この9月25日、東京都内で、「ヘイトスピーチとレイシズムを乗り越える国際ネットワーク」(辛淑玉呼びかけ責任者ら21人の共同代表。略称「のりこえねっと」)という団体の設立記者会見が開かれ、同団体の正式な発足の表明がありました。

のりこえねっと 
反ヘイトスピーチ団体が発足 デモなどの差別運動へ警告
 
私は同「のりこえねっと」の立ち上げには基本的には同意します。
 
が、にもかからず、実のところ、同団体の立ち上げに少なくない違和感のようなものも持っています。その私の違和感をひとことで言表するとすれば以下のようになるでしょうか。
 
「のりこえねっと」は、その設立宣言で、「日本におけるヘイトスピーチは、戦後体制が政策的に作り出してきた差別そのもの」と認定します。それゆえに、同「ねっと」のその宣言に則して見れば、同「ねっと」のいう「乗り越えなければならない(We shall overcome!)」(同左)課題とは、在特会などを中心に「いま、在日韓国・朝鮮人を標的とするヘイトスピーチが、各地で凄まじい勢いで拡大している」(同左)その「ヘイトスピーチ」現象に対抗していくことはもちろん、さらにその「ヘイトスピーチ」現象の背景に蔓延の風景をなしている日本の「戦後体制」そのものへの対抗へと向かわなければならない論理的課題を負っているということにもなるはずですが、同「ねっと」にはその日本の「戦後体制」そのものに対抗していこうとする覚悟はともなっているのか。そのことへの危惧ということになります。
泉田新潟県知事が柏崎刈羽原発6、7号機の再稼働を事実上容認した件に関していくつかのメーリングリストに以下のような投稿がありました。
 
第一信:
泉田新潟県知事の最新の会見です。
車で追跡をうける圧力から、これからは東電ではなく、国が直接『説得にあたる』と通知がきているなど、極めて重要な内容を公言されています。
過日、サンケイ紙が直接泉田批判を開始した時、何かの予兆だと投稿しましたが、暗黒の動きが始まっていると感じます。
是非まず、会見の内容をお聞きください。そしていたるところに拡散をお願いしします。
http://takumiuna.makusta.jp/e230270.html
 
第二信:
皆さん、下記サイト、ぜひごらんください。
サンデー毎日も追っている事態です。
http://tanakaryusaku.jp/2013/09/0007943
 

泉田知事 
泉田裕彦知事(右)に文書を手渡し、頭を下げる東電の広瀬直己社長

以下は、同投稿に対する私の応答です。
 
「泉田知事に何があったのか・要注目」と指摘される「泉田知事に何があったのか 『特捜部がターゲットに』報道も」(田中龍作ジャーナル 2013年9月26日)という記事を読んでみました。
 
田中記者は、同記事で、「新潟県の泉田裕彦知事がきょう午後、柏崎刈羽原発6、7号機をめぐり東電が原子力規制委員会に提出する安全審査申請を条件付きで容認することを明らかにした」。「昨夜の段階では『規制基準をクリアしても安全は確保できない』とまで話していた泉田知事が一転、容認した背景には」政府や検察の「圧力」があったのではないか、と推論しているわけですが、その推論の根拠としているのは以下の2点です。
 
(1)急展開の背景に何があったのだろうか? 思い至るのは、5日に新潟県庁で持たれたメディア懇談会だ。「第2の佐藤栄佐久氏(前福島県知事)になると思ったことはないか?」と筆者が質問したところ、泉田知事は「ありますね」と答えた。「黒塗りの車にビタっとつけられた時は気持ちが悪かった」と話した田中龍作ジャーナル 2013年9月26日)。
 
(2)その検察庁が「泉田知事をターゲットにした」との記事が『サンデー毎日』(10月6日号)に掲載された。同誌は地検特捜部関係者のコメントとして次のように書いている――「地検上層部からの指示で泉田知事を徹底的に洗っています。立件できれば御の字だが、できなくても何らかの圧力を感じさせることで、原発再稼働に軌道修正させる助けになりたい考えではないか」(同上)。
 
しかし、上記の推論の根拠は、根拠薄弱、ないしは「事実」として提示している根拠に信憑性がありません。
ある人から藤原紀香を広告塔として活用することに何の差し障りがあるか、という問いが私にありました。

その人の問いは次のようなものです。
 
藤原紀香が「秘密保全法」を批判するブログを書いたことを称える行為は、彼女が偽りの護憲派であったとしても、その政治姿勢全体を支持するものではないし、彼女が支持する石原を応援することにもならないし、憲法改悪阻止の運動を妨害することにもならないと思います。だったら藤原紀香を広告塔として活用することに何の差し障りがあるのかと思います。運動がどこまでの幅を許容できるかは、大事なことだと、最近、レイシズムとの闘いの場面で、つくづく考えさせられる出来事がありました。果たして「正しい反レイジスム運動」とは何か(以下、略)。

藤原紀香3 
藤原紀香? 俺は全く評価しないね
 
以下は、私の応答です。
 
この藤原紀香「特別秘密保護法案」パブコメ問題で私が提起している問題は「言論人・知識人」(場合によっては「芸能人」も含む)の倫理観、政治的志操のありかたの問題についてです。
 
その問題の在り処を一言でいえば、すでに引用している言葉ですが、比屋根照夫さん(琉球大学法文学部教授。日本政治思想史)がおっしゃっておられる「言論人、知識人とは、過去・現在・未来についての自己の言説に断固として社会的責任を持つ立場にある人間のことを指す」という「言論人、知識人」(広義)の立ち居振る舞いはいかにあるべきかという問題です。
 
一般的に人は昨日言ったことに対して責任を持つ必要があります。昨日が仮に10年前のことであったとしてもその意味は本質的には変わりません。変わらないはずです。言論に責任を持つ「言論人、知識人」(広義)であればなおさらだろう、という話です。
 
