キョウ ふらんすだいとうりょうせん2

Blog「みずき」(1):昨年末、『排除と抵抗の郊外 フランス〈移民〉集住地域の形成と変容』(東京大学出版会)という著作で第16回大佛次郎論壇賞を受賞した森千香子さん(一橋大学准教授、社会学)の重要な視点と問題提起。「史上最年少大統領の選出で幕を閉じた仏大統領選は、自国第一主義を掲げるマリーヌ・ルペン氏が勝利するかに関心が集中したが、もう一つ話題となったのが棄権者の存在だった。仏大統領選は通常、予選より決選の投票率が高いが、今回は決選で下がり、1969年以来最低の決選投票率(74・56%)だった。棄権者数は1210万でルペン投票者数(1060万)を上回る。白票・無効票を投じた人(407万)も加えると有権者の34%、つまり3分の1以上がどちらの候補も選ばなかったのである。」(「「沈黙の声」から見える仏大統領選」朝日新聞 2017年5月10日)

(2)浅井基文さん(元外交官、政治学者)の「文在寅経歴(韓国紙報道)」を紹介する記事の中で私が気になったのは、ハンギョレ紙の「『文在寅統一外交政策』南北関係修復、米中と北朝鮮核・THAAD調整を最優先」という5月10日付記事の次の一節です。

「早期配備強行で物議を醸したTHAAD(高高度防衛ミサイル)問題は、国会批准同意を推進すると述べた。文当選人は、THAAD配備問題の公論化と外交カードとしての活用のため、(国会の批准同意が)必要だという立場を再三示してきた。すでに慶尚北道星州(ソンジュ)に一部配備されたTHAADの撤収を念頭に置いた公約とは言い難い。2015年12月に日韓が電撃的に締結した12・28慰安婦合意については、再交渉を約束した。弾劾局面が高潮していた昨年11月に強行締結された韓日軍事秘密情報保護協定(GSOMIA)は、効用性の検討後、有効期間(1年)を延長するかどうかを決めると明らかにした。」

ハンギョレ紙も指摘しているようにこの文在寅新大統領のTHAAD問題に関する公約は、「すでに慶尚北道星州(ソンジュ)に一部配備されたTHAADの撤収を念頭に置いた公約とは言い難い」ものがあります。これをどのように評価するか。浅井さんは上記の論に見るとおり「内政外交ともに四面楚歌の韓国政治にとって一縷の希望の光」として文在寅政権の政治を総体として評価する立場のようですが、ここでは文政権を評価しない立場のお二方の見方をご紹介しておきます。ちなみに私の文在寅評価は、彼の公約から見ても「南北関係の修復」が試みられることは確かなことのように思われますので、朴前政権に比してその点一点だけでも「一歩前進」と評価するべきだと思っています。


【山中人間話目次】
・フランス大統領選は郊外などの貧しい地区に住む移民出自の有権者は4割も棄権したという森千香子さん(一橋大学准教授、社会学)の重要な指摘
・「フランスの時期大統領はオランドの後継者で巨大資本の奉仕者であるマクロン」という櫻井ジャーナルの言われてみるとあまりにも当然な指摘
・文在寅新大統領のTHAAD問題に関する公約は「すでに配備されたTHAADの撤収を念頭に置いた公約とは言い難い」ものがある――浅井基文さんの「文在寅経歴(韓国紙報道)」紹介記事から
・翁長知事の承認撤回を決断することのない再訪米計画に対する沖縄県民の怒りの声
・翁長知事訪米無意味論(1)――翁長知事の前回のアメリカ訪問時の平安名純代さん(沖縄タイムス米国特約記者)の翁長知事訪米無意味論
・翁長知事訪米無意味論(2)――翁長知事の前回のアメリカ訪問時の乗松聡子さん(ジャパンフォーカス紙エディター)の翁長知事訪米無意味論
・「ドイツと日本の「過去の克服」を目指す態度は決定的に違う」という大弦小弦(沖縄タイムス)のぴりりと辛い小粒の論評
・地中海のリビア沖で移民らを乗せたボート2隻が沈没し、11人が死亡、200人近くが行方不明――私はグローバリズムという先進国中心の価値観を忌む
キョウ とらんぷ8

Blog「みずき」:トランプ排外主義政権始動。歴史の歯車が逆回転し始めた。「『暗黒の21世紀』の序章」のゴングは鳴った。「地球規模の破壊力示したトランプ――1人の人間が終末時計を進めたのは初めて」というニューズウィーク日本版2017年1月27日付記事

人類滅亡までの時間を象徴する「終末時計」の針が、滅亡の日とする深夜0時に近づいた。アメリカが水爆実験を行った翌年の1953年以来、最も滅亡に近い2分30秒前だ。米科学誌「ブレティン・オブ・ジ・アトミック・サイエンティスツ(ブレティン誌)」が26日に発表した。時計の針を2015年から30秒進めた出来事として、核戦力の増強や近代化、気候変動、サイバー攻撃の脅威などを挙げた。さらに、ドナルド・トランプの米大統領就任も重かった。「当委員会の決断に、1人の人間がこれほど大きく影響したことはかつてない」と、デービッド・ティトレー博士(気候科学)とローレンス・クラウス博士(理論物理学)は、米紙ニューヨーク・タイムズにそう寄稿した。「その人物がアメリカの新大統領となれば、発言の重みが違ってくる」終末時計は、世界が人類滅亡にどれほど近いかを「深夜0時」という比喩を使って示すため、核の時代が幕を開けた1947年に作られた。時計の針が深夜0時に近づくほど、滅亡の日も近づく。ブレティン誌の委員会は声明で、気候変動をあからさまに疑ってかかるトランプの姿勢を「懸念する」と述べた。「オルタナティブ・ファクト(もう一つの事実)を持ち出しても、気候変動が進む現実を魔法のように消すことはできない」

国際的な象徴となった終末時計は、人類滅亡の一歩手前から、危機がほぼ遠ざかった時期にかけて、針を逆戻りさせたこともあった。冷戦期、米ソが水爆実験を相次いで行った1953年には過去最悪の「2分前」まで進んだ。だが冷戦後、米ロが軍縮条約に調印した1991年には、17分前まで針が戻った。突然、核戦力を強化しなければ、などと言い出すトランプの真意を見極めるのは難しい。だがこれまでのところ、メキシコの壁やオバマケアの見直しは公約どおりに進んでる。トランプは25日、米ABCニュースの単独インタビューで、アメリカの核兵器のコードを受け取った瞬間は「色々なことを考えた」と振り返り、「ある意味これは、すごく恐ろしいことだ」と言った。世界の何十億もの人々も同感だろう。米議会では24日、2人の民主党議員が議会の承認なしに核兵器の先制使用を禁止する法案を提出した。逆に言えば今は、トランプに対してその歯止めすらない。ブレティン誌の専門家は、執務に本腰を入れつつあるトランプのもとに、今回の警告が確実に届けられることを期待する。「これは健全な世界の実現に向けた呼びかけだ」とトーマス・ピカリング元米国連大使は言った。「説得力と分別のあるリーダーシップを呼び込みたい」その間にも、終末時計はチックタックと容赦なく進む。(ニューズウィーク日本版 2017年1月27日

