G20首脳会合 カナダ・トロント=共同

先のエントリーでは天安艦沈没事件について「韓米の共同捏造」が著しく疑われる一方の当事者ともいうべき米国務省報道官が「北朝鮮が広く非難されている天安艦沈没は国際法違反行為ではない」と表明した情報をお伝えしましたが、今度はまさに韓国側の調査団の当局者が先月20日に北朝鮮犯人説の「決定的証拠」のひとつとして発表した「北製魚雷設計図」なるものはニセモノであったことを「自白」しました。

■‘北 魚雷’とんでもない設計図 発表した(ハンギョレ・サランバン 2010年06月30日)
日本語版:http://blog.livedoor.jp/hangyoreh/archives/1196845.html
原文:http://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/428069.html

■韓国:魚雷の設計図は別物「担当者のミス」(レイバーネット 2010年6月29日)
日本語版:http://www.labornetjp.org/worldnews/korea/knews/00_2010/1277837302366Staff
原文:http://www.newscham.net/news/view.php?board=news&nid=57470

■天安艦事件検証(28)北製魚雷設計図は嘘だった(河信基の深読み 2010年6月30日)
http://blogs.yahoo.co.jp/lifeartinstitute/41602768.html

「韓国国防部主導の国際軍民合同調査団の『調査報告』を馬鹿正直に信じているのは今や日本の政府・マスコミぐらいで、韓国では『嘘だらけ』と嘲笑され、信用失墜している。」(河信基の深読み 2010年6月30日)状態です。

先日の26日にトロント近郊のムスコカで開かれた主要国首脳会議(G8サミット)で採択された首脳宣言について日本のメディアは相変わらず「G8、北朝鮮を事実上非難」(朝日一面)、「G8北朝鮮を非難」(毎日)、「韓国哨戒艦沈没事件で北朝鮮を名指しで非難」(読売)などと書きたてましたが、首脳宣言では北朝鮮への直接的な名指し批判はありませんでした。続いて翌日の27日に発表された20か国・地域首脳会議(G20サミット)の首脳宣言と議長声明では天安艦問題にはまったく触れられていません。それが日本のメディアにかかれば上記の具合なのです。わが国のメディアの総白痴化現象は日ごとに深刻さを増すことはあっても一向に改善の兆しは見られません。メディアとはなんぞや、ジャーナリズムとはなんぞや、などと論じるのもアホらしくなるほどの為体(ていたらく)です。嘆息、嘆声あるのみ(もちろん、私たちのクニのメディアである以上、私たちは嘆息ばかりしてもいられないわけですが)。

参考:
天安艦事件検証(27)「テロ」再指定断念→対話へ軌道修正(河信基の深読み 2010年6月29日)
天安艦事件検証(26)G20は天安問題無視(河信基の深読み 2010年6月28日)
天安艦事件検証(25)G8でロシアが反対を貫く (河信基の深読み 2010年6月27日)

とりわけ酷いのはわがクニの民主党政権、その政権を指揮する菅首相の見識ともいえない愚識です。毎日新聞の報道によれば、菅首相はG8サミットの首脳宣言を巡り、韓国哨戒艦沈没事件で北朝鮮への非難が盛り込まれたことについて「私が最初に発言を求められ、北朝鮮による哨戒艦沈没は許せない行為。G8としても毅然とした態度で臨むべきだ」と訴えたといいます。


嘆くべし。悲しむべし。呆れるべし。沖縄普天間基地問題について「日米合意を踏まえ」る(民主党代表選立候補表明)、「米国との再交渉や閣議決定の見直しを行うつもりはない」(衆議院代表質問)民意無視発言もそうですが、こうした愚昧な総理をリーダーに掲げる民主党政権を許してなるものか、この参院選で勝たせてなるものか、と私は改めて思います。

オバマ大統領とクリントン国務省長官

訪米中の李大統領には横っ面を叩かれたような衝撃であったろうが、米国務省のクローリー報道担当次官補は28日、「北朝鮮が広く非難されている天安艦沈没は国際法違反行為ではなく、北朝鮮をテロ支援国家リストに入れることを正当化できない(The sinking of a South Korean warship widely blamed on North Korea was not an act of international terrorism and does not justify putting Pyongyang back on a U.S. blacklist」(Reuters)と述べ、テロ支援国家再指定を断念したことを明らかにした。
                          (「河信基の深読み」2010年6月29日付より)

