キョウ ちくじもんだい
豊洲新市場に今なお残る煙突は東京ガスの工場跡地だったことを物語る

Blog「みずき」:加藤哲郎さんのWhat's New。今回の政治ウォッチングは東京都庁という現代の「官僚組織」の伏魔殿とそれを報道しないマスメディアの非ジャーナリズム体質の問題に迫っています。この問題について加藤さんはあるブログ記事を引用しています。「かつて東京新聞は、安井、東都政の伏魔殿を報道せず、大量の読者を失いました。そして中日新聞に買収されました。その反省が[最近の]東京新聞に蘇ったのだと私は感じていました。この東京新聞の決意を無視するならば、日本の報道の自由は衰弱するでしょう」。左の東京新聞の例はニュース・メディアが権力の監視者(Watch dogs)としての役割を忘失し、権力の番犬(guard dogs)と化したときのメディアの自滅の例というべきものでしょう。そうであってはならない。このかつての東京新聞の自滅の例を「すべてのメディアが肝に銘じ」るべきだ。今回の加藤哲郎さんの問いかけはそういうものでしょう。

【現代の伏魔殿と「陸軍中野学校」の復活】
かつて東京都庁が「伏魔殿」とよばれたことが、幾度かありました。戦前もそうでしたが、戦後でも1955年、
安井誠一郎知事のもとでの「七不思議」とよばれた、戦後復興過程での東京駅八重洲口開発、三原橋・数寄屋橋界隈の埋め立てに都庁の役人と業者が絡んだ汚職、『都政新報』に暴露され、東京地検が捜査に入りました。つづく東龍太郎都政では、高度経済成長から東京オリンピックの開発ラッシュ、都庁官僚の天下りと大企業との癒着・腐敗が、佐藤内閣期国政の「黒い霧事件」と重なり、1967年の美濃部亮吉革新都政の誕生を産みました。美濃部都政の福祉重視による財政難が攻撃され、旧内務官僚の鈴木俊一知事を就任させたといいますが、そのあたりから、もっと構造的で大規模な、都庁移転、臨海副都心や国家的・国際的イベントがらみの再開発という、巨大利権ビジネスの舞台が造成されました。それに、国政・都政政治家や大手ゼネコン・銀行・不動産業、電通・大メディアが群がり、今日では築地市場豊洲移転東京オリンピック関連施設が「伏魔殿」の温床となりました。首都直下地震液状化問題さえビジネス・チャンスにするのが、新自由主義時代の「伏魔殿です。

それが、リオ・オリンピック、舛添公私混同都政後の都知事選直後に
発火しました。もともと東京ガス工場跡地という生鮮食品を扱うには最悪の地盤に、いまや東京観光の目玉となった築地市場を豊洲に移転するための土壌汚染対策の手抜き工事が発覚し、連日テレビのワイドショーを賑わすスキャンダルになっています「食の安全・安心」にとって、重大な問題です。舛添都政が続けば11月に移転する予定だった「豊洲市場」は、完全に宙に浮きました。関連する東京オリンピック用道路工事や交通網計画も含め、真相解明と責任追及を進め、見直すべきでしょう。より重要なのは、盛り土の上に建つはずだった主要3施設の建設工事の入札落札率が、どれも1社のみの入札で99.9%だった問題落札・受注したのは清水・大成・鹿島を中心にした大手ゼネコン共同企業体。オリンピック工事の多くにも絡む、「伏魔殿」利権の常連です。オリンピック・カヌー会場「海の森水上競技場」も、落札率99.9%で大成建設に受注され、「官製談合」が疑われています。そこを追究していけば、元首相や「都議会のドン」の疑惑に、肉薄できます。情報公開と、ジャーナリズムの出番です。