【山中人間話目次】
・「ニュース女子」沖縄報道でBPOに「放送局の体をなしていない」と人権侵害を申し立てた辛淑玉さんの虚と実
・「安倍内閣が最高裁人事に介入か 山口厚最高裁判事」という 猪野亨弁護士の問題提起
・太田昌国さんの秀逸な「メキシコに対するトランプのふるまい」批判メモ
・木村剛久さん(「海神日和」主宰者)の「われわれは99パーセントだ」というスローガンをつくったデヴィッド・グレーバー著『負債論』書評
・澤藤大河弁護士のこと――「澤藤・宇都宮・戦争」は上原公子元国立市長の大河さんに対する非民主主義者としてのふるまいに因を持つ戦争だった
キョウ とらんぷせんぷう

【山中人間話目次】

・続・トランプ現象の余波(1)――トランプ現象の中東への余波と恐ろしい予測
・続・トランプ現象の余波(2)――マスコミを無力化するトランプ
・続・トランプ現象の余波(3)――トランプ米次期政権に「韓国化」の危険:「公私混同」避けられるか
・続・トランプ現象の余波(4)――組合員魅了したトランプ氏/米労組の苦悩/大衆迎合主義を警戒
・続・トランプ現象の余波(5)――トランプについて語るサンダース
・続・トランプ現象の余波(6)――「トランプの過激な言説を相対的に無視することは、ハイデガーら戦前の独知識人がナチの危険を理解しなかった二の舞に繋がる可能性」がある、という指摘

【山中人間話】







キョウ かんこく
韓国100万人大規模デモ

Blog「みずき」:「今日の言葉」は浅井基文さんのブログから浅井さんの日本語訳要約による中国・環球時報の社説からとりました。要約のさらなる要約です。浅井さんは環球時報社説(9日付)を紹介するにあたって次のように述べています。9日付けの社説の「中心的な論点は、アウトサイダーであるトランプの当選は米国政治を長年にわたって支配してきた既成権力(エスタブリッシュメント)に対する痛撃である」というもの。「アウトサイダーであるトランプと既成権力との力関係如何がトランプ政権の方向性を規定していくだろうという判断において、9日付及び10日付の環球時報社説の判断と私の認識は基本的に一致しています」。中国共産党の機関紙でも「エスタブリッシュメント」という言葉がキーワードとなっています。しかし、昨日も五十嵐仁さんの論を批判しましたが、得票数ではヒラリーが勝っているとして米大統領選の結果は「エスタブリッシュメントに対する痛撃」という米大統領選の本質的な事態を見ようとしない日本共産党系の論客は少なくありません。いま陥っている同党の悲劇を私は思わずにはいられません。

【アメリカ政治の核心的要素がぐらぐらと揺るがされている】
前回のクリントンは彼女が個人的に敗北したものだったが、今回の彼女はアメリカの伝統的なエスタブリッシュメントの政治理念及び権威を代表して敗北した。トランプが勝利したのはクリントンに対してだけではなく、共和党内部から全米に至る彼を阻止しようとした膨大なエスタブリッシュメント全体を打ち負かしたのだ。人によってはこれを「政治的造反」あるいは、アメリカにおける「文化大革命」だと言うが、これらの言い方には誇張があるにせよ、アメリカにおける現在の思想政治状況の一面を描いてはいる。トランプという名前はつとに全世界にとどろいているが、アメリカも世界も彼がアメリカの大統領になることに対する精神的準備を整えるにはほど遠い状態だ。彼の勝利は精神的な強烈パンチを与え、彼の当選は従来の枠組みを突き破り、根底を揺るがすというショックをもたらしたのであって、アメリカ政治の核心的要素がぐらぐらと揺るがされているのだ。トランプは最初からアメリカの主流メディア及びエスタブリッシュメントに軽蔑され、ほら吹き、異端の邪説の鼓吹者、何をしでかすか分からない人物と決めつけられてきた。このような人物が最終的に大統領になったということは、アメリカのもともとの政治秩序そのものに問題があるということの証明だ。

アメリカにおける民主共和両党の主流の価値観は時代からずれている。アメリカのエスタブリッシュメント・メディアは報道における中立及び客観性という原則から深刻に乖離し、有権者を恣意的にミスリードし、その世論調査の大部分はウソが混じり込んでいる。この国家の政治上の全体としての判断力も重大な偏りがあり、アメリカのエスタブリッシュメント全体が中流下流の人々と対立する側に立つに至っている。(略)アメリカはしょせんエスタブリッシュメントが牛耳る国家であり、全国の実権を握っている中高レベルの人々のほとんどはトランプに反対であり、したがってトランプにとって絶望的な牽制力を形成している。世界各地のアメリカの同盟友好国もアメリカの言いなりではなく、むしろワシントンに圧力をかけ、「
孤立主義」に返ろうとするトランプの考えの実現を阻もうとするだろう。今回の選挙はアメリカ社会にかつてない分裂を作りだした。トランプに投票しなかった多くの人々はトランプを真底から「憎んで」いるが、このような「憎しみ」はアメリカ選挙史上においてまれに見ることだ。今回の選挙は憎しみが大いに愛を上回った選挙であり、多くのアメリカ人は長期にわたり、感情的にトランプが彼らの大統領であることを受け入れられないだろうから、選挙後のアメリカが再度団結することは極めて困難だろう。(環球時報社説 2016年11月9日

【山中人間話目次】
・政府が春闘に介入――その異様な光景にモノ言わない労働組合、連合、メディア。その中で光る朝日新聞「経済気象台」記者の見方
・いま、韓国では――朴大統領弾劾の100万に規模の大デモと日本のリベラルの3人の論者の見方
・いま、アメリカでは――平安名純代さん(沖縄タイムス米国特約記者)のアメリカの若者のトランプ弾劾集会の取材
キョウ とらんぷ4
全米各地でトランプ氏への抗議デモ

Blog「みずき」:米国大統領選での「トランプ当選」の衝撃と波紋は日本でもとても大きく、さまざまな論者がさまざまな立場からコメント、あるいは論説を出していますので、メディアの社説や論評以外の論の総体の大概を把握することができるように「今日の山中人間話」として特集することにしました。この特集はまだまだ続く可能性があります。

