Blog「みずき」:「漠然と賃金が上がっていくと思っていた」とは安倍晋三のアベノミクスを政策指南役として天まで持ち上げた者としてなんと無責任な発言か。とまれ、安倍と安倍ブレーンのその無責任さを含めてこれがアベノミクスなるものの正体だった。ま、わかりきっていたことではあるけれども。しかし、そのわかりきっていたことに「日本国民」は10有余年に渡って騙されてきた。そして、この間、安倍はこの国を回復不可能なまでにぶち壊した。「日本国民」なるものは坂口安吾が敗戦直後に『堕落論』を書いた状況から1ミリも変わっていない。なんとも言はんかたなし。
『アベノミクスの「指南役」と持ち上げられた浜田宏一氏の弁
https://www.tokyo-np.co.jp/article/237766
10年間たっても賃金があまり上がらなかったのは「予想外だった。僕は漠然と賃金が上がっていくと思っていた。」「普通の経済学の教科書には需要が高まっていけば実質賃金も上がっていくはずだと書いてある。」
浜田氏は教科書に書いてないことはわからないなら現実の経済政策に関わるべきではなかった。そもそも金融政策で賃金を動かせると思い込むのが間違い。金融緩和で日銀の貨幣供給量(マネタリーベース)は5倍になったが、その80.4%は民間銀行から日銀に還流し(日銀当座預金)市場に回っていない。
日銀当座預金とは民間銀行が引き受けた国債を日銀に転売して得た手取り金。民間銀行はその大半を日銀へ当座預金として還流している。これは全国銀行の預貸率(貸出金残高/預金残高)が量的緩和の期間中、下がり続けたことと表裏の関係。消費(実体経済)が低迷する以上、資金需要は上向かない。』(醍醐聰Twitter 2023年3月22日)
附:
アベノミクスの10年、労働者にツケ…「意外。教科書にはなかった」 元首相の指南役・浜田宏一氏インタビュー
https://www.tokyo-np.co.jp/article/237766?fbclid=IwAR354rapW9S_lln4I8a2JmgXC8QJyNN9CJnP3dlU57AuhRPOXMHMVePntqc
『大規模な金融緩和を中心とした安倍晋三元首相の経済政策「アベノミクス」の指南役として、当時内閣官房参与を務めた浜田宏一米エール大学名誉教授(87)が本紙のインタビューに応じた。浜田氏はアベノミクスの10年間について、大企業で利益が出ても中小企業や労働者に恩恵が波及しなかったことに「意外で、いびつな状況」との見解を示した。主なやりとりは次の通り。(原田晋也)
—過去に「アベノミクスはトリクルダウン」と発言していた。
「私がアベノミクスの性質を十分に理解していない時、トリクルダウンのようなことをやっていると誤解した。反省している。最近の私はアベノミクスはトリクルダウンではなかったと思っている。今、トリクルダウンを信じてはいない」
「私が安倍首相(当時)に『政府が、企業が思う以上に賃金を上げろと言うのは難しいのでは』と言ったところ、『企業は労働者の生活を考え、国民の総需要が不足しないように十分に賃金を払わなければいけない』と強く反論された。反論されたのはあの時が唯一だ。このことで、首相がトリクルダウンの考え方ではないとはっきり分かった」
*トリクルダウン 英語で「徐々にしたたり落ちる」という意味で、大企業や富裕層を先行して豊かにすれば、中小企業や低所得層にも富が波及し、国民全体が豊かになるとの経済理論。小泉政権などで取り入れられたとされ、アベノミクスも開始当初、政権の政策顧問や閣僚らがこの考え方を説明していた。
—大規模な金融緩和で大企業の収益が改善したのに、賃金が上がらなかったのはなぜだと考えるか。
「長いデフレが続いたことで、みんな物価上昇に悲観的になった。(企業の行動が)出血してでも(低価格で)ものを売るような商売になってしまった。消費税増税でも企業が商品に価格転嫁できず、労働者などの川下にツケが回ったのではないか」
—「ツケが回る」とは、大企業がもうけても下請けの中小企業は取引価格を上げられず、労働者の賃金も上がらない状況のことか。
「そうだ。いびつな状況だといえる」
—10年間たっても賃金があまり上がらなかったことは予想外だったのか。
「予想外だった。僕は漠然と賃金が上がっていくと思っていた。安倍首相もそう思っていたと思う。賃金がほとんど増えないで雇用だけが増えるようなことに対して、もう少し早く疑問を持つべきだった。普通の経済学の教科書には、需要が高まっていけば実質賃金も上がっていくはずだと書いてある。ツケを川下の方に回すようなシステムで調整されるなんてことは書いていない。意外で、望ましくない方向にいっている」
—安倍氏は、最初からトリクルダウンを意図していなかったのか。
「(アベノミクスで)雇用が増えるとは思っていただろう。だが、それによってみんなが豊かになるだろうと思っていたかは、分からない」 *浜田宏一 東大卒。東大教授や米エール大教授、内閣府経済社会総合研究所の所長を経てエール大名誉教授。第2次安倍政権の2012年〜20年に内閣官房参与を務め、大規模な金融緩和を提唱した。』(東京新聞 2023年3月14日)
『アベノミクスの「指南役」と持ち上げられた浜田宏一氏の弁
https://www.tokyo-np.co.jp/article/237766
10年間たっても賃金があまり上がらなかったのは「予想外だった。僕は漠然と賃金が上がっていくと思っていた。」「普通の経済学の教科書には需要が高まっていけば実質賃金も上がっていくはずだと書いてある。」
浜田氏は教科書に書いてないことはわからないなら現実の経済政策に関わるべきではなかった。そもそも金融政策で賃金を動かせると思い込むのが間違い。金融緩和で日銀の貨幣供給量(マネタリーベース)は5倍になったが、その80.4%は民間銀行から日銀に還流し(日銀当座預金)市場に回っていない。
日銀当座預金とは民間銀行が引き受けた国債を日銀に転売して得た手取り金。民間銀行はその大半を日銀へ当座預金として還流している。これは全国銀行の預貸率(貸出金残高/預金残高)が量的緩和の期間中、下がり続けたことと表裏の関係。消費(実体経済)が低迷する以上、資金需要は上向かない。』(醍醐聰Twitter 2023年3月22日)
附:
アベノミクスの10年、労働者にツケ…「意外。教科書にはなかった」 元首相の指南役・浜田宏一氏インタビュー
https://www.tokyo-np.co.jp/article/237766?fbclid=IwAR354rapW9S_lln4I8a2JmgXC8QJyNN9CJnP3dlU57AuhRPOXMHMVePntqc
『大規模な金融緩和を中心とした安倍晋三元首相の経済政策「アベノミクス」の指南役として、当時内閣官房参与を務めた浜田宏一米エール大学名誉教授(87)が本紙のインタビューに応じた。浜田氏はアベノミクスの10年間について、大企業で利益が出ても中小企業や労働者に恩恵が波及しなかったことに「意外で、いびつな状況」との見解を示した。主なやりとりは次の通り。(原田晋也)
—過去に「アベノミクスはトリクルダウン」と発言していた。
「私がアベノミクスの性質を十分に理解していない時、トリクルダウンのようなことをやっていると誤解した。反省している。最近の私はアベノミクスはトリクルダウンではなかったと思っている。今、トリクルダウンを信じてはいない」
「私が安倍首相(当時)に『政府が、企業が思う以上に賃金を上げろと言うのは難しいのでは』と言ったところ、『企業は労働者の生活を考え、国民の総需要が不足しないように十分に賃金を払わなければいけない』と強く反論された。反論されたのはあの時が唯一だ。このことで、首相がトリクルダウンの考え方ではないとはっきり分かった」
*トリクルダウン 英語で「徐々にしたたり落ちる」という意味で、大企業や富裕層を先行して豊かにすれば、中小企業や低所得層にも富が波及し、国民全体が豊かになるとの経済理論。小泉政権などで取り入れられたとされ、アベノミクスも開始当初、政権の政策顧問や閣僚らがこの考え方を説明していた。
—大規模な金融緩和で大企業の収益が改善したのに、賃金が上がらなかったのはなぜだと考えるか。
「長いデフレが続いたことで、みんな物価上昇に悲観的になった。(企業の行動が)出血してでも(低価格で)ものを売るような商売になってしまった。消費税増税でも企業が商品に価格転嫁できず、労働者などの川下にツケが回ったのではないか」
—「ツケが回る」とは、大企業がもうけても下請けの中小企業は取引価格を上げられず、労働者の賃金も上がらない状況のことか。
「そうだ。いびつな状況だといえる」
—10年間たっても賃金があまり上がらなかったことは予想外だったのか。
「予想外だった。僕は漠然と賃金が上がっていくと思っていた。安倍首相もそう思っていたと思う。賃金がほとんど増えないで雇用だけが増えるようなことに対して、もう少し早く疑問を持つべきだった。普通の経済学の教科書には、需要が高まっていけば実質賃金も上がっていくはずだと書いてある。ツケを川下の方に回すようなシステムで調整されるなんてことは書いていない。意外で、望ましくない方向にいっている」
—安倍氏は、最初からトリクルダウンを意図していなかったのか。
「(アベノミクスで)雇用が増えるとは思っていただろう。だが、それによってみんなが豊かになるだろうと思っていたかは、分からない」 *浜田宏一 東大卒。東大教授や米エール大教授、内閣府経済社会総合研究所の所長を経てエール大名誉教授。第2次安倍政権の2012年〜20年に内閣官房参与を務め、大規模な金融緩和を提唱した。』(東京新聞 2023年3月14日)
【山中人閒話目次】
・浜田宏一よ、「漠然と賃金が上がっていくと思っていた」とはなんという言いぐさか 醍醐聰Twitter
・「平和の像」撤去に関するカッセル大学学長理事会への抗議文 吹禅 Yuki Tanaka 田中利幸ブログ
・Nの記録・警察庁長官狙撃事件/中 オウムに固執、足かせ 公安部、受刑者の「自白」疑問視 毎日新聞
・「われわれはいま、どん底にいる」――ロシア反体制派の英雄ナワリヌイが獄中から語る「ロシアの未来にまつわる15の原則」 クーリエ・ジャポン
・浜田宏一よ、「漠然と賃金が上がっていくと思っていた」とはなんという言いぐさか 醍醐聰Twitter
・「平和の像」撤去に関するカッセル大学学長理事会への抗議文 吹禅 Yuki Tanaka 田中利幸ブログ
・Nの記録・警察庁長官狙撃事件/中 オウムに固執、足かせ 公安部、受刑者の「自白」疑問視 毎日新聞
・「われわれはいま、どん底にいる」――ロシア反体制派の英雄ナワリヌイが獄中から語る「ロシアの未来にまつわる15の原則」 クーリエ・ジャポン
Blog「みずき」:高世仁さん(放送ジャーナリスト)の「今も侵される放送法の精神」
『放送法に関して書いてきたが、ここで条文をちゃんと読んでみよう。関連部分を以下にあげる。
第一条 この法律は、次に掲げる原則に従って、放送を公共の福祉に適合するように規律し、その健全な発達を図ることを目的とする。
一 放送が国民に最大限に普及されて、その効用をもたらすことを保障すること。
二 放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによって、放送による表現の自由を確保すること。
三 放送に携わる者の職責を明らかにすることによって、放送が健全な民主主義の発達に資するようにすること。
第三条 放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない。
第四条 放送事業者は、国内放送及び内外放送の放送番組の編集に当たっては、次の各号の定めるところによらなければならない。
一 公安及び善良な風俗を害しないこと。
二 政治的に公平であること。
三 報道は事実をまげないですること。