ウェブ上で、
こんな記事を見つけました。「かつて東京新聞は、安井、東都政の伏魔殿を報道せず、大量の読者を失いました。そして中日新聞に買収されました。その反省が[最近の]東京新聞に蘇ったのだと私は感じていました。この東京新聞の決意を無視するならば、日本の報道の自由は衰弱するでしょう。」これは、すべてのメディアが肝に銘じ、心がけるべきでしょう。でも日本の「パナマ文書」報道は尻切れで、東京オリンピック誘致裏金疑惑は、「違法性なし」というJOCの手抜き調査結果をそのまま報道し、幕引きにされかねない調査報道の不足。そして、台風災害や北朝鮮核実験を背景にした安倍内閣支持率6割、それに乗じた防衛予算の増額、「陸上自衛隊情報学校」新設。 かの「陸軍中野学校」の復活ですが、無論IT時代に即して、「ネット情報をチェックして、自衛隊が自分たちの意に沿わない市民の情報をチェック、監視する」システムの構築です。これと「共謀罪」が結びつくと……、北朝鮮や中国の言論状況を嗤うことはできません。対岸の火事ではないのです。(加藤哲郎のネチズン・カレッジ2016.9.15

【山中人間話目次】
・平井玄さん」と小倉利丸さんのSEALDsや総がかり行動などに対する「苛立ち」と「違和感」
・澤藤統一郎さんのある種の丸山眞男論――天皇制の呪縛「権威への依存性」を断ち切れ
・社民党の頽廃と退嬰を改めて批判する――増山麗奈問題を巡って
・辛淑玉のみっともない弁明とある編集者の「辛淑玉さんへの決別状」。
・浅井基文さんの「朝鮮の第5回核実験と中露の公式反応」の指摘
・戦後71年。なにも変わらない。いや、情況はますます悪化している。正しく闘う者はいないか
・ある日の応答(内海信彦FB、鄭玹汀FB)
コクモノ
コクモノ

【金儲けをしたい人たちが勝手にこの国を支配している】
7月24日から8月9日とされるオリンピックの開催期間について、日本は、次のような文書を配って、東京の優位性を訴える誘致活動を行った。「この時期の天候は晴れる日が多く、且つ温暖であるため、アスリートが最高の状態でパフォーマンスを発揮できる理想的な気候である。」ジョークではない。2013年1月にIOCに提出された正式文書「
東京オリンピック立候補ファイル」の中の一節だ。
「五輪の仕事ができたので」。被災地から社員を異動させる大手ゼネコンの言葉です。2020年東京五輪で復興が遅れかねない。被災42市町村長の6割が、そんな懸念を抱いています
(「朝日新聞メールニュース」2014年3月3日より)。
 
東日本大震災の復興も、福島第一原発被災の復興も、東京オリンピックも、畢竟、大企業と大手ゼネコンの金儲けのためか。自民党政治とは所詮そういうものだ、と疼うの昔から見定めはついてはいるものの、この国の土建政治の仕組みに深い絶望の思いを改めて抱かざるをえません。
 
このようなことになるのははじめからわかりきっていました。それを昨年の10月15日に国会は「東京五輪成功決議」なるものを

「今なによりも、東京都が国と一体となり力を注ぐべきは、被災者の生活再建、被災地の復興、放射能汚染への対策であり、地震に強い防災・福祉のまちづくりです。(略)わが党区議団は、スポーツの祭典であるオリンピック、パラリンピック、そのものに反対しているのではありません。しかし、都民の深刻なくらし、被災地の窮状の救済こそが最大最優先課題である都政において、莫大な財政負担をともなう今回のオリンピック招致は行うべきではありません」(日本共産党豊島区議団

という反対意見が根強くあった共産党を含めて衆院は全会一致、参院は無所属議員ひとりを除くほぼ全会一致の賛成多数で採択しました。自民党政治ばかりでなく、その自民党から共産党までを含む政治総体としての責任も非常に重いのです。
 
