キョウ こうあんけいさつ
公安警察を告訴した記者会見の模様

Blog「みずき」:「今日の言葉」は横浜事件国家賠償事件弁護団の森川文人弁護士の「横浜事件と公安刑事の全学連暴行を繋ぐもの、隔てるもの」という論から。下記の論中に警視庁公安課の刑事たちの全学連大会襲撃事件(言論の自由の暴力的抑圧)の証拠ビデオをリンクしています。森川弁護士が同刑事たちを特別公務員暴行陵虐罪で告訴し、さらに損害賠償請求を提訴した(せざるをえなかった)理由のなによりもの説明になりえていると思います。これが21世紀の思想差別の現実なのです。

【横浜事件と公安刑事の全学連暴行を繋ぐもの、隔てるもの】
本日、本年9月1日、2日に警視庁公安課の刑事らが行った
全学連大会襲撃事件につき、特別公務員暴行陵虐罪での告訴、さらに国家賠償法及び共同不法行為による損害賠償請求を提訴しました。学生たちの行う集会を国家権力が・暴力で・妨害するという集会の自由(憲法21条)に対する前代未聞のあからさまな侵害です。これに憤らない方がおかしいでしょう。また、今週の金曜(12/2)には、横浜事件国賠控訴審の第1回期日が控えています。横浜事件の泊事件とは、出版記念の温泉旅行での一枚の記念写真から、それを「共産党再建会議」とでっち上げ、拷問により自白を得て有罪判決を裁判所は下し、それを証拠隠滅した国家犯罪です。いずれも、思想・集会に対する弾圧であり、本質的に同じです。私はそう思います。思想や表現の自由に対する暴力による侵害です。許せません。そこで攻撃されているのは「共産主義・社会主義」思想です。でっち上げにせよ、その弾圧の対象は、国家制度=資本主義・帝国主義体制に対する革命思想としての共産主義・社会主義思想です。未だ、というか、これらの思想には偏見が蔓延しています。ある意味、ロシア革命のあったちょうど100年前、1917年頃の方が、今より思想は自由だったかもしれません。世界中の多くの人々がマルクス・レーニンの革命思想に魅了され、学習し、体得していたのです。今は、そのような選択肢は100年前より閉ざされているかもしれません。いずれにせよ、偏見がたっぷりで溢れているので「一般論」として思想だとか表現の自由とか言っている人でも、平気で「過激派とは関わりたくない」と陰ではいう始末・・・それが21世紀の思想差別の現実です。木村亨さんたち横浜事件の元被告人らは、1947年に拷問を行った元特攻刑事らは特別公務員暴行傷害罪で告訴しました。海野晋吉弁護士らが代理人だったようです。たまたま思い出したのですが、すべてのわざには時がある・・・という言葉を「主体的に」捉えれば時は、私たちは時に選び取る必要があり、やるべき時に、やるべきことをやれ、という意味だと思います。歴史と今の現実を結びつける・・・簡単なようで、難しい。この二つの事件を対比して扱う人はなかなかいません。昔のことは昔のことだから「触れら」れても、今のことはホットで、「触れない」ということでしょうか? 今生きている私たちが歴史を知る意味・・・それはくだらないことは繰り返させない、ということにも一つ意味があると思います。心の声、ではなく、具体的に・声を・あげるべき時です。今がその時だと思います。(森川文人のブログ 2016-11-29

【山中人間話目次】
・小倉利丸さんの「米国大統領選挙でトランプは、失業と貧困から脱却できない主として白人労働者階級の票を獲得した」とされている問題の本質的な考察
・郷原信郎さん(美濃加茂市長事件主任弁護士)の道理も理路もある不当きわまる控訴審逆転有罪判決批判
・内野光子さん(歌人)の天皇の「生前退位」報道に関してメディアは「天皇制の本質については語らない」というメディア批判
・太田昌国さんのチェ・ゲバラ評、カストロ評、また、キューバ革命評
・高林敏之さんのこの安積明子批判もとても説得的です
キョウ へりぱっど2

Blog「みずき」:鬼原悟さん(「アリの一言」主宰者)の28日の翁長沖縄県知事の高江ヘリパッド建設容認表明は明白な公約違反という批判。この中で引用されている屋富祖昌子さん(元琉大助教授=昆虫分類学)の「知事は前知事と同じように「いい正月」を迎えるのだろう。2013年の年末に県民が見た悪夢が再びよみがえった。これで知事は「自ら進んで米軍に基地を差し出した沖縄県知事」として歴史に刻まれることになる。知事を信じて闘ってきた人々への裏切り行為は断じて許されない」という批判は沖縄県民の翁長知事への決別宣言の嚆矢となるか。それにしても「オール沖縄」という運動はなんだったのか。改めてその問題性を問い直さなければならないでしょう。

【翁長知事の公約違反】
ついに翁長知事の公約違反があらわになりました。29日の琉球新報、沖縄タイムスは、いずれも1面トップに「知事、ヘリパッド容認」の大見出しで、翁長氏が高江のヘリパッド建設容認を表明(28日の記者会見)したことを大きく報じました。社会面では現地・高江で反対運動を続けている住民たちの、「公約違反だ」「心が折れそう」「怒りが収まらない」などの声を伝えています。ヘリパッド建設をめぐる翁長氏の公約違反については、このブログでは再三指摘してきましたが(例えば今月17日参照)、記者会見でそれが露呈し、県紙が大きく報じたことの意味は重く、翁長氏と県政与党(「オール沖縄」陣営)の責任があらためて問われることになります。(略)この期に及んでもなお「オスプレイの配備撤回」を隠れ蓑にしようというわけですが、自身認めているように、オスプレイはすでに連日高江の上空を飛び交い騒音被害をまき散らしています。その現実を放置したまま、口で「配備撤回」と言ったからといってそれで物事が「収れん」するはずがないことは誰でもわかることです。「苦渋の選択」(保守政治家の言い訳の決まり文句)などという修辞でことを重大さを隠蔽することはできません。はっきりさせておかねばならないことは、「苦渋の選択」であろうとなんであろうと、ヘリパッド(新基地)建設を容認することは、翁長氏の重大な公約違反だということです。翁長氏は2年前の知事選でこう公約したのです。「オスプレイの配備撤回を求めているなかで、連動しており、高江のヘリパッドは当然反対していく」(2014年10月21日、知事選の政策発表記者会見)仲井真前知事が「やらない」と言った「辺野古埋立承認」をやったのが公約違反だったように、「当然反対していく」と言った高江のヘリパッド建設を翁長氏が「容認」したことも紛れもない公約違反であり、県民に対する重大な裏切り行為です。絶対に許されるものではありません。29日の県紙には数人の「識者談話」が掲載されましたが、その中から屋富祖昌子さん(元琉大助教授=昆虫分類学)の談話を琉球新報から全文転載して紹介します(太字は引用者)。<湿潤な環境に恵まれた亜熱帯照葉樹林は、地球上どこを探してもやんばる以外にない。国は環境保全に最大限配慮すると声高に叫ぶが、一度切り開いた森は二度と元には戻れず、後は少しずつ環境が蝕まれていく姿を見届けるしかない。世界に誇るべきこの貴重な森を、翁長雄志知事は軍事・戦争のために放棄したのだ。問われるべき責任はあまりにも大きい。ヘリパッド建設に先駆け、県は辺野古の陸上工事も容認した。年末の完成に向け、工事は急ピッチで進められることになり、環境への負荷も想像を絶する。北部はこうして軍事拠点となってしまうのではないか。知事は前知事と同じように「いい正月」を迎えるのだろう。2013年の年末に県民が見た悪夢が再びよみがえった。これで知事は「自ら進んで米軍に基地を差し出した沖縄県知事」として歴史に刻まれることになる。知事を信じて闘ってきた人々への裏切り行為は断じて許されない。>(
鬼原悟「アリの一言」2016年11月29日

【山中人間話目次】
・翁長知事が28日の報道各社の合同インタビューで高江ヘリパッドを容認。翁長県政を支えてきたオール沖縄(社民党・共産党ほか)の責任はきわめて重い。
・「象徴天皇制」の下で見過ごされてきた〝首相の憲法違反” - 鬼原悟「アリの一言」
キョウ うよく
「もう一つの右翼」("Alt Right")運動

Blog「みずき」:「今日の言葉」は水島朝穂さん(早大教授・憲法学)のトランプ新政権人事考。水島さんは関連して欧州の7つ目の右翼ポピュリズム政権の誕生の可能性についても言及しています。その部分も抜出しておきます。世界的に恐るべき事態が進行しています。「前回の直言で、ドイツの週刊誌Der Spiegelの欧州右翼ポピュリズム政権地図を紹介したが、いよいよ来週12月4日にオーストリア大統領選挙の再投票が行われる。「トランプ」後の最初の重要選挙である。ホーファーが当選すれば、欧州の7つ目の右翼ポピュリズム政権となる。Brexit(英国のEU離脱)に続く、Öxit(オーストリア〔Österreich〕のEU離脱)になるか。米国の状況をみて、ポピュリズムの方向に傾いていた有権者が踏みとどまる可能性もある。そうしたなか、ドイツのメルケル首相が11月20日、来年の総選挙にCDU首相候補として出馬することを表明した。「トランプ当選」が背中を押したことは明らかである。ヨーロッパとドイツを背負ってトランプと向き合う覚悟だろう。しかし、与党内は複雑である。常にメルケルと対立する副首相で、姉妹党のキリスト教社会同盟(CSU)党首のホルスト・ゼーホーファーは、「トランプ次期大統領をいつでもバイエルン州は歓迎するだろう」と述べ、具体的には来年2月17~19日にミュンヘンで開かれる「安全保障会議」に、トランプ次期大統領を招待する意向を示した(Die Welt vom 24.11)。難民問題でも地球温暖化問題でも、ゼーホーファーの意見はトランプのそれに近い。ベルリンの連邦政府の頭越しに、バイエルン州首相が単独でトランプを招くというのは、明らかにメルケル首相へのあてつけである」。

【安倍首相もさらなる「お友だち」人事を逆輸入】
マスコミはいま、そのトランプ新政権の人事に注目している。(略)すでに内定している顔ぶれをみても、この政権の危なさは並みではない。国家安全保障担当補佐官のマイケル・フリン(退役陸軍中将、元国防情報局長)はイスラム教徒排斥の急先鋒といわれ、国防長官に名前が出ているジェームズ・マティス(退役海兵隊大将、元中央軍司令官)は「狂犬」と呼ばれている。そして、司法長官のジェフ・セッションズ(上院議員)は不法移民への強硬策で知られ、CIA長官のマイク・ポンペオ(上院議員)はイランとの核合意破棄を主張している。保守派のティーパーティー運動に関わっている。商務長官のウィルバー・ロス(著名投資家)は知日派だけに、日本の「骨までしゃぶる」政策をとってくるかれしれない。メディアはあまり注目しないが、国土安全保障省(ホームランド・セキュリティ)長官に、
クリス・コーバッハ(カンザス州内相)があてられる予定である。彼は司法省の役人時代、NSEERSという、出入国管理に関わる手続を厳格化するシステムの創設に関わり、その再導入・強化をトランプに提言したようである(Süddeutsche Zeitung vom 22.11)。なお、合衆国最高裁のアントニン・スカリア判事が今年2月に急死したことに伴い、最高裁判事の1名もトランプ次期大統領が任命する。2015年6月26日の同性婚「合憲」判決は5対4の僅差だった。トランプが極右の判事を任命すれば、憲法をめぐるさまざまな分野で大きな後退が起こる可能性がある。(略)

「もう一つの右翼」("Alt Right")運動というのがある。白人至上主義、移民排斥、人種主義、孤立主義をとり、米国のネオナチともいうべき存在である。その幹部の
リチャード・スペンサーの演説を見つけた。38歳の若さで、極右のシンクタンク、国家政策研究所 (NPS)理事長である。11月22日にワシントンD.C.で行われた 集会での演説で、米国が今後、白人国家として創造され、繁栄し、継承されていくべきだ、と明らかにオバマ大統領を意識した演説をしている。「十字軍」や人種的「純粋さ」などを強調し、最後は「ハイル トランプ」「ハイルピープル」「ハイル ヴィクトリィ(勝利)」と叫んで右手(グラスをもっているが)を斜め前に掲げるのが確認できる(YouTube映像の29分18秒あたりから )。会場の参加者のなかには、「ハイル ヒトラー」の敬礼でこたえる姿も写っている。スペンサーとも関係のある保守系サイト「ブライト バート・ニュース」会長、スティーブン・バノンがトランプ政権の戦略担当顧問に就任する。当初は大統領首席補佐官の声もあったが、さすがのトランプもこのポストは避けたようだ。しかし、トランプ政権は極右団体の強い影響が確認できる。選挙戦でこれらの団体の支持を受けて当選した以上、人事でも配慮を加えざるを得ないわけである。日本会議と安倍政権の関係によく似ている。(略)トランプはいま家族とともにフロリダの別荘にこもって政権人事を進めているという。まさに権力の私物化(家族化)であり、米国は「家産国家」(Patorimonialstaat)になるのか。安倍首相もそれに学んで、さらなる「お友だち」人事を進めていくのだろう。2017年は悪い冗談で開けるのだろうか。(水島朝穂「今週の直言」2016年11月28日

【山中人間話目次】
・朴氏辞任求め5週連続集会――英雄譚にはいくつもの落とし穴がある
・豊洲市場・盛り土問題。「小池劇場」は“行き詰まっている”という郷原信郎さん(弁護士)の見方
・美濃加茂市長に逆転有罪の名古屋高裁判決に暗然とする
・NHKスペシャル 追跡 パナマ文書衝撃の“日本人700人”(動画)
・ETV特集「路地の声 父の声~中上健次を探して~」
キョウ へりぱっど

Blog「みずき」:「問題は、安倍政権に取って代わる政権構想がいっこうにはっきりしないことだ」という広原盛明さん(京都府立大学名誉教授。元京都市長選候補者)の忸怩たる思いは、私は、広原さんの言明を超えて、いまオール沖縄が抱えている問題とも深くつながっていく問題というべきではないか、と思っています。昨日の28日、翁長知事は報道各社の合同インタビューで高江ヘリパッドを容認する発言をしました。ここに翁長知事の本音が見えます。「オール沖縄」という聞こえのいい謳い文句だけが上滑りにひとり歩きして、今後の沖縄の道標となるべき課題を政策的に共有することを怠ってきた。その結果が翁長知事の今回の高江ヘリパッド容認という事態なのです。「野党共闘」という謳い文句だけに浮かれて、当事者たち(主に共産党)はそれと気づかないまま「あいまいな野党共闘」の坂を転がり落ちている本土の「革新」勢力と相似の図といえないか。「あいまいな野党共闘」のゆき着く先は見えているのです。問題点を明らかにするとはそういうことも明らかにするということでしょう。