あなたがおっしゃるように「藤原紀香が『秘密保全法』を批判するブログを書いたことを称える行為は、彼女が偽りの護憲派であったとしても、その政治姿勢全体を支持するものではないし、彼女が支持する石原を応援することにもならないし」、「藤原紀香を広告塔として活用することに」実利的な意味では「何の差し障り」もないだろうと私も思います。
 
しかし、「憲法改悪阻止の運動を妨害すること」にはなると思います。
本ブログのフリーエリア欄(右側)に「韓国『内乱陰謀罪』弾圧に反対する」というフレーム(ブログパーツ)を設けて意思表示をしてもいるのですが、韓国ではいま政権勢力(朴槿恵政権)が先の韓国大統領選挙の際の不正(大統領選挙への国家情報院(旧KCIA)の組織的な介入)の発覚とその責任追及を逃れるために「内乱陰謀」という架空の重罪(日本の戦前のあの悪名高い「治安維持法」違反の罪に相当するでしょう)をフレームアップし、その罪を同国第二野党の統合進歩党(革新・進歩政党)の指導者のひとりである李石基(イ・ソッキ)議員に不当に負わせようとする事態が生じています。李石基議員は国会議員の不逮捕特権をはく奪する逮捕同意案への国会の同意という一応形式的な手続きは通過させているもののこの9月4日に検察によって不当に逮捕されました。
 
この李石基議員の逮捕がなにゆえに不当であるのか。なにゆえにこの事件を私たちはフレームアップと呼ぶのか。この韓国のフレームアップ事件と私たちの国でいま起きている「オリンピック招致」狂想曲症候群と「オリンピック『冤罪』」との関係について私たちはいま真剣に考えてみる必要があるように思います。本ブログ本体にもエントリするゆえんです。
 
以下、この「韓国『内乱陰謀罪』弾圧事件を理解するために有用な記事として3本の記事をご紹介しておきたいと思います。

9月4日、国家情報院に連行されるイ・ソッキ議員 
9月4日、国家情報院に連行されるイ・ソッキ議員
 

(1)韓国の統合進歩党に対する内乱陰謀罪適用の弾圧に反対する声明
(日韓ネットのブログ 2013年9月19日)
 
(2)再考、イ・ソッキ議員の「内乱陰謀」罪
(NPO法人 三千里鐵道 2013年09月09日)
 
*同記事の中でその邦訳が紹介されているアン・ヨンミン氏の「あなたも『イ・ソッキ(李石基)』にされる、私もそうだったから...。北朝鮮の体制宣伝活動をした容疑-「『民族21』スパイ事件」被害者の訴え」(オーマイニュース 2013年09月02日。原文はこちら)という記事も大変参考になります。
 
*(2)の記事の筆者の言葉:
「彼(アン・ヨンミン氏)は月刊『民族21』の編集主幹として、祖国の平和統一と南北和解に関する優れた記事を書いてきました。日本でも何度か講演しています。その彼が、「北のスパイ」容疑を掛けられ一方的な世論の攻撃に苦しんだ体験を述べています。彼の裁判もまだ継続中ですが、当初の容疑内容は大幅に縮小されています。イ・ソッキ議員の事件を考えるうえで、何らかの参考になれば幸いです。  (JHK)
 
 
*同記事中の井上静さんの論:オリンピックは冤罪を生む
(楽なログ  2013年09月08日)
 
*同記事中のZEDさんの論:たまたま見ててまさに正論と思った
ツイッター

(Super
 Games Work Shop Entertainment  2013年09月13日)
澤藤統一郎さんが「『毎日』・『憲法9条解釈と集団的自衛権』解説に異議あり」という名記事(「解説」の解説)を書かれています。澤藤さんが批判されている「毎日」の「解説」記事を私のいつもの流儀で漠然と読み流すだけであったならばおそらく気がつかなかったであろうことをたくさん教えてもらったような気がします。法律の専門家としての澤藤さんにとっては当たり前のことなのかもしれませんが、私にとっては目の覚めるような指摘がいくつもありました。

さて、「憲法9条」の解釈と「集団的自衛権」の解釈を政府の解釈としてではなく、メディアがメディア自らの言葉として脱臼させようとしている。
 
あの日の風景に似ていないか。
 
辺見庸のいう「Day of Infamy」(屈辱の日)。2003年12月9日(『いまここに在ることの恥』「憲法と恥辱について」

筑紫哲也のいう「白虹事件」(大阪朝日村山社長襲撃事件)。メディアが国家と右翼の暴力に屈服した日。1918年10月15日。(「筑紫哲也さんの由布院盆地でのメディア批判~マスメディアよ、ジャーナリストたれ(2)」)


福島の子どもたちの甲状腺被ばく2 
福島の子どもたちの甲状腺がん説明会(2013年6月5日

おかしな論を紹介するある人に対して:
 
ご紹介される竹野内真理さんのブログの頁内検索をしてみましたが、「今週末中に国連科学委員会に福島事故で健康被害が出ていると、メールを出してください」という同氏の「訴え」は見出すことはできませんでした。しかし、その「訴え」が同氏の「訴え」であるにせよ、そうでないにせよ、「福島事故で健康被害が出ていると、メールを出してください」という「訴え」は誰に対してへのものでしょう?