四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。
2 放送事業者は、テレビジョン放送による国内放送等の放送番組の編集に当たっては、静止し、又は移動する事物の瞬間的影像を視覚障害者に対して説明するための音声その他の音響を聴くことができる放送番組及び音声その他の音響を聴覚障害者に対して説明するための文字又は図形を見ることができる放送番組をできる限り多く設けるようにしなければならない。
第六条 放送事業者は、放送番組の適正を図るため、放送番組審議機関を置くものとする。
まず第一条で、「不偏不党」や「自律」が「表現の自由」を確保するためだと書いてある。素直に解釈すれば「不偏不党」は放送に対する要請ではなく、逆に行政の「偏向」「介入」を許さない趣旨だ。だから、第三条がこれに続いて記されているのだ。
第四条の「政治的に公平であること」などは編集にあたっての放送事業者の努力目標であることは、2の聴覚障害者向けの編集に努めるようにという文言を見ても明らかだろう。これを守らないから「停波」などにつながるという話はまったくの筋違いだ。
第六条があることからも、放送法はあくまでも放送事業者の自律を重視していると解することができる。
実は政治の放送への介入、さらには放送事業者側の忖度は、過去の話ではなく、まさに現在進行中の問題である。
私の周辺でもいろいろな「事件」が起きている。
友人のジャーナリスト、常岡浩介さんもTBSの「ひるおび」に呼ばれて行ったところ、生放送直前に政府批判をしないようにと言われ、断ったら「お帰りください」と言われたので帰ってきたと言っていた。
また統一協会批判で一時テレビに出ずっぱりだったジャーナリストの有田芳生さんは1995年ごろ警察が統一協会の摘発に意欲を示したが「政治の力」のため実現しなかったことを番組で話したところ、出演依頼がパッタリ途絶えたという。
11日のTBS「報道特集」のスタジオでは以下のやりとりがあった。
膳場貴子キャスター:
安倍政権に限らず政治の側が介入しようということはこれまでもあった。でも、今回の行政文書から明らかになったのは、これまで政治権力と放送事業者との緊張関係の中で実績を積み上げながら運用してきた法律が、今回は政府内のごく少人数の内輪の議論で解釈を変更しようとしていたということです。国会での議論があったわけでもありません。民主主義という観点からも見過せない問題があると思います。しかもこの件が官邸主導の成功体験としてその後の政治に影響を与えたと聞きますと、ますます見過ごせないと思うんですが、曺さんどうですか。
曺琴袖編集長:
実は今週火曜日、3月7日は森友問題で自殺された赤木俊夫さんの5回目の命日だった。この行政文書の問題が報じられた時私は真っ先に赤木さんのことを考えました。赤木さんという人は公務員としてもあれだけの矜持、公僕としての誇りを持ちながら、圧力を受け、公文書の改ざんに加担してしまったわけです。森友問題の少し前から、メディアの萎縮が進み、今ときに私たちの番組さえも大きなプレッシャーを受けながら報道することが増えてきました。そういう時私は赤木俊夫さんの生きざまを胸に、自分に言い聞かせています。メディアの矜持というのは、国家権力、政府組織の広報をすることではなく、ときに彼らの都合の悪いこと、報じられたくないことも伝え、国民の知る権利に寄与することではないかと思っています。放送法は政治が放送事業者に介入する根拠のためにあるのではなく、私たち、そうしたメディアの矜持をもつ放送事業者を守るためにあるということを忘れないでいただきたいなと思います。
緊張した表情から、大きな危機感を持っていることが伝わってきた。
私たちも志ある放送人を応援しよう。』(高世仁のジャーナルな日々 2023年3月21日)
『放送法に関して書いてきたが、ここで条文をちゃんと読んでみよう。関連部分を以下にあげる。
第一条 この法律は、次に掲げる原則に従って、放送を公共の福祉に適合するように規律し、その健全な発達を図ることを目的とする。
一 放送が国民に最大限に普及されて、その効用をもたらすことを保障すること。
二 放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによって、放送による表現の自由を確保すること。
三 放送に携わる者の職責を明らかにすることによって、放送が健全な民主主義の発達に資するようにすること。
第三条 放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない。
第四条 放送事業者は、国内放送及び内外放送の放送番組の編集に当たっては、次の各号の定めるところによらなければならない。
一 公安及び善良な風俗を害しないこと。
二 政治的に公平であること。
三 報道は事実をまげないですること。
四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。
2 放送事業者は、テレビジョン放送による国内放送等の放送番組の編集に当たっては、静止し、又は移動する事物の瞬間的影像を視覚障害者に対して説明するための音声その他の音響を聴くことができる放送番組及び音声その他の音響を聴覚障害者に対して説明するための文字又は図形を見ることができる放送番組をできる限り多く設けるようにしなければならない。
第六条 放送事業者は、放送番組の適正を図るため、放送番組審議機関を置くものとする。
まず第一条で、「不偏不党」や「自律」が「表現の自由」を確保するためだと書いてある。素直に解釈すれば「不偏不党」は放送に対する要請ではなく、逆に行政の「偏向」「介入」を許さない趣旨だ。だから、第三条がこれに続いて記されているのだ。
第四条の「政治的に公平であること」などは編集にあたっての放送事業者の努力目標であることは、2の聴覚障害者向けの編集に努めるようにという文言を見ても明らかだろう。これを守らないから「停波」などにつながるという話はまったくの筋違いだ。
第六条があることからも、放送法はあくまでも放送事業者の自律を重視していると解することができる。
実は政治の放送への介入、さらには放送事業者側の忖度は、過去の話ではなく、まさに現在進行中の問題である。
私の周辺でもいろいろな「事件」が起きている。
友人のジャーナリスト、常岡浩介さんもTBSの「ひるおび」に呼ばれて行ったところ、生放送直前に政府批判をしないようにと言われ、断ったら「お帰りください」と言われたので帰ってきたと言っていた。
また統一協会批判で一時テレビに出ずっぱりだったジャーナリストの有田芳生さんは1995年ごろ警察が統一協会の摘発に意欲を示したが「政治の力」のため実現しなかったことを番組で話したところ、出演依頼がパッタリ途絶えたという。
11日のTBS「報道特集」のスタジオでは以下のやりとりがあった。
膳場貴子キャスター:
安倍政権に限らず政治の側が介入しようということはこれまでもあった。でも、今回の行政文書から明らかになったのは、これまで政治権力と放送事業者との緊張関係の中で実績を積み上げながら運用してきた法律が、今回は政府内のごく少人数の内輪の議論で解釈を変更しようとしていたということです。国会での議論があったわけでもありません。民主主義という観点からも見過せない問題があると思います。しかもこの件が官邸主導の成功体験としてその後の政治に影響を与えたと聞きますと、ますます見過ごせないと思うんですが、曺さんどうですか。
曺琴袖編集長:
実は今週火曜日、3月7日は森友問題で自殺された赤木俊夫さんの5回目の命日だった。この行政文書の問題が報じられた時私は真っ先に赤木さんのことを考えました。赤木さんという人は公務員としてもあれだけの矜持、公僕としての誇りを持ちながら、圧力を受け、公文書の改ざんに加担してしまったわけです。森友問題の少し前から、メディアの萎縮が進み、今ときに私たちの番組さえも大きなプレッシャーを受けながら報道することが増えてきました。そういう時私は赤木俊夫さんの生きざまを胸に、自分に言い聞かせています。メディアの矜持というのは、国家権力、政府組織の広報をすることではなく、ときに彼らの都合の悪いこと、報じられたくないことも伝え、国民の知る権利に寄与することではないかと思っています。放送法は政治が放送事業者に介入する根拠のためにあるのではなく、私たち、そうしたメディアの矜持をもつ放送事業者を守るためにあるということを忘れないでいただきたいなと思います。
緊張した表情から、大きな危機感を持っていることが伝わってきた。
私たちも志ある放送人を応援しよう。』(高世仁のジャーナルな日々 2023年3月21日)
【山中人閒話目次】
・高世仁さんの「今も侵される放送法の精神」 高世仁のジャーナルな日々
・習近平はウクライナ侵略者のプーチンの側につくことを明確に公言したに等しい――習近平国家主席がプーチン大統領を中国に招待 関係強化を進める狙いか 日テレニュース
・深草徹さんの中国のウクライナ戦争和平案批判――「公正さはもちろん、公正らしさも欠く中国」
・ロシアのウクライナ侵略戦争によって暗黒の時代の記憶が急速に蘇り対話が深められている 内海信彦FB――ウクライナを積極支援するポーランド 反目の歴史 対話重ねた先に 朝日新聞#論壇
・日本の親米国際政治学者らは、いまもイラク侵攻を支持したり正当化したりすることに余念がない 早尾貴紀FB――ブッシュ大統領 イラク戦争開戦演説
・若い世代の保守離れ 18~39歳と70歳以上の年代別内閣支持率で従来とは逆の傾向――NHK世論調査 内閣支持率 | NHK選挙WEB
・すごい最終講義でした…。安田講堂からの中継で、演劇的でもありますね かしTwitter――吉見俊哉 最終講義「東大紛争 1968-69」
・弟の印象画【尹東柱の詩 4】 井田泉FB
Blog「みずき」:『宮地幸子さんの政治の季節~「模範党員」から「反党分子」へ~(第1回)
先日、ネットを検索していたら、「友人」というタイトルがついた宮地幸子さんという方の回想記に出会い、釘付けになった。
宮地幸子さんの「政治の季節」(第2回)
宮地さん稿「試練」(抄録添付)。かつては「模範党員」と称えられた宮地さん夫妻。しかし、夫の健一さんが党中央の党勢拡大偏重の方針を強く批判したことからマークされ、除名されて夫婦ともども「反党分子」と攻撃されるに至った経過が生々しく綴られている。
宮地幸子さんの「政治の季節」(第3回)
宮地さん稿「十年後」(抄録添付)。
「党内の秘密は夫婦の間でも守らねばならなかった。」
幸子さんは夫の除名に関する質問状を計6回、M委員長宛てに出したが返事はなかった。
「党のいう民主集中は異見の握り潰しである事を知って私は離党した」
宮地幸子さんの「政治の季節」(第4回)
「党勢拡大の広告塔―あやつり人形」
夫の除名を機に孤独と貧困の中で自分たちは共産党活動の被害者と思っていた宮地夫妻。しかし後年、自分たちが広告塔になった党勢拡大運動で心身を病んだ党員がいたことを知り、宮地さんは自分が加害者でもあったと思い知る。
「私は共産党のピエロだった」・・・宮地幸子さんの悔悟の言葉は重い。そして、松竹・鈴木両氏の除名を機に広がった共産党版#Me Tooを見ると、時を経ても共産党の異論排除、大本営体質は変わっていないことを思い知らされる。私は宮地夫妻の回想記こそ活字にして広く読まれることを願ってやまない。』(醍醐聰Twitter 2023年3月21、22日)
【山中人閒話目次】
・夫の除名に関する質問状を計6回、M委員長宛てに出したが返事はなかった。「党のいう民主集中は異見の握り潰しである事を知って私は離党した」 醍醐聰Twitter
・「袴田事件再審開始決定に対する特別抗告を断念」が検察にもたらす衝撃! 郷原信郎の「日本の権力を斬る!」#231