【「安倍政権漂流」と「野党共闘漂流」の同時進行という悲喜劇】
各紙の見出しにはいま盛んに「TPP漂流」との活字が躍っているが、私は近く「安倍政権漂流」の見出しがそろそろ出始める頃だと考えている。なぜなら先に挙げたTPP、北方領土交渉、自衛隊南スーダン駆けつけ警護のどれ一つをとってみても、安倍政権がこの難題・難局を乗り切るカードを持っているとは到底思えないからだ。ならば、内政上の課題でこれを埋め合わせるだけのヒット政策があるかと言えば、「1億総活躍社会」も「地方創生」ももうとっくの昔にお蔵入りしている。代わって打ち出した「働き方改革」も、電通女性社員の過労自殺で一挙に吹っ飛んでしまった。加えて「年金カット法案」がまたもや衆院委員会で強行採決されるのだから、これでは幾ら辛抱強い国民といえども安倍政権の先行きに期待が持てるはずがない。おそらく次回の世論調査が安倍内閣支持率の転換点になるだろう。アメリカ大統領選直後の読売・産経調査では、「トランプショック」もあって一時的に内閣支持率がアップしたが、いつまでも「オオカミ少年」の脅かしが利くはずがない。日が経つにつれて国民は周辺を冷静に見渡すようになり、「安倍政権って何をしたの?」「何をしてくれたの?」と気づくようになる。安倍政権の「終わりの始まり」が漸く現実のものになるときがやって来たのである。

問題は、安倍政権に取って代わる政権構想がいっこうにはっきりしないことだ。共産党は11月16日に採択した大会決議案のなかで「野党連合政権」の基本路線として、(1)共通公約、(2)相互推薦・支援、(3)政権問題での前向きの合意を盛り込み、「本気の共闘」を目指すというが、肝心の民進党の態度がいっこうに煮え切らない。というよりは、野田幹事長の11月21日の記者会見にもあるように、「基本的な政策が一致しない、理念が違う政党と政権をともにすることはできない。何度も言ってきている」と明言し、蓮舫代表も共産党の野党による連立政権構想について「共産党の片思いの話」と語り、応じない考えをはっきり示している(毎日新聞11月22日)。このままでは「安倍政権漂流」と「野党共闘漂流」が同時進行することになり、国民の政治不信と混迷感だけが深刻化することにもなりかねない。どこかでこのような「あいまいな流れ」を断ち切り、すっきりとした野党政権構想を示すべき時に来ているのではないか。そのためにはいつまでも蓮舫代表や野田幹事長に望みをかけるようなことは止めて、この際「民進党抜き」の共同路線を市民側から提起してはどうだろうか。こうすることによって野党共闘の問題点が国民の前に明らかになり、「本気の野党共闘」と「あいまいな野党共闘」との違いが鮮明になるのではないか。「実務者協議」などと称して野党間の密室協議をだらだらと続けることは、「本気の野党共闘」に期待する国民に失望を与える。問題点を明らかにして事態を打開することが求められているのである。安倍政権の「票流」をいつまでも放置しないためにも。(
広原盛明のつれづれ日記 2016-11-27

【山中人間話目次】
・ニッポンで「リベラル」、あるいは「識者」と称される者のインチキ性(欺罔と欺瞞)について(1)――寺島実郎(評論家)の場合
・ニッポンで「リベラル」、あるいは「識者」と称される者のインチキ性(欺罔と欺瞞)について(2)――天木直人(評論家)の場合
・フィデル・カストロのこれまでの業績を振り返るデモクラシーナウ!の映像――オバマ、マンデラ、キッシンジャーとカストロ
・カストロ追悼余話(1)――ニッポンの市民は英雄譚をすぐにつくりたがる
・カストロ追悼余話(2)――右翼的な目と右翼的な発想しか持たないトランプのカストロ評価
キョウ しゅうかんきんようび

Blog「みずき」:「今日の言葉」は「田岡俊次というジャーナリスト(元朝日新聞記者)と週刊金曜日を改めて批判する」という題の私の短い言葉です。短いのですが、私としては「寸鉄人を刺す」という思いでは書いています。


【私たちは「週刊金曜日」という袋小路から脱出しなければならない】
この
田岡俊次氏の論は新手の日米安保容認論というべきものですね。トランプなんぞの登場で日米安保体制は微塵も揺らぎはしない、と同安保体制の存続、続々を大前提にした上でこの論は書かれています。最後の行の「(日本は米軍を)置いてやっている」のだというフレーズは田岡氏が「右翼的な」とでも形容すべき積極的な日米安保容認論者であることを端的に示しています。その右翼的な日米安保容認論を週刊金曜日は「『トランプ大統領』が日本に送る請求書」という見出しの下に第一番目の論として大々的に掲載して恥じるところがありません。ニッポンの抜き差しならないまでの「革新の右傾化」をつくり出している張本人(あるいは共犯のひとり)は「メディア界きっての最左翼雑誌」と自他称される「週刊金曜日」という雑誌であることはいまや明白です。(東本高志FB 2016年11月26日

【山中人間話目次】
・田岡俊次というジャーナリスト(元朝日新聞記者)と週刊金曜日を改めて批判する
・韓国の一連の民主化闘争の報道の通俗と秀逸な「民主的」視点の差異について
・澤藤統一郎さん(弁護士)の長野県中川村、曽我逸郎村長への手紙――上原公子元国立市長問題
・チェ・ゲバラ死して、カストロも死す。少年と青年にとって「革命」という言葉が輝かしい時代があった
・京都労働局が判断変更/KBS京都の請負契約/「派遣法違反」へ逆転認定
キョウ 流砂

Blog「みずき」:「今日の言葉」は豊島耕一さん(佐賀大学名誉教授。自らのHPに公表している共産党員)の井上達夫さん(東大教授)の「護憲派の解釈改憲」論批判に即した「共産党の解釈改憲」論批判。これまで豊島さんの論には私の目から見て「右傾化」した視点のものが多く、私として肯えないものが少なくなくありましたが、今回の豊島さんの論は私として肯えるところ大です。これはまっとうさを維持する共産党員の論だということができるでしょう。その大概をご紹介させていただきます。

【修正主義的護憲派の解釈改憲は「大人の知恵」だというがほんとうか】
東大教授・
井上達夫氏による「憲法の涙」というタイトルの本がある.(略)この本は上のようにいろいろと矛盾を含み,また憲法から非戦のタガを外す危険な改憲論に他ならない.しかし冒頭で紹介した「護憲派の解釈改憲」論は,護憲派の一部への批判としては全く的中している.第一章から引用する.

〈原理主義派の欺瞞 — それはそれとして、このアンケートで私が注目したのは自衛隊を違憲だと答えた憲法学者のほぼ全員が、同時に、九条改正の必要がない、と答えていることですね。九条と自衛隊の存在が矛盾していて、九条は変える必要がない、正しい、と。つまりこれは、自衛隊を廃止せよということに論理的にはなりますよね。〉〈先ほど、修正主義的護憲派の欺瞞の話 — 自分たちも解釈改憲を採用しているのに、安倍政権の解釈改憲を非難しているのはおかしい、という話をしましたが、今度は原理主義的護憲派の欺瞞の話になります。これも前に言ったように、九条に照らして、自衛隊と日米安保が違憲であることは明白です。憲法解釈に関して、原理主義的護憲派が正いのは明らかなんです。彼らの欺瞞は — だからといって何もしない、ということ。自衛隊を廃止せよ、という運動もしていません。日米安保反対運動を国民的規模で組織しようという動きも、一九六〇年の安保反対運動の終焉以来ありません。いや、今回のように、専守防衛の枠を超えた自衛隊・安保強化の動きがあると、そこだけちょっと反対する。かつてのPKOのときみたいに。しかし、それだけですね。一般の読者には奇妙な立場に思えると思うのですが、彼らは、実際には、自衛隊と日米安保を容認しているんです。その便益も享受している。しかし、自衛隊と日米安保は「違憲だ、違憲だ」と一言い続けろ、と。そう違憲の烙印を押し続けることによって、自衛隊と安保を専守防衛の枠にとどめておけるから、と。専守防衛の自衛隊安保を合憲と言いくるめる修正主義的護憲派の解釈改憲は「大人の知恵」だという議論がありますが、原理主義的護憲派はさらに開き直っている。この「大人の知恵」を実現するには、自衛隊・安保自体が違憲だと若者的純真さを偽装して主張するほうが治政治的に一層効果的だ、「大人の知恵」が許す点で妥協するには一見「非妥協的」な違憲論から出発して交渉したほうが得策だとというわけです。〉

残念なことに,16日に発表された
共産党の決議案の自衛隊政策は,部分的であれ,まさしくこれに当てはまる.党綱領から自衛隊,安保に関する文章を短く引用したあと,次のように述べている.(略)引用部分の冒頭で「自衛隊が憲法違反」と断言しているが,それを廃止する方策については極めて間接的で,政権を取らないと出来ないかのようでもあり,井上氏の「自衛隊を廃止せよ,という運動もしていません」という指摘が当てはまることになる.しかも,「日本を取り巻く平和的環境が成熟」するのを待つかのような言い方は,政府・自民党の「日本を取り巻く安全保障環境は一層厳しさを増している」という軍拡のためのレトリックとウリ二つである.つまり暗に現在の「平和的環境」=「安全保障環境」は自衛隊廃止を出来る状況ではない,と認めているのである.自衛隊の存在自体がその,つまり平和的環境の阻害要因になっているという視点は,上の文章に関する限り全くない.もちろん,共産党もその一翼をになう平和運動一般は「自衛隊を廃止」の方向に貢献するのは間違いないし,「段階的」手続きも書いてあるので,井上氏が言うように「何もしない」わけではないと反論されるかも知れないが,それこそ極めて「段階的」,間接的であり,直接に自衛隊廃止を求める運動とは全くレベルが違う.より重大なのは,その後に,「急迫不正の主権侵害」の場合は「自衛隊を活用」することもある,と言う点だ.大規模災害の場合とまとめて書くという文章作法も乱暴だが,主権侵害のケースで隊員が手にするのは恐らくスコップではない.つまり自衛戦争も辞さず,と述べているのである(この種の発言はしばしば同党幹部の発言で繰り返されはしたが, 前回の大会決議にはこの記述はなかった).違憲の自衛隊だがその存在自体は容認するというのが消極的な「解釈改憲」とすれば,自衛戦争の容認はむしろ積極的な「解釈改憲」と言わなければならない.同党が,あるいは護憲派の多くが自衛隊違憲論や廃止論を前面に出さないのは,いうまでもなくそれどころではない,「集団的自衛権」や紛争地への自衛隊派遣という深刻な事態があるからで,それを食い止めるのが先決,と考えるからだろう.政治的共同戦線を組もうとするとき,「一致できる妥協点」によらなければなならい,ということも理解できる.しかしだからと言って「原理主義」的主張をやめることは誤りだ.アジェンダの範囲を右へ右へと押しやり狭めるものであり,決定的なのは説得力を欠くということだ.(豊島 耕一「ペガサス・ブログ版」2016-11-21

【山中人間話目次】
・豊島耕一さん(佐賀大学名誉教授。自らのHPに公表している共産党員)の「共産党の解釈改憲」論批判
・澤藤統一郎さん(弁護士)の右翼の暴力に対して暴力行為等処罰ニ関スル法律第1条も活用して告訴すべきだという問題提起
・安倍政権の「駆けつけ警護」派遣政策なるものをこのままにしておくことは私たちも「人殺し」に加担するということにならないか
・森川文人さん(弁護士)の『決してデモに参加しない人にとっての「表現の自由」「国民主権」』という論
・新自由主義路線とはなんだったか。30年前の中曽根政権の「国鉄」分割民営化のゆき着いた先
キョウ 流砂

Blog「みずき」:小倉利丸さん(富山大学名誉教授。ピープルズ・プラン研究所共同代表)の「武藤一羊著『戦後レジームと憲法平和主義』」の書評の中から90年代に当時の社会党の村山政権が「日米安保と自衛隊合憲」論を打ち出したことが今日の政治の右傾化のターニング・ポイントとなったと指摘する箇所を「今日の言葉」としました。もちろん、この問題は、今日の社会と政治の右傾化に密接につながる問題としていま現にある根底的問題というべきだからです。

【その後、理念なき政局運動がはびこるようになった】
本書は、武藤がこの間提起してきた彼の戦後日本国家論を再度整理して、とりわけ安倍政権が目指す方向への根底的な否定の根拠を論じるものだといえる。武藤は、戦後日本国家の構成原理はアメリカの覇権原理戦後憲法の平和・民主主義原理、そして帝国継承原理の三つからなるという基本認識を提起するが、これら三原則は「相互に矛盾する構成原理で成り立つ歴史的個性を備えた国家」であるというのが武藤の重要な方法論であると同時に、ここから安倍政権が目論む帝国継承原理一元論とでもいうべき改憲を通じた戦後レジームからの脱却戦略へのオルタナティブも導き出される。(略)武藤の言う三つの原理の均衡が崩れた大きな要因をつくりだしたのは、自民党ではなく90年代の村山政権だったことを強調したい。村山政権が、日米安保と自衛隊合憲を打ち出し、原発をも容認したことは、「革新」側による憲法9条の再定義であって、その後の平和運動の基本理念を大きく損なう裏切り行為だったとはいえないだろうか。この結果として、その後の野党や反戦平和運動の流れのなかに、原則や理念を棚上げにして、目先の軍事・安全保障政策に対する反対として運動を展開するという理念なき政局運動がはびこるようになった。体制選択はおろか、原則的な外交・安全保障の基本政策を根底から否定する運動の思想的なラディカリズムは影をひそめ、その結果として、日米同盟解消や自衛隊廃止、非武装中立という方向性が平和運動の当然の共通認識とはならなくなってしまった(あるいは公然とは口に出されなくなった)ように思う。こうして、自衛のための武力行使を暗黙のうちに容認する価値観が徐々に平和運動のなかにも浸透してきたように思う。

言い換えれば、自国軍隊を持つことを当然の前提とする諸外国の平和運動と同じ次元で反戦平和運動が再定義され、その結果として9条を重要な運動の柱としながらも、この9条が「革新」側によって自衛隊合憲、日米安保容認という再定義を前提とした立法府での議論の枠組が構築されていることの深刻な問題を棚上げにする一方で、「戦争放棄」や「9条守れ」というスローガンには漠然とした戦争放棄の理念がありうるハズだという期待を多くの反戦平和運動の担い手たちは抱きつつも、政治の現実の舞台があまりにもこの理念とかけはなれた土俵の上で展開されている欺瞞に疲れ果てる姿が日常化してきたとはいえないか。自衛隊解体、国家に軍隊はいらないを非武装平和主義の意味として共通の合意とする確認もなしに、具体性のないヌエ的なスローガンでお茶を濁す空気すら生み出されてきたのではないだろうか。この反戦平和運動のなかでの90年代の9条再定義は安倍政権につらなる現実政治への理想主義の敗北であったのではないだろうか。だから、左派の再構築は、こうした90年代以降の再定義を自己批判的に総括することを避けることはできないはずだ。その上で、武藤が言うように平和主義をその内実を伴なう意味のレベルで再定義し共有することが必須の課題だ。「革新」による9条解釈の変質は、現行の自衛隊については違憲とは明言せず、集団的自衛権だけが違憲であるかのような奇妙なレトリックが支配的になってきた現在の流れの源流にあるものとはいえないだろうか。こうなってしまうと、安倍政権が打ち出した「積極的平和主義」や自衛隊合憲を前提とする議論の土俵に片足を乗せながら、集団的自衛権行使や海外派兵の条件だけを争点とするような論じ方になってしまう。こうした危惧を武藤は戦争法反対の論調のなかに見出して危惧を表明している。こうしてみると先に述べたように、村山政権が打ち出した日米安保容認、自衛隊合憲論がその後の運動にもたらした影響は非常に大きかったのではないかと思う。(
小倉利丸ブログ 2016年11月21日

