイデンティティを持ち出すのは違う。たとえば、沖縄タイムスと琉球新報は話題になったスコットランド独立運動を沖縄に引きつけて「アイデンティティかカネか」と紹介していましたが、今日アイデンティティ・ベースの独立運動はあり得ない。スコットランドにはゲール人系もいればケルト人系もいればイングランド系もいるわけで、アイデンティティを持ち出すと差別と抑圧が隠蔽される。そこで、スコットランドはアイデンティティではなく価値を独立の理由にした。スコットランドは気候が厳しく工場労働者が多いので、一貫して議会選挙で労働党議員を送り出してきたんですが、独立に際しても、新自由主義をイングライド的な価値として否定したわけです。沖縄も同じで、アイデンティティに頼ったら宮古差別・八重山差別・奄美差別が隠蔽される。沖縄も〈価値のシェア〉をベースに「オール沖縄」を展開すべきなんですよ。
 
以下、省略。全文は上記URLをご参照ください。
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