・「公安部」なるものの弊害性がここでも明らかになっている――Nの記録・警察庁長官狙撃事件 「オウム信者犯行説」に固執した公安部 修正できなかった理由 毎日新聞
・袴田巌さんが「死刑囚表現展」に応募してきたーー2016年制作、金聖雄監督『袴田巌ーー夢の間の世の中』に寄せて 太田昌国FB
・"ポルノ女優への不倫口止め料"めぐり 米 トランプ前大統領 22日に起訴か テレビ朝日系(ANN)
・ロシアが中国のこの偽和平提案に乗っかり、「即時停戦」の強制に向けてウクライナと西側に外交的圧力をかけていくという流れ 中ロ首脳、相互に寄稿 ウクライナ危機「出口見いだせる」 時事通信
・声明 「政府が放送に介入することを憂慮する」 日本ペンクラブ 会長 桐野夏生
・深草徹さんの「日韓関係――朝日新聞世論調査の結果から見たその危うさ」 深草徹FB
・「中野新報」と上田耕一郎のこと 原武史の『レッドアローとスターハウス』 GalbraithianTwitter
・小林秀雄的に言えば、こういう思い出の集積が歴史というものだろう 河野有理Twitter
Blog「みずき」:『「袴田巌さんの再審開始が確定 東京高検、最高裁への特別抗告断念」
「21日午前0時を過ぎれば袴田さんの再審開始が確定する。袴田さんが無罪となる公算が大きくなった。」
無罪は喜ばしいが、それにとどまらず捜査機関による証拠捏造という権力犯罪の追求が欠かせない。』(醍醐聰Twitter 2023年3月20日)
『きわめて冷静に考えてみて、あの出来事以降、パンドラの箱があいたのだ。蓋はまだ開いたままだ。なのに、メディア(とりわけテレビ)が委縮・忖度・自主規制しているさまは、ますます時代に自ら取り残されていくということではないのか。』(金平茂紀FB 2023年3月20日)
「21日午前0時を過ぎれば袴田さんの再審開始が確定する。袴田さんが無罪となる公算が大きくなった。」
無罪は喜ばしいが、それにとどまらず捜査機関による証拠捏造という権力犯罪の追求が欠かせない。』(醍醐聰Twitter 2023年3月20日)
『きわめて冷静に考えてみて、あの出来事以降、パンドラの箱があいたのだ。蓋はまだ開いたままだ。なのに、メディア(とりわけテレビ)が委縮・忖度・自主規制しているさまは、ますます時代に自ら取り残されていくということではないのか。』(金平茂紀FB 2023年3月20日)
【山中人閒話目次】
・無罪は喜ばしいが、それにとどまらず捜査機関による証拠捏造という権力犯罪の追求が欠かせない――「袴田事件」東京高検 特別抗告を断念 TBS NEWS
・高世仁さんの「イラク戦争開戦20年を迎えて」
・ロシア国家のウクライナ侵略戦争を擁護する人たちは、国際刑事裁判所メカニズムによって終身刑となり収監されたムラディッチのことを知っておいた方が良い 内海信彦FB
・マリウポリを訪問したプーチンを待ち構えていたのは町が攻撃を受けている時に略奪を働いていたのが目撃されていた人達だった インフォレジスト
・プーチン逮捕状によってロシアが頼りとするグローバルサウス、アフリカの半数、ほぼ全ての中南米諸国、友好国のセルビアやタジキスタンにまで行けなくなる Sanshiro HosakaTwitter
・この強行採決は極右を拒否するために投票する人を大幅に減らすよ 石田英敬Twitter――仏全土で抗議デモ続く 年金改革案の強行採択受け AFP
・河野有理さん(法政大学法学部教員、政治学・政治思想史)の「日本共産党の民主集中制」批判
・友が発狂した。うろたえる。とともに、宜なるかなと思っている。ただ狂うことのみが己を己で在らしめる。といふこともある。といふこともあらう 辺見庸「日録」
・無罪は喜ばしいが、それにとどまらず捜査機関による証拠捏造という権力犯罪の追求が欠かせない――「袴田事件」東京高検 特別抗告を断念 TBS NEWS
・高世仁さんの「イラク戦争開戦20年を迎えて」
・ロシア国家のウクライナ侵略戦争を擁護する人たちは、国際刑事裁判所メカニズムによって終身刑となり収監されたムラディッチのことを知っておいた方が良い 内海信彦FB
・マリウポリを訪問したプーチンを待ち構えていたのは町が攻撃を受けている時に略奪を働いていたのが目撃されていた人達だった インフォレジスト
・プーチン逮捕状によってロシアが頼りとするグローバルサウス、アフリカの半数、ほぼ全ての中南米諸国、友好国のセルビアやタジキスタンにまで行けなくなる Sanshiro HosakaTwitter
・この強行採決は極右を拒否するために投票する人を大幅に減らすよ 石田英敬Twitter――仏全土で抗議デモ続く 年金改革案の強行採択受け AFP
・河野有理さん(法政大学法学部教員、政治学・政治思想史)の「日本共産党の民主集中制」批判
・友が発狂した。うろたえる。とともに、宜なるかなと思っている。ただ狂うことのみが己を己で在らしめる。といふこともある。といふこともあらう 辺見庸「日録」
Blog「みずき」:醍醐聰さんの「鈴木元氏の除名問題について、ひとまずの感想。」
『「選挙を前にしたこの時期にセンスが悪い」という議論があるが、私の感想は違う。タイミングの問題ではない。いつかは露見すると十分予見できた「大本営」体質の閉鎖性、独善性が、たまたま選挙前に起こった事件をきっかけにして露呈したに過ぎない。
私が言う共産党の独善性の際たる事例は、敗北した選挙を、次々と基準を更新して「大本営」的総括で切り抜けようとしてきた点である。議席が減ると、いや得票数では増えた、得票目標が大幅未達となると、いや野党統一候補の奮闘に貢献した、野党統一候補が敗北すると、反共攻撃の逆流が強まり・・・
共産党京都府常任委は鈴木氏が「規約にもとづいて民主的に運営している党の姿をゆがめ」と非難したが天に唾する口吻である。自党のパワハラ市議を再公認する一方、パワハラ根絶を求めた同僚市議を除籍した草加市のあべこべ処分、同僚市議の酷いパワハラ行為を放置した富田林市の例は知らぬ存ぜぬ?』(醍醐聰Twitter 2023年3月17日)
『鈴木元氏の『志位和夫委員長への手紙』を読んで共鳴した一つは、不破哲三氏の文献講釈的なマルクス流共産主義、机上の未来社会論と決別するよう訴えている点である。端的に言うと日本で公正で平等な経済社会と人権を行き渡らせるために今、必須なのはマルクスの古典を下敷きにして彼岸の理想郷を語ることではない。憲法を日本社会に根付かせるための法知識、税財政、社会保障各論等を学び、応用力を身につけることである。生活から遊離した思想は教条主義の温床になりがちである。鈴木氏が、社会科学研究所を不破氏の私的グループとみなし、解散を求めた直言にも賛同する。』(同上 2023年3月18日)
『もっと生活者目線の政策や対話を、という私の感想は共産党だけに向けたものではない。『しんぶん赤旗』に広告や書評が出る社会科学系の図書は社会保障や税を扱ったものでも「新自由主義批判」「多国籍企業の税逃れ告発」を看板にしたイデオロギー過多と思えるものが少なくない。しかし今もっと必要なのは、例えば、消費税以上に社会保険料の負担が逆進的になっているのはなぜなのか? 独・仏で社会保障の財源を保険料から税に、それも勤労所得に限らず資産も対象にした税に切り替える動きが抬頭したのはなぜなのか、といった私達の生計に直結する問題を考えるのに有用な書物である。』(同上 2023年3月18日)
附:
先に私は弊ブログの「今日の言葉」(2023年3月17日)で次のように述べた。
「予期されていたことだが元共産党京都府委員会常任委員の鈴木元さんも共産党を除名された。私は鈴木元さんに対する共産党の除名処分には当然反対だが、同氏の新著『志位委員長への手紙』で展開されている同党中央批判には異論も持つ。氏の共産党批判は同党の議席や得票の増減(ここでは当然、同党の議席や得票の長期的な減少傾向が問題にされている)という選挙結果に重きを置く、すなわち、それ自体としては自民党や公明党など現体制擁護政党となんら変わりないブルジョア的な政治的打算を超えない批判にしかなっていない、すなわち、実質的な天皇制容認や自衛隊容認など同党の基本理念からの根本的逸脱、組織的転向、右傾化を批判するものになっていないないからである。」
共産党の実質的な天皇制容認論や自衛隊容認論を批判したものであるが、澤藤統一郎さん(弁護士)がもっと明快に同党の天皇制容認論を批判している一文がある。以下、澤藤統一郎さんの論を紹介したい。「かつて共産党は極北の一個の動かぬ星のごとくではなかったか」という見出しは私がつけた。
かつて共産党は極北の一個の動かぬ星のごとくではなかったか
http://article9.jp/wordpress/?p=6112
『これが今年の「驚き納め」だろう。日本共産党が、年明けの通常国会には開会式に出席するというのだ。大日本帝国議会のあの時代、貴族院にしつらえられた玉座から、天皇が国民代表の議員を見下ろして「(お)ことば」を賜るというあの開会式に、である。そりゃなかろう。無数の星々が皆天界をうごめく中にあって、極北の頂点にたった一個の動かぬ星がある。その北辰のごときものこそが共産党ではなかったか。航海する諸々の船が、自分の位置を測るときの動かぬ測定の起点。それこそが共産党が占める位置ではなかったか。何が正しいか間違っているか、頑固な物差しとして変わらぬ存在が共産党ではなかったか。近代日本の民主主義も大衆運動も、天皇制と対峙して生まれ、天皇制と拮抗しながら成長した。その天皇制と向き合った民衆の側の最前線に常に位置していたのが共産党ではなかったか。融通がきかず頑固で、政党助成金も受けとらない筋を通す姿勢。それ故の、共産党への民衆の信頼であり敬意ではなかったか。北極星が動いて物差しが伸び縮みするようでは、世も末なのだ。
天皇制とは、世襲の政治権力構造を意味するものではない。むしろ、神話的・文化的な権威による社会心理的な統治構造というべきであろう。その意味では、象徴天皇制こそが、純粋な天皇制と言っても差し支えない。支配者にとって、自らの主義主張を持った自立した国民は、支配しにくいことこの上ない面倒で疎ましい存在なのだ。統治しやすい支配者お望みの国民のまたの名を「臣民」という。大日本帝国憲法時代の臣民は統治しやすかった。日本国憲法の時代となって、法制上「臣民」はなくなったが、天皇は残った。天皇が残ったことによって、法制上はない「臣民根性」も、「臣民もどき」も、旧体制の残滓として生き残っているのだ。保守的支配体制の側が、統治をしやすい「臣民根性」「臣民もどき」を再生産し拡大をはかるために、天皇を最大限に利用してきたのは周知の事実ではないか。その天皇の利用に最も果敢に闘い、民主主義の徹底のために天皇の存在感を最小限に抑えるべきことを主張してきたのが、共産党であったはず。こんなに簡単に、ものわかりがよくなってしまっては、多くの良心ある叛骨の人々が戸惑うばかりではないか。これは、小さくない問題だ。(略)
昨日(12月24日)の記者会見の中で、次の質疑応答があったという。
―よそから見たら、共産党が普通の党になっていくという一環みたいなことでしょうか。
志位 普通の党というあなたの質問がどういう意味か分かりませんが、私たちが一貫して言っている開会式の民主的改革の提起というのは、将来の政治制度をどうするかという角度から提起しているのではないのです。現在の日本国憲法の原則と精神と諸条項を厳格に貫くという立場から一貫して対応しております。それは一貫しております。
この記者の質問は、論理的ではないにせよ、「これまでは普通ではなかった共産党」が、「普通」になってしまうことへの、良くも悪くも感慨が込められている。これに対する志位委員長の回答は納得しにくい。少なからぬ憲法学者が、現行憲法の解釈として、開会式の「(お)ことば」などは、憲法が明文で限定する天皇の国事行為には含まれない。したがって、憲法はこれを容認していないと理解してきた。そのような憲法学者と共産党は、これまでは相性がよかった。しかしこれからは、リベラル憲法学との折りあいが悪くなることを覚悟しなければならない。憲法学者ばかりではない。多くのオールド・リベラリストとの関係においてもである。(澤藤統一郎の憲法日記 2015年12月25日)