2020年の東京五輪について、東日本大震災で大きく被災した岩手、宮城、福島3県の42市町村の首長の約6割が、復旧・復興にマイナスの影響を与えるとみていることが朝日新聞のアンケートでわかった。五輪の招致活動では震災復興が強調されたが、資材や人手の不足による復旧・復興工事の停滞への懸念が広がっている。(略)
 
五輪の仕事ができたので、2人を帰します」大手ゼネコンの担当者が福島県南相馬市の建設業者でつくる復興事業協同組合に告げた。両者は除染を一緒に進めてきた。五輪開催が決まった3カ月後。昨年12月の話だ。ゼネコンの広報は「単なる人事異動。被災地の人員を減らすわけではない」。しかし、組合幹部は「現場の士気は下がった」。(略)
 
ゼネコンは力が入る。清水建設は副社長をトップとする連絡会を立ち上げた。「五輪関係だけで5年間で1200億円、受注できそうだ。全社的には16年度が受注のピークになるだろう」(経営企画部)竹中工務店は特別チームを結成。大成建設は担当役員をあて、競技施設や宿泊施設の営業に力を入れる。(略)あるゼネコン幹部は断言する。「縮んだ業界が需要の急拡大についていくのは難しい。五輪の影響は復興に確実に及ぶ」朝日新聞 2014年3月3日
私は先のエントリで安倍首相が「嘘に嘘の上塗りを重ね」た上で掠めとった招致決定でしかない東京オリンピックを成功させるための国会の「成功決議」なるものに無所属議員ひとり(山本太郎参院議員)を除いて衆・参全議員が賛成したオール与野党(下村博文文科相のいう「オールジャパン」)、その中でもとりわけ野党の最左翼としての共産党を「『大政翼賛』とはまさしくこういう風景ではなかったか?」、とその現代版「大政翼賛」体制への加担を厳しく批判しておきました。

*山本太郎参院議員の今回の「成功決議」反対の投票行動には私はもちろん賛成しますが、同議員が3・11福島原発事故以来、元自由報道協会代表の上杉隆氏やIWJ(インディペンデント・ウェブ・ジャーナル)代表の岩上安身氏、反原発活動家で作家の広瀬隆氏らとともにいわゆる放射能デマを拡散し続けてきたし、そのことをいまだ反省しえていないことについては強い批判を持っています。したがって、私は、今回の山本氏の行動をもって同氏を評価するのは、木を見て森を見ないたぐいの評価でしかないだろうと思っていますし、同氏についてはもう少し注視を続けた上での評価が必要だろうと思っています。そういう意味で一部にある山本太郎氏を英雄視する見方には私は賛成しません。

福島原発 地下汚染水の視察2 
福島第一原発1、2号機間の護岸付近を視察する安倍首相(手前)
(朝日新聞)
 
そうした私と同様の共産党批判は少なくない同党フォロワー(同党支持者とは限らない)からも提起されていたようで(村野瀬玲奈の秘書課広報室 2013年10月18日)、そうした少なくないフォロワーの共産党批判も念頭において、ということもあるのでしょう。この問題について、同党副委員長の小池晃参院議員がIWJの岩上安身氏のインタビュー(2013年10月16日)に答えて次のような発言(要約。19:14頃~)をしています。
 
「決議案の文章に復興は成し遂げられたというような内容があったのでその文言の削除を求め、環境に配慮するなどの文言も入ったので賛成した。オリンピック招致決定までは予算の優先順位として(東京都ではたとえば)特別養護老人ホームに4万3000人が入れないという問題を解決するのが先ではないか(猪瀬都知事は東京都には4000億円のキャッシュがあると自慢していたがそれだけのキャッシュがあるなら特養を作れよ)という主張をしていた。ただ、IOC総会で決定した以上は国際社会の決定なので、その決定は尊重する必要がある。安倍首相はIOC総会で「汚染水はブロックされている」「コントロールされている」というとんでもないことを言ったがあの発言は許せない。が、同時にそのことを国際公約した以上総力を挙げて必ず責任を取ってもらう、ということが必要になってくると思う。」
 