【山中人間話目次】
・「権力監視がメディアの使命  沖縄から問う報道と自由の表現」というシンポジウムの問題点
・田中宇さん(評論家)の「アジア政策に関してトランプは、クリントンと大して変わらない「軍産複合体」系の大統領だということになる」という論
・それでも安倍の支持率が高いという驚くべき事実は、日本国民の民度が異常に低下しているとしか理解できない
・「地球はもう温暖化していない」という論に対する岩月浩二さん(弁護士)の共感
・外国人技能実習生を完全に奴隷扱いする外国人技能実習生受入機関の絶句ものの酷さ
・田中真知さんの文化人類学者の阿部年晴さんを追悼する言葉
キョウ さわふじとういちろう3

Blog「みずき」:澤藤統一郎さん(弁護士)の宮中で旧新嘗祭の行事が執り行われる日(勤労感謝の日)の本日付けの記事に引用されている「神聖国家日本とアジア――占領下の反日の原像」(勁草書房1984年)の「あとがき」(鈴木静夫)の文章が私の心にも残りました(澤藤さんはこの「あとがき」が心に残ったから今日の記事を書いているのでしょう)。澤藤さんは同著の「あとがき」で紹介されている「東南アジア『懺悔』行」を書いた新日本宗教団体連合会に所属する二十六人の青年たちの思想と行動は「靖国の思想と真っ向から対立する」と書いています。「靖国は死者を、敵と味方、軍人と民間人に、徹底して差別する思想に立っている」とも。その「靖国の思想と真っ向から対立する」二十六人の青年たちの思想と行動を紹介した「あとがき」の文章自体は澤藤さんのブログで読んでいただくことにして、ここでは同著を読んだ澤藤さんの感想を「今日の言葉」としてとりあげておきたいと思います。

【新日本宗教団体連合会の二十六人の青年たちの思想と行動】
晩秋。雲の厚い陰鬱な勤労感謝の日である。晴天に恵まれた文化の日に神保町の「神田古本まつり」の露店で購入した本をひろげている。「神聖国家日本とアジアー占領下の反日の原像」(鈴木静夫・横山真佳編著、勁草書房1984年8月の刊)。(略)この本の惹句は、「第二次大戦下,日本はアジアの占領地域で何をしたか,相手側はどのように受けとめたか。現地調査と綿密なデータ収集で掘り起こし,現在も深い影を落している事を明かにした。」というもの。現地をよく知る6人の毎日新聞(元)記者が精力的な調査結果をまとめている。3年掛かりの作業だったそうだ。この書のキーワードは、アジアの人びとがもつ「対日不信の原像」である。帯には「これはすぐれた日本人論でもある。現地調査と研究が浮彫りにした日本の原像。この水準を越えるものは当分出ないだろう」と記されている。この書に記された独善と狂気と残酷を「日本の原像」というのか。アジアの占領地に「呪縛と支配の思想」を押しつけた、私より一世代前が「日本人の原像」だというのか。ますます陰鬱な一日となってしまった。私がこの本を買う気になったのは、以下の「あとがき」(鈴木静夫)に目が行ってのこと。大切な視点だと自分に言い聞かせるつもりで、引用しておきたい。「「東南アジアの対日不信」の調査、研究は一つの衝撃的な新聞記事との出会いから始まった。その記事は「東南アジア『懺悔』行」と題された一九八〇年五月十九日付の毎日新聞夕刊の記事である。新日本宗教団体連合会に所属する二十六人の青年たちが、三度目の東南アジアの戦跡めぐりをしたという囲みものの報告記であった。東南アジアの戦跡めぐりをする旧軍人やその家族はたくさんおり、そのこと自体は珍しくはないが、この記事が伝える内容は私を激しく揺り動かした。彼らは古戦場や軍人墓地を訪問したのだが、その訪問の仕方がまるで違っていたからである。(略)」ここで指摘されているのは、「戦争を被害者としての視点からだけではなく、自らを加害者として見つめ直すこと」、「侵略戦争を被侵略国の民衆の立場からありのままに見るべきこと」、そして「戦争がもたらした長く癒えぬ傷跡をあるがままにとらえること」である。この基礎作業なくして、対話も謝罪も、関係の修復も、真の友好と将来に向かっての平和の構築もあり得ない。このような考え方は、靖国の思想と真っ向から対立する。靖国は死者を、敵と味方、軍人と民間人に、徹底して差別する思想に立っている。天皇や国家のための忠死故に「英霊」と顕彰するとき、既に戦争が美化されている。その戦争が醜い侵略戦争であったこと、皇軍は加害軍であったことが隠蔽される。靖国の思想とは、戦争を美化して次の戦争を準備する思想といってよい。靖国史観に、侵略された国々の民衆の歴史を対峙させることの意味は大きい。(
澤藤統一郎の憲法日記 2016年11月23日

【山中人間話目次】
・小倉利丸さん(富山大学名誉教授。ピープルズ・プラン研究所共同代表)の武藤一羊著『戦後レジームと憲法平和主義』書評
・木村剛久さん(元編集者。「海神日和」ブログ主宰者)の『宇沢弘文傑作論文全ファイル』を読む(1)
・郷原信郎弁護士の『「小池劇場」で演じられる「コンプライアンス都政」の危うさ』という小池都政批判
・スティグリッツ氏(2001年ノーベル経済学賞を受賞、米国を代表する経済学者)のトランプの経済政策批判
・共産・志位委員長は「問題解決に向けての前進と評価」談話(2015/12/28)を撤回せよ!!という主張に強く同意する
キョウ かんこく3

Blog「みずき」:「今日の言葉」も「山中人間話」から。今回は韓国の「100万人デモ」の根底的な問題点を指摘するZEDさん(「Super Games Work Shop Entertainment」主宰者)の論をとりあげます。ZEDさんは「こういうタイプの人間(権力と馴れあうことを「誇らしい民主主義の光景」などと勘違いしている「リベラル・左派」。ここでは反原連やSEALDsの活動が念頭にあるようです)が日本でもとりわけ3.11以後に激増したのを我々は嫌になるほど目撃してきた。先日吉祥寺で行われた反天皇制デモに対して「迷惑だ」「皇居前でやれ」などという暴言を吐いた人間が(左派と思しき者の中にすら)何人もいたのも記憶に新しい」とも指摘しています。韓国の「100万人デモ」の「誇らしい民主主義の光景」の問題は実はニッポンの「誇らしい民主主義の光景」の問題でもあるというのがZEDさんの言いたいところでもあるでしょう。


【「非暴力に心酔する成熟した市民」とはなにか】



【山中人間話目次】
・ZEDさん(「Super Games Work Shop Entertainment」主宰者)の韓国100万キャンドルの「光と影」という懸念。その1
・kojitakenさんの東京新聞は「論外の新聞」という論評
・天皇制反対デモを右翼が襲撃。警察、暴挙見て見ぬふりに怒る
・目取真俊さん(作家。沖縄在住)の「そんなに沖縄人を差別したいのか」という怒り
・政府の鶴保庸介・沖縄北方相「土人発言擁護」発言を容認する閣議決定と澤藤統一郎弁護士の「鶴保庸介「政治とカネ」疑惑を撃つ」という記事
キョウ いわたあきこ

Blog「みずき」:ここで水島朝穂さん(早大教授。憲法学)のいう「NHK政治部(政権部?)のあの記者」とはむろん岩田明子記者のことです。私もこのニュースをビデオで見ましたが、岩田記者の顔の変貌に驚きました。若いときはもっと清楚な顔立ちをしていたと思うのですが、いまは夜叉面のよう。権力におもねり、もみ手すり手ですり寄ろうとする者の相はかくもあらんか。私は深い嫌悪感と悲しさのようなものを感じました。人を評するにそれ以上のことは私は言えません。

【NHKの「迎合と忖度」の姿勢はさらに進化(深化)】
NHKニュース7には驚いた。5月に広島で「信頼関係」を語り合ったオバマ大統領や、選挙中に握手したヒラリー・クリントン大統領候補を差し置いて、世界のどの首脳よりも早く、最速でトランプ次期大統領のもとに「駆け付けた」安倍晋三首相。そのはしゃぎぶりもさることながら、首相の「思い」を代弁するかのように詳しくかつ丁寧に解説したのは、
NHK政治部(政権部?)のあの記者だった。今回はスタジオのテンションも妙に高く、「安倍・トランプ会談」への期待感を盛り上げていた。「語り口は、内閣官房の内閣広報室職員のそれよりも安倍首相寄りである。国家公務員なら、首相の心のうちまで読み解くことはしないから」(直言「メディア腐食の構造――首相と飯食う人々」)とかつて書いたが、政権とのこの近距離感は、一体これがジャーナリズムなのかという思いを強くする。NHKの「迎合と忖度」の姿勢はさらに進化(深化)したようで、安倍・トランプ会談への「期待」を演出する官邸広報(宣伝)のようだった。
 
「会談」は17日夕(日本時間18日朝)、ニューヨークの「トランプタワー」58階のトランプ宅で行われた。ともにゴルフ好きということで、安倍首相は
54万円(税込み)のドライバー(TBS「サンデーモーニング」11月20日より)を手土産にしたようだ。ポケットマネーか、官房機密費=税金か。非公式「会談」のため内容は公表されなかった。記者とのやりとりでは、「じっくり胸襟を開いて率直な話し合いができた」「トランプ次期大統領は信頼関係ができると確信した」と述べたが、初対面で90分程度話しただけでここまで言えるのか。それでも、世界有数の大国、日本の首相から、「トランプ氏は信頼することのできる、信頼できる指導者であると確信した」と、「信頼」という言葉を二度まで使った、明確かつ断定的な承認の言質をとっただけで、トランプにとっては大成果だったのではないか。「イスラム教徒は入国させない」「不法移民は追い出す」「メキシコ国境に壁を築く」「地球温暖化のパリ協定から脱退する」等々、世界は「超危険な大統領」の誕生に警戒と反発を強めている最中に、また、オレゴン州をはじめ、米国各地で「私たちの大統領ではない」(Not My President)というデモが起きて、大統領としての正当性に疑義も存在するなか、安倍首相は、そうした国内外の非難と批判と懸念の嵐からトランプを「警護」する役回りを演ずることになったわけで、これこそ、安倍首相による「駆け込み警護」とは言えまいか。

トランプ政権をどう診るかについてさまざまな論評が出ている。安倍政権に批判的な人々の間にも、「災い転じて福」的な、屈折した「トランプ歓迎」論が見られるのが気になる。これについては、人事が固まり、政権の方向と内容が明確になった段階でしっかり議論する必要があるだろう。安易な楽観論や期待は禁物である。なぜなら、この政権が、世界の権威主義的政権とのゆるやかな「ネットワーク」を形成していく可能性があるからである。とりわけロシアのプーチン政権との親密度が深まり、「奇妙な同盟」に発展する可能性もある。北朝鮮や中国も、フィリピンのドゥテルテ政権も、オバマ政権とは違った対応をとり始めている。トルコのエルドアン政権、そしてヨーロッパ各国の右翼ポピュリズムの政権との連携も危惧される。(
水島朝穂「今週の直言」2016年11月21日

【山中人間話目次】
・トランプの排外主義を打倒するために(7)――内藤正典さん(同志社大学教授・中東政治)のトランプ次期政権の「陰謀論」批判
キョウ とらんぷ5
白い家の前の抗議

Blog「みずき」:「今日の言葉」は平安名純代さん(沖縄タイムス米国特約記者)の同紙掲載の「想い風」から。平安名さんは自身のFBに同コラムについて特に自身の地元の沖縄の問題に焦点を当てて次のようにも書いています。「差別撤廃を目指し多くの人々が長い闘いを繰り返してきたアメリカで、人種差別を公言する人物が米大統領に当選しました。これは民主主義国家を標榜するアメリカの根底を揺らがしかねない変化であり、差別される側の人間にとっては生活(基本的人権)にかかわってくる重要な問題です。一方で、沖縄は自分自身に向けられた「土人」発言には強く反発したものの、こうした米国内の差別に対しては鈍感で、トランプの新政策に期待の声すら高まっています。トランプの当選でアメリカでは今、何が起きているのか。政策や影響を語る前に、まずこの点をきちんと認識しておくことが重要ではないでしょうか」。平安名さんの沖縄においても「米国内の差別に対しては鈍感で、トランプの新政策に期待の声すら高まって」いるという指摘は、いまのニッポンという国と沖縄の置かれている思想的な意味での危うい状況への警鐘ともなっています。平安名さんはそういう思いをこめてこのコラムを書いたのでしょう。

【沖縄ではトランプの新政策に期待の声すら高まっている】
米大統領選の結果が判明して数時間後、眠れぬまま朝を迎えた私はホワイトハウス前へ向かった。小雨が降る中、「人種差別反対」と書いたプラカードを手にした青年がひとり静かにたたずんでいた。「トランプが勝つだろうと思っていた。そう感じていた人は多かった」と話す中東系の青年は、トランプ人気が高まるにつれ、人々は差別を隠そうとしなくなっていったと説明した。民間団体の調査によると、黒人や移民などを狙った選挙直後のヘイトクライムの件数は、2001年の同時テロ直後を上回った。大手メディアはトランプ氏勝利を「驚き」と表現したが、少数派にとっては必ずしもそうではなかった。トランプ氏は当選した翌日、ツイッターで「プロ市民が抗議している。不公平だ」と呟き、約1週間後には、白人至上主義者を自身の右腕役に指名した。民主党重鎮議員のリード氏は11日に発表した声明で「罪のない米国人らが恐怖におびえ涙を流す傍ら、白人至上主義者らが勝利を祝う姿は、私が知っているアメリカではない」と批判。クオモ・ニューヨーク州知事は全米で発生する少数派への攻撃を憂慮し、「NY州は少数派を保護する」との緊急声明を発表した。選挙直後から始まった抗議デモは、全米各地で拡大しているが、ヘイトクライムの数もまた増えている。「アメリカの民主主義はいつから差別を容認するものになったのか。経済格差解消のためなら、われわれの人権を否定してもいいのか」と声を張り上げていた黒人の大学生は、「米国は選挙という民主的手法で民主主義を葬った。特定の人種の人権を否定し、差別を助長する人間を候補者にしたシステムには欠陥がある」と指摘。ある研究者は「アメリカの政策は世界に波及する。トランプ氏の人権軽視の姿勢は世界にも広がるのではないか」と憂慮する。沖縄では、トランプ氏当選が在沖米軍再編計画を見直す契機となるのではないかとの期待が先行するが、米国内のこうした動きを取材していると、もしかしたら沖縄には相当に厳しい局面が待っているのではないかと危惧するようになった。基本的人権や法の独立の尊重など、民主主義の原則を信頼しない新リーダーの誕生は、世界の秩序にどう変化を与えるのか。米国の民主主義は今、根底から揺らいでいるのかもしれない。(
平安名純代 沖縄タイムス「想い風」2016年11月20日