もう少し詳しくは下記をご参照ください。

天安艦事件についてあらたな展開の続報です。

それ以前の天安艦沈没事件についての詳報については下記をご参照ください。

■天安艦沈没事件 ―最終報告書発表以後の日韓の重要な論攷( 2010年5月29日)
■天安(チョンアン)艦沈没事件について ―メディアは総白痴化したのか!?( 2010年5月23日)

さて、あらたな展開とは下記の3点のことを言います。

第1点。いささか旧聞のことに属しますが情報整理のために挙げておきます。「北魚雷説」という「北風」で勝負をかけた韓国の与党ハンナラ党が地方統一選挙で惨敗を喫したこと。その惨敗の大きな原因のひとつに韓国軍主導の軍民4か国合同調査団の最終報告書に多くの韓国市民が疑問を抱いたことが挙げられています。

第2点は、天安艦沈没事件を調査していたロシアの専門家チームが北朝鮮魚雷説を否定した、ということ。

第3点は、米側からも韓国の調査結果を覆すような情報が漏れ始めた、ということ。AP通信は5日、「天安沈没直前、75マイル(120キロ)離れた海域で、米軍の駆逐艦2隻とその他の軍艦が韓国海軍の潜水艦を対象にした対潜訓練をしていた。クライトン在韓米軍スポークスマンは『訓練は3月25日午後10時に始まり、翌日午後9時に終了したが、その理由は天安が爆発したためだ』と語った」「匿名の米国防総省当局者が『天安事件は意図された攻撃と言うよりも、北の跳ね上がり分子の仕業か、単なる事故、もしくは訓練の不手際で起きた可能性がある』と述べた」と報道した、ということです。

第1点については下記記事のURLをご紹介することにとどめておきます。ご参照ください。

与党を惨敗に追い込んだ韓国の若者パワー(日本ビジネスプレス 2010年6月4日)

第2点については下記翻訳記事をご紹介しておきます。

「天安艦」事件について現地で調査を行なったロシア調査団の見解に関する記事が、今朝の韓国ビューズニュースの記事で報じられました。これさえも「誤報」だと言われれば返す言葉もありませんが・・・ 翻訳してご紹介します。蔡鴻哲(Chae Hong-Cheol)

ロシア調査団「天安艦沈没、北犯行の証拠なし」と言明
ロシア、韓国へ安保理協力せずと通報?李明博「天安艦外交」沈没
(韓国ビューズニュース 6月9日)

我が国の要請で訪韓し、天安艦沈沒原因を調査したロシア専門家チームが調査結果として、《北の犯行と断定することはできない》という立場を我が政府に通告して来たという報道が相次ぎ、李明博政府の「天安艦外交」が沈没の危機に陥っている。

李明博政府はこの間、李明博大統領とロシア大統領との通話などを根拠に、まるでロシアが韓国支持に回ったように主張して来たため、その衝撃はより大きいようだ。

読売新聞、時事通信など日本のマスコミは一斉にロシア・インターファックス通信と日本の外交消息筋などの言葉を引用してこのように伝えた。

インターファックス通信は8日、ロシア海軍首脳部の言葉を引用して、《韓国天安艦沈沒事件に対する韓国側の調査結果を検証したロシア専門家チームが韓国側調査結果では北朝鮮による犯行だと断定することができないという結論に達した》と報道したと読売新聞が8日の夜報道した。

ロシア専門家チームは合同調査団の報告書と天安艦船体を調査したが、《北朝鮮が関与したとするにはあまりにも証拠が弱い》と判断したとインターファックス通信は伝えた。

読売新聞は、《これによって今後の国連安全保障理事会で天安艦案件が扱われる場合、ロシアは消極的な姿勢で臨む可能性がある》と見通した。

時事通信も今日の夜明け、匿名の外交消息筋の言葉を引用して、《ロシアが韓国の民軍合同調査結果だけをもっては北朝鮮の犯行だと断定することができないという見解を韓国側に伝え、国連安保理を通じての対応措置決定に消極的姿勢を見せた事実が7日明らかにされた》と報道した。