【山中人間話目次】
・米国大統領選 トランプ当選の衝撃(1)――アムネスティ・緊急コメント発表
・米国大統領選 トランプ当選の衝撃(2)――トランプ氏を勝たせた「嘆かわしい人々」 - ジェラルド・F・サイブ(WSJワシントン支局長)
・米国大統領選 トランプ当選の衝撃(3)――アメリカ大統領選挙・・・アメリカ99%の叫びとして捉える-森川文人のブログ
・米国大統領選 トランプ当選の衝撃(4)――アメリカにトランプ極右政権誕生-徳岡宏一朗のブログ 
・米国大統領選 トランプ当選の衝撃(5)――敗北したのは、アメリカのエスタブリッシュメントだ。-澤藤統一郎の憲法日記
・米国大統領選 トランプ当選の衝撃(6)――だんだんとニッポンの(私たちの)問題となっていく。-kojitakenの日記
・米国大統領選 トランプ当選の衝撃(7)――サンダースの声明(日本語訳)
・米国大統領選 トランプ当選の衝撃(8)――高林敏之さん(西サハラ問題研究室主宰)の説得力のある米大統領選評
・米国大統領選 トランプ当選の衝撃(9)――浅井基文さん(元外交官、政治学者)の米国、中国、朝鮮問題の外交の専門家らしい視点

【山中人間話】




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キョウ とらんぷ3

Blog「みずき」:アメリカ大統領選におけるトランプ勝利はアメリカ国民にとっては悲劇だが、「日本にとってはむしろいい機会ではないか」というtoriiyoshikiさん(ETVディレクター・ハーフリタイア)流の見方。私はこのtoriiyoshikiさんの見方はとても合理的な政治見通しで、かつ、センスのある見方だと思います。ただ、toriiyoshikiさん自身も「より悪い方向に変わることへの一定の懸念を担保しつつ」と述べていますが、私は「より悪い方向に変わる」可能性の方が強いと思っています。安倍政権はトランプにも増して愚鈍で反知性的な大局観のない政策を特徴とするので、安倍政権が続く限りは「よい方向」には決して変わらないだろうというのが私の見方です。悪いものをさらに2乗して悪いものに変えていく。これが安倍政権のよって立つ愚鈍の特徴だというのが私の根底的な安倍政権不信であり、安倍政権評価です。「日本にとってはむしろいい機会」にするためには安倍政権打倒が先決だろうというのが私の見方です。

【対米従属一辺倒のポチ外交は続けようにも続けられない事態の到来】 今回、トランプに賭けた、いわゆる“負け組”アメリカ国民の期待は早晩裏切られることになるだろう。この大統領選挙は、超大国アメリカの没落に拍車をかける決定的な契機になるのではないか。しかし、ぼくは…以前も書いたように…日本にとってはむしろいい機会ではないかと考えている。つまり、トランプ大統領の誕生という予期せぬ事態を前に、安倍政権が推し進めてきた一連の亡国政策は頓挫、少なくとも大きな見直しを迫られることになるからだ。簡単に言えば、忠実な「アメリカのポチ」であったはずの安倍政権は御主人様の心変わりによって捨て犬になっちゃったのね。第一に、TPPはこのまま雲散霧消してしまう可能性が強いこと。強行採決までして無理押ししようとしたのは何だったんだ…という憤りはひとまず措くとして、TPPが消滅すれば、これが日本にとって大きな「国益」であることは間違いない。ぼくは、このことだけでもトランプの当選を祝いたいくらいだ。第二は、予想される円高株安によってアベノミクスの破綻が誰の目にも明らかになるだろうこと。この愚劣な経済政策が日本の「国益」にどれだけ大きな穴を開けたかが明るみに出るのは恐ろしくもあるが、破綻した政策をいつまでも続けて玉砕するよりマシだろう。立ち止まって抜本的に見直すいい機会だ。もう取り返しがつかないところまで来ていたらどうしよう…と恐ろしくもあるが。第三に安全保障政策の見直しを余儀なくされることである。「世界の警察官」の座をアメリカ自ら投げ出してしまうのだから、対米従属一辺倒のポチ外交は続けようにも続けられない。ヨーロッパ諸国はもとより、中国、ロシア、さらにはフィリピン、韓国にも劣る「選択肢なき外交」を見直すチャンスである。日本という国は外圧なくしては変われない「情けない国」らしいから、トランプの当選が日本変革のトランプ(切り札)になることを期待したい。より悪い方向に変わることへの一定の懸念を担保しつつ…。(toriiyoshiki Twitter 2016年11月9日

【山中人間話目次】
・ZEDさん(「Super Games Work Shop Entertainment」主宰者)のハンギョレ紙批判。ないしは浅井基文さんへの一言アドバイス
・いわゆるリベラル・左派の「トランプ勝利」の見方とニッポンのメディア、政党に批判的な論者たちの「トランプ勝利」の見方
・「トランプ勝利」に関しての森川文人さん(弁護士)と私との応答
・アメリカという国のある断面――「トランプ支持派捜査官」のガス抜きか:FBI「クリントン再捜査」の裏面
・「『土人』は植民地主義的」という米ブラウン大名誉教授・ラブソン氏と「差別だと断じることは到底できない」という鶴保庸介沖縄北方担当相の彼我発言の差異
・「米兵と結婚した4万5000人の日本人花嫁たちは、その後どんな結末を辿ったか? 娘が調査した「私の母の真実」」という記事
キョウ しりあなんみん

Blog「みずき」:保立道久さん(東大史料編纂所名誉教授)の「移民制限を当然のこととしてEUと折衝する」と言い放ったイギリスのメイ首相発言批判。中東問題の原点と中東・移民問題のいまを考える上での根底的な問いというべきであり、問題視点だと思います。「ヨーロッパ帝国主義」という多頭の怪物はアングロサクソン人種主義思想となっていまも領域住民を暴政下に置いている。それが今日の移民問題の本質だと保立さんは言っています。

【多頭の龍=帝国としてのイギリスの無反省】
今日の東京新聞によると
イギリスのメイ首相が、移民制限を当然のこととしてEUと折衝するという。中東の悲劇と戦争の根源にはイギリス・フランス・ロシアが中東を分割したサイクスピコ協定がある。第一世界大戦のなかで行われたオスマン帝国の分割である。大戦の経過からいって、それはドイツにも深い歴史的責任があるのだが、しかし、イギリスは、さらに責任が重い。イギリスはパレスティナ問題の原点を作り出したバルフォア宣言を発した国である。メイ首相の発言は厚顔無恥というものである。イギリスは植民地支配の責任と負担と利権を20世紀にすべてアメリカに渡して自分は局外に立とうとした。そこにあるのは、私はアングロサクソン人種主義だと思う。イギリスも、ドイツもフランスも、中東には責任はないという立場に立っている。ナチス問題は、基本的にはヨーロッパ内部問題の側面が強い。自分たちの内部だけ見て、外をみれないヨーロッパの態度は許し難い。多頭ヨーロッパ帝国である。彼らにとっては各国民国家は目くらましの道具にすぎないのだ。私は、現代の直接の起点をなしている、16世紀のヨーロッパも一種の「世界帝国」であったことは明らかであると思う。たしかにそれは帝国の中枢がポルトガル・スペイン・フランス・オランダ・イギリスなどに分散しており、中心勢力が順次に交替していった点で、むしろ安定した構造をもっていたユーラシアに広がる他の世界帝国とは異なっていた。