【山中人間話目次】
・トランプの排外主義を打倒するために(6-1)――『全体主義の起源』を読み直す-御苑のベンゴシ 森川文人のブログ
・トランプの排外主義を打倒するために(6-2)――トランプ人事、イスラム敵視・不法移民排除・「水責め」肯定 主要3ポスト指名-高林敏之FB
・トランプの排外主義を打倒するために(6-3)――コービン:トランプは偽の反エリート主義だ-小野昌弘Twitter
・トランプの排外主義を打倒するために(6-4)――「あなたと新政権が米国の多様性を守らないのではないかと懸念している」とキャストがペンス批判-平安名純代FB
・トランプの排外主義を打倒するために(6-5)――トランプが敢えて安倍首相の「個人的要請」に応えた政治的意図-広原盛明のブログ
・トランプの排外主義を打倒するために(6-6)――米大都市、不法移民保護を次々宣言 トランプ氏の方針に反発-AFPBB News
キョウ しばきたい2
伊藤大介さん×神原元さん×野間易通さん

Blog「みずき」:「今日の言葉」も以下の「山中人間話」から。澤藤統一郎さん(弁護士)のしばき隊顧問弁護士・神原元さんへの無批判的視点批判です。私は一貫した「人権」擁護者としての澤藤統一郎さんの認識の再考を強く促がすものです。


【「暴力カルト化したカウンター」という鹿砦社のしばき隊批判】



【山中人間話目次】
・小野昌弘さん(免疫学者・医師、英国在住)のトランプ米大統領誕生に関する秀逸な考察
・保立道久さん(東大名誉教授。歴史学者)と塩見卓也さん(弁護士)のバーニー・サンダース評価に同意しない
・kojitakenの日記の斎藤美奈子の東京新聞「本音のコラム」(2016年11月16日)批判
・辺見庸の「1★9★3★7と現在ー近未来」という講演について
・鹿砦社の「反差別と暴力の正体――暴力カルト化したカウンター しばき隊の実態」の刊行について
キョウ きうちみどり

Blog「みずき」:以下の「山中人間話」の最初の木内みどりさん発言に対する私の感想を「今日の言葉」にしたいと思います。

【山中人間話目次】
・木内みどりさん発言に対する私の感想
・高林敏之さん(西サハラ問題研究室主宰)の内田樹の「従米論」の誤りを突く問題提起と一連の応答
・「暴力」と「直接行動」の違いについて――高橋和巳と埴谷雄高の「直接行動」への共感の声の意味
・toriiyoshikiさん(ETVディレクター、ハーフリタイア)の櫻井よしこを「論客」として持ち上げるメディア批判
・こういう人たちがニッポンのリベラル・左派の思想の崩壊に手を貸している
・岩月浩二さん(弁護士)のエマニュエル・トッド発言のシェアに異議あり
・常岡浩介さんの「なぜ毎日には『人道』の概念がないのだろう?」という毎日新聞批判
・高世仁さんの「30万円のコーヒー代」と私の「50万円の遺言の大金のゆくえ」

【山中人間話】


キョウ さんだーす22 

Blog「みずき」:「トランプ当選の衝撃」と題したさまざまな人たちのさまざまん視点からの論、あるいは情報の紹介はこれで最後にしようと思います。最後に「現代世界の構造的問題を百年単位の時間軸で分析した社会学の泰斗」(朝日新聞)とされるニューヨーク州立大名誉教授の社会学者イマニュエル・ウォーラーステインさんの論を掲げることにします(色平哲郎FB 2016年11月13日より)。しかし、ウォーラーステインさんの論に限ったことではないのですが、また、商業ジャーナリズムに登場する「識者」の論評に多いのですが、いわゆる左派と右派、バーニー・サンダースジェレミー・コービンなどを支持する集団とフランス極右のマリーヌ・ル・ペンなどを支持する集団を十把一絡げにしてポピュリスト集団と同一に論じる姿勢には私は強い違和感を持ちます。大衆を扇動することと大衆に訴えかけることとはもちろん同じことではありません。その違いが商業ジャーナリズムご用達の「識者」には見えていない、とは私の思うところです。

【全く新しいシステムに向かう分岐点に私たちはいる】
(トランプ当選の)背景には多くの人が職業を失い、経済的に苦しんでいるという事情があります。でも、米国はもはや世界の製造業の中心地ではなく、何もない中から雇用は作り出せないし、(苦しむ人を支えるために)社会保障を拡充するには税収を上げる必要がある。今は高揚感が広がっていますが、トランプ氏の支持者も1年後には、「雇用の約束はどうなったのか」と思うのではないのでしょうか(略)実際にTPP(環太平洋経済連携協定)やNAFTA(北米自由貿易協定)など、グローバリゼーションの成果とされていた構造は崩れています。TPPは今回の選挙結果で終わりを迎えるでしょう。さらにこうした協定は、実は開放的ではありません。当事者間では障壁をなくしますが、参加していない国との壁は逆に高くなる。むしろ、保護主義的な仕組みだととらえています(略)中国、韓国、日本の3カ国は言葉はそれぞれ違いますが、バラバラにする力よりも統合する力の方が強いように思える。確かに日本の現政権は、中国や韓国との関係を深めることに熱心には見えません。過去についての謝罪が必要な一方で、自尊心がそれを困難にしているのでしょうが、地政学的に考えると、一つにまとまる方向に動くと私は考えています(略)

現在の近代世界システムは構造的な危機にあります。はっきりしていることは、現行のシステムを今後も長期にわたって続けることはできず、全く新しいシステムに向かう分岐点に私たちはいる、ということです(略)15世紀半ばから17世紀半ばまで、約200年間にわたるシステムの構造的危機の時代がありました。結局、資本主義経済からなる現在の世界システムが作り出されましたが、当時の人がテーブルを囲んで話し合ったとして、1900年代の世界を予測することができたでしょうか。それと同じで、西暦2150年の世界を現在、予想することはできません。搾取がはびこる階層社会的な負の資本主義にもなり得るし、過去に存在しなかったような平等で民主主義的な世界システムができる可能性もある(略)一方で、バタフライ効果という言葉があります。世界のどこかでチョウが羽ばたくと、地球の反対側で気候に影響を与えるという理論です。それと同じで、どんなに小さな行動も未来に影響を与えることができます。私たちはみんな、小さなチョウなのだと考えましょう。つまり、誰もが未来を変える力を持つのです。良い未来になるか、悪い未来になるかは五分五分だと思います。これは楽観的でしょうか、それとも悲観的でしょうか(略)大切なのは、決して諦めないことです。諦めてしまえば、負の未来が勝つでしょう。民主的で平等なシステムを願うならば、どんなに不透明な社会状況が続くとしても、あなたは絶えず、前向きに未来を求め続けなければいけません。(
朝日新聞 2016年11月11日

【山中人間話目次】
・ZEDさんの韓国の作家・金甲洙さんの「韓国100万人デモへの危惧」の論の翻訳
・ドナルド・トランプの発言・暴言・迷言まとめ

キョウ かんこく2
韓国100万人デモ

Blog「みずき」:「今日の言葉」は加藤哲郎さんのアメリカ、韓国、日本の最近の激動を革新・左派の立場から眺望する時局感想というべきものです。いま、私は「革新・左派」という言葉を使いましたが、久しぶりに革新・左派と呼んでいい論説に出会ったという意味です。この「二十年」の間にいわゆる革新・左派の論説は後退に後退を重ねていった。それが加藤さんの言う「二十年遡れば、自衛隊の海外活動も、日米同盟も、象徴天皇制さえ、議論の前提ではなく、公論に付される論題・争点だったのですが……」という感慨の意味でしょう。米右翼政権誕生という事態を受けて日本の「リベラル・左派」ではない「革新・左派」の覚悟が一層問われる事態ともなった、というのは加藤さんの今回の「デジャヴ」の論を受けた私の共感、というよりもある感慨、あるいはある感想というべきものです。

【二十年前まで自衛隊、日米同盟、象徴天皇制は公論に付される論題・争点だった】
アメリカ大統領選挙で、共和党
ドナルド・トランプ候補が勝利し、次期大統領に決まりました。隣国韓国では、朴大統領の統治の背後の闇が暴かれ、100万人の民衆デモ、かつて東アジア安定の基軸といわれた日米韓同盟に、深刻な亀裂です。浅井基文さんのサイトには、中国共産党系『環球時報』の11月11日付社説が紹介されています。曰く、「多くの国々及び地域がトランプの対外政策調整の可能性に対して不安を感じているが、日本及び韓国の焦りはことのほか突出している。安倍晋三と朴槿恵は急いでトランプに電話した。日韓当局が発表した通話内容は極めて似通っていた。すなわち、トランプは両国に対して同盟関係の強化を約束し、両国が米軍駐留費用を増やすことは提起しなかったというものだ。…安倍は電話する以外に、ペルーでのAPEC首脳会議に参加する途次にニューヨークに立ち寄り、トランプと会見しようとしている。安倍は恐らく、トランプに『朝見する』アジアで一番目の指導者となるだろう。本来であれば、日本はアメリカの次期大統領に対してかくも戦々恐々となる必要はない。しかし、中国と深刻に対立しているために、日本はわずかな外交上の独立性もそぎ落としており、アメリカの忠実な鞄持ちになる以外の選択はないかのようだ。現在の東京の外交的自主能力はマニラにも及ばない」と。これは、中国習近平政権の希望的観測でしょうか? 「また反日宣伝」と無視すれば済む、主観的願望でしょうか。

韓国ではいま、朴槿恵大統領の退陣を求める100万人のデモで、政権が揺らいでいます。
同じ中国『環球時報』社説は、「韓国の対米従属的性格もさらに強まっている。経済繁栄及び文化輸出を通じて民族的プライドを打ち立てた国家が今やアメリカの太ももにしがみついている。トランプがアメリカのグローバルな同盟システムを放棄することはあり得ない。なぜならば、それはアメリカが世界を指導する基盤だからだ。しかし、東京とソウルの戦々恐々の様子を見るとき、ワシントンが両国に大変な要求をかませる可能性はある。トランプが強硬に出るならば、日韓の足元はぐらつき、「投降」を選択し、さらに多くの保護費をホワイトハウスの新主人に支払う可能性がある。そのような場合、トランプの「新政」は「でたらめ」ではなくなり、彼の指導者としてのプレスティージには支えが得られることになる。商業的手腕に長け、他人の懐から如何にカネを引き出すかをもっとも心得ている不動産業の大統領が日韓に対してこのように荒療治を行い、彼の大統領としての手柄にしないとも限らない」と。これは、かつて100万人デモを軍の戦車で蹴散らした、中国共産党らしい見方です。確かにトランプは、在韓米軍駐留経費の負担増や対北朝鮮政策の見直し、日韓核保有までを、公言していました。ソウルのデモには、直接反米や反日のスローガンはないようです。しかし、自国の問題は自国民が決めるという民衆の意思表示としては、トランプを選んだアメリカ・ラストベルト地帯の白人貧困層とも似ています。たとえ、その選択が、いっそう厳しい状況に追い込むことになっても。

日本でも、
トランプの発言をまとめたサイトいくつか出来ています。事実認識・歴史認識の誤り、核兵器についての無知、人種差別・ヘイトスピーチ、デマゴギーだらけです。でも、どこかでデジャヴ(既視感)があります。ヒトラー、大本営発表まで遡らずとも、十年前なら、排外ナショナリズムとしてまともに相手にされなかった、この国のある種の言説に似ています。それが、いつのまにやら政権中枢に入り込み、広く蔓延し、メディアの世界では常識になっていったような……。二十年遡れば、自衛隊の海外活動も、日米同盟も、象徴天皇制さえ、議論の前提ではなく、公論に付される論題・争点だったのですが……。米ロ関係も、米中関係も、リセットされそうです。ヨーロッパでは、トランプ型の政治勢力が勢いを増すでしょう。私の情報戦の観点からすれば、ポリティカル ・コレクトネス敗戦であり、ルールなきボーダーレス多国籍エコノミーのもとでの、ボーダーフルな大国ポリティクスの復活です。ようやく道が拓けてきた、核兵器禁止条約COP22パリ協定への、大きな障害です。(加藤哲郎のネチズン・カレッジ 2016.11.15

【山中人間話目次】
・澤藤統一郎さん(弁護士)の最高裁の受信料契約裁判を前にした理にかなった放送法第64条1項「受信契約及び受信料」の読み方
・ZEDさん(「Super Games Work Shop Entertainment」主宰者)の「韓国100万人デモ」への危惧
・米国大統領選 トランプ当選の衝撃(20)――高林敏之さん(西サハラ問題研究室 主宰)のトランプ次期大統領直属スタッフメンバーに関する重要な指摘
・米国大統領選 トランプ当選の衝撃(21)――トランプ政権と新しい「壁」の時代 水島朝穂「今週の直言」 2016年11月14日
・米国大統領選 トランプ当選の衝撃(22)――トランプがスティーブ・バンノンを要職に起用する決定を白人至上主義の極右政党リーダーらが歓迎している
・米国大統領選 トランプ当選の衝撃(23)――新自由主義的価値観からのトランプかヒラリーかという選択肢しかない主張。しかし、これが当節の主流派の主張
キョウ でんつう

Blog「みずき」:「今日の言葉」は朝日新聞の高橋純子記者の電通批判記事(おそらくこういう形でしか電通批判は書けないのでしょう)。高橋さんは現在は同紙の政治部次長をつとめる腕利きの記者です。売れっ子記者と言ってもよいかもしれません。なかなか読ませる記事を書きます。今回も「女子力」のある記事を書いて読ませます。なお、ひとこと。高橋記者は男性が使う「女子力」という言葉は嫌いなようですが、それを知って私はわざと尊敬半分、批判気分半分という意味で「女子力」という言葉を使っています。また、「批判気分」と書いているのは、批判するまでには私は彼女の思想の正体をつかみきれていませんが、なんとなくその思想の中途半端さが気にかかる、という程度の意味です。しかし、総体として私は高橋記者を評価しています。


【男たちよ。女を「女子力」という言葉でくくるな】
会社を出て家路につく。10月某日、つくづくツイてない一日だったとため息をつく。イヤミな同僚を思い出して脳内で毒づく。それにしても今日はやたら人が目につく。何事か。いま何時だ? 21時58分。ああ。ここは電通本社から駅までの道。新入社員の過労自殺、労災認定、22時の一斉消灯、本社出口の混雑。自死した彼女がこの光景を見たら、どう思うだろう。たぶん、悔しいよね。他人だけど、私も悔しいし。奥歯をかみしめタッタカ歩く。冷蔵庫にはホウレン草、子どもの夜食を作らねばならない。