『「選挙を前にしたこの時期にセンスが悪い」という議論があるが、私の感想は違う。タイミングの問題ではない。いつかは露見すると十分予見できた「大本営」体質の閉鎖性、独善性が、たまたま選挙前に起こった事件をきっかけにして露呈したに過ぎない。
私が言う共産党の独善性の際たる事例は、敗北した選挙を、次々と基準を更新して「大本営」的総括で切り抜けようとしてきた点である。議席が減ると、いや得票数では増えた、得票目標が大幅未達となると、いや野党統一候補の奮闘に貢献した、野党統一候補が敗北すると、反共攻撃の逆流が強まり・・・
共産党京都府常任委は鈴木氏が「規約にもとづいて民主的に運営している党の姿をゆがめ」と非難したが天に唾する口吻である。自党のパワハラ市議を再公認する一方、パワハラ根絶を求めた同僚市議を除籍した草加市のあべこべ処分、同僚市議の酷いパワハラ行為を放置した富田林市の例は知らぬ存ぜぬ?』(醍醐聰Twitter 2023年3月17日)
『鈴木元氏の『志位和夫委員長への手紙』を読んで共鳴した一つは、不破哲三氏の文献講釈的なマルクス流共産主義、机上の未来社会論と決別するよう訴えている点である。端的に言うと日本で公正で平等な経済社会と人権を行き渡らせるために今、必須なのはマルクスの古典を下敷きにして彼岸の理想郷を語ることではない。憲法を日本社会に根付かせるための法知識、税財政、社会保障各論等を学び、応用力を身につけることである。生活から遊離した思想は教条主義の温床になりがちである。鈴木氏が、社会科学研究所を不破氏の私的グループとみなし、解散を求めた直言にも賛同する。』(同上 2023年3月18日)
『もっと生活者目線の政策や対話を、という私の感想は共産党だけに向けたものではない。『しんぶん赤旗』に広告や書評が出る社会科学系の図書は社会保障や税を扱ったものでも「新自由主義批判」「多国籍企業の税逃れ告発」を看板にしたイデオロギー過多と思えるものが少なくない。しかし今もっと必要なのは、例えば、消費税以上に社会保険料の負担が逆進的になっているのはなぜなのか? 独・仏で社会保障の財源を保険料から税に、それも勤労所得に限らず資産も対象にした税に切り替える動きが抬頭したのはなぜなのか、といった私達の生計に直結する問題を考えるのに有用な書物である。』(同上 2023年3月18日)
附:
先に私は弊ブログの「今日の言葉」(2023年3月17日)で次のように述べた。
「予期されていたことだが元共産党京都府委員会常任委員の鈴木元さんも共産党を除名された。私は鈴木元さんに対する共産党の除名処分には当然反対だが、同氏の新著『志位委員長への手紙』で展開されている同党中央批判には異論も持つ。氏の共産党批判は同党の議席や得票の増減(ここでは当然、同党の議席や得票の長期的な減少傾向が問題にされている)という選挙結果に重きを置く、すなわち、それ自体としては自民党や公明党など現体制擁護政党となんら変わりないブルジョア的な政治的打算を超えない批判にしかなっていない、すなわち、実質的な天皇制容認や自衛隊容認など同党の基本理念からの根本的逸脱、組織的転向、右傾化を批判するものになっていないないからである。」
共産党の実質的な天皇制容認論や自衛隊容認論を批判したものであるが、澤藤統一郎さん(弁護士)がもっと明快に同党の天皇制容認論を批判している一文がある。以下、澤藤統一郎さんの論を紹介したい。「かつて共産党は極北の一個の動かぬ星のごとくではなかったか」という見出しは私がつけた。
かつて共産党は極北の一個の動かぬ星のごとくではなかったか
http://article9.jp/wordpress/?p=6112
『これが今年の「驚き納め」だろう。日本共産党が、年明けの通常国会には開会式に出席するというのだ。大日本帝国議会のあの時代、貴族院にしつらえられた玉座から、天皇が国民代表の議員を見下ろして「(お)ことば」を賜るというあの開会式に、である。そりゃなかろう。無数の星々が皆天界をうごめく中にあって、極北の頂点にたった一個の動かぬ星がある。その北辰のごときものこそが共産党ではなかったか。航海する諸々の船が、自分の位置を測るときの動かぬ測定の起点。それこそが共産党が占める位置ではなかったか。何が正しいか間違っているか、頑固な物差しとして変わらぬ存在が共産党ではなかったか。近代日本の民主主義も大衆運動も、天皇制と対峙して生まれ、天皇制と拮抗しながら成長した。その天皇制と向き合った民衆の側の最前線に常に位置していたのが共産党ではなかったか。融通がきかず頑固で、政党助成金も受けとらない筋を通す姿勢。それ故の、共産党への民衆の信頼であり敬意ではなかったか。北極星が動いて物差しが伸び縮みするようでは、世も末なのだ。
天皇制とは、世襲の政治権力構造を意味するものではない。むしろ、神話的・文化的な権威による社会心理的な統治構造というべきであろう。その意味では、象徴天皇制こそが、純粋な天皇制と言っても差し支えない。支配者にとって、自らの主義主張を持った自立した国民は、支配しにくいことこの上ない面倒で疎ましい存在なのだ。統治しやすい支配者お望みの国民のまたの名を「臣民」という。大日本帝国憲法時代の臣民は統治しやすかった。日本国憲法の時代となって、法制上「臣民」はなくなったが、天皇は残った。天皇が残ったことによって、法制上はない「臣民根性」も、「臣民もどき」も、旧体制の残滓として生き残っているのだ。保守的支配体制の側が、統治をしやすい「臣民根性」「臣民もどき」を再生産し拡大をはかるために、天皇を最大限に利用してきたのは周知の事実ではないか。その天皇の利用に最も果敢に闘い、民主主義の徹底のために天皇の存在感を最小限に抑えるべきことを主張してきたのが、共産党であったはず。こんなに簡単に、ものわかりがよくなってしまっては、多くの良心ある叛骨の人々が戸惑うばかりではないか。これは、小さくない問題だ。(略)
昨日(12月24日)の記者会見の中で、次の質疑応答があったという。
―よそから見たら、共産党が普通の党になっていくという一環みたいなことでしょうか。
志位 普通の党というあなたの質問がどういう意味か分かりませんが、私たちが一貫して言っている開会式の民主的改革の提起というのは、将来の政治制度をどうするかという角度から提起しているのではないのです。現在の日本国憲法の原則と精神と諸条項を厳格に貫くという立場から一貫して対応しております。それは一貫しております。
この記者の質問は、論理的ではないにせよ、「これまでは普通ではなかった共産党」が、「普通」になってしまうことへの、良くも悪くも感慨が込められている。これに対する志位委員長の回答は納得しにくい。少なからぬ憲法学者が、現行憲法の解釈として、開会式の「(お)ことば」などは、憲法が明文で限定する天皇の国事行為には含まれない。したがって、憲法はこれを容認していないと理解してきた。そのような憲法学者と共産党は、これまでは相性がよかった。しかしこれからは、リベラル憲法学との折りあいが悪くなることを覚悟しなければならない。憲法学者ばかりではない。多くのオールド・リベラリストとの関係においてもである。(澤藤統一郎の憲法日記 2015年12月25日)
【山中人閒話目次】
・共産党除名問題――いつかは露見すると十分予見できた「大本営」体質の閉鎖性、独善性が、たまたま選挙前に起こった事件をきっかけにして露呈したに過ぎない 醍醐聰Twitter
・附:かつて共産党は極北の一個の動かぬ星のごとくではなかったか 澤藤統一郎の憲法日記
・ICC、プーチン氏に逮捕状 ウクライナでの戦争犯罪で AFP=時事
・田畑光永さんの「「強国」?「安定」? 亀裂を引きずった中国・全人代――大国の土台に“軋(きし)み”はないのか」
・田中利幸さんの「漫画「はだしのゲン」削除問題を考える」 吹禅 Yuki Tanaka 田中利幸ブログ
・生きづらさ肯定し共有――「だめ連」とペペ長谷川さんの軌跡 Yoshihiko IkegamiFB
・車家とし(旧PN:芦部ゆきと)さんの車家ブログ(旧「あしべの自由帳」)再開のお知らせ 車家ブログ
・共産党除名問題――いつかは露見すると十分予見できた「大本営」体質の閉鎖性、独善性が、たまたま選挙前に起こった事件をきっかけにして露呈したに過ぎない 醍醐聰Twitter
・附:かつて共産党は極北の一個の動かぬ星のごとくではなかったか 澤藤統一郎の憲法日記
・ICC、プーチン氏に逮捕状 ウクライナでの戦争犯罪で AFP=時事
・田畑光永さんの「「強国」?「安定」? 亀裂を引きずった中国・全人代――大国の土台に“軋(きし)み”はないのか」
・田中利幸さんの「漫画「はだしのゲン」削除問題を考える」 吹禅 Yuki Tanaka 田中利幸ブログ
・生きづらさ肯定し共有――「だめ連」とペペ長谷川さんの軌跡 Yoshihiko IkegamiFB
・車家とし(旧PN:芦部ゆきと)さんの車家ブログ(旧「あしべの自由帳」)再開のお知らせ 車家ブログ
Blog「みずき」:予期されていたことだが元共産党京都府委員会常任委員の鈴木元さんも共産党を除名された。私は鈴木元さんに対する共産党の除名処分には当然反対だが、同氏の新著『志位委員長への手紙』で展開されている同党中央批判には異論も持つ。氏の共産党批判は同党の議席や得票の増減(ここでは当然、同党の議席や得票の長期的な減少傾向が問題にされている)という選挙結果に重きを置く、すなわち、それ自体としては自民党や公明党など現体制擁護政党となんら変わりないブルジョア的な政治的打算を超えない批判にしかなっていない、すなわち、実質的な天皇制容認や自衛隊容認など同党の基本理念からの根本的逸脱、組織的転向、右傾化を批判するものになっていないないからである。
以下は、この件に関する毎日新聞の記事と同党シンパサイザーの深草徹さん(元弁護士、リタイア)の「日本共産党の鈴木元氏除名批判」。
共産が志位氏の辞任求めた党員を除名 「分派活動」と認定
『共産党が、志位和夫委員長の辞任を求める著書を出版した古参党員、鈴木元氏(78)を党規約上最も重い除名処分にしていたことが分かった。鈴木氏が16日、毎日新聞の取材に明らかにした。党は2月にも党首公選制を主張したジャーナリストの松竹伸幸氏を除名処分としている。
鈴木氏は1月に「志位和夫委員長への手紙」(かもがわ出版)を出版。著書の中で「新しい指導部に党の改革を委ねるべきだ」などとして、志位氏の辞任や党首公選制の導入などを主張。鈴木氏によると、処分は3月15日に党京都府委員会が決定し、16日に党中央委員会が承認。松竹氏と同時期に著書を刊行したことなどを「分派活動」と認定したことが処分の理由だという。
鈴木氏は「全くもって不当な処分だ。国民から批判を浴びるだろう」とし、近く記者会見を開き、党側に撤回を求める意向だ。』(毎日新聞 2023年3月16日)
深草徹さん(元弁護士、リタイア)の「共産党の鈴木元氏除名批判」。
『鈴木元さんは、『志位委員長への手紙』(かもがわ出版)出版に託した思いを、フェイスブックへの投稿で以下のように述べています。
――私は常々、自公政権に真っ向から対決してきた共産党の後退を危惧し、その再生を願ってきた。ところが2021年の衆議院選挙の結果(前回の12議席から10議席に後退)、そして2022年の参議院選挙の結果(前回の7議席から4議席に後退)を通じて共産党は国政レベルではごく少数政党になってしまった。このまま推移すれば次回の衆議院選挙・参議院選挙では取るに足りない勢力になることが予測される。しかも議席や得票は、その時々の政治情勢や候補者の組み合わせによって多少増減してきたが、党勢力(党員数や赤旗読者数)は1980年の第15回党大会以降42年間減り続けて来て最高時と比較すると党員数は半分に赤旗読者数は三分の一に減ってしまったのである。この事実を直視し、なぜそのようなことになってしまったのかを掘り下げ打開策を探求しなければならない。
