辺見庸「日録1―6」(2014/10/31) から。
――要すれば、〈わたしどもは右翼の暴力に屈することになりました
ということだ。 

むかし、未来社に藤森さんという大学の先輩がいて、じつにたくさんのことをおそわった。(略)富士正晴島尾敏雄を読むようにすすめたのも藤森さんだったとおもう。で、富士正晴がたしか31歳で応召したのが、わたしの生年の1944年で、南京や広州、桂林を行軍したことを知る。忘れもしないのが、そのときの富士正晴のじぶんへの「誓い」である。南京大虐殺のずっとあとのこと。(略)富士正晴はじぶんで「強姦はすまい」と誓ったのだった。まったく泣けてくる。二等兵で中国に行き、じぶんは強姦しないぞとわざわざ誓約したほど、そして、そう誓約するのが奇異におもわれるほどに、「皇軍」にあってはときに強姦がか ならずしも犯罪ではなかった、ということだ。(殺人)(略奪)(強姦)。中国ではかつて、それが日本軍の表象だったのだ。だから日本鬼子」とよばれた。富士が行軍させられた南京、広州、桂林のすべてにわたしは足をはこんだ。

けふ、
堀田善衛の『時間』を読みはじめる。昭和48年の新潮文庫、15刷。(略)『時間』は掘田の作品でもなぜか目だたない。なんとなく目だたないようにされたのだ。権力だけでない。しもじもも、南京大虐殺を(生体解剖も)なかったことにしようとした。じぶんは知らぬとおもいこんだ。ジャパンはそういふ、あるしゅ不気味な浸透圧の社会なのだ、むかしから。(略)

従軍慰安婦報道にかかわった元朝日新聞記者が非常勤講師をつとめる
北星学園大が、来年度からその元記者を雇用しないことにするらしい。やっぱり。田村学長は「学生の安全と平穏な学習環境をまもることが最優先」と強調。大学祭などの警備に多額の費用がかかったこと、学生からの批判や受験生の保護者から問い合わせがあったことを理由にあげているとか。要すれば、〈わたしどもは 右翼の暴力に屈することになりました〉ということだ。暴力に屈するということは、教育機関が、脅しや暴力の威力をみとめることにほかならない。それは教育機関じ しんによる知の根本的否定だ。腰抜けども!

 「沖縄の知事選が始まった。
保立道久の研究雑記 2014年10月31日)から。
――電力総連の仲井真現知事支持は「自棄と絶望の相乗によって
前進感覚をえる」(キルケゴール)自棄と絶望の道

沖縄の知事選が始まった。仲井真現知事の側は全力をあげて、JA、電力総連、医師会、水産業、建設業、不動産業、電気工事業などの業界団体から指示を取り付け、県内11市の市長のうち、名護と那覇を除く9市長の指示を取り付けたという。背後にあるのは、自民党の動きである。とくに問題なのが、電力総連の動きである。あれだけのことをやっておいて恥じない。これこそが日本的な集団主義というものだ。単数を複数に直してキルケゴール死に至る病』から引用する。「彼ら自身の目には自分が実際の自分よりも善いものにみえる。彼らは自分自身を誇るようになった。ところで、この誇りの気持ちからすれば、過去のことは まったく過ぎ越してしまったことにしてしまいたいのである」。あるいは、自分たち自身を誇るためには、従来の路線を続けざるをえないのである。キルケゴール的にいえば、自棄と絶望の相乗によって前進感覚をえるという訳である。それのみが救いのようにみえるのである。これはしかし、自棄と絶望の道だ。悪の集団主義の現象学のようなものが必要なのであろう。この集団主義は「悪」というものを見えなくする
関連記事
Secret

TrackBackURL
→http://mizukith.blog91.fc2.com/tb.php/1051-6be7a5cf