すさまじい労働時間もさることながら、過労自殺の報に触れ胸がふさがれたのは何より「女子力」という言葉だ。「男性上司から女子力がないと言われる」。彼女はツイッターに、こんな書き込みをしていたという。女子力。女性が自分で使っている分には、ある種の諧謔を含んで自身を鼓舞する言葉となるが、男性に使われると物差しとなり、上司に使われると途方もない抑圧となる。パワハラとかセクハラとか、分かった気にはなりたくないから名札はつけない。ただただ、そう言われた時の、彼女の衝撃と絶望を思う。エントリーしていない試合のリングにいつの間にか上げられ、勝手に期待されたり批判されたりする。若い女性の生きづらさは、働きながら子どもを育てている人、とりわけ母親への抑圧とどこか似ていて、相互に絡み合っていると感じる。働きながら子育てして立派ね。でもやっぱり子どもにはお母さんがたっぷり愛情を注がないとね――。「あなたの育て方ひとつでお子さんの未来は変わります」。言う方は「可能性は無限大」ぐらいのつもりかもしれないが、言われた方にとっては脅しに近い響きを持つ。自分では頑張っているつもりでも、正しいのか間違っているのかわからない。「こうした方がいい」「それじゃだめだ」という人は多くいるが、「それでいいんだよ」と言ってくれる人は驚くほど少ない。どこまでいっても正解が見えず、出口はどこだと途方に暮れる感じ。そこに政治が、追い込みをかけてくる。

自民党が来年の通常国会に提出を予定する「家庭教育支援法案」(仮称)は、子に「生活のために必要な習慣を身に付けさせる」「国家及び社会の形成者として必要な資質が備わるようにする」などを基本理念におく。2007年には、政府の教育再生会議の中で一時、子育て提言を出す動きもあった。「保護者は子守唄を歌い、おっぱいをあげ、赤ちゃんの瞳をのぞく」安倍政権は女性が輝く社会、一億総活躍社会をうたう。施策はずらりと並び、数値目標は高らかに掲げられている。だけど輝くには、この社会の酸素はあまりに薄い。酸素濃度をあげ、誰もが息をしやすい社会をつくる、そのために政治はあるのではないか――しまった。ホウレン草がしなびている。根切りして水に差して、復活を待つ。(
高橋純子 朝日新聞 2016年11月13日

【山中人間話目次】
・米国大統領選 トランプ当選の衝撃(19)――総右傾化したニッポン社会。鬼原悟さん(「アリの一言」主宰者)の日米軍事同盟をタブー視するニッポンのメディア、「学者」、「識者」、政党の総批判
・米極右政権始動。凍りつく。また、別の冬の時代が始まろうとしている
キョウ かんこく
韓国100万人大規模デモ

Blog「みずき」:「今日の言葉」は浅井基文さんのブログから浅井さんの日本語訳要約による中国・環球時報の社説からとりました。要約のさらなる要約です。浅井さんは環球時報社説(9日付)を紹介するにあたって次のように述べています。9日付けの社説の「中心的な論点は、アウトサイダーであるトランプの当選は米国政治を長年にわたって支配してきた既成権力(エスタブリッシュメント)に対する痛撃である」というもの。「アウトサイダーであるトランプと既成権力との力関係如何がトランプ政権の方向性を規定していくだろうという判断において、9日付及び10日付の環球時報社説の判断と私の認識は基本的に一致しています」。中国共産党の機関紙でも「エスタブリッシュメント」という言葉がキーワードとなっています。しかし、昨日も五十嵐仁さんの論を批判しましたが、得票数ではヒラリーが勝っているとして米大統領選の結果は「エスタブリッシュメントに対する痛撃」という米大統領選の本質的な事態を見ようとしない日本共産党系の論客は少なくありません。いま陥っている同党の悲劇を私は思わずにはいられません。

【アメリカ政治の核心的要素がぐらぐらと揺るがされている】
前回のクリントンは彼女が個人的に敗北したものだったが、今回の彼女はアメリカの伝統的なエスタブリッシュメントの政治理念及び権威を代表して敗北した。トランプが勝利したのはクリントンに対してだけではなく、共和党内部から全米に至る彼を阻止しようとした膨大なエスタブリッシュメント全体を打ち負かしたのだ。人によってはこれを「政治的造反」あるいは、アメリカにおける「文化大革命」だと言うが、これらの言い方には誇張があるにせよ、アメリカにおける現在の思想政治状況の一面を描いてはいる。トランプという名前はつとに全世界にとどろいているが、アメリカも世界も彼がアメリカの大統領になることに対する精神的準備を整えるにはほど遠い状態だ。彼の勝利は精神的な強烈パンチを与え、彼の当選は従来の枠組みを突き破り、根底を揺るがすというショックをもたらしたのであって、アメリカ政治の核心的要素がぐらぐらと揺るがされているのだ。トランプは最初からアメリカの主流メディア及びエスタブリッシュメントに軽蔑され、ほら吹き、異端の邪説の鼓吹者、何をしでかすか分からない人物と決めつけられてきた。このような人物が最終的に大統領になったということは、アメリカのもともとの政治秩序そのものに問題があるということの証明だ。

アメリカにおける民主共和両党の主流の価値観は時代からずれている。アメリカのエスタブリッシュメント・メディアは報道における中立及び客観性という原則から深刻に乖離し、有権者を恣意的にミスリードし、その世論調査の大部分はウソが混じり込んでいる。この国家の政治上の全体としての判断力も重大な偏りがあり、アメリカのエスタブリッシュメント全体が中流下流の人々と対立する側に立つに至っている。(略)アメリカはしょせんエスタブリッシュメントが牛耳る国家であり、全国の実権を握っている中高レベルの人々のほとんどはトランプに反対であり、したがってトランプにとって絶望的な牽制力を形成している。世界各地のアメリカの同盟友好国もアメリカの言いなりではなく、むしろワシントンに圧力をかけ、「
孤立主義」に返ろうとするトランプの考えの実現を阻もうとするだろう。今回の選挙はアメリカ社会にかつてない分裂を作りだした。トランプに投票しなかった多くの人々はトランプを真底から「憎んで」いるが、このような「憎しみ」はアメリカ選挙史上においてまれに見ることだ。今回の選挙は憎しみが大いに愛を上回った選挙であり、多くのアメリカ人は長期にわたり、感情的にトランプが彼らの大統領であることを受け入れられないだろうから、選挙後のアメリカが再度団結することは極めて困難だろう。(環球時報社説 2016年11月9日

【山中人間話目次】
・政府が春闘に介入――その異様な光景にモノ言わない労働組合、連合、メディア。その中で光る朝日新聞「経済気象台」記者の見方
・いま、韓国では――朴大統領弾劾の100万に規模の大デモと日本のリベラルの3人の論者の見方
・いま、アメリカでは――平安名純代さん(沖縄タイムス米国特約記者)のアメリカの若者のトランプ弾劾集会の取材
キョウ いがらし

Blog「みずき」:「今日の言葉」は私のニッポンのリベラル・左派論客批判です。ここでは元法政大学教授の五十嵐仁さんの米大統領選評におけるアメリカ社会の深層に底流しているエスタブリッシュメント政治への民衆の怨嗟への無理解、ヒラリー・クリントン批判の視点の皆無を問題にしています。
 
【それはいまの日本共産党の理論水準に呼応している】

ここにも右傾化したニッポンのリベラル・左派の壊滅的な理論状況の一端がよく現われています(それは、いまの日本共産党の理論水準に呼応しているでしょう)。下記に掲げる 五十嵐仁さん(元法政大学教授)の論は第1に今回の米大統領選におけるトランプの勝利を表層的な得票数の多寡の論理でしか捉えることができていません。五十嵐さんは次のように言います。「ここで重要な事実を忘れてはなりません。それは、今回の大統領選挙でトランプ候補の票がクリントン候補の票よりも少な(か)ったという事実です。(略)つまり、アメリカ国民はトランプではなくクリントンを選んでいたのです」、と。五十嵐さんの分析では、トランプの当選は、ここまで貧困と格差の拡大させてきたこれまでのエスタブリッシュメント政治への民衆の怨嗟が爆発した結果という視点、「ヒラリー型の新自由主義路線の継続はもうノー」といアメリカの有権者の現状に対するフラストレーションが爆発した結果という視点は皆無です。いまのリベラル・左派の社会分析力の脆弱性がここには如実に示されています。

第2に五十嵐さんの論の問題性は、その表層的な得票数の多寡論を根拠に多数派はクリントン支持層だったとした上で「アメリカ国民における多数派が実はリベラルな人々であった」、とヒラリー=リベラル論を、自身が左派に属する研究者であるという矜持すらもなく、恥ずかしげもなく展開していることです。ここにももちろん、ヒラリー・クリントンは
イスラエルを全面擁護し、中東での軍事介入を正当化し、リビアのカッザーフィーの悲惨な死をあざ笑った米民主党きってのタカ派 であったという視点は皆無です。もちろん、左派が株価を云々するナンセンスという問題もあります。いまのニッポンのリベラル・左派と称される論客の理論的レベルはここまで凋落しているのです。(Blog「みずき」 2016年11月12日

参考:
米大統領選挙で負けているのに勝ってしまったトランプ候補- 五十嵐仁の転成仁語 2016年11月12日

『アメリカ大統領選挙の衝撃は、その後も世界を震撼させているようです。株式市場での「トランプ・ショック」はそれほどでもなかったようですが、国際政治に対する衝撃は今も続いています。このような結果に直面して、「あのような差別的で過激な発言を繰り返していたトランプ候補が、何故大統領に当選できたのか」という疑問が沸いてきます。様々な形で、その背景や原因が論じられていますが、ここで重要な事実を忘れてはなりません。それは、今回の大統領選挙でトランプ候補の票がクリントン候補の票よりも少な(か)ったという事実です。』

【山中人間話目次】
・小倉利丸さん(富山大学名誉教授。ピープルズ・プラン研究所共同代表)の「左派は国民国家の統治とは別な何かを創造できるか」
・米国大統領選 トランプ当選の衝撃(15)――オバマ政権が公式にTPP断念(岩月浩二FBより)。
・米国大統領選 トランプ当選の衝撃(16)――「衝撃」の思いは「沖縄」へ連鎖する。平安名純代さんの沖縄タイムス記事
・米国大統領選 トランプ当選の衝撃(17)――大統領就任後のトランプ政治の動向を考える上で大変参考になる田中宇さんの「読み」
キョウ とらんぷせんぷう

Blog「みずき」:今日の言葉は岩月浩二弁護士のトランプ大統領の誕生によってすでに頓挫、座礁することの明らかなTPP法案をそれでも強行採決してまで成立させようとしている愚鈍で愛国心のかけらもない総理を押し立て、進んでよりいっそう強化された植民地としての隷属に組み込まれてようとしているニッポンという国批判。さらに「グローバリズムに対しておバカで善意な日本国民」批判。「トランプ当選」という衝撃はこのニッポンという国では劇的なまでに無化され、さらにピエロ化されていくという「ウソのようでばかげた話であるが、ウソではない本当の話」としての説話的批判の紹介ということになるでしょう。ニッポンという国は進んで植民地化されることを望む理解しがたい「不思議の国のアリス」の国というわけです。

【愛国心のかけらもない総理を押し立てて過酷な支配を受け入れていく国】
安倍は、17日の訪米でトランプ氏に対して、自由貿易の重要性を説くそうな。
政府 自由貿易重視を トランプ新政権に働きかけへ (NHK 11月11日 4時35分)これに対応するかのように、今朝の中日新聞の1面には、トランプの外交アドバイザーであるマイケル・フリン米国防情報局元局長が10月中旬に来日して与野党国会幹部ら日本政界関係者との会談を重ねたときの言葉が紹介されている。「TPPが良いとか、悪いとかではない。トランプ氏は貿易交渉は二国間でやるべきで、多国間協定はだめだと言っている」(長島昭久民進党議員との会談)トランプは真っ当なことにアメリカ・ファーストである。多国間協定では、米国の利益が阻害されると考えて、米国の利益が阻害されない二国間ならよいと考えている。そんなトランプが待ち構える所に、日米並行二国間協議の成果も含むTPPが圧倒的多数で承認されたことを手土産に安倍は訪米する訳だ。日米FTAこそ、TPPの真の狙いだと言う趣旨のことを2013年のブログに書いた。米国からTPPを見るために、米国がFTA(自由貿易協定)を結んでいない国のGDPをグラフ化した。(略)トランプ大統領は、自由貿易協定が結ばれていない日本市場がTPP構成国の中で圧倒的な割合を占めることはよくご存じだ。トランプ大統領は、TPPは米国の雇用破壊を招くから受け入れない。雇用破壊を招かず、米国に利益になるのであれば、積極的に推進する。その際、思うような結果が出ていない米韓FTAの二の舞は践むまいと考えている。誰が大統領になろうと、自国の防衛には米国頼みしかないと考えている日本政府である。TPPではあり得なかったような、どのような不平等な条件でものむだろう。TPPに対する大統領授権法であるTPAが日米FTAまで包含するのかは、全く知らないが、早くすれば11月17日にも、我々は「日米FTA大筋合意」の朗報が聞けるかもしれぬ。

トランプ「アメリカ・ファースト.米軍に駐留して欲しければ、もっとカネを出せ.」安倍「オフコース。イエス。サー」トランプ「ISD条項で米国企業は日本政府を訴えることができるが,日本企業は米国政府を訴えることはできないことにする.」安倍「アメリカ・ファースト。イエス。サー」トランプ「‥‥‥」安倍「イエス。サー」トランプ「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」安倍「イエス。サー」

何しろ、我が国は、目標が雲散霧消したことがわかっていても、目標に向かって、まっしぐらに国会承認をするほど狂ったおバカな国であるので、トランプ・ショックで、どのような不平等な条約でも約束できるに違いない。米国民がヒラリーを拒んだことで、
グローバリズムは大きな曲がり角を曲がった。但し、進んで植民地にしてくれと懇願するような国を植民地化することを、米国民も拒みはしない。世界にとって幸いであるグローバリズムの終焉の過程を我々は目撃している。同時に我々自身は、よりいっそう強化された植民地としての隷属に組み込まれていく。グローバリズムに対しておバカで善意な日本国民は、愛国心のかけらもない総理を押し立てて過酷な支配を受け入れていくという訳だ。何だかウソのようでばかげた話であるが、ウソではない本当の話である。(岩月浩二 街の弁護士日記 2016年11月11日

【山中人間話目次】
・米国大統領選 トランプ当選の衝撃(10)――トランプを「ファシスト」と弾劾するホワイトハウス前の小さなグループの抵抗者たち
・米国大統領選 トランプ当選の衝撃(11)――岩月浩二さん(弁護士)と半澤健市さん(元金融機関勤務)の眼の力点
・米国大統領選 トランプ当選の衝撃(12)――リベラル・左派のマイケル・ムーアの「一夜明けた朝のToDoリスト」の拡散の意味
・米国大統領選 トランプ当選の衝撃(13)――猿田佐世さん(新外交イニシアティブ事務局長。弁護士)の「常識」の眼
・米国大統領選 トランプ当選の衝撃(14)――神保哲生さんと宮台真司さんの米国と日本のメディア批判
キョウ うちだじゅ2

Blog「みずき」:今日の言葉も「トランプ当選」の衝撃特集の続きということになります。その中で今日の言葉はいわゆるリベラル・左派陣営の「トランプ当選」評価に関わって私の内田樹批判を取り上げることにしました。別稿として醍醐聰さんの「そもそも言論の自由とはなにか」、「象徴に過ぎない人物が主権者を統合するとはいかなる意味なのか」という問題提起も掲載しました。