仮に同氏の「訴え」を
見たすべてのブログ読者の人に対してのものであるとするならば、その読者の中には「福島事故で健康被害が出ている」状況をよく知らない人も当然いるでしょうから、その実際の状況を知らない人に対してもともかく「福島事故で健康被害が出ていると、メールを出してください」と訴えているということになりますが、そうであればおかしな「訴え」です。実際の状況をよく知らない人が「福島事故で健康被害が出ている」などというメールを出すことは本来できないはずですから、実際の状況など知らなくてもいいからとにかく「福島事故で健康被害が出ていると、メールを出してください」という強引かつ理不尽な「訴え」にならざるをえないからです。
 
また仮に、「福島事故で健康被害が出ている」ことを知っている人に向けての「訴え」だとしましょう。そうだとしても、この場合もおかしなことにならざるをえません。ここで竹野内さんが「健康被害」といっているのは、同ブログの記述から「6月に発表された甲状腺がん27人、また8月の44人の件」ということになるでしょうが、同甲状腺がんの罹患と福島第一原発事故との因果関係について、その関係性をクロだと認定している専門家及び医療機関は皆無です(その可能性を指摘し、かつ、さらなる徹底検査を求めている専門家及び機関はもちろんいますし、あります。しかし、それは、クロだと認定していることとは違います)。だから、理性のある人であれば、いまの段階で「福島事故で健康被害が出ている」などと断言するメールを出すことができるはずがありません。その本来はできはしないことを「メールを出してください」といわば強訴していることになるわけですから、これも理不尽な「訴え」というほかないのです。

注:ただし、子どもの甲状腺がんの罹患と福島第一原発事故との因果関係について徹底検査の勧告を求める「メール」をひとりでも多くの人が提出してほしいという趣旨の「訴え」であるならば話はまた別です。
先に私は「『東京オリンピック招致決定』パロディ第2弾:東京オリンピック開催は『愚民政策』というもうひとつのパロディと『オリンピックファシズム』の道への警告」という記事を書き、その中で、私たちの国の「オリンピックファシズム」の道への傾斜化に警鐘を鳴らす坂井貴司さん(福岡県)の「東京オリンピックに対する態度」(CML 2013年9月9日)という論をご紹介しておいたのですが、その坂井さんの論とも呼応する警鐘を鳴らす人がさらにもうおふたかたいらっしゃいました。おひとりは評論家の井上静さん。もうおひとかたは本名不詳のZED氏。どちらも見るべき論だと思いますのでご紹介させていただこうと思います。


日本の黒い夏 
日本の黒い夏─冤罪

おひとり目、井上静さん。
 
オリンピックは冤罪を生む(楽なログ 井上静 2013-09-08) 
日経紙(2013/9/16 朝刊)が小沢一郎生活の党代表の社民党を道連れにした統一会派結成の動きを以下のように報じています。

リベラル系結集を模索 生活・社民統一会派の動き
小沢氏「このままじゃ死にきれない」
(日本経済新聞 2013/9/16)
 
野党内で憲法改正や原発再稼働などに批判的な民主党の一部や生活の党、社民党などリベラル勢力が結集を模索している。民主党、日本維新の会、みんなの党による野党再編構想を「保守二大政党化」の動きと警戒。生活、社民両党による参院での統一会派構想などが浮上している。
 
「このままじゃ死にきれない」。生活の小沢一郎代表は最近、周囲にこう漏らす。国政選挙の敗北が続き、所属国会議員は今や9人。1993年に自民党を離れて以来、小沢氏が率いる政党で過去最少規模だ。
 
生活は脱原発を唱えるほか、環太平洋経済連携協定(TPP)や消費増税に反対するなど主要政策でリベラル色が強い。しかし参院議員は2人で予算委員会の質問権もなく「小政党が大政党を動かす『テコの原理』も働かない」(生活幹部)。
 
生き残りをかけて模索するのがリベラル勢力による参院での統一会派の結成だ。臨時国会の召集を来月に控え、社民党や民主党の一部に水面下で打診している。
 
社民党では重鎮の村山富市元首相が解党視野の再編に言及。又市征治党首代行はリベラル勢力の結集を唱えており、統一会派構想に呼応する可能性がある。小沢氏と気脈を通じ、民主党内に影響力を残す輿石東参院副議長もリベラル勢力の結集に理解を示す。
 
輿石氏の出身組織、日教組は運動方針で、支持政党として民主党を明記せず「民主的でリベラルな立場を基本とする政治勢力と支持協力関係を構築する」と掲げた。
 
維新、みんなとの野党再編構想は民主党では保守系が中心。労組では自治労などにも民主党内で保守系が発言力を強めることに警戒感がくすぶる。
 
参院選で躍進した共産党の存在も危機感の背景にある。共産党は消費増税、TPPなどで政権との対立軸が明確で、組織基盤もあるため「リベラルを支持する世論の受け皿になりかねない」との懸念が出ている。

社会党結党 
日本社会党結党大会 1945年11月2日
於:東京・新橋 蔵前工業会館
以下は、松元保昭さん(パレスチナ連帯・札幌代表)が9月16日付けでいくつかのメーリングリストに発信した「『反テロ世界戦争』はどうなったのか? シリアで『アルカイダのために戦う』米国」(ミシェル・チョスドフスキィ、松元保昭訳)という翻訳転載記事に対する疑問を提起した拙記事です。
 
松元さんの上記の翻訳転載記事はこちらで読むことができます。
 
なお、以下の拙記事は、以前の松元保昭さんと泥憲和さんの議論を前提に稿されています。両者の以前の議論はこちらの弊ブログ記事をご参照ください。
 
なおまた、以下は、公開型メーリングリストの議論を含む議論ですからそのまま実名をあげています。

シリアデモ 
シリアのアサド大統領に対する抗議デモ(WSJ)
 
前記事をエントリした後、以下のようなブログの記述に遭遇しました。
 
「蛇足ですが、藤原紀香さんがパブリックコメントを提出したことをブログで公開しています。大いに歓迎したいですね。他のアーティスト、芸能人も続いて欲しい。有名人は『メデイア』です。/これに対して、過去の都知事選での「裏切り」の過去から、「信用出来ない,評価できない」とするネット上の意見も(→一例)ありますが、「信用」の意味が分かりません。このあと彼女の意見が変化しようと、それはその時に再評価すればいいことです。それとも今回の彼女の行動が何らかの『陰謀』の一環だとでもいうのでしょうか?」(「ペガサス・ブログ版」 2013-09-15

藤原紀香 
秘密保護法案とは何か、藤原紀香さんのブログで話題に
 
上記の意見の発信者は佐賀大学名誉教授(物理学)の豊島耕一さんです。豊島さんとは居住するところも久留米と大分で近いですし、あるメーリングリストでのメーリス仲間でもあります。また、一緒に酒を飲んだこともあります。豊島さんには私の意とするところを伝えておく必要を感じ、少しばかりの反論を認めました。