消息筋によれば、ロシアのボロダフキン・アジア太平洋担当外務次官は去る3日、対北制裁に対する支持を要請するためにモスクワを訪問した韓国外交通商部のウィ・ソンラク平和交渉本部長に対し、《韓国の調査結果が北朝鮮の責任を問うことができる完璧な証拠にはならない》という見解を表明していた。

通信は、《韓国政府は去る4日、国連安保理に天安艦事件を提訴したが、中国が強硬に反対しているし、ロシアもこれに同調しているため北朝鮮に対する制裁と非難をもった決意案の採択は困難な情勢となった》と分析した。

これに先立って去る4日にも、香港鳳凰衛星TVは夕方のニュースを通じて、《天安艦事件を調査するために訪韓したロシア専門家チームが調査を終えて帰国しながら、随行したロシア人記者は「韓国が決定的根拠として提示した北朝鮮魚雷の信憑性などに対して、多くの疑問を申し立てた」》と報じた。

強制連行・強制労働犠牲者を考える北海道フォーラム
共同代表 蔡 鴻 哲(Chae Hong-Cheol)

第3点については上記記事に対する私の応答記事を下記に掲げておきます。ご参照ください。

松元さんが天安艦沈没事件を調査していたロシアの専門家チームの「北犯行の証拠なし」という情報を紹介してくださっていますが、もうひとつ、AP通信が「匿名の米国防総省当局者が『天安事件は意図された攻撃と言うよりも、北の跳ね上がり分子の仕業か、単なる事故、もしくは訓練の不手際で起きた可能性がある』と述べた」(2010年6月5日付)と報道していることも注目すべき情報だと思います。

朝鮮問題ウオッチャーの河信基氏はAP通信のこの報道について「李明博政権と距離を置きはじめた米側からも、韓国の調査結果を覆すような情報が漏れ始めた」注目すべき情報だ、と分析しています。

「注目すべきは、APが「匿名の米国防総省当局者が『天安事件は意図された攻撃と言うよりも、北の跳ね上がり分子の仕業か、単なる事故、もしくは訓練の不手際で起きた可能性がある』と述べた」と伝えていることだ」(河信基の深読み 2010年6月7日)

詳しくは下記ブログ記事をご参照ください。

天安艦事件検証?ロシア調査団が北魚雷説否定(河信基の深読み 2010年6月7日)

なお、韓国のハンギョレ新聞(英語版)がこのAP通信記事を詳しく報道しています。

S.Korea-U.S anti-submarine drill conducted night of Cheonan sinking(「天安沈没の夜、米韓で対潜水艦軍事訓練を行っていた」ハンギョレ新聞英語版 2010年6月8日付)

上記の邦訳を下記に転載しておきます。なお、河氏が指摘しているAP通信に匿名の米国防総省当局者が語ったという上記の注目箇所“may not have been an intentional attack at all, but the act of a rogue commander, an accident or an exercise gone wrong.”については河氏の訳によった方が問題の本質をつかみやすいと思います。

ハンギョレ新聞(英語版)の日本語訳(さとうまきこさん)

■「天安沈没の夜、米韓で対潜水艦軍事訓練を行っていた」(ハンギョレ新聞英語版 2010年6月8日付)

 「在韓米軍(USFK)は6月6日(日)、天安沈没の20分前に韓国軍と米軍とで、韓国の潜水艦が攻撃目標の役割を演じる対潜水艦訓練を(*沈没現場から)139km離れた場所で、行っていたことを公式に認めた。沈没以来初めて、韓米合同訓練の間に明確には何が行われるのかを具体的に話したことになる。

 AP通信は韓国現地時間土曜日(5日)に、天安沈没の前、一隻の韓国潜水艦が敵の役割を演じてそれを米軍の駆逐艦、その他の船で追跡する訓練をしたことを、それを話した米軍士官の名前を出して報道した。

 これに応じて、在韓米軍広報官ジェーン・クリクトン陸軍大佐は、その訓練が3月25日の午後10時に始まり、天安の船上での爆発のため、26日の午後9時に終了したと認めた。(*訳注「船上での」に注意: ...ended at 9 p.m. on March 26 due to the blast aboard the Cheonan.)