【内田樹を改めて批判する】
内田樹のツイッターはいま低級、愚鈍、愚昧の者どもが群がる巣窟になっている感があります(むろん、内田樹がある種のツイートを盛んにリツイートしてそうなっているのですが)。たとえば内田はDr. RawheaDという人の「とりあえず、選挙結果も出て、どう言う人がトランプに投票したのがはっきりしたのだから「負け組の反乱」とか「白人低所得層」とか言うのはやめてほしい。トランプが50%以上の支持を集めたのは●所得が5万ドル以上の層●年齢が45歳以上の層●男●白人」というツイートを自らのツイッターになんの批判的コメントもなく(ということは、肯定的にということでしょう)リツイートしています。が、メディアが「負け組の反乱」とか「白人低所得層」がトランプを支持していると報道しているのは、これまでのトランプブームを支えてきたのは「主に白人で、学歴は高卒以下、急速に変化する米国社会で自分たちが『差別』されるようになったことに怒りを抱えている人たち」という事実に基づいています。以下のような記事がそのことを証明しています。
 
『米大統領選の共和党指名候補争いでトップを走る不動産王ドナルド・トランプ氏を最も熱狂的に応援する支持者らの層は、主に白人で、学歴は高卒以下、急速に変化する米国社会で自分たちが「差別」されるようになったことに怒りを抱えている人たちだ。(略)出口調査の結果を分析している専門家たちによれば、トランプ氏の中心的な支持者は、自分たちに有利な経済政策を求める人々だという。しばしば最大の支持層を形成しているのは、高卒者だ。北東部ニューハンプシャー州の予備選では、大学教育を受けていない有権者の47%がトランプ氏に投票。南部になるとこの割合はさらに上昇し、ミシシッピ州では56%に上った。(略)またトランプ氏支持者には、可動式のトレーラーハウスで暮らす人が多い。米紙ニューヨーク・タイムズの分析結果によると、ある郡でのトレーラーハウス暮らしの人の割合と、トランプ氏に対する支持に相関関係があることが分かった。農業や建設業、貿易業、製造業などの「オールドエコノミー」の雇用が多い地域ほど、トランプ氏の支持率が高まることも分かっている。失業者が多い地域でも同じことが言える。経済的な地位を失いつつあるとの危機感は、3月15日にオハイオ(Ohio)やフロリダ(Florida)など5州で行われた予備選の出口調査でも顕著に示された。有権者の5人に1人が家計が圧迫されていると感じ、そのうちの約半数がトランプ氏に投票していた。』(
AFPBB News 2016年03月28日

内田樹および内田樹のシンパは徒に事実を捻じ曲げてトランプ当選の背景にある「負け組」や「白人低所得層」の「反乱」という側面を否定することに躍起になっています。どういう理由によってか。ふたつの理由が考えられます。ひとつはトランプをあくまでも悪者にしたてた方がこれまで相対的民主主義者としてヒラリー・クリントンを推してきた自分たちの主張と整合性が取れるということがあるでしょう。だから、トランプをあくまでも悪漢に見立てた方が都合がよい。ふたつ目に米大統領選の深部に構造的なものとして伏在していた「民衆革命」の要素を無意識的であるにせよ否定したいからでしょう。ここに彼らのプチブルジョア性(反労働者性)が明瞭に現われています。彼らは民衆の怒りを担おうとする人たちではありえないのです。内田樹は、いまの
社民政党化した共産党(志位・小池・(不破)体制)とともにニッポンのリベラル・左派の「右傾化」をここまで進めてきた首謀者のひとりとみなしてよいでしょう。彼らの罪は大きなものがある、と私は思っています。(東本高志FB 2016年11月10日

【山中人間話目次】
・内田樹を改めて批判する――トランプ評価に関して
・醍醐聰さんの「そもそも言論の自由とはなにか」、「象徴に過ぎない人物が主権者を統合するとはいかなる意味なのか」という問題提起
・田中宇さんと宮城康博さんの「トランプ当選」に関する独自の視点
・トランプ勝利のリスクをヘッジしていなかった安倍政権の無能さが改めて問われる事態――オバマ大統領任期中のTPP承認 極めて厳しい情勢 NHKニュース
キョウ とらんぷ4
全米各地でトランプ氏への抗議デモ

Blog「みずき」:米国大統領選での「トランプ当選」の衝撃と波紋は日本でもとても大きく、さまざまな論者がさまざまな立場からコメント、あるいは論説を出していますので、メディアの社説や論評以外の論の総体の大概を把握することができるように「今日の山中人間話」として特集することにしました。この特集はまだまだ続く可能性があります。

【山中人間話目次】
・米国大統領選 トランプ当選の衝撃(1)――アムネスティ・緊急コメント発表
・米国大統領選 トランプ当選の衝撃(2)――トランプ氏を勝たせた「嘆かわしい人々」 - ジェラルド・F・サイブ(WSJワシントン支局長)
・米国大統領選 トランプ当選の衝撃(3)――アメリカ大統領選挙・・・アメリカ99%の叫びとして捉える-森川文人のブログ
・米国大統領選 トランプ当選の衝撃(4)――アメリカにトランプ極右政権誕生-徳岡宏一朗のブログ 
・米国大統領選 トランプ当選の衝撃(5)――敗北したのは、アメリカのエスタブリッシュメントだ。-澤藤統一郎の憲法日記
・米国大統領選 トランプ当選の衝撃(6)――だんだんとニッポンの(私たちの)問題となっていく。-kojitakenの日記
・米国大統領選 トランプ当選の衝撃(7)――サンダースの声明(日本語訳)
・米国大統領選 トランプ当選の衝撃(8)――高林敏之さん(西サハラ問題研究室主宰)の説得力のある米大統領選評
・米国大統領選 トランプ当選の衝撃(9)――浅井基文さん(元外交官、政治学者)の米国、中国、朝鮮問題の外交の専門家らしい視点

【山中人間話】




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キョウ とらんぷ3

Blog「みずき」:アメリカ大統領選におけるトランプ勝利はアメリカ国民にとっては悲劇だが、「日本にとってはむしろいい機会ではないか」というtoriiyoshikiさん(ETVディレクター・ハーフリタイア)流の見方。私はこのtoriiyoshikiさんの見方はとても合理的な政治見通しで、かつ、センスのある見方だと思います。ただ、toriiyoshikiさん自身も「より悪い方向に変わることへの一定の懸念を担保しつつ」と述べていますが、私は「より悪い方向に変わる」可能性の方が強いと思っています。安倍政権はトランプにも増して愚鈍で反知性的な大局観のない政策を特徴とするので、安倍政権が続く限りは「よい方向」には決して変わらないだろうというのが私の見方です。悪いものをさらに2乗して悪いものに変えていく。これが安倍政権のよって立つ愚鈍の特徴だというのが私の根底的な安倍政権不信であり、安倍政権評価です。「日本にとってはむしろいい機会」にするためには安倍政権打倒が先決だろうというのが私の見方です。

【対米従属一辺倒のポチ外交は続けようにも続けられない事態の到来】 今回、トランプに賭けた、いわゆる“負け組”アメリカ国民の期待は早晩裏切られることになるだろう。この大統領選挙は、超大国アメリカの没落に拍車をかける決定的な契機になるのではないか。しかし、ぼくは…以前も書いたように…日本にとってはむしろいい機会ではないかと考えている。つまり、トランプ大統領の誕生という予期せぬ事態を前に、安倍政権が推し進めてきた一連の亡国政策は頓挫、少なくとも大きな見直しを迫られることになるからだ。簡単に言えば、忠実な「アメリカのポチ」であったはずの安倍政権は御主人様の心変わりによって捨て犬になっちゃったのね。第一に、TPPはこのまま雲散霧消してしまう可能性が強いこと。強行採決までして無理押ししようとしたのは何だったんだ…という憤りはひとまず措くとして、TPPが消滅すれば、これが日本にとって大きな「国益」であることは間違いない。ぼくは、このことだけでもトランプの当選を祝いたいくらいだ。第二は、予想される円高株安によってアベノミクスの破綻が誰の目にも明らかになるだろうこと。この愚劣な経済政策が日本の「国益」にどれだけ大きな穴を開けたかが明るみに出るのは恐ろしくもあるが、破綻した政策をいつまでも続けて玉砕するよりマシだろう。立ち止まって抜本的に見直すいい機会だ。もう取り返しがつかないところまで来ていたらどうしよう…と恐ろしくもあるが。第三に安全保障政策の見直しを余儀なくされることである。「世界の警察官」の座をアメリカ自ら投げ出してしまうのだから、対米従属一辺倒のポチ外交は続けようにも続けられない。ヨーロッパ諸国はもとより、中国、ロシア、さらにはフィリピン、韓国にも劣る「選択肢なき外交」を見直すチャンスである。日本という国は外圧なくしては変われない「情けない国」らしいから、トランプの当選が日本変革のトランプ(切り札)になることを期待したい。より悪い方向に変わることへの一定の懸念を担保しつつ…。(toriiyoshiki Twitter 2016年11月9日

【山中人間話目次】
・ZEDさん(「Super Games Work Shop Entertainment」主宰者)のハンギョレ紙批判。ないしは浅井基文さんへの一言アドバイス
・いわゆるリベラル・左派の「トランプ勝利」の見方とニッポンのメディア、政党に批判的な論者たちの「トランプ勝利」の見方
・「トランプ勝利」に関しての森川文人さん(弁護士)と私との応答
・アメリカという国のある断面――「トランプ支持派捜査官」のガス抜きか:FBI「クリントン再捜査」の裏面
・「『土人』は植民地主義的」という米ブラウン大名誉教授・ラブソン氏と「差別だと断じることは到底できない」という鶴保庸介沖縄北方担当相の彼我発言の差異
・「米兵と結婚した4万5000人の日本人花嫁たちは、その後どんな結末を辿ったか? 娘が調査した「私の母の真実」」という記事
キョウ さんだーす33
アメリカ社会党から大統領に立候補したユージン・デブスの
写真の前に座るサンダース

Blog「みずき」:「今日の言葉」は私の仮に自民党・安倍政権打倒に成功したとしても、その先の政治が第2自民党的なものでしかない政治に猪野さんはなにを期待しようというのでしょう? 私は猪野亨さんの論を肯うことはできません」という論です。私は広原盛明さん(京都府立大学名誉教授。元京都市長選候補者)の「『野党共闘ありき』ではない、安倍政権の暴走を阻止する政治勢力の形成が目標なのだ、蓮舫・野田執行部の3原則、『「相互推薦なし、政策協定なし、横並びの街頭演説なし』では、野党共闘は早晩消滅するだろう」という論の方を支持します。

【数合わせの論理でしかない「野党共闘」の論理】
民進 綱領・政策が違うから共産とは一緒にはできない? 目指すは争点を絞った選挙協力 民進党内の方がよほどバラバラでしょ」という猪野亨さん(弁護士)の論は要約すれば「来年早々にもあるのではないかと言われている衆議院総選挙ですが、安倍氏は何度も解散、総選挙を繰り返すことによって野党の弱体化を狙っています。(略)問題なのは受けて立つ野党側です。野党支持者の願いは候補の一本化です。野党候補の共倒れほど、虚しいものはありません。野党間の選挙協力が問われているということです。『4野党共闘ならば47選挙区で当落逆転 与党326→279 全野党共闘ならば84選挙区で逆転…』(産経新聞2016年11月7日)」できるというものです。

しかし、猪野さん(弁護士)の「野党共闘」待望論の論理は端的に言って「共闘」の中身を無視した単なる数合わせの論理でしかないでしょう。政治目標の無原則的な単なる数合わせのみの結集が成功した例を私は知りません。逆に失敗の例はたくさんの事例があります。近いところでは小沢一郎が嘉田由紀子人気という正体不明の数の力のみを頼んで野合した
嘉田新党(日本未来の党)の自壊の例がそのひとつでしょう。

「野党共闘」のあり方については広原盛明さん(京都府立大学名誉教授。元京都市長選候補者)の「『野党共闘ありき』ではない、安倍政権の暴走を阻止する政治勢力の形成が目標なのだ、蓮舫・野田執行部の3原則、『「相互推薦なし、政策協定なし、横並びの街頭演説なし』では、野党共闘は早晩消滅するだろう」という論の方に私は説得力を感じます。広原さんは左記のブログ記事の
前記事では民進党と自由党の野田・小沢会談の「野田氏は自由、社民両党との調整を急ぎ、その後に共産党とも協議する考えを示した」(朝日新聞 2016年11月3日)という合意について「『共産後回し=共産抜き』の選挙協力体制の構築」と喝破し、「野田幹事長一流の野党共闘分断路線が見えてきた、『共産抜き』の野党共闘が狙いなのだ」という警鐘も鳴らしています。

反共・労使協調(御用組合)・原発推進の連合の支持を仰ぐ民進党となんらの政策協定も結ばないままの「野党共闘」では仮にその「野党共闘」が成功したとしても、そこに「反共・労使協調路線・原発推進」の政策が持ち込まれることになるのは確実です。そこになんらの政治革新の展望を見出すことはできません。仮に自民党・安倍政権打倒に成功したとしても、その先の政治が第2自民党的なもの(民主党政権時代の政治がそうでした)でしかない政治に猪野さんはなにを期待しようというのでしょう? 私は猪野亨さんの論を肯うことはできません。(Blog「みずき」 2016年11月8日)

【山中人間話目次】
・澤藤統一郎さん(弁護士)の樋口発言論評について
・翁長県政礼賛一色だった沖縄の地元紙にも重要な変化がいま起きはじめているようです
・安倍政権の南スーダン・PKO自衛隊派遣の駆けつけ警護付与の閣議決定に対する澤藤統一郎さん(弁護士)及び澤藤さんの紹介する法律家6団体の批判と三浦英之さん(朝日新聞アフリカ特派員)の連ツイ
・「捨て子」の時代と現在の労働運動、政治運動の「貧困」
・「泣いても笑っても次のアメリカ大統領があの人に決まるまで、あとわずか」(金平茂紀報道キャスター)とはどういうことか?
・イラクのクルド地域政府当局に拘束されていた常岡浩介の解放について
・サンダースが展望するアメリカの未来――サンダースの先駆者たち(色平哲郎さんのFBから)
キョウ ていていぴー

Blog「みずき」:先頃、国会のTPP特別委員会で参考人としてTPP反対の論陣を張って来たばかりの岩月浩二弁護士(TPP交渉差止・違憲訴訟の会・弁護団共同代表)のさらなる怒りの論陣。岩月弁護士の安倍政権弾劾の要点は次のとおりです。「戦後の憲法的慣行とされる不文律を次々と踏みにじって、安倍政権はここまで進んできた。ついに、与党である自民党の国会議員、そして衆議院議長すら無視をして直接、国会を支配しようとしている。三権分立の破壊であり、総理大臣への権力集中であり、つまるところ独裁である。ここから、自民党改憲草案の緊急事態条項が想定する立法権限の総理大臣に対する付与まで、どれほどの間隙があろうか。安倍政権が模範とするらしい、ナチスの全権委任法まで、幾ばくの隔たりがあろう。今回の事態を許すことは、自ら民主主義を葬ることに加担することになる」。