しかし、上記の共産党副委員長の小池晃参院議員の発言には意図的で恣意的な論点操作があるように私は思います。それは「国際社会の決定」というある種権威づけのコンセプトを導入することによって、あたかも今回の同党の国会での東京オリンピック「成功決議」採択への賛成が国際的に見ていかに条理、道理のあるものであるかということを国民に印象づけようとする論点操作をしているということです。
 
3日前の15日の臨時国会開会の日に衆参両院で東京五輪「成功決議」が衆院は全会一致、参院は無所属の山本太郎氏を除くほぼ全会一致の賛成多数で採択されました。
 
衆参両院で東京五輪成功へ決議 「国民に夢と希望」
(共同通信 
2013/10/15)
 
衆参両院は15日午後の本会議で、2020年東京五輪とパラリンピックの成功に向けた努力を政府に求める決議をそれぞれ採択した。衆院は全会一致、参院は無所属の山本太郎氏が反対した。/決議を受け下村博文文部科学相は「オールジャパンで推進することが重要だ。成功に向け最善の努力を図る」と述べた。/決議は衆参両院とも同じ内容。五輪開催を「スポーツ振興や国際平和への寄与にとって意義深い」と位置付け「元気な日本へ変革する大きなチャンスとして国民に夢と希望を与える」と強調した。

しかし、2020年夏の東京オリンピック招致決定は、「プライムミニスター・オブ・ジャパン」という肩書でIOC総会に乗り込んだ安倍首相が「嘘に嘘の上塗りを重ね」た上で掠めとった東京五輪招致決定であり、その「成功」を国会をあげて祝い、その「成功に向けた努力を政府に求める」決議をするに値するような代物ではまったくありません。

東京オリンピック 
東京オリンピック招致決定の瞬間

おもてなし 
滝川クリステルとおもてなし
 

安倍首相がIOC総会で語った「福島第一原発の状況はコントロールされている」「汚染水による影響は福島第一原発の港湾内の0.3平方キロメートル範囲内で完全にブロックされている」という発言はまったくの虚偽であることは多くのメディア、専門家、識者がこぞって指摘していることです。
 
メディア
 
専門家
 
識者
嘘で掠めとった東京五輪招致
(澤藤統一郎の憲法日記 2013年9月10日)
 
その嘘で掠め取った東京五輪招致にすぎないものを、それも福島で生じた原発災害処理の問題はまだ終わっていない。というよりも始まったばかりと言ったほうがよい。原発汚染水問題、除染問題には何兆円、何十兆円かかるかもしれないという天文学的な財源確保の問題も横たわっている。また一方では原発被災者への災害補償という喫緊の課題も事実上店晒しにされたままの状態で放置されている。こうした状況の中でなにゆえの「成功決議」ということになるのだろうか。それも衆院は全会一致、参院でもほぼ全会一致という大政翼賛ぶり。正気の沙汰とは思えません。
先に私は「『東京オリンピック招致決定』パロディ第2弾:東京オリンピック開催は『愚民政策』というもうひとつのパロディと『オリンピックファシズム』の道への警告」という記事を書き、その中で、私たちの国の「オリンピックファシズム」の道への傾斜化に警鐘を鳴らす坂井貴司さん(福岡県)の「東京オリンピックに対する態度」(CML 2013年9月9日)という論をご紹介しておいたのですが、その坂井さんの論とも呼応する警鐘を鳴らす人がさらにもうおふたかたいらっしゃいました。おひとりは評論家の井上静さん。もうおひとかたは本名不詳のZED氏。どちらも見るべき論だと思いますのでご紹介させていただこうと思います。


日本の黒い夏 
日本の黒い夏─冤罪

おひとり目、井上静さん。
 
オリンピックは冤罪を生む(楽なログ 井上静 2013-09-08) 
25年もかけて育てた葛西臨海公園の自然を、オリンピックのために壊さないで!」という署名の呼びかけがあります。ご紹介させていただこうと思います。