以下です。
他者のブログ記事ですので、同記事を推奨したいのであれば同記事に誘導するしかけ(リンク)をすればそれで済む話なのでアップするつもりはありませんでしたが、メディアの全国記事水島宏明氏(法政大学教授・元日本テレビ「NNNドキュメント」ディレクター)の「藤原紀香が『秘密保全法』への危機感 ブログでの勇気ある発言をたたえたい」などの記事のほかに私の地元でも下記のような記事がありましたのでアップして問題提起しておくことにします。
 
藤原紀香さんも批判する「秘密保護法案」に反対しよう
(小坂正則の個人ブログ 2013年9月16日)
NPO法人九州・自然エネルギー推進ネットワーク代表
脱原発大分ネットワーク代表

藤原紀香 
秘密保護法案とは何か、藤原紀香さんのブログで話題に
 
以下、「kojitakenの日記」(2013-09-14)から。
 
藤原紀香が「秘密保全法」への危機感 ブログでの勇気ある発言をたたえたい(水島宏明) - 個人 - Yahoo!ニュース より。
 
藤原紀香が「秘密保全法」への危機感 ブログでの勇気ある発言をたたえたい
水島宏明 | 法政大学教授・元日本テレビ「NNNドキュメント」ディレクター
2013年9月14日 7時31分
 
安倍政権が制定を意図する「秘密保全法」。これには、報道各社や日弁連などから反対の声が上がっている。
 
原発の汚染水が毎日、海に垂れ流されている状態だとしても、首相が「(福島第一原発の汚染水は)0.3平方キロメートルの港湾内に完全にブロックされている」などと平気でウソをつくのが政府というものだ。
 
だから、政府自身が何が「秘密」かを決めるという「秘密保全法案」には反対だ。
 
報道機関が報道できる範囲が狭まり、ますます権力側のやりたい放題になってしまう。
 
マスコミ各社もこぞって反対しているが、残念ながら国民の危機感や、問題への関心は高いとはいえないのが実態だ。
 
「法律のことなんかよく分からないや」
 
というのが多く国民の感想だろう。
 
そんななかで、タレントの藤原紀香さんが自身のブログで、政府が進める「秘密保全法」への危機感を表明した。 
辺見庸は先々月の7月16日から先月の8月30日までの45日間、「不稽日録」と題した日録を自身のインターネット上のブログ(辺見庸ブログ)に公表していました。辺見は先月の31日に「これまでのように主催者側の要請によるものではなく、わたしがはじめて(年がいもなく)衝動的に志願し」た講演会を東京・四谷の会場で催しましたが(辺見庸ブログ「8月31日の講演について」)、その講演会に向けての準備作業のようなものとしての日録の公開ということだったでしょう。売文をほとんど唯一の収入源とする辺見にとっておのれの稼業を自ら否定するような行為をおのれ自身があえてすることになるわけですから、辺見にとって8月31日の講演会にかける思いはそれほど尋常ではないものがあった、ということになるでしょう。私は辺見のその行動にある予感のようなものを感じましたが、しかし、その辺見の尋常ではない思いがどのようなものであったかについてはいまだに判然としません。

辺見講演会2 
辺見庸講演会 東京・四谷
(2013年8月31日)

辺見講演会3 
2008年10月25日
(於:クレオ大阪中央)

 
ところで、その「不稽日録」の8月11日付けの項に次のような一節がありました(8月31日を過ぎたいまは「日録」は削除されています)。
 
「コーヒーを飲んでいると、トイレにちかいテーブルから赤い縁の眼鏡の女がちかよってきて、腰をかがめたままいきなり話しかけてくる。目のはしがすこし笑っている。口臭。なんのにおいだろう。産まれたばかりの子猫の、腥いにおいだ。ああ、いやだ。コーヒーを吐きだしそうになる。『あなた、ツイッターやってらっしゃいますよね。毎日たくさんハッシンしてますよね・・・』。そんなものやってませんよ。憮然として答えた。すると女はあたりをうかがい小声にして『お写真も、ほら、でてるし、非公開じゃないんでしょ。あたしもフォロワーなんですよ。握手してください!』。女は右手でスマートフォンをさしだし、左手で握手を求めてくる。スマートフォンには、たしかにわたしの顔らしい写真がある。たぶん倒れる前のだ。なにか短い文のようなものもある。これはなんなのだろう。腐った海藻がからだにまとわりついてくる。意識のなかにことわりもなく巣くい、うごめいている他者の意識。なんてこった。全体から切りはなされれば、もはやわたしのものではない、かつてのわたしの片言隻句が、順不同にかってに抜き書きされて、わたしの名前でだれかと交流している。気味がわるい。ウンベルト・エーコはかつてわざと贋作をしてみたというが、自身が自身をまねたらどうなるか、という罪のない悪戯だった。これはちがう。頭が小さく、尾は左右に扁平でオール状、ほとんどが無自覚的に有毒だという、透明な意識のミズヘビを想う。スマートフォンを左手で払いのけ、おもいっきり睨めつけてから、低い声で、アンタ、アッチイケヨ!とすごむと、女はわなわなと怯えて眼鏡をずりさげ後ずさった。店中の者がわたしを見る。こうなったら、やるかやられるか、だ。わたしは8月のこと、わたしが生まれた年のことを、ひとりでおもいたかったのだ。」(「不稽日録」2013/08/11)
私にとっては虫唾が走る以外のなにものでもありませんが、「リベラル・左派」を自称する市民の中には2年前に自由報道協会を立ち上げた上杉隆というフリー・ジャーナリストをいまだに「現代を代表する秀逸かつ無二のジャーナリスト」などと思いこんでいる人たちが少なからずいるようです。そこで改めて上杉隆というフリー・ジャーナリストのイエロー・ジャーナリスト性とその腐臭のありようについて明らかにしておきたいと思います。