しかし、外から客観的にみれば、ヨーロッパも一つの帝国、競合する複数の国家からなる多頭の帝国であったというべきであろう。ヨーロッパの帝国主義は、しばしばいわれるように貪欲な海賊帝国主義、探検帝国主義、あるいは「自由貿易帝国主義」というべきものだったのである。それはいわば多頭の龍=帝国だったのであって、普通の龍=帝国とは比較にならないほど凶暴であった。イギリス帝国はインドとアメリカに対する帝国的支配の上に立って、一八世紀末期から産業革命によって、この多頭の怪物を世界資本主義システムのなかに囲い込んむことに成功した。アメリカ植民地は、イギリスとフランスの敵対関係を利用して独立することに成功したが、しかし、ナポレオンの敗北によって、イギリス・アメリカ関係は復旧し、ここにイギリスを主としアメリカを従とするアングロサクソン帝国が世界に覇をとなえたのである。「こんにち合州国で出生証書なしに現れる多くの資本は、きのうイギリスでやっと資本化されたばかりの子どもの血液である」(『資本論』二四章七八四)といわれるように、アメリカとイギリスの資本関係は一体であり、それは今日までも続いている。アメリカとイギリスがいざとなると助け合うのは見ていて気持ちがわるい。(
保立道久の研究雑記 2016年10月4日

【山中人間話目次】
・澤藤統一郎さん(弁護士)の大西隆学術会議会長批判
・メディアリテラシーを喪失した映画界と自衛隊の際限のない癒着構造
・滔々たる沖縄の歌人たちの声を聴く――内野光子さんの『現代短歌』9月号寄稿文
・国連子どもの権利委員会のアサド政権批判とロシア政権批判
・松岡正剛の「549夜『博徒と自由民権』 長谷川昇」という文章は示唆に富む
・「『おじい』『おばあ』は下品な日本語」問題――最近の応答から(続き)
キョウ あさいもとふみ

Blog「みずき」:どちらも中国問題のエキスパートという点では日本有数の論者と言ってよいおふたりだと思うのですが、浅井基文さん(元外交官、政治学者)の紹介する中国の言論状況と阿部治平さんの紹介する中国の言論状況に私は決して小さいとはいえない懸隔のようなものを感じます。私は以前、浅井さんと阿部さんの論を比較して次のように述べたことがあります。「私は中国での教員生活の長い阿部治平さんの論攷と元外交官で政治学者の浅井基文さんの論攷を比較して考えてみることがしばしばあります。もちろん、どちらも中国問題のエキスパートですが、阿部さんの目は中国の庶民にそそがれているのに対して、浅井さんの目は中国の政権サイドや同国では主流の学者や編集者が発した公的・私的見解にそそがれているように見えます。中国情勢を判断するに際してどちらも重要な視点には違いありませんが、当然ながら政権サイドの論は自己の弱点をさらしてまで真実を述べることはまずありませんので浅井さんの目の確かさは信頼しながらも、その浅井さんの視点の欠けているところを思ってどうしても不満が残ります」、と。「今日の言葉」の浅井さんの論攷は私のそのかねてからの疑問の一端を解き明かしてくれるものといってよいでしょう。なるほど。浅井さんはこれまで、以下のような理由で「中国側論調を努めて紹介」する論攷を書いていたのか。しかし、浅井さんの「主体的意図」は理解できるものの、浅井さんと阿部さんの論攷の懸隔についての私の疑問はこれで氷解しきったわけではありません。

【アメリカのプリズムを通した日本人の国際観の脆弱性と貧困】
私が
このコラムで中国側論調を努めて紹介するのは、私の過去の経歴とも関係があるのはもちろんですが、私の主体的意図としては、アメリカのプリズムを通して国際情勢を眺めることに慣らされている日本人の国際観が実は「完全無欠」からほど遠いこと、国際情勢を正確に認識するためには、他者感覚を大いに働かせて、様々な角度から物事を見る目を養う必要があること、そのためにはアメリカと対極的な国際情勢認識に立脚する中国人の国際観を理解する必要があること、そして、好むと好まざるとにかかわらず、日本にとっての国際関係において末長く、中国はアメリカと同じ比重を占める国家であり続けること、したがって中国の国際情識・国際観といっても決して一括りにできるものではありません。「中国は共産党独裁だから、その支配下にあるメディアの言論も官製で、画一的に決まっている」と思っている日本人は多いのですが、そういう見方は実態から大きく隔たっています。特に、中国外交の方向性を規定する前提となる国際情勢認識に関しては極めて活発な言論状況があります。 今回紹介する8月13日付の北京青年報所掲の馬暁林(新華社出身で、ブロガーの連合サイトである博聯社総裁)署名文章「東北アジアにおける駆け引き 新冷戦警戒」は、韓国におけるTHAAD配備をめぐる中韓関係尖閣紛争をめぐる日中関係という、中国の東北アジア外交におけるもっとも機微な問題を正面から取り上げて論じたものです。その内容は、私が度々取り上げる環球時報社説などとは一線を画したものであることは、一読していただければ直ちに明らかでしょう。ちなみに、こういう言論状況が中国に存在することは、「お上」の顔色を窺う「自主規制」が横行する日本国内の言論状況より健康的であることを物語っていると思います。(浅井基文のページ 2016.08.14

【山中人間話目次】
・澤藤統一郎さんの「象徴天皇への敬意を強制する『社会的同調圧力』」批判はその「同調圧力」の半面の批判でしかない
・私と都藤邦さんの「前原氏、野党共闘を評価-雑誌『世界』 今後も「進化」」という赤旗記事を読んでの感想と応答
・武田泰淳『土民の顔』全文――『日中の120年―文芸・評論作品選』全5巻(張競、村田雄二郎編。岩波書店)
キョウ がいむしょう

Blog「みずき」:昨日の浅井基文さんの論とほぼ同様の認識と視点に立つ田中宇さんの論。日本のマスコミ報道だけに頼っていては私たちは「無知の民」として国際社会から嘲りの烙印を押されてしまうばかりでしょう。いまはインターネット時代です。私たちの情報不足という「無知」はいくらでも補うことができます。後は私たちのメディア信仰を自ら払拭する決意を持つことです。そうすれば世の中は確実に変わる、というのが私の確信です。要は私たちが目を覚ますかどうかの問題というべきです。