葛西臨海公園 
葛西臨海公園にて 1
 
葛西臨海公園3
葛西臨海公園にて 2

その署名の呼びかけ人の綿引静香さんの訴えは以下のとおりです。
 
江戸川区にある葛西臨海公園は、東京都が世界に誇る都市の中の自然公園です。公園の池や草むらや松林には、野鳥226種、昆虫140種、クモ80種、樹木91種、野草132種、絶滅危惧種に指定されているクロツラヘラサギもいます。多くの家族が憩い、自然とふれあい、サイクリングや散歩道を楽しみ、大都会の疲れを癒しています。
 
しかしその素晴らしい環境が壊されようとしています。オリンピックのカヌー競技場の建設が、葛西臨海公園に指定されているからです。
 
葛西臨海公園は埋め立て地を造成して24年かけて生態系が形成されました。一度壊した自然を東京は完全とまでは言わないまでも復活させました。こんな素晴らしい大都会の癒しの場を壊したくないのです。
 
25年です。
 
たとえば、75年の人生だったとします。オリンピックというたった16日間のために人生の1/3を費やしてきた時間を捨てることになるのです。
 
25年かけてつくってきたものを一瞬にして壊すのです。
 
私はオリンピックには反対していません。でも、このカヌー競技場の提案に関しては、きっともっと良い進め方があると思います。
 
猪瀬東京都知事、東京招致を成功させた皆さま。どうかカヌー競技場の建設を葛西臨海公園ではない場所で考え直してください。私たちから、かけがえのない緑や動物や自然を奪わないでください。
 
どうか、お願いします。 
 
綿引 静香
 
 
追伸 私は、「佐藤栄記の自然観察日記」と言うブログの記事がFaceboo
kでシェアされていたことがきっかけで、この問題について知りました。以下のリンクからご覧になれますので、ぜひ読んでみて下さい。既に28万人以上の方がアクセスしているそうです。


綿引静香さんが追伸に記載されている「佐藤栄記の自然観察日記」というブログ記事も読んでみました。ご自身で記されていることですが、佐藤栄記さんは「動物ジャーナリスト」を本職とされている方のようです。そのせいでしょう。ブログ記事のあちこちに散りばめられている葛西臨海公園に生息する動物たちの写真は絶品です。この写真を見るだけでもブログの頁を開いてみる価値はありそうです。
 
ただし、私も追記しておきたいと思います。
 
私は、綿引静香さんや佐藤栄記さんと違って2020年東京オリンピックの開催そのものに反対です。理由は以下に書いています。この弊記事もご参照いただければ幸いです。
 
 
上記の弊記事にも記していることですが、2020年東京オリンピックの開催のために費やされる膨大な予算はそっくり福島復興のための予算に振り向けられるべきだというのが私の考え方です。だから、2020年東京オリンピック開催に反対。しかし同時に東京・葛西臨海公園の再開発にも大反対です。綿引静香さんと佐藤栄記さんの訴えはずしりという感じで私の胸にも届きました。私は綿引さんと佐藤さんの訴えに連帯したいと思います。

熊田一雄さん(愛知学院大学文学部宗教文化学科准教授)が今回のIOC総会における東京オリンピック招致決定に関して、「滝川クリステルと『おもてなし』」(11日段階。改題されていまは「滝川クリステルと性の政治学」)という題の興味深い文章を書いています。