禁じられた写真
 日本では「禁じられた写真」といううそ by Takashi Uesugi
 
第一に上杉隆という人物は毎年8月15日に靖国神社への参拝を続けていることを誇りにしている超タカ派ジャーナリストでしかありません。以下の上杉自身の文章がその証拠です。
25年もかけて育てた葛西臨海公園の自然を、オリンピックのために壊さないで!」という署名の呼びかけがあります。ご紹介させていただこうと思います。

葛西臨海公園 
葛西臨海公園にて 1
 
葛西臨海公園3
葛西臨海公園にて 2

その署名の呼びかけ人の綿引静香さんの訴えは以下のとおりです。
 
江戸川区にある葛西臨海公園は、東京都が世界に誇る都市の中の自然公園です。公園の池や草むらや松林には、野鳥226種、昆虫140種、クモ80種、樹木91種、野草132種、絶滅危惧種に指定されているクロツラヘラサギもいます。多くの家族が憩い、自然とふれあい、サイクリングや散歩道を楽しみ、大都会の疲れを癒しています。
 
しかしその素晴らしい環境が壊されようとしています。オリンピックのカヌー競技場の建設が、葛西臨海公園に指定されているからです。
 
葛西臨海公園は埋め立て地を造成して24年かけて生態系が形成されました。一度壊した自然を東京は完全とまでは言わないまでも復活させました。こんな素晴らしい大都会の癒しの場を壊したくないのです。
 
25年です。
 
たとえば、75年の人生だったとします。オリンピックというたった16日間のために人生の1/3を費やしてきた時間を捨てることになるのです。
 
25年かけてつくってきたものを一瞬にして壊すのです。
 
私はオリンピックには反対していません。でも、このカヌー競技場の提案に関しては、きっともっと良い進め方があると思います。
 
猪瀬東京都知事、東京招致を成功させた皆さま。どうかカヌー競技場の建設を葛西臨海公園ではない場所で考え直してください。私たちから、かけがえのない緑や動物や自然を奪わないでください。
 
どうか、お願いします。 
 
綿引 静香
 
 
追伸 私は、「佐藤栄記の自然観察日記」と言うブログの記事がFaceboo
kでシェアされていたことがきっかけで、この問題について知りました。以下のリンクからご覧になれますので、ぜひ読んでみて下さい。既に28万人以上の方がアクセスしているそうです。


綿引静香さんが追伸に記載されている「佐藤栄記の自然観察日記」というブログ記事も読んでみました。ご自身で記されていることですが、佐藤栄記さんは「動物ジャーナリスト」を本職とされている方のようです。そのせいでしょう。ブログ記事のあちこちに散りばめられている葛西臨海公園に生息する動物たちの写真は絶品です。この写真を見るだけでもブログの頁を開いてみる価値はありそうです。
 
ただし、私も追記しておきたいと思います。
 
私は、綿引静香さんや佐藤栄記さんと違って2020年東京オリンピックの開催そのものに反対です。理由は以下に書いています。この弊記事もご参照いただければ幸いです。
 
 
上記の弊記事にも記していることですが、2020年東京オリンピックの開催のために費やされる膨大な予算はそっくり福島復興のための予算に振り向けられるべきだというのが私の考え方です。だから、2020年東京オリンピック開催に反対。しかし同時に東京・葛西臨海公園の再開発にも大反対です。綿引静香さんと佐藤栄記さんの訴えはずしりという感じで私の胸にも届きました。私は綿引さんと佐藤さんの訴えに連帯したいと思います。

熊田一雄さん(愛知学院大学文学部宗教文化学科准教授)が今回のIOC総会における東京オリンピック招致決定に関して、「滝川クリステルと『おもてなし』」(11日段階。改題されていまは「滝川クリステルと性の政治学」)という題の興味深い文章を書いています。

おもてなし 
滝川クリステルとおもてなし
 
初稿は以下のような文章でした。
 
「おもてなし」。滝川クリステルによる五輪招致プレゼンテーションには、オリエンタリズムとセクシズムが露骨に見られました。
 
仏語にて/日本の美女が/お・も・て・な・し
 
滝川は/ゲイシャみたいに/暮らしてる
 
一日経って「滝川クリステルと『おもてなし』」は「滝川クリステルと性の政治学」という題に改題されていました。文章も付加も含めて少し改稿されています。
 
「おもてなし」。滝川クリステルによる五輪招致プレゼンテーションには、オリエンタリズムとセクシズムが露骨に見られました。
 
仏語にて/日本の美女が/お・も・て・な・し
 
フジヤマで/ゲイシャみたいに/暮らしてる
 
ポストコロニアリズムの古典であるフランツ・ファノンの「黒い皮膚・白い仮面」をもじっていえば、滝川さんは、「黄色い皮膚・白い仮面」の女性だということです。正確には彼女は日仏のハーフですが、そのことは、IOC委員の多数派である白人(男性)にアピールするためには「純血日本人」であった場合よりも有利に働いたと思います。また、サイードの「オリエンタリズム」が論じるように、西洋人は自分たちを男性に、東洋人を女性になぞらえ、前者を後者の優位に位置づける傾向があります。「おもてなし」を強調することは、「エキゾチックな東洋の女性的文化の魅力」を強調することとして、白人(男性)の無意識の自民族優越主義(および男性中心主義)にアピールしたと思います。
 
後半の句は、オリエンタリズム(西洋人による東洋表象の仕方)を皮肉って、「クリスタル」と「暮らしてる」を掛けたのです。
 
初稿では「滝川は」だったところが改稿では「フジヤマで」になっています。
 
「滝川は」がなぜ「フジヤマで」に変わったのか?
 