AP通信は、ベンニョン島付近でその日何が起こったかについてはまだ疑問点がいくつかあると、西欧の専門家が語ったことを伝えた。特に、この問題を話す権限はないからと匿名希望で語った一人の士官は、天安の沈没は「意図的な攻撃ではまったくなく、荒くれの指揮官の行為か事故、あるいは訓練の失敗であったかもしれない」と語った。

 AP通信は、その対潜水艦訓練は、3月初旬から11日間続いたコンピュータ・シミュレーションであるキー・リザルブ(コンピュータでの指揮)訓練のあと3月中旬に始まった、ファウル・イーグル(韓米軍事合同訓練)の一部であった。ファウル・イーグルには米海兵隊の実射訓練、戦闘機攻撃、都市型戦および対潜水艦訓練が含まれる。韓国防衛省のWon Tae-je広報官は、7日の定例ブリーフィングにて「3月26日午後2時から午後9時まで、北朝鮮の特別作戦部隊が海から侵入するのを阻止するという訓練が行われ、その間午後5時までずっと、対潜水艦訓練も行われていた」と語った。「午後9時以降、その訓練は終了し、従事していた様々な部隊は、命令により夜間パトロールを行っていた。」

 Won広報官はまた、この訓練は天安沈没の現場から170km離れたところで行われたので、沈没事件とは何の関係もなかったと語った。韓国と米国のそれぞれの説明において、なぜ訓練の地点が異なっていたかについて、ひとりの軍事専門家は、その距離差は海での移動型海洋訓練が数十キロの範囲に渡って行われるためであるかもしれない、と述べた。

*注:「キー・リザルブ」は指揮所演習、「フォール・イーグル」は実動訓練、韓国風に言うと「野外機動演習」です。しかしこれは一体として行われています。」(「へいけんこんブログ」2008/4/18)
http://heikenkon.cocolog-nifty.com/blog/2008/04/post_0fc8.html?no_prefetch=1

さて、韓国民軍合同調査団の最終報告書発表以後の重要な論攷の第1としてあげるべきは、なんといっても同合同調査団の韓国の専門委員3人のうちのおひとりであった韓国の有力なインターネット・メディア「サプライズ」代表の申想哲(シン・サンチョル)委員の下記のアメリカのヒラリー・クリントン国務長官宛の手紙の形をとった「“There was no Explosion. There was No Torpedo.”(爆発も魚雷もなかった)」という論攷でしょう。



シン委員は上記の論攷(ヒラリー・クリントン国務長官宛の手紙)の結論を次のように結んでいます。

15. Brief of my opinion 私の意見の概略

(1)The most important thing is there were two series of accidents not one.
   最も重要なことは、事故は1度ではなく連続して2度あったということです。
(2)The 1st accident was 'Grounding' with the evidences above.
  最初の事故は上記の各種証拠から「座礁」でした。
(3)The 'Grounding on a sand' made some damages and led flooding but itself didn't make those serious situation torn down in two.
  「砂の上への座礁」はいくらか損傷させ浸水にも至りましたが、それ自体は、船を2つに裂くほどの重大な状況にはなりませんでした。
(4)The 2nd accident hit a counterblow to sink.
  2つめの事故が応えてきて、沈むことになりました。
(5)I couldn't find even a slight sign of 'Explosion'.
  私は「爆発」があった痕跡は少しも見つけることができませんでした。
(6)The 2nd accident was 'Collision' with my analysis above.
  2度目の事故は私の上記の分析によれば「衝突」でした。

元朝鮮新報記者で評論家、作家の河信基氏の韓国民軍合同調査団の最終報告書発表以後の分析の冴えも見事です。


レイバーネット日本の「韓国の情報」サイトにも同調査団の最終報告書発表以後の多くの論攷が掲載されています。

下記にそのうちの2本の記事をリンクしておきます。その他の記事にももちろん重要な記事があります。上記の「韓国の情報」サイトのURLをクリックしてご参照ださい。

韓国:米国物理学者「天安艦は座礁か衝突で沈没」(レイバーネット日本 2010年5月28日)
ネチズン、「サビの上に1番」疑惑を提起(レイバーネット日本 2010年5月22日)