【メディアと日本外務省の結託した意図的ブリーフィング】
7月12日、海洋法条約に基づく国連の仲裁機関が、南シナ海の領有権をめぐってフィリピンが中国を相手に提起していた調停で、フィリピンの全面勝訴、中国の全面敗訴に近い裁定を発表した。裁定は、欧米の国際法の「専門家」たちが驚くほど、事前の予測を大きく超えて中国を批判する内容だった。裁定は、南シナ海での中国による領土主張や環礁埋め立て、フィリピン漁船追い出しなどの行為が、
海洋法条約の14の条項と「海上衝突防止国際規約に関する条約」の6つの条項などに違反していると断定した。(略)海洋法の仲裁機関は、当事国どうしが話し合いで紛争を解決する際の助力となる仲裁をするために設置され、強制執行の機能がない。当事者の話し合いを前提とせず、裁判所の判決が大きな拘束力を持つ、国内裁判所とかなり異なる。豪州の権威あるシンクタンク、ロウィ研究所が載せた記事は、このような海洋法仲裁機関の機能を指摘した上で、南シナ海紛争を仲裁対象にすること自体にもともと無理があったと書いている。このような豪州での客観的な分析と対照的に、日本のマスコミ報道では、同仲裁機関の機能が無視され、「裁判所」の「判決」が出たと書かれ、国内裁判所と同等の絶対的な決定であるかのような言葉遣いが意図的に使われている

日本外務省の指示(歪曲的ブリーフィング)に従った中国嫌悪プロパガンダが狡猾に流布されている。日本人の記者や外交官は「豪州は親中派が多いからね」「
田中宇も中国の犬でしょ」と、したり顔で歪曲を重ねるばかりだろう。(おそらく日本が第二次大戦に惨敗した理由も、こうした自己歪曲によって、国際情勢を深く見る目が失われていたからだ。分析思考の面での日本人の「幼稚さ」は70年たっても変わらない。近年むしろ幼稚さに拍車がかかっている。悲憤がある)(略)今回の裁定も、米国の圧力で世界が動いてきた米国覇権体制の解体と、世界の多極化、中国が極の一つとして世界から認知される流れを顕在化させる結果となっている。その意味で、今回の裁定は、中国をへこますどころか逆に中国の台頭を示すものになっている。(略)『米国が12年に「アジア重視」と称して南シナ海の紛争を煽った時、オバマ政権でそれを担当したのはクリントン国務長官だった。彼女は今も好戦派として大統領選を突き進んでいる。万が一、彼女が大統領になっても、そのころには中国が米国と対等な地域覇権国である状態は不可逆的に今よりさらに確定しているだろう。いずれ米国は、中国を、自分と対等な大国として認め、覇権の多極化を肯定するしかない。米国より格下の国として自国を形成してきた日本は、米中が対等になると、米国だけでなく中国よりも格下の国になる。日本は、すでに中国に負けている。(田中宇の国際ニュース解説 2016年7月17日

【山中人間話目次】
・批評・論争よ、おこれ
・「海の日」はニッポンという国の右傾化(戦前化)を象徴する日というほかない
・都知事選、小池氏が序盤先行 鳥越・増田氏が追う(日経) - kojitakenの日記
・春名幹男さんと内藤正典さんのトルコのクーデター未遂事件解析
キョウ さっちゃー
映画「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」から

Blog「みずき」:長いので要約から省略しましたが、加藤哲郎さん(一橋大学名誉教授、早稲田大学客員教授)はイギリスの国民投票によるEU離脱を「イギリスのみならず、EU諸国全体に内在する、エスニックなものとシビックなもののせめぎあい、主権平等のタテマエと差別や憎悪の感情、就労機会と格差の拡大、人権・社会権の国別・地域別保障の相違等々、総じて「多様性の統合」の壮大な実験に孕まれていた危うさ・もろさが、表出され」たものと見ています。それが「新自由主義の、破綻の始まり?」という加藤さんのEU離脱評価につながっています。1979年のサッチャー政権誕生以来世界に波及していった新自由主義とはどういうものだったか? 本記事はその紐解きの導入部ということにもなるでしょう。

【新自由主義の、破綻の始まり?】
6月23日のイギリスの国民投票によるヨーロッパ連合(EU)離脱決定には、驚きました。2012年のギリシャのユーロ脱退論議で生まれた
Grexit(Greece + Exit)になぞらえてですが、Brexitという英語が、いたるところで見られます。離脱多数の決定に驚いてのBregret (離脱後悔)とか再投票も、話題になっています。しかし、この決定がくつがえされることはないでしょう。議会制民主主義の発祥の地を自認するイギリスで、その正統性を担保するレファレンダム=国民の直接投票という方法で決めてしまったのですから。 EUを支えてきた大国・独仏英の一角の脱退ですから、その歴史的意味は、重大です。(略)イギリスは、もともと新自由主義政治の発祥の地でした。第二次世界大戦後は「ゆりかごから墓場まで」のケインズ主義的福祉国家の代名詞だった国が、1979年サッチャー首相の誕生によって、「小さな政府」「規制緩和・自助努力」を標榜する市場原理優先の経済政策を採りました。しかも、フォークランド紛争ではアルゼンチン軍を武力で放逐し、「小さな政府の強い国家」となりました。アメリカのレーガン、西ドイツのコール、日本の中曽根首相等が、サッチャーに続きました。そこに、東欧革命・ソ連解体・冷戦崩壊で新自由主義が世界化し、今日のグローバル市場経済、金融為替政策を組み込みアジアを包摂したカジノ資本主義へと、変身していきました。EUは、マーストリヒト条約などで、一面アメリカ型市場経済の暴走、ドルの世界支配に歯止めをかけながら、域内には新自由主義を徹底し、北欧から中東欧へとモノ・カネ・ヒト・サービスの競争的自由移動を促進してきました。それが、イギリスから、ほころび始めました。モノ・カネと同じようには、ヒトは動かない、動けないのです。