一昨日、私は、上記の熊田さんの文章をめぐってメールで少しやりとりをしたのですが、その際の熊田さんの説明によれば、「後半の句は、最初はオリエンタリズム(西洋人による東洋表象)を皮肉って「フジヤマで/ゲイシャみたいに/暮らしてる」として、「クリスタル」と「暮らしてる」を掛けたのですが、わかりにくいかと思い、「フジヤマで」を「滝川は」に代えた」とのことでした。が、昨日改稿された文章を見ると「フジヤマで/ゲイシャみたいに/暮らしてる」となっていて初稿案に戻っています。「フジヤマで」では滝川クリステルを皮肉っていることが読者にはやはり少しわかりづらいかと思い、あえて熊田さんとの昨日のやりとりをメモしておくことにしました。
 
さて、そういうことはともかくとして、滝川クリステルの五輪招致プレゼンテーションを「オリエンタリズムとセクシズム」と一言で言表したのは秀逸な表現です。この表現で東京五輪招致の本質が一気に見えてくる感があります。さらに「オリエンタリズムとセクシズム」をポストコロニアリズムの問題に敷衍させているのも秀逸な視点だと思いました。
 
上記の滝川クリステルの「お・も・て・な・し」はオリンピックと賄賂性の問題とも関連してくるでしょう。
 
このことについて、「世に倦む日日」の「東京五輪の欺瞞 - 子どもと被災地を出汁にする正統化」(2013-09-10)には次のような記載があります。
 
最後に、賄賂と言えば、滝川クリステルが「おもてなし」のアピールをして、IOC委員に向かって両手を合わせて拝むパフォーマンスがあった。評判になり話題になっているが、実際に、視覚的に大きな効果があったことは間違いない。心憎い演出だ。昨夜(9/9)のNHKのクロ現で、IOC委員の一人が日本招致団のプレゼンテーションを高く評価する場面があった。あの動作には意味があり、要するに、これだけたくさんカネを撒いて、約束を取り付けたのだから、裏切ったりしないで票の見返りを下さいねと、最後のお願いをしているのだ。念押しのシグナルなのである。よく考えた構成であり、代理店のプランナーを褒めていい。プランナーの秀逸なところは、こうして日本と世界の人々に、「五輪招致活動」なるものの生臭い金権腐敗の実態を絵で暗示している点にある。クロ現の映像の中では、欧州の元IOC委員が出て来て、今でも買収工作があり、過去からの汚職文化が断ち切れていない事実を正直に告白していた。
 
引用者注:「クロ現」とは、おそらくNHKの「クローズアップ現代」(毎週月~木曜放送。午後7:30~同7:56)のこと。 
東京オリンピック招致決定に関するいわゆる識者(注)の意見が出揃った感があります。
 
注:ここで「識者」という語句に「いわゆる」という修飾語を冠しているのはチョムスキー(「現代言語学の父」と評されるアメリカの哲学者、言語学者)の次のような言葉が念頭にあってのことです。「イデオロギーの分析の場合、視野の広さと知力とがいささかあり、それに健全なシニシズムがあればたくさんだ。(略)門外漢にわからないような特殊な知など、これっぽっちも必要ではない。(略)第一そんなものは存在しない」(「社会分析と『専門家』」。『チョムスキーとの対話 政治・思想・言語』(ミツ・ロナ編、三宅・今井・矢野訳、大修館書店、1980年)所収)。
 
私は展開されているその論に決して反対というわけではありませんが、その論者の次のような言葉、あるいは一節には違和感のようなものを感じました(そのようにものわかりがよくていいのだろうか?)。

東京オリンピック 
東京オリンピック招致決定の瞬間
 
「オリンピックはある種の『お祭り』ですから、それが開かれる以上、大いに盛り上がって被災者を励まし、震災復興を後押しするものになって欲しい」(五十嵐仁の転成仁語「56年ぶりに開かれる東京オリンピックが抱える課題とは」2013-09-08)
 
「『自信と夢を取り戻す』という喜び一色のムードに水を差すつもりはない。」(水島宏明(法政大学教授・元日本テレビ「NNNドキュメント」ディレクター)「安倍首相が五輪招致でついた『ウソ』 “汚染水は港湾内で完全にブロック” なんてありえない」2013年9月8日)
 
「2020年のオリンピック開催地が東京に決定されたということで、喜んでいる方も多いのではないでしょうか?」(山下かい(日本共産党大分選挙区参院選候補者)「オリンピックの東京開催決定について。」2013-09-09)
報道によれば、安倍首相は、昨日7日夜に開かれたIOC(国際オリンピック委員会)の総会の「2020年夏のオリンピックの東京招致を目指すプレゼンテーションで」、「汚染水問題に触れ、『福島第一原発の状況はコントロールされている。東京にダメージを与えることはない』と述べた上で、『2020年のオリンピックが安全にきちんと実行されることを保証する』と訴えました。また、この問題についてIOC委員から質問が出たのに対し、次のように答えました。『結論から申し上げれば、全く問題無いということであります。汚染水による影響は、福島第一原発の港湾内の0.3平方キロメートル範囲内で完全にブロックされています』。その上で安倍総理は、『健康問題については今までも、現在も、将来も全く問題ないと約束する』と強調しました」。さらに「プレゼンテーションの終了後、安倍総理は記者団に対し『不安は払拭できたと思う。一部に誤解があったと思うが誤解は解けたと思う』と語りました」(TBS「News i」最終更新:2013年9月8日(日) 2時18分)。
 