おもてなし 
滝川クリステルとおもてなし
 
初稿は以下のような文章でした。
 
「おもてなし」。滝川クリステルによる五輪招致プレゼンテーションには、オリエンタリズムとセクシズムが露骨に見られました。
 
仏語にて/日本の美女が/お・も・て・な・し
 
滝川は/ゲイシャみたいに/暮らしてる
 
一日経って「滝川クリステルと『おもてなし』」は「滝川クリステルと性の政治学」という題に改題されていました。文章も付加も含めて少し改稿されています。
 
「おもてなし」。滝川クリステルによる五輪招致プレゼンテーションには、オリエンタリズムとセクシズムが露骨に見られました。
 
仏語にて/日本の美女が/お・も・て・な・し
 
フジヤマで/ゲイシャみたいに/暮らしてる
 
ポストコロニアリズムの古典であるフランツ・ファノンの「黒い皮膚・白い仮面」をもじっていえば、滝川さんは、「黄色い皮膚・白い仮面」の女性だということです。正確には彼女は日仏のハーフですが、そのことは、IOC委員の多数派である白人(男性)にアピールするためには「純血日本人」であった場合よりも有利に働いたと思います。また、サイードの「オリエンタリズム」が論じるように、西洋人は自分たちを男性に、東洋人を女性になぞらえ、前者を後者の優位に位置づける傾向があります。「おもてなし」を強調することは、「エキゾチックな東洋の女性的文化の魅力」を強調することとして、白人(男性)の無意識の自民族優越主義(および男性中心主義)にアピールしたと思います。
 
後半の句は、オリエンタリズム(西洋人による東洋表象の仕方)を皮肉って、「クリスタル」と「暮らしてる」を掛けたのです。
 
初稿では「滝川は」だったところが改稿では「フジヤマで」になっています。
 
「滝川は」がなぜ「フジヤマで」に変わったのか?
 
一昨日、私は、上記の熊田さんの文章をめぐってメールで少しやりとりをしたのですが、その際の熊田さんの説明によれば、「後半の句は、最初はオリエンタリズム(西洋人による東洋表象)を皮肉って「フジヤマで/ゲイシャみたいに/暮らしてる」として、「クリスタル」と「暮らしてる」を掛けたのですが、わかりにくいかと思い、「フジヤマで」を「滝川は」に代えた」とのことでした。が、昨日改稿された文章を見ると「フジヤマで/ゲイシャみたいに/暮らしてる」となっていて初稿案に戻っています。「フジヤマで」では滝川クリステルを皮肉っていることが読者にはやはり少しわかりづらいかと思い、あえて熊田さんとの昨日のやりとりをメモしておくことにしました。
 
さて、そういうことはともかくとして、滝川クリステルの五輪招致プレゼンテーションを「オリエンタリズムとセクシズム」と一言で言表したのは秀逸な表現です。この表現で東京五輪招致の本質が一気に見えてくる感があります。さらに「オリエンタリズムとセクシズム」をポストコロニアリズムの問題に敷衍させているのも秀逸な視点だと思いました。
 
上記の滝川クリステルの「お・も・て・な・し」はオリンピックと賄賂性の問題とも関連してくるでしょう。
 
このことについて、「世に倦む日日」の「東京五輪の欺瞞 - 子どもと被災地を出汁にする正統化」(2013-09-10)には次のような記載があります。
 
最後に、賄賂と言えば、滝川クリステルが「おもてなし」のアピールをして、IOC委員に向かって両手を合わせて拝むパフォーマンスがあった。評判になり話題になっているが、実際に、視覚的に大きな効果があったことは間違いない。心憎い演出だ。昨夜(9/9)のNHKのクロ現で、IOC委員の一人が日本招致団のプレゼンテーションを高く評価する場面があった。あの動作には意味があり、要するに、これだけたくさんカネを撒いて、約束を取り付けたのだから、裏切ったりしないで票の見返りを下さいねと、最後のお願いをしているのだ。念押しのシグナルなのである。よく考えた構成であり、代理店のプランナーを褒めていい。プランナーの秀逸なところは、こうして日本と世界の人々に、「五輪招致活動」なるものの生臭い金権腐敗の実態を絵で暗示している点にある。クロ現の映像の中では、欧州の元IOC委員が出て来て、今でも買収工作があり、過去からの汚職文化が断ち切れていない事実を正直に告白していた。
 