【「私は立法府の長であります」というのは安倍総理の本心であった】
11月4日、TPP特別委員会において、TPP承認案及び関連法が強行採決された。ひたすら数の力を頼みにした中身も知らぬ議員による強行採決が民主主義の名に値しないことはいうまでもない。しかし、今回の強行採決の最大の問題は、採決以前の手続きにおいて、行政府である内閣(官邸)が、国権の最高機関である国会の運営に介入して、支配してしまったことにある。三権分立すら蹂躙する重大な問題である。(略)
本会議中の委員会招致には議長の許可が必要である。そんなことをTPP特委の塩谷委員長が知らないはずがない。知っていて、TPP特委の開催を、議運にも知らせず、議長にも知らせず、自民党の国対委員長にも知らせなかった。したがって、毎日新聞の「不手際」との見出しは、生ぬるい。11月4日午後1時には本会議が予定されていた。当然ながら、TPP特別委員会の招集を知らされていない議長の許可はない。したがって、TPP特別委員会の招集は、衆議院規則違反だという主張は当然だ。(略)しかし、今回の強行採決は、衆議院規則違反かどうかという以上に重大な問題を孕んでいる。TPP特委の招集は、塩谷委員長の独断で行われたはずもない。安倍総理の指示によって行われたとしか考えようがない。内閣が国会議長の頭越しに国会の運営を支配する。国民の代表であり、国権の最高機関である国会が総理大臣の意のままに操られている。「私は立法府の長であります」というのは、言い間違いではなく、安倍総理の本心であった。要するにこれは、三権分立の否定であり、行政府による国会の蹂躙である。

仮に衆議院規則に明白に違反しなくても、歴代の政権は、このような国会を頭越しに支配するような横暴な振る舞いを見せることはなかった。国権の最高機関の運営に内閣が介入しない。これは不文律だ。安倍政権は、不文律を犯すことによって、この国の姿を変えてきた。NHK経営委員の国会同意人事は、その公共放送の性格上、全会一致が不文律だったが、これを蹂躙した。内閣法制局長官人事に対する不介入は歴代政権の不文律だったが、安倍政権はこれも蹂躙して、憲法解釈変更を容認させ、集団的自衛権行使を認める安保法へと突き進んだ。日銀総裁の国会同意人事も全会一致が不文律だったが、これも蹂躙した。戦後の憲法的慣行とされる不文律を次々と踏みにじって、安倍政権はここまで進んできた。ついに、与党である自民党の国会議員、そして衆議院議長すら無視をして直接、国会を支配しようとしている。三権分立の破壊であり、総理大臣への権力集中であり、つまるところ独裁である。ここから、自民党改憲草案の緊急事態条項が想定する立法権限の総理大臣に対する付与まで、どれほどの間隙があろうか。安倍政権が模範とするらしい、ナチスの全権委任法まで、幾ばくの隔たりがあろう。今回の事態を許すことは、自ら民主主義を葬ることに加担することになる。(
岩月浩二「街の弁護士日記」2016年11月6日

【山中人間話目次】
・マルクスからルーゲへの手紙――<上>なる天皇と皇室を特別視するリベラル・左派への172年前の警鐘
・憲法上重大な疑義のある「私的行事としての神道形式の葬儀」への国費支出をなぜリベラル・左派は追及しないのか
・仲宗根勇さん(元裁判官)の山城博治・平和運動センター議長逮捕勾留理由開示法廷傍聴記
・平安名純代さん(沖縄タイムス米特約記者)の米ハーバード大学で開催されたドキュメンタリー映画「沖縄 うりずんの雨」の上映会を取材して
キョウ てんのうせい6

Blog「みずき」:内野光子さん(歌人)は2013年度の文化功労者を受賞した歌人の岡野弘彦についても『天皇の短歌は何を語るのか』の中で「たしかに<国家への貢献度>は高いが、過去の受章者たちに比べて歌人として、あるいは研究者として過去の業績にどれほどの説得力があるかが問われることになろう」と評しています。その上での今回の岡井隆の文化功労者受賞評です。内野さんの危惧する歌壇の右傾化の問題についてはこちらの論にさらに本格的な指摘があります。

【勲章が欲しい歌人たち】
「勲章が欲しい歌人たち」と題して、15年ほど前に、同人誌に書いたことがある。その後の新しいデータを踏まえ、補筆したものを、拙著『天皇の短歌は何を語るのか』(御茶の水書房2013年8月)に再録した。「しつこいね」との声も聞こえないでもないが、やはり、伝え続けたいと思う。10月28日、政府から、文化勲章の受章者と文化功労者の発表があった。叙勲もあった。ここ数年、学生時代のクラスメートや職場の後輩たちの名前を見出し、もうそんな年になったのかと愕然とする。いずれも他人事として、聞き流せばいいのだけれど、少しばかり、つまらない情報を持ち合わせているから、「やっぱり」「まさか」の思いがよぎる。今年の文化功労者の中には、歌人
岡井隆の名があった。(略)さて、その(文化功労者選考分科会委員の)メンバーだが、10人のうち、私が名前を知っていたのは、田中明彦、松浦寿輝の両名だったし、小説家「宮本正仁」って誰?と思って調べてみると「宮本輝」の本名だった。あとの委員は、武蔵野音大の人を除いては、すべて国立の研究機関や大学に属する人たちで、元文科省事務次官次だった官僚もいる。たしかに研究分野を異にする委員ではあるが、彼らの眼が各分野での「文化の向上発達」に「勳績卓越」「功績顕著」な人たちに届くとは思えない。若干の意見は聞き置かれようとも、おそらく他の省庁の「審議会」と同様、おおかたは、事務方の提案の了承機関になっているのではないか、と。

今年の選考委員で、文学関係では、松浦と宮本の両委員ということになる。両名は、ともに、芸術選奨文科大臣賞(松浦2000年、宮本2004年)、紫綬褒章(松浦2012年、宮本2010年)を受けている仲である。こうしたな環境の中で選考され、歌人の文化功労者岡井隆が誕生した。世の中の様々な賞、歌壇における短歌雑誌や歌人団体、新聞社やNHKなど民間の組織が主催する賞についても様々な問題、例えば、選考委員の重複・集中、選考委員結社間での互酬性、受賞者の重複、各賞の特色の薄弱化など、これまで指摘してきたつもりである。政府が関与する各種の褒章・栄典制度において、とくに文藝にあって、政府の関与、情報の不透明性、選考委員・選者の常連化などによる権威性を伴う現実は、文芸の自律を脅かさないのか、権力からの独立性が保たれるのか、という危惧なのである。権力は、露骨に、あるときは巧妙な手口で、表現の自由や学問の自由をひたひたと侵害してくる現実に対して、あまりにも無防備なのではないか。私たちの抵抗の手段として何が有効なのか、歴史に学び、世界に学び、もっと賢くならなければの思い頻りである。(
内野光子のブログ 2016年11月4日

【山中人間話目次】
・自民党、自民党議員らのアナクロニズム的倒錯とリベラル・左派のアナクロニズム的倒錯
・共産党シンパらしい渡辺輝人さん(弁護士)の「野党共闘クソッタレ」論
・toriiyoshikiさん(ETVディレクター・ハーフリタイア)のデマゴーグ高須克弥(医師)批判
・安田浩一氏(ジャーナリスト)のニューズウィーク日本版掲載の「日本人の無自覚な沖縄差別」という記事の無定見について
・辺見庸の「ドジン」「シナジン」とはなにか!?ーー目取真俊さんの訴え
・小倉利丸さん(富山大学名誉教授。ピープルズ・プラン研究所共同代表)さんの「インターネット民営化問題」論第3弾
・戦前の湯川秀樹と朝永振一郎評価に関する北島教行さん(福島第一原子力発電所事故収束作業者)との応答
キョウ いくみな4 
原画は山下清「観兵式」(1937年)

Blog「みずき」:徐京植さんの辺見庸の新刊『完全版1★9★3★7(イクミナ)』の解説のさらにレクチャーとしてのハンギョレ紙寄稿文を読んで第一に私が思ったのは徐さんの「在日」という立ち位置です。その立ち位置ゆえに書くことのできた辺見庸の新刊の渾身の解説(レクチャー)であるということです。このレクチャーには徐さんの「在日朝鮮人」という立ち位置の心性が強く反映しています。辺見の父がまだ子どもだった辺見に野蛮な怒気をふくんだ声で言い放った「朝鮮人はダメだ」という言葉、「あいつらは手でぶんなぐってもダメだ。スリッパで殴らないとダメなんだ……」という罵倒の言葉への徐さんの反応にその心性の強さは如実に現われています。徐さんは書きます。「『朝鮮人』である私には、平静な心でこのくだりを読むことが、できない。私自身が殴られたわけでもないのに、神経がこすり上げられたような痛みと嫌悪を感じる」、と。そこからのニッポンという国への問い。辺見庸の評価。その問いと評
価が読む者の胸を打つのです。辺見庸の新刊の優れた解説、レクチャーになっていると思います。

【昨今の日本社会はますます「発狂」の度を深めている】
辺見庸は将校として中国戦線に従軍した自らの父も、このような行為に手を染めたのではないかと疑っている。いや、ほとんどそのことを確信しているのである。〈このひと(辺見の父)はなにをしてきたのだ。なにをみてきたのか。それらの疑問はけっきょく問いたださなかったわたしにも、不問に付すことで受傷を避ける狡いおもわくがどこかにあったのであり、ついに語ることのなかった父と、ついにじかには質さなかったわたしとは、おそらくは同罪なのだ。訊かないこと――かたらないこと。多くの場合、そこに戦後精神の怪しげな均衡が保たれていた。〉そうだ。「かたらないこと」「質さないこと」によって日本の「戦後精神の怪しげな均衡」は保たれてきたのだ。あえて語ろうとするもの、質そうとするものは「スルー」(through)され孤立させられる。それが日本社会を成り立たせてきた。辺見庸は父の肖像を描くことによって、薄笑いの表皮に隠された戦後日本人の素顔を描いた。大虐殺の余燼がくすぶり、血の匂いが消えやらぬ中で堀田や武田の文学が切り開こうとしたのは、他者の目で自己を見つめ、自律的な倫理的更生を目指す道であった。その道を歩もうと志した人々は、戦後の一時期、少数ながらたしかに存在していた。いまは雑草に覆われ地図からも消されようとしているこの道を、辺見庸という作家が辿ろうとしている。〈いつだったか、まだ子どものころ、酔った父がとつじょ言ったことがある。静かな告白ではない。懺悔でもなかった。野蛮な怒気をふくんだ、かくしようもない、かくす気もない言述である。この記憶はまだ鮮やかだ。「朝鮮人はダメだ。あいつらは手でぶんなぐってもダメだ。スリッパで殴らないとダメなんだ……」。耳をうたぐった。発狂したのかと思った。…〉「朝鮮人」である私には、平静な心でこのくだりを読むことが、できない。私自身が殴られたわけでもないのに、神経がこすり上げられたような痛みと嫌悪を感じる。韓国国内のみなさんはどうだろうか? 職場の同僚や近隣の住民、温厚で理性的にしかみえない人々の心の奥底にこの心理が巣くっていて、時ならず噴き出すのではないか。その予感に私はいつも身構えている。それが植民地支配ということであり、「朝鮮人」であるということなのだ。ここでの「朝鮮人」を「黒人」「インディアン」あるいは「女」などに置き換えてみれば、全世界的に拡散し、いまも克服されていない植民地主義の心性がよく見える。

考えてみれば、辺見庸の父が少数の例外であったはずはない。それは日本人と朝鮮人の間で日常化していた行為であった。日本は「文明化」をかかげて朝鮮を「併合」した後も、朝鮮において非文明的な刑罰である笞刑を残し、それを朝鮮人にだけ適用した(金東仁「笞刑」参照)。笞の一振りごとに、激痛と屈辱が朝鮮人の身体に文字どおり叩き込まれた。同時に、笞を振るう官憲やそれを傍観していた日本人植民者は、一振りごとに奴隷主の心性をおのれに叩き込んだのである。「発狂したのか」というのなら、突然にではなく、「琉球処分」に始まり、日清・日露戦争を経て、アジア・太平洋戦争に至る近代史の始発点から「発狂」していたのだ。笞刑はその一例に過ぎない。しかも、戦後の日本人にはその歴史を骨身に沁みて省察し、「正気」に返る機会はあったのに、ことごとくその機会を「スルー」してきた。昨今の日本社会はますます「発狂」の度を深めている。すでに「在特会」など日本の排外主義者たちはそのことを意識的に実践しており、先日の都知事選では11万人以上の日本市民が彼らに投票した。その人々は「スリッパ」で私と私の同胞たちを殴っているのだ。そんな中で、たとえたった一人でも、日本人作家のこのような作品に接することができたことは僥倖であった。まだ「正気」を保とうとしている人が辛うじて生き残っているしるしであるからだ。奴隷が叩き込まれた奴隷根性を克服することが困難なように、奴隷主が苦痛に満ちた自省の過程を経ずしてその心性を捨て去ることはきわめて困難であろう。日本社会に、そのような自省の必要を認識し、努力を惜しまない人々が存在することを私は知っている。しかし、その数は少なく、きわめて微力である。私はこの小文を、辺見庸という作家を韓国の人々に知ってもらいたくて書いた。それは「日本と日本人」がいかに救い難いかを嘆くためではない。辺見庸の作品に「希望」を見て自らを慰めるためではない。私たち朝鮮人が自らに叩き込まれた「奴隷根性」を自覚し、それを克服して植民地主義と闘い続けるためである。(
徐京植 ハンギョレ 2016.11.04

【山中人間話目次】
・東京新聞の沖縄・高江に焦点を当てた憲法特集
・森川文人さん(弁護士)の「夜、立ち上がれ Nuit debout!」
・メキシコのジャーナリストたちの死の危機――なぜ日本のメディアは報道しないのか
・「日本パグウォッシュ会議」が体制を強化し、活動活発化に向けて再出発するというニュース
・日本と中東の男女格差はどちらが深刻か- 川上泰徳 ニューズウィーク日本版
キョウ いくみな2 
原画は山下清「観兵式」(1937年)
 
Blog「みずき」:徐京植さんの辺見庸の新刊『完全版1★9★3★7(イクミナ)』の解説のさらにレクチャーとしてのハンギョレ紙寄稿文を読んで第一に私が思ったのは徐さんの「在日」という立ち位置です。その立ち位置ゆえに書くことのできた辺見庸の新刊の渾身の解説(レクチャー)であるということです。このレクチャーには徐さんの「在日朝鮮人」という立ち位置の心性が強く反映しています。辺見の父がまだ子どもだった辺見に野蛮な怒気をふくんだ声で言い放った「朝鮮人はダメだ」という言葉、「あいつらは手でぶんなぐってもダメだ。スリッパで殴らないとダメなんだ……」という罵倒の言葉への徐さんの反応にその心性の強さは如実に現われています。徐さんは書きます。「『朝鮮人』である私には、平静な心でこのくだりを読むことが、できない。私自身が殴られたわけでもないのに、神経がこすり上げられたような痛みと嫌悪を感じる」、と。そこからのニッポンという国への問い。辺見庸の評価。その問いと評価が読む者の胸を打つのです。辺見庸の新刊の優れた解説、レクチャーになっていると思います。