天安(チョンアン)艦沈没事件について韓国主導・4か国軍民合同調査団が最終報告書を発表した20日以後に民間サイドから発表された同最終調査報告書の重要な論攷を整理しておきます。

同調査報告書発表以前の天安艦沈没事件について重要な疑問を提起している論攷については下記にまとめていますのでご参照ください。


同最終報告書発表以後の重要な論攷をご紹介する前に上記のブログ記事でも援用した河信基氏(ハ シンギ。元朝鮮新報記者・作家)の論攷を無根拠に批判する人がいましたので、その批判に対して少しばかりの反論を書きました。天安艦沈没事件のナゾの問題点を整理するためにも役立つところがあろうと思いますので、同反論文を先に掲げておきます。

○○さん

あなたが「(北朝鮮の)テロ擁護」者である、と主観的に《断定》かつ《断罪》する「河信基(という)人物が紹介しているサイト」のURL「www.jajuminbo......」とは、同氏がご自身のブログ記事「哨戒艦沈没最大の謎 封印された米潜水艦沈没スクープ」(2010年5月9日付)の冒頭写真として引用している韓国の自主民報・ネットのサイトのことですね。

河信基氏は上記の自主民報・ネットのサイトを彼の記事(2010年5月9日付)の冒頭写真用として引用しているだけであって、彼の左記記事の内容とは直接的な関係はありません(それをあなたは長々と引用して河氏批判の材料にしています。お門違いも甚だしい「批判」ともいえぬ「批判」といわなければならないでしょう。また、あなたの自主民報・ネットの記事批判自体も的が外れているように私は思います。が、この点についての反論は、以下に述べる本筋とは関係ありませんので省略します)。

○○さんが「河信基(という)人物」を「(北朝鮮の)テロ擁護」者とまで《断定》かつ《断罪》するのであれば、彼の記事の内容そのものの「問題」性を指摘する必要があります。しかし、あなたは、河氏の記事をなんら検討することもなく、あなたの無根拠な主観だけで河氏を「(北朝鮮の)テロ擁護」者呼ばわりしています。そのような無根拠な主観だけで人を「テロ擁護」者という最大級の悪罵で侮辱してよいはずがありません。

河氏は同記事の冒頭で次のように言っています。

「韓国哨戒艦・天安沈没事件について、日本のマスコミが全く報じない重大事実がある。/天安沈没と同時間帯に指呼の海域で米軍潜水艦が沈没し、密かに引き上げられていたのである。/相互の関連を疑うのが捜査の常識であり、官民合同調査団はそれについても明確にしないかぎり、客観的かつ公平な調査報告書を作成したとは見なされ難い。」

河氏の上記の指摘はきわめて常識的かつ当然な指摘だろう、と私は思います。「天安沈没と同時間帯に指呼の海域で米軍潜水艦が沈没」した艦船が原潜であったのか。仮に原潜であったとしてその原潜が「コロンビア」号であったのか、あるいは「コロンバス」(コロンブス)号であったのか(注)。また、同艦船の沈没の原因が「衝突」であったのか、あるいは「魚雷」の誤射によるものであったのか、などなどはいまだ不明のままというべきですが、「天安沈没と同時間帯に指呼の海域で」米軍艦船が沈没したという「事実」自体は、下記の諸事実からきわめて蓋然性の高い推測ということができます。

第1。同事故現場から米軍ヘリコプターが米兵の遺体を運び去る映像を韓国・KBSテレビの『ニュース9』特集「謎の第3ブイなぜ?」(4月7日9時)が報道していること(「韓国軍艦『天安』沈没の深層」(田中宇の国際ニュース解説 2010年5月7日付)より)

第2。韓国海軍の特殊潜水隊(UDT、特殊戦旅団)のハン・ジュホ(韓主浩)准尉が第3ブイ(米艦船の沈没現場と思われる海域)の海底に潜り、捜索活動をしている最中に意識を失い、死亡していること(同上)

第3。ハン准尉の慰霊祭が行われたのは、天安艦ではなく、米艦船の沈没現場であり、慰霊祭には米国のスティーブンス駐韓国大使や在韓米軍のシャープ司令官も列席し、ハン准尉の栄誉をたたえ、ハン准尉の遺族に見舞金を出していること(同上)