しかし二つの選挙についての共産党の総括文書を見ると十年一日の「政策は正しかったが、それを生かす党勢力・活動量が足りなかった」とするもので到底現状を打開すべき抜本的な総括・方針は提示されなかった。しかし参議院選の直後の7月12日付け常任幹部会声明の最後に「皆さんの御意見を賜りたいと」との一節があった。これを見て私を含めて全国の多くの人々が共産党中央委員会に意見をあげた、しかしその後開催された第六回中央委員会総会決定での志位和夫委員長の結語では「ご意見は地方議員選挙に生かしたい」との述べるのみであった。
(中略)
こうした状況の下、私は、今という時期を逃して共産党の新生が行われ無ければ共産党は社会的に取るに足らない勢力になってしまうという危機感から、共産党の新生を願って「志位和夫委員長への手紙」(かもがわ出版)と言う形式での本を出版した。
(中略)
本著はこうした事態を打開するための方向を提起している。もちろん個人の提起であり、全てが妥当であるとは考えていない。しかし読んでいただければ共産党員並びに党の支持者・そして共産党に関心のある人々にとって、党首の全党員参加による選挙など書かれている内容の大半は概ね妥当なことと思われるでしょう。提起した程度の改革も行わなければ共産党は急速に 後退して行くと考えます。繰り返しますが今が共産党新生の最後のチャンスです。是非多くの方々に読んでいただき共産党新生の力にしていただきたい。――
共産党は、どうしてこういう思いを受け止めてあげられないのでしょうか。松竹さんの件といい、鈴木さんの件といい、その後のマスコミ報道に対する強硬姿勢といい、共産党は突然硬直化してしまったように思えてなりません。』(深草徹FB 2023年3月17日)
以下は、この件に関する毎日新聞の記事と同党シンパサイザーの深草徹さん(元弁護士、リタイア)の「日本共産党の鈴木元氏除名批判」。
共産が志位氏の辞任求めた党員を除名 「分派活動」と認定
『共産党が、志位和夫委員長の辞任を求める著書を出版した古参党員、鈴木元氏(78)を党規約上最も重い除名処分にしていたことが分かった。鈴木氏が16日、毎日新聞の取材に明らかにした。党は2月にも党首公選制を主張したジャーナリストの松竹伸幸氏を除名処分としている。
鈴木氏は1月に「志位和夫委員長への手紙」(かもがわ出版)を出版。著書の中で「新しい指導部に党の改革を委ねるべきだ」などとして、志位氏の辞任や党首公選制の導入などを主張。鈴木氏によると、処分は3月15日に党京都府委員会が決定し、16日に党中央委員会が承認。松竹氏と同時期に著書を刊行したことなどを「分派活動」と認定したことが処分の理由だという。
鈴木氏は「全くもって不当な処分だ。国民から批判を浴びるだろう」とし、近く記者会見を開き、党側に撤回を求める意向だ。』(毎日新聞 2023年3月16日)
深草徹さん(元弁護士、リタイア)の「共産党の鈴木元氏除名批判」。
『鈴木元さんは、『志位委員長への手紙』(かもがわ出版)出版に託した思いを、フェイスブックへの投稿で以下のように述べています。
――私は常々、自公政権に真っ向から対決してきた共産党の後退を危惧し、その再生を願ってきた。ところが2021年の衆議院選挙の結果(前回の12議席から10議席に後退)、そして2022年の参議院選挙の結果(前回の7議席から4議席に後退)を通じて共産党は国政レベルではごく少数政党になってしまった。このまま推移すれば次回の衆議院選挙・参議院選挙では取るに足りない勢力になることが予測される。しかも議席や得票は、その時々の政治情勢や候補者の組み合わせによって多少増減してきたが、党勢力(党員数や赤旗読者数)は1980年の第15回党大会以降42年間減り続けて来て最高時と比較すると党員数は半分に赤旗読者数は三分の一に減ってしまったのである。この事実を直視し、なぜそのようなことになってしまったのかを掘り下げ打開策を探求しなければならない。
しかし二つの選挙についての共産党の総括文書を見ると十年一日の「政策は正しかったが、それを生かす党勢力・活動量が足りなかった」とするもので到底現状を打開すべき抜本的な総括・方針は提示されなかった。しかし参議院選の直後の7月12日付け常任幹部会声明の最後に「皆さんの御意見を賜りたいと」との一節があった。これを見て私を含めて全国の多くの人々が共産党中央委員会に意見をあげた、しかしその後開催された第六回中央委員会総会決定での志位和夫委員長の結語では「ご意見は地方議員選挙に生かしたい」との述べるのみであった。
(中略)
こうした状況の下、私は、今という時期を逃して共産党の新生が行われ無ければ共産党は社会的に取るに足らない勢力になってしまうという危機感から、共産党の新生を願って「志位和夫委員長への手紙」(かもがわ出版)と言う形式での本を出版した。
(中略)
本著はこうした事態を打開するための方向を提起している。もちろん個人の提起であり、全てが妥当であるとは考えていない。しかし読んでいただければ共産党員並びに党の支持者・そして共産党に関心のある人々にとって、党首の全党員参加による選挙など書かれている内容の大半は概ね妥当なことと思われるでしょう。提起した程度の改革も行わなければ共産党は急速に 後退して行くと考えます。繰り返しますが今が共産党新生の最後のチャンスです。是非多くの方々に読んでいただき共産党新生の力にしていただきたい。――
共産党は、どうしてこういう思いを受け止めてあげられないのでしょうか。松竹さんの件といい、鈴木さんの件といい、その後のマスコミ報道に対する強硬姿勢といい、共産党は突然硬直化してしまったように思えてなりません。』(深草徹FB 2023年3月17日)
【山中人閒話目次】
・共産党の鈴木氏除名に反対だが、鈴木氏の論にも異議がある――共産が志位氏の辞任求めた党員を除名 「分派活動」と認定 毎日新聞
・広原盛明さんの「減り続ける原因を分析しないで、拡大ばかりを唱える「130%の党づくり」は完全に破綻している、共産党党首公選問題を考える(その5)
・JAM幹部などはもう有頂天だが、それほど寿ぐべきことか。もともと要求水準が低すぎるのだ――熊沢誠さんの「23春闘雑感」
・劇作家の木下順二は沖縄の日本植民地化を「日本の原罪」と呼ぶ――琉球処分(1879)に武力で琉球王国を植民地化した日本は間違いを犯した 蟻塚亮二FB
・ロシアの戦争犯罪はいまや誰の目にも明らかといわなければならない――拷問、強姦…露当局の戦争犯罪認定 国連人権理事会調査委 産経新聞
・これで左派が負けると、極右が政権をとる可能性が現実味を帯びてくる 石田英敬Twitter――仏首相が年金改革法案を強制採択 議場騒然、抗議デモ多発 ロイター
・犬を連れて帰省したいと思う――「帰省」 辺見庸「日録」
・共産党の鈴木氏除名に反対だが、鈴木氏の論にも異議がある――共産が志位氏の辞任求めた党員を除名 「分派活動」と認定 毎日新聞
・広原盛明さんの「減り続ける原因を分析しないで、拡大ばかりを唱える「130%の党づくり」は完全に破綻している、共産党党首公選問題を考える(その5)
・JAM幹部などはもう有頂天だが、それほど寿ぐべきことか。もともと要求水準が低すぎるのだ――熊沢誠さんの「23春闘雑感」
・劇作家の木下順二は沖縄の日本植民地化を「日本の原罪」と呼ぶ――琉球処分(1879)に武力で琉球王国を植民地化した日本は間違いを犯した 蟻塚亮二FB
・ロシアの戦争犯罪はいまや誰の目にも明らかといわなければならない――拷問、強姦…露当局の戦争犯罪認定 国連人権理事会調査委 産経新聞
・これで左派が負けると、極右が政権をとる可能性が現実味を帯びてくる 石田英敬Twitter――仏首相が年金改革法案を強制採択 議場騒然、抗議デモ多発 ロイター
・犬を連れて帰省したいと思う――「帰省」 辺見庸「日録」
2023.03.16
今日の言葉ーー放送法解釈問題をひとつの成功体験としてこの話の後に森友問題、加計問題みたいなものが起こっていく。放送法解釈問題は安倍内閣の官邸主導が日本を破壊する一連の事件の嚆矢になった。
Blog「みずき」:高世仁さん(放送ジャーナリスト)の「放送法解釈問題は森友・加計問題の先駆け」
https://takase.hatenablog.jp/entry/20230315
『放送法の方針変更をめぐって官邸および総務省の一部の政治家と官僚のやりとりを記した文書について。
7日、小西弘之参院議員(立憲)が公表した約80枚の文書は(本物の)行政文書であると総務省が認めた。これは安倍政権がメディアに介入しコントロールしようとしたことの「証拠」になる重要な資料だ。文書に記された事実関係をぜひ徹底的に究明してほしい。
ひとり高市早苗元総務相が、文書は「捏造」だと言い張って、実態究明を妨害している。高市氏は自分が出席したと記されている打合せが存在しないとまでいう。官僚がなぜ「捏造」する理由があるかとの質問には、「パフォーマンスが必要だったじゃないか」など、荒唐無稽な答弁を行っている。
先週の土日、TBSの『報道特集』と『サンデーモーニング』がこの問題を特集した。
「報道特集」には、この問題に直接かかわる「放送行政を担当していた元総務相官僚」が登場。「行政文書で官僚が意図的に中身を変えるというようなことはあるか?」とのMCの質問に、官僚は自分の身を護るためにも、ねつ造などやるはずがないと否定した。
「(官僚は)後から突っ込まれたりしたときに『ちゃんとこれは逃げられるようになっているかな』と常に考えていました。なので、ねつ造するということが、当然ですけどないですし、それを残すということもないと思います。」
それはそうだろう。誰かさんのような政治家なら「パフォーマンス」で無いことを有ると言ったり、有ることを無いと言ったりするかもしれないが、官僚がそんなことをしたら命取りになる。
この元総務官僚の証言―
「以前から、放送に対して政治が何らかの影響力を及ぼしたいとか、自分たちにとって都合の悪いことを言ってほしくないとか、そういう意向を及ぼそうという力は感じることがありましたので、こういうことがあってもおかしくはないかなと思いました。」
放送法の位置づけについては―
「(政権が)都合の悪いことを言うマスコミを黙らせたいと基本的には思っていて。ただ、それをストレートに言うことは民主主義国家では当然許されないので、今回問題になっている話は放送の世界で言うと〝憲法”みたいな重みのある話であって、それが簡単に変わるということは絶対にあり得ないと思います。」
今回の行政文書が示す筋書き通りに、高市総務相(当時)は2015年5月、一つの番組でも政治的公平を判断できると新たな解釈を打ち出し、16年2月8日には政治的公平を欠く番組を繰り返せば放送局に電波停止を命じる可能性に言及している。安倍首相も同年2月29日、「一つ一つの番組を見て全体を判断するのは当然のこと」と国会で答弁している。
当時の総務省内の変化について、元総務相官僚はきわめて重要な指摘をしている。
「やっぱり官邸の力がかなり強まっていたので、そちら(官邸)の顔色を窺うところは強くなっていったかなと思います。いわゆる安倍政権になっての〝忖度の走り“。この件(放送法解釈問題)をひとつの成功体験として、この話の後に、森友問題(16年)、加計問題(17年)みたいなものが起こっていく。」
安倍内閣の官邸主導が日本を破壊する一連の事件を起こしていくが、放送法解釈変更問題がその嚆矢になったというのだ。(つづく)』(高世仁のジャーナルな日々 2023年3月15日)
https://takase.hatenablog.jp/entry/20230315
『放送法の方針変更をめぐって官邸および総務省の一部の政治家と官僚のやりとりを記した文書について。