今回の国民投票には、先に
パナマ文書にも出てきたキャメロン保守党政権への信任投票的意味合い、イギリス国内政治の中での「多様性の統合」の失敗への批判が含まれていました。本来の争点が隠され、単一争点にポピュリズムが動員される現象は、日本でも小泉郵政民営化選挙で経験済みです。21世紀の初頭、とりわけ9.11以降の世界の民衆運動の合い言葉となった「もう一つの世界は可能だ」を掲げてきたATTACヨーロッパ・ネットワークは、声明を出しました。「われわれは、大企業の利益のために行動する非民主的機構に指図されるのにうんざりしてきた。われわれは、ヨーロッパ民衆の生活を金融市場の意思によって決められるのに飽き飽きしている。EU機構がヨーロッパ民衆の民主的要求に応えられなかったことによって、EUの歴史上かつてなかった危機が起きている。もしEUが根本的かつすぐに変わらないのであれば、崩壊してしまうだろう。……われわれはヨーロッパ民衆の怒りを理解する。悲惨な緊縮政策、侵食される民主主義、破壊される公共サービスによって、ヨーロッパは1%の(富裕層の)ための活動領域に変わってしまった。これは移民の責任ではなく、金融・大企業ロビーとそれに付き従う政治家の責任である。……われわれはまた、イギリスでより良い国のために闘っている人々やレイシズムと極右に反対して闘っている人々を支持する。より良いイギリスはより良いヨーロッパを励ますことができる。もうひとつのヨーロッパは可能だ。もしEUがより良いヨーロッパの一部になれないのなら、一掃されるだろう!」と。ハーシュマン経済学の用語では、exit(離脱・退出)の反対語は、voice(発言・告発)です。21世紀の世界史の暦に、9/11、3/11と共に、 6/23という日付が加わりました。(加藤哲郎のネチズン・カレッジ 2016.7.1

【山中人間話目次】
宇都宮健児氏を都知事選候補者に推奨する「アリの一言」氏の誤解
「世に倦む日日」氏の共産党の市田忠義演説批判――シールズ、しばき隊との関係批判
リベラル・左翼の全的崩壊 ――小林節(「立憲デモクラシーの会」呼びかけ人、慶大名誉教授)の場合
リベラル・左翼の全的崩壊 ――自称リベラリスト想田和弘(映画監督)の場合
トンデモ・デマゴーグ(「福島差別」扇動者)の増山麗奈(画家・自称ジャーナリスト)批判
保立道久さんの「ネグリの『帝国』をどう読むか」
キョウ ちゅうろきょうどうせいめい2 

Blog「みずき」:浅井基文さんの先日発表された中露共同声明の解説。浅井さんはこの中露共同声明は「アメリカに対して向けられたものである以上に、日本に対して向けられたものと見るべき」だろうと指摘します。浅井さんは中露共同声明の解説でなぜこのような説明をわざわざするのか。「アメリカに好意を抱くものが80%を超え、国際関係に関する報道は圧倒的にアメリカのプリズムを通して見ることに慣らされてしまっている日本国内では、アメリカの危険極まる対外政策及びご都合主義の国際法利用に対して正確な認識がほとんど」ないからにほかなりません。以下、浅井さんの指摘。

【中露共同声明は日本に対して向けられたもの】
21世紀に向けた戦略協力パートナーシップ発表20周年及び
中露善隣友好協力条約締結15周年に際して、プーチン大統領は6月24日-25日に訪中し、中露共同声明、ネット空間発展推進の共同声明、グローバルな戦略的安定強化に関する共同声明(以上の署名者は両元首)そして国際法推進に関する声明(署名者は両国外相)が発表されました。中露共同声明では、中露が一致して「国連安保理が定める枠組みを逸脱した一方的制裁は国際法原則に合致せず、国連憲章が規定する安保理の職権を損ない、安保理の現行制裁制度の効率を低下させ、制裁を受ける国家がふさわしくない損害を被るのみならず、自国領域外で制裁を実施することも第三国及び国際貿易経済関係に対して不利な影響を生む」と認識するという、名指しこそしていないけれども、アメリカの対外政策を真っ向から批判する表明があります(ちなみに、上記くだりに続いて、「中露は、第二次大戦戦勝国、国連創設国及び安保理常任理事国として、第二次大戦の成果を断固として守り、第二次大戦を否定、歪曲及び偽造する企みに反対し、国連の権威を擁護するとともに、ファシズム、軍国主義等の罪行を解除し、解放者を中傷する行動を断固として批判し、世界大戦の悲劇の再演を防止するためにあらゆる努力を行う」という表明もあります。

これは、アメリカに対して向けられたものである以上に、日本に対して向けられたものと見るべきでしょう。プーチン・ロシアがこの点で習近平・中国と同じ認識に立っていることを明示したものとして、プーチンに根拠のない期待を寄せる安倍政権に対するメッセージ性は強烈なものがあります)。このくだりをさらに独立して扱ったのがグローバルな戦略的安定強化に関する共同声明と国際法推進に関する声明ということになります。中国とロシアが足並みを揃えてアメリカの覇権主義に対して断固として立ち向かっていく立場を明確にしたもの(2.の環球時報社説参照)として、これらの声明は極めて重要だと思います。アメリカに好意を抱くものが80%を超え、国際関係に関する報道は圧倒的にアメリカのプリズムを通して見ることに慣らされてしまっている日本国内では、アメリカの危険極まる対外政策及びご都合主義の国際法利用に対して正確な認識がほとんどありませんが、この2つの声明は正確にアメリカの対外政策の本質的問題を批判しています。日本にとっては領土問題、さらに国際関係では朝鮮半島、南シナ海、さらにはシリア問題等々、今後の中露両国の共同歩調が強まれば、アメリカの世界戦略に対して大きなカベとなって立ちふさがる局面もますます増えてくることが予想されます。(
浅井基文のページ 2016.06.28

【山中人間話目次】
【和訳】明大レペタ教授が警告する『自民党憲法改正案の最も危険な10の項目』(総合リンク集)
朝日ジャーナルの復刊 堕落しきった共産党の右傾化体質(3)――山口二郎と白井聡の共産党の「国民連合政府」構想支持
堕落しきった共産党の右傾化体質(2)――木下ちがやと岩上安身の三宅洋平擁護
堕落しきった共産党の右傾化体質(1)――藤野保史政策委員長の辞任問題
この日、ビートルズが初来日したという(1966年)
小林興起という政治家らしいやからと「国民連合政府」構想の関係
屋良朝博さんの「沖縄の基地集中度は74%は誤りで、39%」という在日米軍司令部のプロパガンダ批判
田中宇さんの「英国のEU離脱」論
イギリスのEU離脱国民投票 あらわになったグローバリズムの曲がり角 街の弁護士日記
キョウ やすだじゅんぺい4
Everyone says I love you ! 