注:沈没艦船が少なくともコロンビア号ではありえないことは、沖縄・ホワイトビーチのコロンビア号停泊を伝える琉球新報記事(2010年4月5日付)によって間接証明されています。

河氏の上記の記事を素直に読めばすぐにわかることですが、河氏は今回の天安沈没が北朝鮮の攻撃によるものではない、と主張しているわけではありません。「官民合同調査団はそれ(注:米軍艦船が天安沈没と同時間帯に指呼の海域で沈没した事実と天安沈没との関連)についても明確にしないかぎり、客観的かつ公平な調査報告書を作成したとは見なされ難い」だろう、と言っているだけです。当然過ぎるほど当然なきわめてまっとうな指摘というべきだろう、と私は思います。

○○さん。あなたは上記のきわめてまっとうな疑問についてはその検討を放擲し、逆になんの根拠を示すこともなく「またしても北朝鮮!居直りは例の如し」などと罵詈雑言を述べています。そうした姿勢は、民主的な人士のとりうる姿勢とは決していえないだろう、と私は強く思います。

なお、河信基氏という人の人物像については私は知るところは多くありません。私は、河氏という人がどういう人物か、ということとは関わりなく、彼の記述する論考の中身について賛意を表明しているだけです。

(写真:海底から回収される天安艦)

[上から続く]

田中宇さんの上記の「韓国軍艦『天安』沈没の深層」論文は、米原潜と韓国海軍艦艇の同士討ちというのがこの問題の真相ではないか、という問題提起をして見事な分析になっています。その米原潜をコロンビア号と特定したところに一部の瑕疵が見られるようですが(ペガサス・ブログ版 2010年5月21日)、全体としての指摘は鋭く、また考察力に優れており、上記調査団の最終報告書発表以前の論文ですが、同報告書発表後のいまでもその論文の本質的な指摘はまったく色褪せていません。ご一読をお奨めするものです。

また、上記の河信基さんの指摘と問題提起も同最終報告書発表以前のものですが、掲載している情報の局所的部分については訂正が必要と思われるところも何箇所か散見されますが、その本質的指摘はこれもまったく色褪せていません。河信基さんの上記の記事のご一読もお奨めいたします。なお、同報告書発表以後に書かれた下記の記事の指摘も重大な指摘で注目に値するように思います。

■天安艦事件検証 ?「座礁→沈没」主張の調査委員を公安捜査(河信基の深読み 2010年5月22日)
http://blogs.yahoo.co.jp/lifeartinstitute/41406549.html
■天安艦事件検証 ?「決定的物証=『1번』」は謎だらけ(河信基の深読み 2010年5月23日)
http://blogs.yahoo.co.jp/lifeartinstitute/41412106.html

なおまた、レイバーネット日本に同報告書発表以後の指摘として重要な指摘、記事が掲載されています。これもご一読をお奨めします。

■韓国:ネチズン、「サビの上に1番」疑惑を提起(レイバーネット日本 2010年5月22日)
http://www.labornetjp.org/labornet/worldnews/korea/knews/00_2010/1274508569540Staff
*特に記事中の「1番」の写真を見比べていただきたい。

■「決定的証拠」から出てきた「決定的」疑問 [天安艦残る疑問(1)]「1番」「北魚雷」推進体、軍の説明を聞くと ほか15本 (レイバーネット日本 2010年5月22日)
http://www.labornetjp.org/worldnews/korea/korea_news

上記でご紹介した河信基さんは上述の記事で次のような警句を述べていました。最後にその言葉をご紹介して終わりにしようと思います。

「衆愚的なポピュリズムは、『嘘も百回つけば真実になる』とのナチス式の扇動宣伝工作に乗せられることから始まる。旧日本軍大本営の『鬼畜米英』もその類である。/現時点で、天安艦沈没が北朝鮮のよるものと断定するような報道は、その苦い歴史的な教訓を思い起こさせる。この事件は扇動に乗せられ易いか、それとも、冷静な判断が出来るかが試される試金石と言える(河信基の深読み 2010年5月6日)。