7日、小西弘之参院議員(立憲)が公表した約80枚の文書は(本物の)行政文書であると総務省が認めた。これは安倍政権がメディアに介入しコントロールしようとしたことの「証拠」になる重要な資料だ。文書に記された事実関係をぜひ徹底的に究明してほしい。
ひとり高市早苗元総務相が、文書は「捏造」だと言い張って、実態究明を妨害している。高市氏は自分が出席したと記されている打合せが存在しないとまでいう。官僚がなぜ「捏造」する理由があるかとの質問には、「パフォーマンスが必要だったじゃないか」など、荒唐無稽な答弁を行っている。
先週の土日、TBSの『報道特集』と『サンデーモーニング』がこの問題を特集した。
「報道特集」には、この問題に直接かかわる「放送行政を担当していた元総務相官僚」が登場。「行政文書で官僚が意図的に中身を変えるというようなことはあるか?」とのMCの質問に、官僚は自分の身を護るためにも、ねつ造などやるはずがないと否定した。
「(官僚は)後から突っ込まれたりしたときに『ちゃんとこれは逃げられるようになっているかな』と常に考えていました。なので、ねつ造するということが、当然ですけどないですし、それを残すということもないと思います。」
それはそうだろう。誰かさんのような政治家なら「パフォーマンス」で無いことを有ると言ったり、有ることを無いと言ったりするかもしれないが、官僚がそんなことをしたら命取りになる。
この元総務官僚の証言―
「以前から、放送に対して政治が何らかの影響力を及ぼしたいとか、自分たちにとって都合の悪いことを言ってほしくないとか、そういう意向を及ぼそうという力は感じることがありましたので、こういうことがあってもおかしくはないかなと思いました。」
放送法の位置づけについては―
「(政権が)都合の悪いことを言うマスコミを黙らせたいと基本的には思っていて。ただ、それをストレートに言うことは民主主義国家では当然許されないので、今回問題になっている話は放送の世界で言うと〝憲法”みたいな重みのある話であって、それが簡単に変わるということは絶対にあり得ないと思います。」
今回の行政文書が示す筋書き通りに、高市総務相(当時)は2015年5月、一つの番組でも政治的公平を判断できると新たな解釈を打ち出し、16年2月8日には政治的公平を欠く番組を繰り返せば放送局に電波停止を命じる可能性に言及している。安倍首相も同年2月29日、「一つ一つの番組を見て全体を判断するのは当然のこと」と国会で答弁している。
当時の総務省内の変化について、元総務相官僚はきわめて重要な指摘をしている。
「やっぱり官邸の力がかなり強まっていたので、そちら(官邸)の顔色を窺うところは強くなっていったかなと思います。いわゆる安倍政権になっての〝忖度の走り“。この件(放送法解釈問題)をひとつの成功体験として、この話の後に、森友問題(16年)、加計問題(17年)みたいなものが起こっていく。」
安倍内閣の官邸主導が日本を破壊する一連の事件を起こしていくが、放送法解釈変更問題がその嚆矢になったというのだ。(つづく)』(高世仁のジャーナルな日々 2023年3月15日)
【山中人閒話目次】
・高世仁さん(放送ジャーナリスト)の「放送法解釈問題は森友・加計問題の先駆け」 高世仁のジャーナルな日々
・ほんとうにアベが進めていたのは「権威主義国家」へまっしぐらの道だった 石田英敬Twitter――高市元総務相の行政文書「捏造」発言 霞が関の官僚ら「理由がない」 朝日新聞
・アベノミクスは「終わってしまった近代」の幻影を追ったドン・キホーテだった~水野和夫・法政大教授に聞く 論座
・日本に勇気を与える、江戸=東京の「敗者」論 ――吉見俊哉著『敗者としての東京』書評 評者:柳瀬博一
・早尾貴紀公開講演会「パレスチナに埋もれた地層から環地中海世界へ、東アジアへ~『残余の声を聴く』(明石書店)を起点にして」に参加して MICCS(都市共生研究センター) 公開講演会 レポート
・木蓮によせて 李良枝 鄭剛憲FB
・高世仁さん(放送ジャーナリスト)の「放送法解釈問題は森友・加計問題の先駆け」 高世仁のジャーナルな日々
・ほんとうにアベが進めていたのは「権威主義国家」へまっしぐらの道だった 石田英敬Twitter――高市元総務相の行政文書「捏造」発言 霞が関の官僚ら「理由がない」 朝日新聞
・アベノミクスは「終わってしまった近代」の幻影を追ったドン・キホーテだった~水野和夫・法政大教授に聞く 論座
・日本に勇気を与える、江戸=東京の「敗者」論 ――吉見俊哉著『敗者としての東京』書評 評者:柳瀬博一
・早尾貴紀公開講演会「パレスチナに埋もれた地層から環地中海世界へ、東アジアへ~『残余の声を聴く』(明石書店)を起点にして」に参加して MICCS(都市共生研究センター) 公開講演会 レポート
・木蓮によせて 李良枝 鄭剛憲FB
2023.03.15
今日の言葉ーー戦後日本の左翼を支える心性が潔癖でナイーブな自己破壊衝動と打算的かつ無責任な「狡さ」との合作だということを1961年の大江はおそらく正確に把握していた。それに対する反発のパターンもまた。
Blog「みずき」:河野有理さん(法政大学法学部教員、政治学・政治思想史)の大江健三郎と大江健三郎の周辺、その断片――大江健三郎に関して思い出すこと
『「日本の現在の繁栄なんて糞だ、選挙で保守党をえらぶ日本人なんて糞だ、そんなものは嫌らしいだけだ」とおれは叫んだ、涙がこぼれた、口惜しいし自分がなにも知っていない馬鹿だという気がしたのだ。「そんな日本は滅びればいいんだ、そんな日本人はみな、くたばればいいんだ」
「そんな考えなら、あなたも首尾一貫してるわ。わたしには左翼の人たちが狡いように思えるのよ。民主主義の守り手のようなことをいいながら議会主義は守らないわ、そしてなにもかも多数党の横暴のせいにする。……
本気じゃなくて、ただ反対してみるだけの感じよ…保守党の政府のミキサーでつくった甘い汁を飲んでおいて、辛い汁だけ政府のせいにするようなところがあるわ。」(大江健三郎『セヴンティーン』、1961年)
江藤淳がたしか書いていたと思うのだが、江藤淳と石原慎太郎と大江の三人で飲むと実に楽しいのだけど、その場に編集者などがいると途端に「党官僚」のようなつまらないことしか言わなくなるというの、たぶん本当だったんだろうなと。
逆に言うと、当人の政治的発言や行動がどんなにナイーブで「公式」的でも、作品世界の登場人物の台詞や描写の解像度が異様に高いということはままあることで、作品が時に本人を超えてくるというのが小説家の恐ろしいところなんだと思う。
その正確に反対側にいるのが政治家で、本人の書いたものは大抵読むに耐えないんだけど、特殊具体的な政治史的文脈の中に当人の発言や行動を置いてみると、世界について異様に高い解像度を待っていたことが事後的に推測される場合がままある。三島と石原が跳ぼうとしたのはこの二つのギャップだね。
戦後日本の左翼を支える心性、潔癖でナイーブな自己破壊衝動と、打算的かつ無責任な「狡さ」との合作だということを1961年の大江はおそらく正確に把握しているわけです。それに対する反発のパターンもまた。
これも完全にうろ覚えですが、蓮實さんの大江健三郎論、大江の核についての議論はナイーブ極まりないが、その恐怖は本当に核兵器がすぐ隣にある人みたいにリアルでスゴイみたいな話だったような記憶が。』(河野有理Twitter 2023年3月14日)
『「日本の現在の繁栄なんて糞だ、選挙で保守党をえらぶ日本人なんて糞だ、そんなものは嫌らしいだけだ」とおれは叫んだ、涙がこぼれた、口惜しいし自分がなにも知っていない馬鹿だという気がしたのだ。「そんな日本は滅びればいいんだ、そんな日本人はみな、くたばればいいんだ」
「そんな考えなら、あなたも首尾一貫してるわ。わたしには左翼の人たちが狡いように思えるのよ。民主主義の守り手のようなことをいいながら議会主義は守らないわ、そしてなにもかも多数党の横暴のせいにする。……
本気じゃなくて、ただ反対してみるだけの感じよ…保守党の政府のミキサーでつくった甘い汁を飲んでおいて、辛い汁だけ政府のせいにするようなところがあるわ。」(大江健三郎『セヴンティーン』、1961年)
江藤淳がたしか書いていたと思うのだが、江藤淳と石原慎太郎と大江の三人で飲むと実に楽しいのだけど、その場に編集者などがいると途端に「党官僚」のようなつまらないことしか言わなくなるというの、たぶん本当だったんだろうなと。
逆に言うと、当人の政治的発言や行動がどんなにナイーブで「公式」的でも、作品世界の登場人物の台詞や描写の解像度が異様に高いということはままあることで、作品が時に本人を超えてくるというのが小説家の恐ろしいところなんだと思う。
その正確に反対側にいるのが政治家で、本人の書いたものは大抵読むに耐えないんだけど、特殊具体的な政治史的文脈の中に当人の発言や行動を置いてみると、世界について異様に高い解像度を待っていたことが事後的に推測される場合がままある。三島と石原が跳ぼうとしたのはこの二つのギャップだね。
戦後日本の左翼を支える心性、潔癖でナイーブな自己破壊衝動と、打算的かつ無責任な「狡さ」との合作だということを1961年の大江はおそらく正確に把握しているわけです。それに対する反発のパターンもまた。
これも完全にうろ覚えですが、蓮實さんの大江健三郎論、大江の核についての議論はナイーブ極まりないが、その恐怖は本当に核兵器がすぐ隣にある人みたいにリアルでスゴイみたいな話だったような記憶が。』(河野有理Twitter 2023年3月14日)
【山中人閒話目次】
・大江健三郎『セヴンティーン』(1961年)の政治と文学――戦後日本の左翼を支える心性、潔癖でナイーブな自己破壊衝動と、打算的かつ無責任な「狡さ」 河野有理Twitter
・内野光子さんの「マイナンバー制度、「合憲」最高裁判決~「漏えいの危険性は極めて低い」なんて信じられますか」 内野光子のブログ
・〈コロナ検査バブル検証〉――申し訳ないぐらい儲かってます。補助金だけで毎月2千万円から4千万円は請求かけてきました PCR検査職員が決意の告発 集英社オンライン
・元「徴用工」の損害賠償問題――日韓請求権協定により「解決済み」との論はモラルに反する 深草徹FB
・再審開始決定から一夜 東京高裁が下した13日の決定は自らが関わった判決に苦しんだ裁判官の苦しみをも解き放つものだった 静岡放送(SBS)
・一年が経った――マリナ・オヴシアニコヴァさんは、その後幾度も当局に連行され、自宅軟禁され、足にGPSを装着させれていたが、娘さんとともにロシアからの脱出に成功して、フランスに亡命
・涅槃桜開花――香川県善通寺市の善通寺のHPによると満開の時期が釈迦が入滅した2月15日(旧暦:現在の3月上旬)に近いことからそう呼ばれるという
・大江健三郎『セヴンティーン』(1961年)の政治と文学――戦後日本の左翼を支える心性、潔癖でナイーブな自己破壊衝動と、打算的かつ無責任な「狡さ」 河野有理Twitter
・内野光子さんの「マイナンバー制度、「合憲」最高裁判決~「漏えいの危険性は極めて低い」なんて信じられますか」 内野光子のブログ
・〈コロナ検査バブル検証〉――申し訳ないぐらい儲かってます。補助金だけで毎月2千万円から4千万円は請求かけてきました PCR検査職員が決意の告発 集英社オンライン
・元「徴用工」の損害賠償問題――日韓請求権協定により「解決済み」との論はモラルに反する 深草徹FB
・再審開始決定から一夜 東京高裁が下した13日の決定は自らが関わった判決に苦しんだ裁判官の苦しみをも解き放つものだった 静岡放送(SBS)
・一年が経った――マリナ・オヴシアニコヴァさんは、その後幾度も当局に連行され、自宅軟禁され、足にGPSを装着させれていたが、娘さんとともにロシアからの脱出に成功して、フランスに亡命
・涅槃桜開花――香川県善通寺市の善通寺のHPによると満開の時期が釈迦が入滅した2月15日(旧暦:現在の3月上旬)に近いことからそう呼ばれるという