引用者注:「クロ現」とは、おそらくNHKの「クローズアップ現代」(毎週月~木曜放送。午後7:30~同7:56)のこと。 
東京オリンピック招致決定に関するいわゆる識者(注)の意見が出揃った感があります。
 
注:ここで「識者」という語句に「いわゆる」という修飾語を冠しているのはチョムスキー(「現代言語学の父」と評されるアメリカの哲学者、言語学者)の次のような言葉が念頭にあってのことです。「イデオロギーの分析の場合、視野の広さと知力とがいささかあり、それに健全なシニシズムがあればたくさんだ。(略)門外漢にわからないような特殊な知など、これっぽっちも必要ではない。(略)第一そんなものは存在しない」(「社会分析と『専門家』」。『チョムスキーとの対話 政治・思想・言語』(ミツ・ロナ編、三宅・今井・矢野訳、大修館書店、1980年)所収)。
 
私は展開されているその論に決して反対というわけではありませんが、その論者の次のような言葉、あるいは一節には違和感のようなものを感じました(そのようにものわかりがよくていいのだろうか?)。

東京オリンピック 
東京オリンピック招致決定の瞬間
 
「オリンピックはある種の『お祭り』ですから、それが開かれる以上、大いに盛り上がって被災者を励まし、震災復興を後押しするものになって欲しい」(五十嵐仁の転成仁語「56年ぶりに開かれる東京オリンピックが抱える課題とは」2013-09-08)
 
「『自信と夢を取り戻す』という喜び一色のムードに水を差すつもりはない。」(水島宏明(法政大学教授・元日本テレビ「NNNドキュメント」ディレクター)「安倍首相が五輪招致でついた『ウソ』 “汚染水は港湾内で完全にブロック” なんてありえない」2013年9月8日)
 
「2020年のオリンピック開催地が東京に決定されたということで、喜んでいる方も多いのではないでしょうか?」(山下かい(日本共産党大分選挙区参院選候補者)「オリンピックの東京開催決定について。」2013-09-09)
報道によれば、安倍首相は、昨日7日夜に開かれたIOC(国際オリンピック委員会)の総会の「2020年夏のオリンピックの東京招致を目指すプレゼンテーションで」、「汚染水問題に触れ、『福島第一原発の状況はコントロールされている。東京にダメージを与えることはない』と述べた上で、『2020年のオリンピックが安全にきちんと実行されることを保証する』と訴えました。また、この問題についてIOC委員から質問が出たのに対し、次のように答えました。『結論から申し上げれば、全く問題無いということであります。汚染水による影響は、福島第一原発の港湾内の0.3平方キロメートル範囲内で完全にブロックされています』。その上で安倍総理は、『健康問題については今までも、現在も、将来も全く問題ないと約束する』と強調しました」。さらに「プレゼンテーションの終了後、安倍総理は記者団に対し『不安は払拭できたと思う。一部に誤解があったと思うが誤解は解けたと思う』と語りました」(TBS「News i」最終更新:2013年9月8日(日) 2時18分)。
 
他のメディアも同様の報道を流しています。こちらは、毎日新聞の報道(「20年五輪:IOC総会プレゼン 首相の発言要旨」2013年9月8日)。
 
しかし、多くの人が指摘していることですが、この安倍首相の「福島原発安全宣言」はうそにうその上塗りを重ねたものにすぎません。
 
第1に安倍首相は汚染水問題について「汚染水による影響は、福島第一原発の港湾内の0.3平方キロメートル範囲内で完全にブロックされています」と述べていますが、その「完全にブロックされて」いるはずの「湾は閉鎖されていない」という写真付きの指摘があります。 また、「太平洋のほぼ全域で事故前の10倍のセシウム計測」という指摘もあります。「完全にブロックされて」いるのであれば、「太平洋のほぼ全域で事故前の10倍のセシウム計測」という事態が生じるはずがありません(注)。安倍首相の説明はまったくの大うそです。