以下は、弁護士の徳岡宏一朗さんの主宰する「Everyone says I love you !」ブログの「【私も署名しました!】戦場ジャーナリスト安田純平さんの即時救出を政府に求める署名開始!【国家の義務】」という記事に対する私の緊急対応的なコメントです。

徳岡宏一朗さん
 
「安田純平さんを日本が救出する最善の努力を政府に求める署名に賛同します」というご発議ですが、この署名運動に重大な疑問を呈している常岡浩介さんらフリージャーナリストや内藤正典さんら中東政治の研究者をはじめとする一群の人たちがいることをご存知でしょうか。その疑問とは以下のようなものです。

【疑問を呈示されている呼びかけ】
解釈で憲法9条を壊すな!:
【拡散希望】
安田純平さんを救おう!6・6官邸前緊急市民行動
Save Yasuda Junpei!
6月6日 月曜日
時間 18:30〜19:30(予定)
場所 首相官邸前 最寄駅 国会議事堂前駅
主催:
解釈で憲法9条を壊すな!実行委員会・WORLD PEACE NOW 

【疑問】


私はこの疑問の呈示には十分な理由と根拠があると思っています。

この「安田純平さんを救おう!6・6官邸前緊急市民行動」の呼びかけは、上記の呼びかけ文だけでははっきりしたことはわからないのですが、主催団体から推察するところおそらくフリージャーナリストの西谷文和さんからの情報に基づく 呼びかけではないかと思われます。だとすれば、この西谷さんの情報は恣意的なもので、信憑性という点できわめて問題点の多い情報のように思われます。

そのように言うのは以下のような西谷さん情報に関するこれまでの否定的な問題事例と証言があるからです。
 
昨年の12月22日、「国境なき記者団」(本部パリ)は、「安田氏を拘束している犯人らは身代金支払いカウントダウンを開始しており、支払わない場合、安田氏を殺害するか、他のテロリストグループに売り渡す」と言っているとして日本政府に救出要請をする声明を発表し、そのおよそ1週間後の29日までに「情報確認が不十分だった」として同声明を撤回するという事件がありましたが、その「国境なき記者団」が撤回をせざるをえなくなるようなうその情報提供をしたのがセキュリティーコンサルタント会社CTSSという危機管理会社名を自称するニルス・ビルトという人物でした。 

そして、フリージャーナリストの
常岡浩介さんによれば
、「西谷氏はちょっと前までシハーブという人物とともに、今のニルスに近い行動を取っていた。家族にも外務省にも了承を取らず、犯人側と身の代金の話をしようとしていた」ということです。外務省はともかく「家族にも了承を取らず、犯人側と身の代金の話をしようとしていた」件についてはほかならない安田純平さんのご家族の証言もあります。

そのような否定的な問題事例と証言がある人物の根拠に疑いがある情報に基づいて官邸前緊急市民行動なるものを行おうとするのは常岡さんの指摘するように「安田くんにとって非常に不利で危険な行為」といわなければならないでしょう。すでに私たちにはこれは政府の話ですが常岡浩介さんや中田考さんの救出活動を意図的に阻止して結果として後藤健二さんと湯川遥菜さんを死に至らしめたという苦い経験も持っています。これだけ安田さんの友人、知己のフリージャーナリストや中東政治研究者のこれまでの経験に基づく強い反対を押し切ってまでする救出活動、あるいは運動とはなんでしょう? 危険すぎます。即座に賛同署名の中止を求めるものです。

追記:
なぜ私たちは「安田純平さんを救おう!6・6官邸前緊急市民行動」や「安田純平さんを日本が救出する最善の努力を政府に求める署名運動」を「危険」というのか。ふつうこの種の人質事件や誘拐事件は事件が解決に向かうまで水面下で工作をするのが常道(定石)であるということが頭にあれば大っぴらにする行動がいかに危険であるかということは常識として理解できることだろうと思います。大っぴらにすることで手の内を読まれ身代金を吊り上げられたり、最悪の場合殺人にまで到ることはこの種の事件では珍しいことではありません。だから、人質の解放に到るまでは水面下での工作が常道(定石)とされているわけです。

この点について高世仁さん(ジャーナリスト)は6月1日付けの「メディアは安田氏報道で反省を」という記事の中で次のように言っています。

「ただ、憂慮されるのは、こうして注目を浴びることで自称「仲介人」ルートが何か唯一の解決への道のような扱いになることだ。内藤先生はこの点、私と同意見で、「スタジオでこんなことをいうのはなんですが、メディアがこれを取り上げること自体を反省しないと・・・」とクギをさしていた。ラジオでも「政府そして私たちメディアは、安田さん解放のためにどうすればいいんでしょう」と聞かれたが、どう答えていいかわからない。こういうケースの場合、解決への努力はほとんど水面下での「工作」である。誘拐事件を考えたら分かると思うが、事実関係をおおっぴらにして、「さあ、警察はどういう方法で誘拐被害者を救出したらいいでしょうか」などとメディアで議論したりしない。事実関係自体の報道を控える。だから、今のように、安田氏の画像が出るたびに大きなニュースになったり、身代金の金額を報じたりすることは、本来異常なことなのである。スペインでも解放までは報道は非常に抑制されていたという」、と。

そういうことだろうと私も思います。
無力感。怒り。悲しみ。それ以上の表現の言葉を私は持たない。

「アサド政権は恒常的に意図的に病院を空爆しているのだが、なぜか日本の反戦派が騒がない。日本の平和運動と知識人の限界」(中東ニュース速報)という言葉が突き刺さる。

キョウ るわんだ5

本日は参考になるツイートがたくさんありました。その中でもルワンダのジェノサイドとヘイトスピーチとの関連に関しての朝日新聞記者の三浦英之さんの連ツイ(ここではそのまとめツイートだけを紹介しています) と歴史学者の保立道久さんのアメリカ憲法の考察に関しての連ツイは示唆に富む事例と考察が多く、たいへん参考になりました。ぜひ、ご一読ください。

キョウ つねおか
シリア・アレッポ

Blog「みずき」:本エントリは「安田純平さん救出問題に関する西谷文和さん(フリージャーナリスト)の見方と意見は承服しがたい。」の続きということになります。この問題に関して西谷文和さんと同じくフリージャーナリストの常岡浩介さんとの間にあらたな議論の展開があったようです。もちろん、議論の中心となっているのは、人質となっている安田純平さんの生命の確保の問題です。
 
下記で常岡さんが西谷さんを批判して言う「家族になりすましてヌスラ側にデマを…」というのは「西谷とシハーブは外務省にもご家族にも了承を得ないまま、ヌスラ側の『身の代金獲得専門部門』に、『自分たちは安田氏の家族代理人である』と嘘をついて接触、『身の代金は○億でどうか?』などとかけあった」ことを指すようです。これに対して西谷さんは「「質問ですが、あなたはなぜ今回のことをツイートしたのですか?政府から聞いたのですか?それともご家族から?ご家族に誤解があるかもしれないのに、あなたは無責任にツイートしたことになりますよ」と反問しています。 

この西谷さんの「ご家族に誤解があるかもしれないのに」という反問は、逆にいえば、西谷さんの行動について「ご家族に誤解がある」ことを自身で認めているということになります。「ご家族」の発言を信用すべきか西谷さんの発言を信用するべきかについては、この問題についての事実関係を知らない第三者には判断は不可能ですが、「ご家族に誤解がある」ままでその「誤解」を無視してまで「安田さん救出」劇を演じようとする西谷さんの論理には矛盾があるということは言えるでしょう。「安田さん救出」は誰のためにするのか? もちろん、第一に安田さんのためであることは明らかですが、ご本人が拘束されている現状においてコンタクトのとれるステークホルダーは「家族」のほかありません。だとすれば、西谷さんはその「家族の誤解」をなぜ無視しうるのか? 西谷さんの論理にはまっとうな人間を説得する力はありません。