Blog「みずき」:醍醐聰さんの「権威主義」を考える
『先日、ツイッターである方と「権威主義」について感想を交換する機会があった。それに触発され、また私にとって年来の関心事でもある権威主義について、メモ風の短文をまとめた。前半、後半に分けて添付します。
まず前半。私の大学生時代の「権威」と現在の「権威主義」の違いをまとめた。
続いて、「権威主義を考える」(下)
ここでは、私が言うところの「権威主義の空洞化」が生まれた3つの要因をまとめた。』(醍醐聰Twitter 2023年3月14日)
『先日、ツイッターである方と「権威主義」について感想を交換する機会があった。それに触発され、また私にとって年来の関心事でもある権威主義について、メモ風の短文をまとめた。前半、後半に分けて添付します。
まず前半。私の大学生時代の「権威」と現在の「権威主義」の違いをまとめた。
続いて、「権威主義を考える」(下)
ここでは、私が言うところの「権威主義の空洞化」が生まれた3つの要因をまとめた。』(醍醐聰Twitter 2023年3月14日)
【山中人閒話目次】
・醍醐聰さんの「権威主義」を考える 醍醐聰Twitter
・醍醐聰さんの大臣レクのありやなしやについて 醍醐聰Twitter
・それなら朝日新聞に志位和夫が、毎日新聞に田村智子がそれぞれ噛みついた件は何だったんだろうか――共産が長崎新聞社に謝罪 除名党員の記事掲載への抗議撤回 産経新聞
・そもそも罪を謝するということは、罪を担う主体を成立させ、そのことによって自己を回復していくことであろう――はたして国家というものがその主体たりえるのか 菅原龍憲FB
・大江文学は「世界」を「引き受けて」いたんですよ。その頃はね。みんなそれを自分と「世界」のこととして読んでいた 石田英敬Twitter
・醍醐聰さんの大臣レクのありやなしやについて 醍醐聰Twitter
・それなら朝日新聞に志位和夫が、毎日新聞に田村智子がそれぞれ噛みついた件は何だったんだろうか――共産が長崎新聞社に謝罪 除名党員の記事掲載への抗議撤回 産経新聞
・そもそも罪を謝するということは、罪を担う主体を成立させ、そのことによって自己を回復していくことであろう――はたして国家というものがその主体たりえるのか 菅原龍憲FB
・大江文学は「世界」を「引き受けて」いたんですよ。その頃はね。みんなそれを自分と「世界」のこととして読んでいた 石田英敬Twitter
Blog「みずき」:(当時の)捜査機関に対する東京高裁の弾劾は激しい。一応「当時の」とカッコでくくったがいまはどうか? 私はきわめて否定的だ。しかし、せめてもの再審開始決定だ。
『https://news.yahoo.co.jp/articles/b41f76eb7c458961001efce2d9a8866964eaa6fb?fbclid=IwAR0y_lpubuwlyuWg4guL4jAdY3kF7chfNfG7Mxka9n2RtfWq3LMiobTesu4
みそ漬けは「捜査機関の者による可能性が極めて高い」by東京高裁』(岡口基一Twitter 2023年3月13日)
『https://www.asahi.com/articles/ASR3B5KNWR38UTIL03K.html
焦点となった5点の衣類について、決定は「本人以外の第三者がタンク内に隠匿してみそ漬けにした可能性が否定できず(この第三者には捜査機関も含まれ、事実上捜査機関の者による可能性が極めて高いと思われる)」と。』(谷津憲郎Twitter 2023年3月13日)
『https://news.yahoo.co.jp/articles/b41f76eb7c458961001efce2d9a8866964eaa6fb?fbclid=IwAR0y_lpubuwlyuWg4guL4jAdY3kF7chfNfG7Mxka9n2RtfWq3LMiobTesu4
みそ漬けは「捜査機関の者による可能性が極めて高い」by東京高裁』(岡口基一Twitter 2023年3月13日)
『https://www.asahi.com/articles/ASR3B5KNWR38UTIL03K.html
焦点となった5点の衣類について、決定は「本人以外の第三者がタンク内に隠匿してみそ漬けにした可能性が否定できず(この第三者には捜査機関も含まれ、事実上捜査機関の者による可能性が極めて高いと思われる)」と。』(谷津憲郎Twitter 2023年3月13日)
【山中人閒話目次】
・みそ漬けは「捜査機関の者による可能性が極めて高い」…東京高裁が袴田事件の再審認める決定 朝日新聞
・そこからしか国の立て直しは始まらない――安倍という災厄が去った後なのだから、それぞれの領域でボロボロになった制度を修繕すべき 石田英敬Twitter
・澤藤統一郎さんの「アベ政治の負のレガシー清算の動きに期待したい。」 澤藤統一郎の憲法日記
・速報 高市氏の説明、納得できない 73% 共同通信
・吉澤文寿さんの「植民地支配の被害者の人権踏みにじる「1965年体制」を民主化しよう――強制動員解決法、どうみるか(1)」 hankyoreh japan
・高林敏之さんの「中国の仲介によるイランとサウジアラビアの7年ぶりの国交正常化合意をどう見るか」 高林敏之FB
・大江健三郎死す――大江文学の原点は、生まれ故郷である四国の谷間の村。そこから世界文学へと昇華させた 中村真理子 朝日新聞
・みそ漬けは「捜査機関の者による可能性が極めて高い」…東京高裁が袴田事件の再審認める決定 朝日新聞
・そこからしか国の立て直しは始まらない――安倍という災厄が去った後なのだから、それぞれの領域でボロボロになった制度を修繕すべき 石田英敬Twitter
・澤藤統一郎さんの「アベ政治の負のレガシー清算の動きに期待したい。」 澤藤統一郎の憲法日記
・速報 高市氏の説明、納得できない 73% 共同通信
・吉澤文寿さんの「植民地支配の被害者の人権踏みにじる「1965年体制」を民主化しよう――強制動員解決法、どうみるか(1)」 hankyoreh japan
・高林敏之さんの「中国の仲介によるイランとサウジアラビアの7年ぶりの国交正常化合意をどう見るか」 高林敏之FB
・大江健三郎死す――大江文学の原点は、生まれ故郷である四国の谷間の村。そこから世界文学へと昇華させた 中村真理子 朝日新聞
Blog「みずき」:『NHK会長とNHKの記者にこのやりとりができるか?
「英政府の圧力に屈したのか?」 BBC会長を取材、リネカー氏の政府批判めぐり(BBC News)』(石田英敬Twitter 2023年3月12日)
『『高市とかいうプロト・ファシストをめぐる日本の放送行政のごたごたとBBCのリネカー騒動をめぐる対応および世論の動きをみるにつけ彼我のデモクラシーの成熟度の差はやはり歴然というべきか。』(同上)
「英政府の圧力に屈したのか?」 BBC会長を取材、リネカー氏の政府批判めぐり(BBC News)』(石田英敬Twitter 2023年3月12日)
『『高市とかいうプロト・ファシストをめぐる日本の放送行政のごたごたとBBCのリネカー騒動をめぐる対応および世論の動きをみるにつけ彼我のデモクラシーの成熟度の差はやはり歴然というべきか。』(同上)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
『「英政府の圧力に屈したのか?」 BBC会長を取材、リネカー氏の政府批判めぐり
BBCは11日、サッカーの元イングランド代表主将、ギャリー・リネカー氏による政府批判ツイートがBBCの中立性原則に抵触するとして、サッカー解説番組からリネカー氏を一時降板させた。
これを受け、多くのスポーツ関係者がリネカー氏に連帯して番組出演をボイコットしたため、この日のBBCのスポーツ番組編成が混乱した。
BBCのノミア・イクバル北米特派員は、アメリカを訪問中のティム・デイヴィーBBC会長を取材。
BBCが首相官邸や閣僚から圧力を受け、屈したのではないかとの批判について尋ねた。』(BBC News 2023年3月12日)
『「英政府の圧力に屈したのか?」 BBC会長を取材、リネカー氏の政府批判めぐり
BBCは11日、サッカーの元イングランド代表主将、ギャリー・リネカー氏による政府批判ツイートがBBCの中立性原則に抵触するとして、サッカー解説番組からリネカー氏を一時降板させた。
これを受け、多くのスポーツ関係者がリネカー氏に連帯して番組出演をボイコットしたため、この日のBBCのスポーツ番組編成が混乱した。
BBCのノミア・イクバル北米特派員は、アメリカを訪問中のティム・デイヴィーBBC会長を取材。
BBCが首相官邸や閣僚から圧力を受け、屈したのではないかとの批判について尋ねた。』(BBC News 2023年3月12日)
【山中人閒話目次】
・NHK会長とNHKの記者にこのやりとりができるか?――英政府の圧力に屈したのか?」 BBC会長を取材、リネカー氏の政府批判めぐり(BBC News)
・小泉悠氏が講演 「ウクライナを決定的に勝たせる決断を」 産経新聞
・葛西敬之は官邸官僚人選にも深く関わり、安倍晋三・菅義偉・岸田文雄に至る全体主義体制作りの中心的存在だった――国商 最後のフィクサー葛西敬之 森 功(講談社) 書評 東京新聞
・太田昌国さんの「「ファルージャ」と名づけられる米国海軍次期強襲鑑」 レイバーネット日本
・池上嘉彦さんのロシア精神史の周辺散策――ブハーリンの復権など
・醍醐聰さんの「松竹氏除名問題」補遺 醍醐聰Twitter
・NHK会長とNHKの記者にこのやりとりができるか?――英政府の圧力に屈したのか?」 BBC会長を取材、リネカー氏の政府批判めぐり(BBC News)
・小泉悠氏が講演 「ウクライナを決定的に勝たせる決断を」 産経新聞
・葛西敬之は官邸官僚人選にも深く関わり、安倍晋三・菅義偉・岸田文雄に至る全体主義体制作りの中心的存在だった――国商 最後のフィクサー葛西敬之 森 功(講談社) 書評 東京新聞
・太田昌国さんの「「ファルージャ」と名づけられる米国海軍次期強襲鑑」 レイバーネット日本
・池上嘉彦さんのロシア精神史の周辺散策――ブハーリンの復権など
・醍醐聰さんの「松竹氏除名問題」補遺 醍醐聰Twitter
2023.03.11
今日の言葉ーー韓国ギャラップが10日発表した世論調査の結果によると韓国政府が発表した元「徴用工」問題の解決策について59%が反対であった。それでもドン・キホーテよろしく風車をめがけて突進するのか。
Blog「みずき」:深草徹さんの「徴用工問題――それでも風車をめがけて突進するのか」
『2015年12月28日、日本国岸田文雄外務大臣、大韓民国尹炳世(ユン・ビョンセ)外交部長官が、ソウルの共同記者会見で公表したいわゆる日韓「慰安婦合意」とは以下のとおりでした。
――日本側は内閣総理大臣としてのお詫びと反省を表明した上で韓国政府が元慰安婦支援のため設立する財団に日本政府が10億円を拠出し、両国が協力していくこと。これにより慰安婦問題が最終的かつ不可逆的に解決されたことを確認し、互いに非難・批判することは控えること。――
この日韓「慰安婦合意」は、合意公表直後に12月30日に韓国の世論調査機関リアルメーターによる調査では、①「とてもよくない」31.5%、②「どちらかといえばよくない」19.2%、③「よくやった」13.5%、④「どちらかといえばよくやった」29.7%で、否定的評価がやや多いとはいえ、③、④を合計すると肯定的に評価する声も43.2%もあり、一概に韓国国民から拒絶されたものとは言えませんでした。
しかし、1年後の2016年12月28日に同じくリアルメーターが行った世論調査では、「慰安婦合意」を「破棄しなければならない」との回答が59.0%にのぼり、「維持しなければならない」との回答25.5%を大きく上回るに至りました。