【著者の問いかけに対し、それに匹敵しうる応答の声は聞こえてこない】
今回は書物を紹介してみたい。現代日本の小説家・
辺見庸の『1★9★3★7』である。すでに昨年、初版を読んでいたのだが、近々刊行される文庫版に「解説」を書くよう依頼されたため、あらためて精読したのである。辺見庸は一言でいって、日本社会の異端児であり、反抗者である。1944年、宮城県石巻市生まれ。1970年、共同通信社に入り北京特派員、ハノイ支局長などを歴任した。1991年に『自動起床装置』で芥川賞を受賞。1994年には『もの食う人びと』を刊行している。その彼が、1937年という時に焦点を当てて、歴史的時間を往還しながら、「日本と日本人」を徹底的に解剖したのが本書である。その解剖のメスは、小林秀雄、梯明秀、丸山眞男、小津安二郎ら戦後日本を代表する知識人たちから、自らの父や自分自身にまで容赦なく及ぶ。私は解放(日本敗戦)6年後の1951年、日本の京都市にうまれ、いわゆる「戦後民主主義教育」を受けて育った。日本で生まれて65年余りになるが、ここ数年、自分は「日本と日本人」がわかっていなかったという思いが強い。安保法制の強行採決、沖縄の辺野古基地移転や原発再稼働の強行等、暗然とするほかない出来事が続いた昨年(2015年)は、日韓両政府合作による「慰安婦問題最終解決合意」劇で幕を閉じた。もちろん、これが真の「最終解決」になどなりうるはずもない。「恨(ハン)」は今後も層々と堆積するばかりであろう。私たちがかつて書物で学んだ「政治的反動」は、かつて学んだとおりの姿で目の前にやってきた。反動に対する無策や無気力もまた忠実に反復されている。反知性主義が勝ち誇るそのような中、私が目にしたわずかな書物のなかで、他の人に推薦したい1冊がこの『1★9★3★7』である。

本書に次のくだりがある。<「この驚くべき事態」はじつは、なんとなくそうなってしまったのではない。(中略)それはこんにちこのようになってしまったのではなく、わたし(たち)がずるずるとこんにちを「つくった」というべきではないのか。>著者のこの問いかけに対し、それに匹敵しうる重みで応答する声は聞こえてこないか?それがついに聞かれないままであれば、日本社会は今日の「反動」に抗するすべもないままに、またしても破局へと押し流されるほかないであろう。だが本書初版刊行からおよそ1年、私はまだその「応答する声」を聞くことができないでいる。1937年は日本の中国侵略戦争が本格的に始まった年であり、日本の本土では人々は戦勝気分に浮かれていたが、その年12月には「南京大虐殺」が繰り広げられた。辺見庸はこの「記憶」が集団的に消去される日本の危機的現状に果敢な抵抗を試みている。その重要な手がかりとなったのは、いまはほとんど忘れられようとしている「戦後文学」の代表的作家、
堀田善衞の小説『時間』と、武田泰淳の『汝の母を!』である。1955年に発表された堀田の作品は、主人公を中国人知識人に設定し、いわば他者である被害者側の視線から日本の侵略と虐殺を描いたものだ。主人公の見た「惨憺たるもの」は、たとえば次のように描写されている。〈断首。断手。断肢。/野犬が裸の屍を食らうときには、必ず睾丸を先に食らい、それから腹部に及ぶ。人間もまた裸の屍をつつく場合には、まず性器を、ついで腹を切り裂く。/犬や猫は、食っての後に、行くべき道を知っている。けれども人間は、殺しての後に行くべき道を知らぬ。もしあるとすれば再び殺すみちを行くのみ。〉武田の作品は堀田の「時間」より1年遅れて公表された。中国戦線で日本軍兵士たちが、捕えた中国人の母と息子に性行為を強要して見物して嘲笑した挙句、最後には二人とも焼き殺すという話である。武田自身の戦場体験が投影された作品である。

【山中人間話目次】
・私は民進党の対応を評価しない――「TPP国会承認求める議案 採決めぐり駆け引き続く」という今朝のNHKのニュース
・TPP問題。豊島耕一さん(佐賀大学名誉教授)のメディア批判
・岩月浩二弁護士の「意図的誤訳を残したままの国会承認は無効だ 歴史に残る売国官僚の犯罪行為」だという渾身の大弁論
・金平茂紀さん(テレビ報道記者・キャスター)の「私たちは差別する側も、差別される側も、皆「土人」なのだ」という視点
・蟻塚 亮二さんの本土のリベラル・左派は「革新ナショナリズム」という視点
キョウ せかいへいわしちにんいいんかい

Blog「みずき」:再度、「リベラル21」批判。あるいは伊藤力司(ジャーナリスト)批判。私は伊藤力司さんの「平和の思想」について重大な疑問を持っています。「伊藤さん。あなたの所与とする信条でもあるだろう「民主主義」とはたったこれっぽちのものか。つまり、「国会議事堂を包囲した12万の人々」にただ胸キュンするたぐいの坂本龍一的なエモーショナル民主主義にすぎないものか」。「南スーダン派遣自衛隊は停戦成立まで活動の停止を」という世界平和アピール七人委員会の主張が伊勢崎賢治的な主張に回収されてしまわないことを私は強く希望するものです。 

【「停戦が成立するまで」という論理の危険】
世界平和アピール七人委員会は11月2日、「南スーダン派遣自衛隊は停戦成立まで活動の停止を」と題するアピールを発表し、首相官邸に届けるとともに内外の報道機関に公開した。同七人委は、1955年、人道主義と平和主義に立つ不偏不党の知識人有志の集まりとして結成され、国際間の紛争は武力で解決しないことを原則に、日本国憲法の擁護、核兵器禁止、世界平和などについて内外に向けアピールを発表してきた。今回のアピールは122回目。現在の委員は、武者小路公秀(国際政治学者)、土山秀夫(元長崎大学学長)、大石芳野(写真家)、小沼通二(慶應義塾大学名誉教授)、池内了(名古屋大学名誉教授)、池辺晋一郎(作曲家)、髙村薫(作家)の7氏。安倍内閣は今年10月までとされていた南スーダンへの自衛隊PKO部隊の派遣を来年3月まで延長、11月中旬に次の部隊を派遣する方針を決めているが、南スーダン現地では政府軍と反政府軍の停戦が実現しておらず、停戦合意が成立していることを前提とする日本のPKO5原則が満たされていないことは明らかであり、七人委員会は停戦が成立するまで自衛隊の活動を停止すべきだと訴えている。」(伊藤力司「リベラル21」2016.11.03

【山中人間話目次】
・澤藤統一郎さん(弁護士)の「三笠宮論評」に関するメディア批判――制度と人とー天皇制と三笠宮と
・浅井基文さん(元外交官。政治学者)の韓国と日本の最近の「平和」の情況(ひとことで言って「右傾化の右傾化」)に関する重要な指摘
・小倉利丸さん発「インターネットの民営化とフェイスブック/ズッカーバーグによるinternet.orgの独占に反対する」の論
・東京高裁の「広く行われ不合理でない」という主張の致命的不合理の論理の破綻
・山下清の「観兵式 かんぺいしき」の貼り絵がよい――辺見庸『完全版1★9★3★7』(角川文庫)
キョウ そびえと3

Blog「みずき」:木村剛久さん(元編集者)の昨年ジャーナリストとして初めてノーベル文学賞を受賞したスヴェトラーナ・アレクシエーヴィチの新作『セカンドハンドの時代』評。本書は日本でも評判になった前作『チェルノブイリの祈り』から16年を経てようやく刊行されました。ソヴィエト時代を生き延びた人びとについて書かれた5部作の最後の作品にあたるといいます。「ここに記録されているのは、迫害や時の流れによって魂を引き裂かれ、孤独に苦しみながらも、それでも救済と愛と幸福を求めようとする人びとの物語である」。「見ざる、聞かざる、言わざるが、人の魂のさけびやささやきが伝わってくるのを遮断する。魂は見えないし、聞こえない。その声が表にでるまでには、長い時間を要する。人は世界につらぬかれ、歴史につらぬかれる。そのとき、魂が声を発するのだ。だが、その声が表にでるときは、かぎられている。むしろ封印は永遠に解けないのが通例かもしれない」。「しかし、人類に可能性があるとすれば、文学の照明によって、魂が呼び覚まされ、新たな共同主観の地平が開けるときでしかない。そうでなければ、人はいつまでも自同律の不快を経験することになるだろう」。木村さんは60年代後半に青春を生きた当時の青年らしく埴谷雄高の有名な「自同律の不快」という言葉を用いて本書を評しています。


【どんよりした重苦しい時代がカネの威力をともないつつふたたびはじまる】
執筆におよそ20年の歳月がかけられた。著者のスヴェトラーナ・アレクシエーヴィチは、ベラルーシ(それともロシアというのがいいか)のジャーナリスト。2013年に本書が出版されてから2年後にノーベル文学賞を受賞した。原著は日本でも評判になった前作『チェルノブイリの祈り』から16年をへて、ようやく刊行された。ソヴィエト時代を生き延びた人びとについて書かれた5部作の最後の作品にあたるという。これらの作品は、どれも翻訳されていて、幸いにも日本語で読むことができる。(略)〈わたしは、「家庭の」……「内面の」社会主義の歴史をほんの少しずつ、ちょっとずつ、拾い集めようとしながら書いている。人の心のなかで社会主義がどう生きていたかを。人間というこの小さな空間に……ひとりの人間に……わたしはいつもひかれている。実際に、すべてのことが起きているのは、そのなかなのだから。〉ここには、本書の方法のすべてが示されているといってよい。著者は、魂を開示してくれる人をさがしていた。「わたしがさがしていたのは、思想と強く一体化し、はぎとれないほどに自分の思想を入らせてしまった人で、国家が彼らの宇宙になり、彼らのあらゆるものの代わりになり、彼ら自身の人生の代わりになった、そういう人びと」ソヴィエト人は、戦争人間で、いつも戦争に備え、自分が奴隷であることにずっと気づかず、自分が奴隷であることを愛してさえいたという。ペレストロイカは、そうしたソヴィエト人の虚妄を白日のもとにさらした。国家はすでに人の心を支配できなくなりつつあった。そして、あらゆる価値が崩れ、待ちに待っていた自由の日々がはじまる。ドストエフスキイは、かつてこう言ったとか。「人間は弱くて浅ましいものだ。……あのようなおそろしい賜物を自分のなかに受け入れることができないからといって、弱い魂になんの罪があろうか」ソ連崩壊から20年、ロシアでは、またソ連時代のものがはやっている、と著者はいう。ソロフキやマガダンなど、かつての収容所をめぐるツアーに人気が集まっている。共産党をコピーした権力政党が復活し、大統領の権力は昔の書記長並みになっている。いったい未来はどこに行ってしまったのか。時代はまた元に戻ってしまったのか、と著者はいぶかる。セカンドハンドの時代というタイトルには、また同じどんよりした重苦しい時代が、しかし、こんどはカネの威力をともないつつ、ふたたびはじまるのではないかという不安が隠されている。(
木村剛久「海神日和」2016-11-01

【山中人間話目次】
・『セカンドハンドの時代』を読む(1) -木村剛久「海神日和」
・2016年のいまだってなんにも、1ミリも進歩していないこと。どころか、目下劇的に退歩中――辺見庸「日録」(2016年11月1日)
・常岡浩介さんのクルド地域政府警察の不当拘束、中田考さんのリサイクルショップへの家宅捜索と自民党と民進党のTPP承認案11月4日採決合意と。
キョウ かくへいき3
ニッポンという国

Blog「みずき」:「今日の言葉」の加藤哲郎さんの論は一昨日の「今日の言葉」の小倉利丸さんの論と呼応するものといえるでしょう。関連して加藤さんは「唯一の戦争被爆国」を自認しながら国連総会で初めての核兵器禁止条約案の採決という絶好の機会に反対票を投じた日本という国の政治の謎、それも「一強」とか「安定」とかいわれる摩訶不可思議な政治の謎について若い研究者に問いかけます。「いま、日本の若い研究者が解き明かさないと「番犬」が「忠犬」になって出口無しになりそうです」、と。

【ファイブアイズの一角のニュージーランド政府の選択と日本という国の差異】
エドワード・スノーデン の日本への警告「僕は日本のみなさんを本気で心配しています」が、ウェブ上で広がっています。自分自身が米軍横田基地内で日本の情報収集をしていた経験をもとに、「日本で近年成立した(特定)秘密保護法は、実はアメリカがデザインしたもの」「米国国家安全保障局(NSA)は日本の法律が政府による市民へのスパイ活動を認めていないことを理由に情報提供を拒み、逆に、米国と秘密を共有できるよう日本の法律の変更を促した」と。「米政府が日本政府を盗聴していたというのは、ショックな話でした。日本は米国の言うことはほとんどなんでも聞いてくれる、信じられないほど協力的な国。今では平和主義の憲法を書き換えてまで、戦闘に加わろうとしているでしょう? そこまでしてくれる相手を、どうして入念にスパイするのか? まったくバカげています」ともいいます。これは、ウィキリークスが暴露した「第一次安倍内閣時から内閣府、経済産業省、財務省、日銀、同職員の自宅、三菱商事の天然ガス部門、三井物産の石油部門などの計35回線の電話を盗聴していたことを記す内部文書」についての感想で、日本は、情報世界で米国に「信じられないほど協力的な国」なそうです。(略)このこと自体、日本の民主主義と言論の自由の重大な危機ですが、情報を共有することと、そこからそれぞれの国がどのように行動するかは、別の問題です。そこに、国家の自立性、民意を汲む民主主義の成熟度が現れます。

10月28日、国連総会で初めての核兵器禁止条約案が、123か国の賛成で
採択されました。来年から条約交渉が動き出します。アメリカはNATOなど同盟国に反対投票をよびかけ、米英ソ仏の核保有国のほかNATO諸国、オーストラリア、韓国など38か国が反対しました。中国・インド・パキスタンなど16か国は棄権しました。「唯一の戦争被爆国」を自認する日本は、かつてはアメリカに配慮し「棄権」にまわることもありましたが、国際法で核使用を禁止できる条約成立の決定的な時に、「反対」にまわり、世界を驚かせました被爆者が怒るのは当然です。ここで注目すべきは、NSAの「ファイブアイズ」の一角、ニュージーランド政府の選択です。30年の非核政策をバックに、情報共有大国アメリカの圧力をもはねのけて、「賛成」の先頭に立ちました。情報と政治と経済の関係は、それぞれの国の歴史的戦争体験(貫戦史 transwar history)や 制度の経路依存性(path-dependency)で異なります。けれども<日本政治「安定」の謎>だけは、いま、日本の若い研究者が解き明かさないと、「番犬」が「忠犬」になって、出口無しになりそうです。(加藤哲郎のネチズン・カレッジ 2016.11.1

【山中人間話目次】
・辺見庸の『路地』(2016/10/30付日本経済新聞 朝刊)を読む
・辺見庸がほぼ2か月ぶりに「日録」を更新する。『1★9★3★7(イクミナ)』は文字どおりの辺見庸のライフワークとなった
・リベラル紙を自称する「リベラル21」という媒体の非リベラル体質
・豊島 耕一さん(佐賀大学名誉教授)のTPP報道批判。真っ当なメディア批判だ
・沖縄は軍事植民地 土人発言 日米の統治者意識の発露 -[平安名純代の想い風]沖縄タイムス
・米大統領選】トランプが最後の追い上げで大統領に? ヒラリーと1%差に迫る