他のメディアも同様の報道を流しています。こちらは、毎日新聞の報道(「20年五輪:IOC総会プレゼン 首相の発言要旨」2013年9月8日)。
 
しかし、多くの人が指摘していることですが、この安倍首相の「福島原発安全宣言」はうそにうその上塗りを重ねたものにすぎません。
 
第1に安倍首相は汚染水問題について「汚染水による影響は、福島第一原発の港湾内の0.3平方キロメートル範囲内で完全にブロックされています」と述べていますが、その「完全にブロックされて」いるはずの「湾は閉鎖されていない」という写真付きの指摘があります。 また、「太平洋のほぼ全域で事故前の10倍のセシウム計測」という指摘もあります。「完全にブロックされて」いるのであれば、「太平洋のほぼ全域で事故前の10倍のセシウム計測」という事態が生じるはずがありません(注)。安倍首相の説明はまったくの大うそです。
ヒューマニズムという言葉はふつうは「人道主義」や「人文主義」などと訳されて肯定的に用いられています。が、このヒューマニズムという言葉が「人間中心主義」などと訳されて否定的な意味で用いられるようになったのは私の記憶では日本ではおそらく「構造主義」という考え方、思想がフランスから輸入されて流行りだした1960年代頃からだったろうと思います。構造主義は「人間」中心の考えに対する批判として登場しました。旧約聖書の創世記には神の言葉として「産めよ、増えよ、地に満ちて地を従わせよ。海の魚、空の鳥、地の上を這う生き物をすべて支配せよ」という言葉がありますが、このような古来からのギリシア文明と西欧社会の「人間」中心主義の考え方が現代の「自然破壊」と「環境破壊」の背景にあり、元凶にもなっているという現代人の自己批判の思想として登場してきたものでした。
 
その1960年代を起点として見ても、そうした思想が登場してから50年(半世紀)以上の歳月を経ていますが、いまだに「人間」中心主義の考え方は改まりそうにありません。その理由は、現代社会の基調は形而上学的な理想の上に築かれるものではなく、経済合理主義的な「経済至上主義」と「利潤追求主義」の思想によって成立しているからだ、と改めて私たちの置かれている「現実」というものを直視せざるをえないでしょう。
 
その「経済至上主義」と「利潤追求主義」の端的な例が下記にあります。「経済至上主義」の行き着くところは如何という哲学的考察もさることながら(私は「現代資本主義社会」の構造に否定的です)、現実問題としていまは、世界的な殺虫剤企業バイエル社とシンジェンタ社のミツバチ殺し殺虫剤の「ネオニコチノイド」禁止の決定をした欧州委員会への不服申立てを取り下げさせることが喫緊の課題だと思います。

バイエル 
羽田空港第2ターミナルに設置されているバイエル社の屋外広告

1と月ほど前に池田香代子さんが講演で大分・日出に来県されたとき、日出から杵築の途中にある魚料理の店で昼食をご一緒しました。
 
池田さんとはいわゆるメル友(ただし、メーリングリスト)で、メル友であるけれども私は何度か(おそらく4、5回。あるいはそれ以上かもしれません)池田さんの思想を批判しました。しかし、その批判は次のような具合でした。
 
池田さんと私は変な縁があります。私と池田さんはともに北九州の若松の出身で、私が小さかった頃の家の大家は「池田」という姓の人だったのですが、この池田さんはその近隣の大地主であると同時に酒やしょうゆの醸造や風呂屋や米屋も営む手広い商いで財を成したその土地では有名な大金持ちでした。池田さんの屋敷の前には私たちが「大池」と呼んでいた池がありましたが、その池で私たち子どもは魚釣りをしたり、泳いだりして遊んでいました。私は高校生の頃までは池田さんの営む銭湯に毎日のように通いました。幼い頃、米穀通帳を持って池田さんの米屋に1升、2升の米を買いに行かされもしていました。その池田さんの屋敷の長男坊の娘さんが池田香代子さんなのですね(ただし、池田さんは東京生まれ、東京育ちですが)。一度、池田さんが講演で大分に来られたときその話を少しばかりしました。池田さんとはまだまだケンカは続けなければいけないと私は思っていますが、しかし同時に池田さんは私にとって懐かしい人です。
http://mizukith.blog91.fc2.com/blog-entry-305.html
 
懐かしいケンカ友だちというのが私にとっての池田さんの役どころでした。池田さんが大学ではドイツ文学科に進み、種村季弘に師事したということも私にとってなんとなく心魅かれるものもありました。種村は若い頃私の好きな文芸批評家のひとりでもありましたから。
 
その池田さんに1か月ほど前にお会いしたとき、私は池田さんに「ツイッターの片言隻語は私は苦手です。やはりまとまった文でないと読む気がしない。ブログは再開しないのですか?」と聞いたことがあります。池田さんのお返事は「ぼちぼち再開しようかな」というものだったように思います。そして、池田さんはブログを再開しました。私は「楽しみ」がひとつ増えたような気になっています。

池田香代子 
池田香代子さんのブログ
この9月4日、最高裁大法廷は、いわゆる「婚外子差別」問題(「嫡出でない子の相続分は嫡出子の2分の1とする」という民法900条4号ただし書きの規定)について、「法の下の平等を保障した憲法に違反する」との違憲判決を出しました。明治時代から115年間続いてきた民法の規定の見直しにつながる違憲判決ですから、どういう立場から見るにせよエポックを画する歴史的な判決ということができるでしょう。そういうしだいで「婚外子差別」違憲判決について少しメモをしておきます(ただし、常套的なメモ程度であればメディアの報道などを参照すればそれですむことですから、ここではふつうの報道や解説とは少し違う観点からメモしておきます)。

婚外子差別2 
しんぶん赤旗(2013年9月5日) 
スペイン・マドリード在住のフリー・ジャーナリストの童子丸開氏(「陰謀論者」としても有名)が「米国とその同盟軍の軍艦がシリア沖に:海軍の配備は8月21日の化学兵器攻撃の『以前に』決められた」というカナダ、オタワ大学経済学教授ミシェル・チョスドフスキー氏の記事を翻訳紹介しています。
 
一方、その童子丸開氏翻訳の同記事への反論記事を兵庫県姫路市在住の泥憲和さんが書かれています。私は泥さんの反論の方に説得力を感じるものですが、順序としてはじめに童子丸開氏翻訳の「米国とその同盟軍の軍艦がシリア沖に:海軍の配備は8月21日の化学兵器攻撃の『以前に』決められた」(ちきゅう座 2013年9月6日)という記事をご紹介しておきます。
金光翔さん(韓国国籍の在日朝鮮人三世批評家・前『世界』編集部員)が「メモ28 」(「私にも話させて」ブログ)という記事で公益財団法人中東調査会発行の「中東かわら版」(第173号。2013年8月29日発行)に掲載されている高岡豊研究員の「シリア:化学兵器使用問題と軍事攻撃の可能性」というシリア情勢に関する分析記事を大変評価しています。
 