参考:
下記に参考のために上記4か国合同調査団の調査報告書全文とそれに関連する記事を貼りつけておきます。

■哨戒艦沈没 合同調査団の調査報告書全文 (日本経済新聞 2010年5月20日)
http://www.nikkei.com/news/headline/related-article/g=96958A9C9381959FE0E2E2E1838DE0E2E2E7E0E2E3E2E2E2E2E2E2E2;bm=96958A9C9381959FE0E2E2E3848DE0E2E2E7E0E2E3E2E2E2E2E2E2E2
■哨戒艦沈没:魚雷攻撃、どのように確認したのか(上)(朝鮮日報 2010年5月21日)
http://www.chosunonline.com/news/20100521000013
■哨戒艦沈没:魚雷攻撃、どのように確認したのか(下)(朝鮮日報 2010年5月21日)
http://www.chosunonline.com/news/20100521000014
■クローズアップ2010:韓国艦沈没 北朝鮮、周到準備か(毎日新聞 2010年5月21日 東京朝刊)
http://mainichi.jp/select/world/news/20100521ddm003030067000c.html
■哨戒艦沈没:「スクリューを見つけた瞬間、歓声を上げた」(上)(朝鮮日報 2010年5月21日)
http://www.chosunonline.com/news/20100521000032
■哨戒艦沈没:「スクリューを見つけた瞬間、歓声を上げた」(下)(朝鮮日報 2010年5月21日)
http://www.chosunonline.com/news/20100521000033
■韓国哨戒艦沈没:魚雷のスクリュー破片を発見(毎日新聞 2010年5月18日)
http://mainichi.jp/select/world/news/20100518k0000e030043000c.html
■哨戒艦沈没 米「韓国を全面支持」 魚雷、北朝鮮の火薬と一致(毎日新聞 2010年5月19日 東京朝刊)
http://mainichi.jp/select/world/news/20100519ddm007030097000c.html
■「天安」から検出の火薬、北魚雷の火薬成分と同一(聯合ニュース 2010年5月18日)
http://www.wowkorea.jp/news/Korea/2010/0518/10070585.html
■韓国船沈没で調査報告、「北朝鮮関与」相次ぎ物証(日本経済新聞 2010年5月20日)
http://www.nikkei.com/news/headline/related-article/g=96958A9C9381959FE0E2E2E3908DE0E2E2E7E0E2E3E2E2E2E2E2E2E2;bm=96958A9C9381959FE0E2E2E3848DE0E2E2E7E0E2E3E2E2E2E2E2E2E2
天安艦沈没事件について私流に少しまとめてみました。


韓国海軍哨戒艦「天安(チョンアン)」の沈没事件について、韓国軍と民間の4か国(米国・オーストラリア・英国・スウェーデン)合同調査団がこの20日、同艦沈没海域の海底から回収したとする魚雷のスクリュー部分の残骸を公開した上で、「北朝鮮製の魚雷による水中爆発」が沈没原因と断定する同調査団最終報告書を発表するやいなや、わが国の政府、また国連を含む各国政府は、「『糾弾』『挑発』『蛮行』など外交上では最高水準に該当する非難を浴びせる大統領、首相、外相名義の声明を発表」(朝鮮日報)し、さらにまたわが国のマス・メディアは「韓国哨戒艦沈没 やはり『北』の魚雷攻撃だった」(読売新聞)などとする北朝鮮批判(バッシング)の報道と社説を大々的かつ一斉に掲げました。

■韓国哨戒艦沈没 安保理提起へ(NHK ニュースウォッチ9 2010年5月20日)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20100520/k10014573541000.html
■韓国哨戒艦沈没、「北朝鮮の魚雷」と断定(テレビ朝日 報道ステーション 2010年5月20日)
http://www.tv-asahi.co.jp/dap/bangumi/hst/news/detail.php?news_id=8974
■韓国の北朝鮮制裁決議、率先支持…首相(読売新聞 2010年5月21日)
http://www.yomiuri.co.jp/feature/20080115-899562/news/20100520-OYT1T01007.htm
■哨戒艦沈没:国際社会の反応は?(上) (朝鮮日報 2010年5月21日)
http://www.chosunonline.com/news/20100521000026
■哨戒艦沈没:国際社会の反応は?(下) (朝鮮日報 2010年5月21日)
http://www.chosunonline.com/news/20100521000028
■社説:北朝鮮魚雷 共同対応で制裁措置を(毎日新聞 2010年5月21日)
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20100521k0000m070108000c.html
■社説:韓国艦撃沈―北朝鮮に断固たる外交を(朝日新聞 2010年5月21日)
http://www.asahi.com/paper/editorial20100521.html#Edit2
■社説:韓国哨戒艦沈没 やはり「北」の魚雷攻撃だった(読売新聞 2010年5月21日)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20100521-OYT1T00093.htm
■【主張】哨戒艦沈没報告 北に断固たる制裁とれ 日米同盟強め韓国と連携を(産経新聞 2010年5月21日)
http://sankei.jp.msn.com/world/korea/100521/kor1005210336001-n1.htm
■社説:韓国軍艦沈没 北朝鮮の暴走は深刻だ(東京新聞 2010年5月21日)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2010052102000100.html

