首相安倍の凄まじいまでのメディア・ハラスメント行為と「言論・表現の自由」への「社会の暴力団的段階」(アドルノ)を象徴する凄まじいまでの負の挑戦については昨日のエントリで批判しておきました。その首相安倍の凄まじいまでの「言論・表現の自由」の抹殺行為については、当然の「反論権」の行使として被攻撃者側の朝日新聞が本日付けの社説で安倍首相を反批判しています。
 
「今日の言葉」は、その朝日新聞の社説の紹介と同紙の安倍首相への反批判はもちろん肯定しながらの阿部治平さんの「『朝日』攻撃の先にあるもの」と題されたそれでもの朝日新聞への危惧の表明をいま注視しておくべきアクチュアルな論説としてピックアップすることにしました。
 
首相の発言―『捏造』は看過できない」(朝日新聞 2014年11月1日)から。
 
NHKやネットで中継されている国会で、首相が特定の新聞社の報道を取り上げ、「捏造(ねつぞう)」だと決めつける。いったいどこの国の話かと思わせる答弁が続いている。おとといの朝刊で朝日新聞は、安倍首相と自民党議員との昼食会の模様を報じた。その席で、民主党の枝野幹事長の政治資金収支報告書に収入の不記載が見つかったことが話題になった。政治とカネをめぐる野党の追及について、安倍氏がこれで「撃ち方やめ」になればと語ったという内容だ。
 
その枝野幹事長が衆院予算委で事実関係をただすと、首相はこう答えた。「きょうの朝日新聞ですかね。これは捏造です」驚くべき答弁である。なぜなら、毎日、読売、日経、産経の各紙や共同通信も「撃ち方やめ」を首相の発言として同じように伝えていたからだ。枝野氏も、朝日の報道に限って質問したわけではない。首相は「私が言ったかどうか問い合わせがないまま、言ってもいない発言が出ているので大変驚いた」と述べた。だが、各紙の報道は、昼食会に出席した首相の側近議員による記者団への説明に基づいている。この議員の事実誤認であるなら、そう指摘すればいいではないか。実際、この議員は後に「『撃ち方やめ』は自分の言葉だった」と説明を修正した。
 
首相はまた、「朝日新聞は安倍政権を倒すことを社是としているとかつて主筆がしゃべったということだ」とも語った。それが朝日新聞だけを名指しした理由なのか。権力監視は民主主義国の新聞として当然の姿勢だ。それでも時の政権打倒を「社是」とするなどばかげているし、主筆がしゃべったというのも、それこそ事実誤認の伝聞だろう。朝日新聞は慰安婦問題や福島第一原発事故の吉田調書について一部の記事を取り消し、その経緯を検証している最中だ。だが、それと政権に対する報道姿勢とは別の話である。メディアを選別し、自身に批判的な新聞に粗雑なレッテルを貼る。好悪の感情むき出しの安倍氏の言動は、すべての国民を代表すべき政治指導者の発言とはとても思えない
 
予算委で安倍氏は、閣僚の不祥事を追及する野党議員に対し、「公共の電波を使ってイメージ操作をするのはおかしい」と反論した。では、問いたい。「イメージ操作」をしようとしているのはどちらなのか。
 
阿部治平「『朝日』攻撃の先にあるもの」(リベラル21 2014年11月1日)から。
 
要旨:
いま私はメディアの「朝日」たたきの論理に反対する。安倍晋三に代表される人々や、「朝日」たたきを目的とする「読売」や「産経」の「河野談話」否定の先に、歴史の過去を美化し罪をごまかそうという意志が明かだからである。だが、歴史のごまかしや悪行の無視は、どう逆立ちしても国際的には通用しないのだ。考えてもごらんなさい。現ドイツ政府が、ナチの戦争犯罪の記録に間違いや誇張があったからといって、その訂正を求めるようなことがあれば、国際的にどのような反応 を呼び起こすか。安倍政権とその太鼓持ちの思惑は国際的にはまったく通用しないのだ。さかのぼって、日清戦争中の旅順虐殺事件、その後三浦公使らによる韓国皇后閔妃惨殺事件等々は、どう説明できるのか。さらに「南京事件」だ。日本軍による殺人の規模が、中国主張のように30万人でなくて、ナチ党員だったラーベがヒトラーへの上申書で推測するように、「およそ5万から6万人」だったとしても、大虐殺の事実は消えない。日中戦争に続く「大東亜戦争」について、司馬遼太郎はこういった。「あの戦争は、多くの他民族に禍害を与えました。領地をとるつもりはなかったとはいえ、以上に述べた理由で、侵略戦争でした。……真に植民地を解放するという聖者のような思想から出たものなら、まず朝鮮・台湾を解放していなければならないのです」(『この国のかたち4』)。私もまたこの見解に追従する。
 