さて、常岡さんは次のように言います。「この男のデタラメを見抜けず、世間にのさばらせた報道ステーションや毎日新聞といったメディアにも大きな責任がある」、と。この常岡さんの指摘は先の記事で私が指摘している「最近の『革新』の『見る目』のなさ」、すなわち、「革新」の「右傾化」の問題につながっていく問題でもあります。

キョウ こうせいじん
ヌスラ戦線に拘束されて最近解放されたポーランド人
のジャーナリスト・映画監督のマルチン・マモン氏

 
下記の毎日新聞記事で紹介されている西谷文和さん(フリージャーナリスト)の見方は私は疑問なので、西谷さんの見方を疑問視する2人の同業者(フリージャーナリスト) の見方と安田純平さんの救出の方法について西谷さんとは見解を異にするもうひとりのフリージャーナリストの意見を下記に貼りつけておきます。

*すでに述べていることですが、西谷文和さんはいわゆる「革新」勢力内の講演会などで「売れっ子」といってよい存在になっているフリージャーナリストです。改めて最近の「革新」の「見る目」のなさを私は思わずにはいられません。

 

下記の毎日新聞記事で紹介されている西谷文和さん(フリージャーナリスト)の見方は私は疑問なので、次の3本の記事でやはり西谷さんの見方を疑問視する2人の同業者(フリージャーナリスト) の見方と安田純平さんの救出の方法について西谷さんとは見解を異...

東本高志さんの投稿 2016年4月8日
キョウ やすだじゅんぺい2

Blog「みずき」:フリージャーナリストの西谷文和さんが安田純平さんの解放について一刻も早いヌスラ戦線との交渉を日本政府に促しています。これは日本政府に対する西谷さんの「期待」の表明というべきものでしょう。しかし、その日本「政府は何の動きも示さないだろう」というのがジャーナリストの高世仁さんの見方です。こちらは日本政府には安田さんの解放について「なんらの期待もできない」という表明です。両者とも安田さんの一刻も早い救出を望んでいることはもちろん同じですが、左記の認識の違いは私には大きいように思われます。それは安田さんの安否に関わる救出方法のアプローチの違いとなって現われざるをえないからです。両者の見方の可否を考えるために下記の「山中人間話」では直近の西谷さんのツイートと昨年末のフリージャーナリストの常岡浩介さんと西谷さんのツイッター上の応酬を見ておきます。

【安田純平さんの動画が公表された意味】
早朝、テレビ局からの電話で起こされた。「
安田純平さんの動画が公表されたんですがご存じですか」ああ、ついに出たか。一ヵ月ほど前、安田さんの友人で、最近ヌスラ戦線と接触した人から「ヌスラ戦線は日本政府と交渉したがっている。近く安田さんの動画が出そうだ。彼らは報道機関に提供するか、Youtubeに上げると言っている」と聞いていたのだ。日テレが抜群にはやく、朝4時にはニュースで流していた。(略)日テレは独自にヌスラ戦線(の代理人)から映像を受け取っているようだ。日テレはこう報じている。《去年から行方が分からなくなっているフリージャーナリストの安田純平さんが、シリアで武装勢力に拘束されている様子を映したとみられる映像が公開された。(略)映像を提供したのは国際テロ組織アルカイダ系の武装組織「ヌスラ戦線」と関係する人物で、この人物は、安田さんは「ヌスラ戦線」に拘束されていると話している。「ヌスラ戦線」は、シリア北西部を拠点に活動し、これまでも外国人の誘拐事件をたびたび起こしている。この映像は、ヌスラ戦線と関係があるとされる人物のフェイスブックページでも公開されている。日本政府高官は、これまでに、日本テレビの取材に対し、安田さんは「ヌスラ戦線」に拘束されているとの見方を示している。》(略)

ヌスラ戦線は
I S(イスラム国)と同根のいわば兄弟組織だが、互いに激しい戦闘を繰り広げており、行動様式はかなり違う。これまでたくさんのジャーナリストを拘束してきたが、ISのように処刑したりはしていない。今も安田さんの他、スペイン人ジャーナリスト3人拘束している。
キョウ リトビネンコ
アレクサンドル・リトビネンコ
2002年5月に英ロンドンで撮影=AP


【ロシア政権の根っこには深い闇の世界がある】

リトビネンコ暗殺は、ロシア諜報機関がロンドンまで工作員を送って邪魔になる人物を抹殺した恐ろしい事件だが、英国の調査委員会がプーチンの関与を事実上認めた。《英国内務省の公開調査委員会は21日、2006年にロンドンで起きたロシア連邦保安庁(FSB)の元スパイ、リトビネンコ氏の暗殺事件について「プーチン大統領がおそらく承認した」とする調査結果を発表した。プーチン政権を批判し、英国に亡命していた同氏は放射性物質「ポロニウム」により毒殺された。容疑者であるルゴボイ氏は事件後、ロシア下院議員に選出されている。ロシア外務省は同日「事件は政治的に利用されている」と調査を批判した。》(日経新聞
キョウ ヤスダ2

【お金で解決しようと持ちかけるニルス・ビルトの行為は無思慮で非常に危険】
きょう、
常岡浩介さんがテレビ「いま世界は」で安田純平さんの件でスタジオ出演した。(略)安田さんの件は、事柄の性質上、たくさんの事実が公表されていないため、多くの誤解を招いている。常岡さんが語った範囲で、今の事態にいたる経緯を書いておこう。
キョウ ヤスダ
                                                                                               (写真:ロイター/アフロ)

【安田純平さんの身の安全と健康、そして一日もはやい帰国をいのる】
あるグループの声明で、ジャーナリスト安田純平さんの拘束事件が一斉にマスコミに出た。《(略)国際ジャーナリスト団体「国境なき記者団」(本部パリ)は22日、フリージャーナリストの安田純平さん(41)がシリアで武装勢力に拘束されているとして、早急な解放を求める声明をホームページに掲載した。安田さんの救出に向けてあらゆる手段を取るよう日本政府に促している。声明によると、武装勢力は身代金要求に応じなければ殺害するなどと脅迫している。 安田さんの知人らによると、安田さんは6月下旬にトルコ南部からシリアに入った後、連絡が途絶えた。フリージャーナリストの常岡浩介さん(46)は「私が知る限り、安田さんに関して身代金の要求はない。国境なき記者団の声明は信ぴょう性に疑問があると思う」と話している。》