上記の声明、社説、報道は、4か国合同調査団の最終報告が正しいものと前提してはじめて成立するはずのものですが、上記に見る声明、社説、報道はすべて同最終報告を鵜呑みにするばかりで、同報告を批判的に検討した形跡はまったくといってよいほど見られません。同調査団は韓国国内10の専門機関の専門家25人と軍専門家22人、国会推薦の専門委員3人、米国・オーストラリア・英国・スウェーデン4か国の専門家24人が参加して、科学捜査、爆発類型分析、船体構造管理、情報分析など4分科に分けて調査活動を実施されたということですが(同報告書)、「国防部が主導した名前だけの国際軍民調査団の最終報告」「国際軍民合同調査団といっても、実質的な調査に当たっているのは韓国軍特殊部隊であり、米英豪・スウェーデンの調査委員は結果を見せられているだけに過ぎない」(河信基の深読み 2010年5月19日)、「合同調査団の結論には内部で異論があった」(同左 2010年5月22日)などの指摘もあって、韓国政府がいうように「科学的、客観的調査」だったかどうか大きな疑問が残ります。

もちろん韓国国内でも一部の報道機関とネチズン世代(韓国のインターネット世代。30?40代)を中心にして同様の疑問が提起されていました(下記参照)。そうした重要な疑問が韓国内外で提起されている段階で、韓国軍主導の最終報告のみを鵜呑みにして北朝鮮バッシングに加担してやまない政府、マス・メディアの姿勢は、これが正常な民主主義を標榜する国、そしてその国のジャーナリズムの姿勢なのか、と激しく嘆声せざるをえません。

さて、この韓国海軍哨戒艦「天安」の北朝鮮攻撃説には同調査団の最終報告発表前から下記のような重大な疑念が提起されていました。

■韓国軍艦「天安」沈没の深層(田中宇の国際ニュース解説 2010年5月7日)
http://tanakanews.com/100507korea.htm
■「韓国哨戒艦沈没、魚雷の証拠検出」報道の嘘(河信基の深読み 2010年5月6日)
http://blogs.yahoo.co.jp/lifeartinstitute/41322410.html
■哨戒艦沈没最大の謎 封印された米潜水艦沈没スクープ(河信基の深読み 2010年5月9日)
http://blogs.yahoo.co.jp/lifeartinstitute/41338493.html
■「天安艦は座礁・衝突」と民軍合同調査団調査委員が主張(河信基の深読み 2010年5月14日)
http://blogs.yahoo.co.jp/lifeartinstitute/41364997.html
■韓国哨戒艦沈没 日本のマスコミは批判精神を失ったのか(河信基の深読み 2010年5月15日)
http://blogs.yahoo.co.jp/lifeartinstitute/41370001.html
■哨戒艦沈没原因 韓国与野党が対立(河信基の深読み 2010年5月16日)
http://blogs.yahoo.co.jp/lifeartinstitute/41375151.html
■「天安艦沈没と北朝鮮は無関係」と駐韓中国大使(河信基の深読み 2010年5月17日)
http://blogs.yahoo.co.jp/lifeartinstitute/41383290.html
■「緊密な朝中」を誇示した金正日訪中と東アジア国際力学(下)(河信基の深読み 2010年5月19日)
http://blogs.yahoo.co.jp/lifeartinstitute/41391956.html

[下に続く]