「シリアへの軍事介入をめぐる議論で残念に思っていたのは、(略)日本語で読める中東研究者・ジャーナリストのまともそうな発言が見当たらなかったことである。内藤正典の、この人研究者として大丈夫なのか、というツイッターの連投や、アジアプレスなどを見て、この種の類のものしかないのかと思っていたのである。しかし、(略)高岡豊研究員による「シリア:化学兵器使用問題と軍事攻撃の可能性」は、大変説得力の強いものであった」、
http://watashinim.exblog.jp/19574549/
 
と。
 
その高岡豊氏の論を金光翔さんのブログから少し孫引きしてみます。
 
「シリアの反体制派は、2011 年 3 月にいわゆる「アラブの春」の反政府抗議行動での扇動・動員の手法を模倣する形で反体制活動を開始して以来、一貫してアサド政権による「弾圧・虐殺」を大々的に宣伝し、それによって国際的な介入を招き寄せることによって政権打倒を図る戦術を採用してきたと思われる。このような戦術が採用された理由としては、チュニジアやエジプトなどの事例と異なり、反体制派が短期間に政権を圧倒するような動員を実現できなかったこと、宗派主義的な印象論によって「敵方」のレッテルを貼られたシリア軍や治安機関がアサド政権から本格的に離反する可能性が低かったことが挙げられる。」
 
「また、戦闘状況など、シリア危機の現場での推移を観察すると、アサド政権がこのタイミングで化学兵器を使用する合理性がまったくといっていいほど存在しない事実も指摘せざるを得ない。シリアでの戦況は、2013 年 6 月ごろからアサド政権の優位が確定的となり、米国のオバマ大統領が「状況悪化」に懸念を表明するほどになっていた。反体制派武装闘争が後退を余儀なくされている原因は、一般に信じられているような「国際的支援の不足」や「レバノンのヒズブッラーの本格的参戦」ではない。より現実的な原因は、2013年1月15 日付『ハヤート』紙が報じたように、反体制派戦闘員が行う略奪や強姦が一般のシリア人に避難を余儀なくさせ、人心を失ったこと、戦闘の主役となったイスラーム過激派が、実はアル=カーイダの一部に過ぎないことを自ら表明するとともに、反体制派武装集団同士、あるいはクルド人などのアサド政権以外の当事者との戦闘に明け暮れるようになったことであろう。」
http://www.meij.or.jp/members/kawaraban/20130829144610000000.pdf
 
高岡豊氏の論そのものは上記をご参照していただきたいのですが、私が金光翔さんの同記事で注目したのは金さんによって否定的に紹介されているアジアプレスの記事の方でした。金さんは直接アジアプレスの記事を紹介するのではなく、「Super Games Work Shop Entertainment」ブログの「シリア侵略戦争推進・応援メディアのアジアプレスは今すぐ事業停止して解散せよ」と題されたブログ記事を紹介しています。
龍谷大学名誉教授で元共同通信ベイルート特派員の経験を持つ坂井定雄さんがインターネット紙の「リベラル21」に「シリアへの介入は遅すぎたが、やるべきだ――大量虐殺と国土の破壊を続けるアサド政権」(2013.09.02付)という論攷を寄せられています。

シリア 
シリア西部ホムス近郊で行われた反政府デモ
(2012年2月13日 朝日新聞=ロイター)
 
坂井さんはその記事の中で次のように主張しています。
 
「米国のシリア攻撃は遅れているが、オバマ政権はやるだろう。その間にも、シリアでは航空機、戦車はじめ軍の兵器を(おそらく化学兵器も)総動員した市民の虐殺と街や村の破壊が続き、難民は増え続ける。国際社会は、もっと早く、軍事介入を含め最大限に積極介入し、シリア軍による市民の虐殺に歯止めをかける努力をすべきだった。国連安保理が常任理事国の拒否権で動けないときにも、軍事力を含む人道的介入(オバマ大統領はこの言葉を避けているが)をしなければならないケースがあるはずだ。今回のシリアのケースは、それに相当する、深刻な人道危機だと思う。」
 
「米国のイラク戦争の場合とは違う。イラク戦争は、大統領とネオ・コン(右翼的な新保守主義者)が支配したブッシュ政権が、軍と軍事産業界にも押されて強行した、中東での覇権とイラクの石油を握るための帝国主義的戦争だった。だから、世界中に「No!War for Oil」の抗議デモが拡がり、わたしも、できる限り「米国のイラク戦争反対」を戦った。いま、この、最も重要な違いに触れずに、まるで米国のメディアのコピーのような報道をしている、日本の新聞やテレビは情けない。」
 
「わたしは、1973年から76年まで共同通信のベイルート特派員をして以来、中東の独裁政権を見続けてきた。イランのパーレヴィ、イラクのフセイン、リビアのカダフィ、エジプトのムバラク・・・。その中で、シリアのハフェズ、バッシャール親子2代にわたるアサド独裁政権は際立って残虐だ。」
 
さらに坂井さんは以下のような理由をあげて「アサド独裁政権の際立った残虐性」を指摘しています。
 
「人口2,112万人のこの国でこれまでに、国連によると死者10万人以上。その8割~9割が政府軍の空爆、戦車と重火器による砲撃による犠牲者だと推定される。UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)に登録した国外難民だけで170万人、うち隣接するレバノン、ヨルダン、トルコに逃げて登録した人だけで166万人を超え、今日も増え続けている。それ以外に、もう一つの隣国イラクや中東諸国、欧州にまで避難した多数の人たちがいる。国内難民も100万人以上いて、難民の全体数は「数百万人」と国連は推定している。この一人、一人が、家族の命を失い、あるいはひどく傷つき、家庭を壊され、家を捨てて国外難民になった。これが、きわめて異常な、残酷な現実なのだ。」