しかし、「朝日たたき」に賛成はしないが、私は現在の「朝日」に対して数々の批判をもっている。今回、「朝日」の社長は記者会見で30年ぶりに慰安婦の吉田証言を虚偽だったとし、東電吉田調書報道は誤報だとし、池上彰の記事不掲載は間違ったとした。これがなぜ生じたか。「朝日」は自らの手でそれを明らかにできるか。できないだろう。そして、これからも同じ間違いを繰返す恐れがあると思う。慰安婦問題に限らないいくつかの誤り、不適切を過去の報道に見るからだ。
 
たとえば1966年にはじまる中国の文化大革命だ。毛沢東は自らのカリスマ性を用いて革命功労者から一般農牧民に至るまで千万の国民を、人権無視のはちゃめちゃな論理で、暴行・拷問・殺害・長期投獄の憂き目にあわせた。日本でこれを批判をしたのは産経新聞と日本共産党だけだった。1966年9月から日本のジャーナリストは「赤旗」も含めて軒並み北京から追放されたが、「朝日」だけは残り、秋岡記者らの文革追随のちょうちん持ち記事を載せつづけた。
 
朝日新聞社にはかつて「朝日ジャーナル」という週刊誌があった。大学紛争のときは、この雑誌によってひとつの宗派ができた。同誌には大学教師をやめようともしないで大学解体を叫ぶノーテンキな主張が掲載された。「荒れる中学」問題では、メディア総体の傾向は中学高校の教師をバカ扱いしながら責任を問い続けるものだった。なかでも徹底していたのは「朝日ジャーナル」だった。我々バカ教師は「明日ドーナル」と思いながら、中学で校舎一階のガラス窓をことごとく壊して入学してきた生徒たちと対峙していた。学校問題が教師を叩くだけでは何のくすりにもならないのに、それがわからないジャーナリストに歯ぎしりした。大きなメディアは権力である。権力の前に我々は無力だった。
 
とはいえ、私は「朝日つぶし」に加担する気持ちは全くない。「朝日」が安倍首相の「戦後レジームからの脱却」だの、A級戦犯合祀後の閣僚の靖国参拝だの、河野談話の見直しだのを批判してきたことは、それなりの見識だと思うからだ。だが、いまの「朝日」はあまりにも心もとない。だいたい社長以下責任者は即座に辞任を表明すべきなのに、「立てなおし」をやってから進退を判断するとか言っている。その腰抜けぶりからすれば、国会に呼び出されたら弁明に窮して右往左往するだろう。たたかれたあげく「朝日」は思想転向するかもしれない。そうなると「護憲・軍縮・共生の社会」を目指すあれこれの勢力に与える打撃は大きい。
 
阿部治平さんの「『朝日』攻撃の先にあるもの」の記事の全文は左をご参照ください。
 
附:
元朝日記者の雇用、来年度しない意向 北星学園大学長が会見(朝日新聞 2014年11月1日)
 
慰安婦問題の記事を書いた朝日新聞元記者の植村隆氏(56)が非常勤講師を務める北星学園大(札幌市厚別区)に、植村氏の退職を求める脅迫文が届くなどした問題で、田村信一学長は31日、植村氏との来年度の契約について、更新しないことを検討していると表明した。田村学長がこの日、記者会見して明らかにした。学長は、29日にあった副学長、各学部長、事務局長らとの会議で、植村氏との来期の契約を更新しない考えを持っていることを伝え、ほかの参加者からも賛同を得られたという。11月5日にある大学最高意思決定機関の評議会と、中旬に開かれる理事会でも各メンバーから意見を聴くといい、その上で理事長と話し合い、12月上旬までには決めるという。田村氏は更新しない意向を固めた理由について、警備強化などで財政負担が厳しい▽教職員が対応で疲弊している▽入試の際、受験生を巻き込んでまで「厳戒態勢」を続けるのは難しい――などの理由を挙げた。その上で「今期については植村氏との契約を守っており、来期の更新がなくても外圧に屈したことにはならない」と説明した。一方で、「今でも抗議電話はある。我々も小さな大学であり、学生確保も安泰ではない」と語った。
 
更新求める動きも
 
こうした対応に反発する一部の教職員は30日、「大学の自治と学問の自由を考える北星有志の会」を設立した。また、有識者らが結成した「負けるな北星!の会」も31日夜、札幌市内でシンポジウムを開催し、約220人が参加。同会メンバーは「言論テロに屈したように見られることになれば、社会へ与える影響は大きい」と述べた。
 
白い粉の封書、北星学園大に 威力業務妨害容疑で捜査
 
31日午後2時20分ごろ、北星学園大の職員から「白い粉入りの不審な手紙が届いた」と北海道警札幌厚別署に通報があった。道警は威力業務妨害容疑で捜査し、元朝日新聞記者で同大非常勤講師の植村隆氏の退職を求める脅迫文が届いた事件との関連を調べている。道警によると、理事長宛ての封書で、1枚の紙に手書きで「『言論の自由』と称する偏し方を子供に指導させて下さい」などと記されていた。「偏し」は「騙(だま)し」の誤記の可能性がある。白色以外の粉もあったが、いずれも毒性はなかった。
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