このような国民世論こそ、「慰安婦合意」の事実上の破綻、徴用工問題をめぐる日韓関係カタストロフへと進む導きの糸だったのですが、その背景要因は、日本による韓国に対する侵略と植民地支配の清算をあいまにし、韓国の司法府における核心的判断さえも無視して、韓国保守政権、アメリカ政府及び日本政府が米日韓の政治・経済・軍事の一体性を回復させようとしたことだと言えるでしょう。
では韓国司法府の核心的判断とないかなるものでしょうか。それは以下の二つです。
1 元「慰安婦」に関する韓国憲法裁判所2011年8月30日決定
①日韓請求権協定第2条第1項は、「両締約国は、両締約国およびその国民(法人を含む)の財産、権利および利益並びに両締約国およびその国民の間の請求権に関する問題が、1951 年 9 月 8 日にサンフランシスコ市で署名された日本国との平和条約第4条(a)に規定されたものを含めて、完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認する」と規定している。と記載されている。
②協定第2条第1項の解釈と関連し、日本政府及び司法府の立場は、日本軍慰安婦被害者を含む韓国国民の日本国に対する賠償請求権は、 すべて包括的にこの事件の協定に含まれ、この事件の協定の締結及びその履行で放棄されたか、その賠償が終了したというものだが、韓国政府は 2005 年 8 月 26 日、「民官共同委員会」の決定を通じて、日本軍慰安婦問題等のように日本政府等国家権力が関与した「反人道的不法行為」に対しては、この事件協定によって解決したと見られないので、日本政府の法的責任が認定されるという立場を表明したことがある。
③韓国政府は、この事件の憲法訴願審判過程でも、日本はこの事件の協定により日本軍慰安婦被害者の日本国に関する賠償請求権が消滅したという立場であるが、韓国政府の立場は日本軍慰安婦被害者の賠償請求権はこの事件の協定に含まれていないというもので、これに対しては両国の立場に差異があり、これはこの事件の協定第3条の「紛争」に該当すると、繰り返し確認した。
④従って、協定第2条第1項の対日請求権に日本軍慰安婦被害者の賠償請求権が含まれるか否かに関する韓・日両国間の解釈の差異が存在し、それが上の協定第3条の「紛争」に該当するのは明白である。
2 元「徴用工」に関する2012年5月24日韓国大法院判決
日韓請求権協定は日本の植民支配賠償を請求するためのものではなく、サンフランシスコ条約第4条に基づき韓日両国間の財政的・民事的債権債務関係を政治的合意により解決するためのものであり、協定第 1条により日本政府が大韓民国政府に支給した経済協力資金は第2条による権利問題の解決と法的対価関係があるとはみられない点、協定の交渉過程で日本政府は植民支配の不法性を認めないまま、強制動員被害の法的賠償を根本的に否定し、このため韓日両国政府は日帝の韓半島支配の性格について合意に至ることができなかったが、このような状況で日本の国家権力が関与した反人道的不法行為や植民地支配と直結した不法行為による損害賠償請求権が請求権協定の適用対象に含まれていたと解することは困難である点などに照らしてみると、元徴用工らの損害賠償請求権については、協定で消滅しなかったのはもちろん、大韓民国の外交的保護権も放棄しなかったと解するのが相当である。
「慰安婦合意」は、これら韓国司法府の判断を完全に無視してしまったものでした。韓国司法府は、その後、大法院レベルで、2018年10月30日大法院判決(元徴用工ら対新日鉄住金事件)、同年11月29日大法院判決(同三菱重工事件)で、2と同趣旨の判断を繰り返しています。
さて今回の韓国政府解決策は、①韓国政府が設立する財団が裁判所によって支払いを命じられた元「徴用工」に対する日本企業の賠償金債務を肩代わりするというもので、日本政府はこれに呼応して日本政府は植民地支配に対する反省とお詫びを盛り込んだ「日韓共同宣言」(1998年10月)を含む歴代内閣の歴史認識の継承を確認することを表明し、支払いを命じられた日本企業はとは別にわが国の経団連が韓国からの留学生に対する奨学金給付をはじめ青少年の交流事業などを行う、というきわめてルーズなもので、韓国司法の核心的判断を再び完全に無視するものです。
裁判所が支払いを命じた債務を韓国政府が設立した財団が肩代わりして支払うこと、これを第三者弁済と言います。わが国民法474条第3項では第三者は債権者の意思に反して弁済することはできない」と定めており、また元「徴用工」や「慰安婦」に対する慰謝料を含む損害賠償債務は「その債務の性質が第三者の弁済を許さないとき」にあたると判断される可能性もあります。ですからわが国民法に関する限り、元「徴用工」や「慰安婦」が反対の意思を表明する限り、かの財団が肩代わりして支払うことはできません。
私は韓国民法に通暁しているわけではないので、自信はありませんが、ネット上に公開されている韓国民法第469条によると「①債務の弁済は、第三者もすることができる。ただし、その債務の性質又は当事者の意思表示が第三者の弁済を許さないときは、この限りでない。②利害関係のない第三者は、債務者の意思に反して弁済することができない。」とあり、これはわが国民法と同様に考えてよいようです。
従って、一人でも元「徴用工」(遺族)が反対する限り、最終解決には至りません(報道によると供託云々ということが取り沙汰されていますが、弁済できないときに供託などできません)。それのみならず韓国ギャラップが10日発表した世論調査の結果によると、韓国政府が発表した元「徴用工」に関する解決策について、賛成は35%、59%が「日本の謝罪と賠償がなく反対」であったこと、尹錫悦(ユンソンニョル)大統領の支持率は34%(前週比2ポイント減)、不支持率は58%(同3ポイント増)、不支持の理由では、元徴用工問題への対応が16%と最多であったということであり、前回の「慰安婦合意」のときより厳しい状況です。
それにもかかわらず16日には尹大統領が来日、日韓首脳会談が行われる由、もしそこで手打ちをしようということなら風車をめがけて突進するドン・キホーテそのものではないでしょうか。』(深草徹FB 2023年3月11日)
『2015年12月28日、日本国岸田文雄外務大臣、大韓民国尹炳世(ユン・ビョンセ)外交部長官が、ソウルの共同記者会見で公表したいわゆる日韓「慰安婦合意」とは以下のとおりでした。
――日本側は内閣総理大臣としてのお詫びと反省を表明した上で韓国政府が元慰安婦支援のため設立する財団に日本政府が10億円を拠出し、両国が協力していくこと。これにより慰安婦問題が最終的かつ不可逆的に解決されたことを確認し、互いに非難・批判することは控えること。――
この日韓「慰安婦合意」は、合意公表直後に12月30日に韓国の世論調査機関リアルメーターによる調査では、①「とてもよくない」31.5%、②「どちらかといえばよくない」19.2%、③「よくやった」13.5%、④「どちらかといえばよくやった」29.7%で、否定的評価がやや多いとはいえ、③、④を合計すると肯定的に評価する声も43.2%もあり、一概に韓国国民から拒絶されたものとは言えませんでした。
しかし、1年後の2016年12月28日に同じくリアルメーターが行った世論調査では、「慰安婦合意」を「破棄しなければならない」との回答が59.0%にのぼり、「維持しなければならない」との回答25.5%を大きく上回るに至りました。
このような国民世論こそ、「慰安婦合意」の事実上の破綻、徴用工問題をめぐる日韓関係カタストロフへと進む導きの糸だったのですが、その背景要因は、日本による韓国に対する侵略と植民地支配の清算をあいまにし、韓国の司法府における核心的判断さえも無視して、韓国保守政権、アメリカ政府及び日本政府が米日韓の政治・経済・軍事の一体性を回復させようとしたことだと言えるでしょう。
では韓国司法府の核心的判断とないかなるものでしょうか。それは以下の二つです。
1 元「慰安婦」に関する韓国憲法裁判所2011年8月30日決定
①日韓請求権協定第2条第1項は、「両締約国は、両締約国およびその国民(法人を含む)の財産、権利および利益並びに両締約国およびその国民の間の請求権に関する問題が、1951 年 9 月 8 日にサンフランシスコ市で署名された日本国との平和条約第4条(a)に規定されたものを含めて、完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認する」と規定している。と記載されている。
②協定第2条第1項の解釈と関連し、日本政府及び司法府の立場は、日本軍慰安婦被害者を含む韓国国民の日本国に対する賠償請求権は、 すべて包括的にこの事件の協定に含まれ、この事件の協定の締結及びその履行で放棄されたか、その賠償が終了したというものだが、韓国政府は 2005 年 8 月 26 日、「民官共同委員会」の決定を通じて、日本軍慰安婦問題等のように日本政府等国家権力が関与した「反人道的不法行為」に対しては、この事件協定によって解決したと見られないので、日本政府の法的責任が認定されるという立場を表明したことがある。
③韓国政府は、この事件の憲法訴願審判過程でも、日本はこの事件の協定により日本軍慰安婦被害者の日本国に関する賠償請求権が消滅したという立場であるが、韓国政府の立場は日本軍慰安婦被害者の賠償請求権はこの事件の協定に含まれていないというもので、これに対しては両国の立場に差異があり、これはこの事件の協定第3条の「紛争」に該当すると、繰り返し確認した。
④従って、協定第2条第1項の対日請求権に日本軍慰安婦被害者の賠償請求権が含まれるか否かに関する韓・日両国間の解釈の差異が存在し、それが上の協定第3条の「紛争」に該当するのは明白である。
2 元「徴用工」に関する2012年5月24日韓国大法院判決
日韓請求権協定は日本の植民支配賠償を請求するためのものではなく、サンフランシスコ条約第4条に基づき韓日両国間の財政的・民事的債権債務関係を政治的合意により解決するためのものであり、協定第 1条により日本政府が大韓民国政府に支給した経済協力資金は第2条による権利問題の解決と法的対価関係があるとはみられない点、協定の交渉過程で日本政府は植民支配の不法性を認めないまま、強制動員被害の法的賠償を根本的に否定し、このため韓日両国政府は日帝の韓半島支配の性格について合意に至ることができなかったが、このような状況で日本の国家権力が関与した反人道的不法行為や植民地支配と直結した不法行為による損害賠償請求権が請求権協定の適用対象に含まれていたと解することは困難である点などに照らしてみると、元徴用工らの損害賠償請求権については、協定で消滅しなかったのはもちろん、大韓民国の外交的保護権も放棄しなかったと解するのが相当である。
「慰安婦合意」は、これら韓国司法府の判断を完全に無視してしまったものでした。韓国司法府は、その後、大法院レベルで、2018年10月30日大法院判決(元徴用工ら対新日鉄住金事件)、同年11月29日大法院判決(同三菱重工事件)で、2と同趣旨の判断を繰り返しています。
さて今回の韓国政府解決策は、①韓国政府が設立する財団が裁判所によって支払いを命じられた元「徴用工」に対する日本企業の賠償金債務を肩代わりするというもので、日本政府はこれに呼応して日本政府は植民地支配に対する反省とお詫びを盛り込んだ「日韓共同宣言」(1998年10月)を含む歴代内閣の歴史認識の継承を確認することを表明し、支払いを命じられた日本企業はとは別にわが国の経団連が韓国からの留学生に対する奨学金給付をはじめ青少年の交流事業などを行う、というきわめてルーズなもので、韓国司法の核心的判断を再び完全に無視するものです。
裁判所が支払いを命じた債務を韓国政府が設立した財団が肩代わりして支払うこと、これを第三者弁済と言います。わが国民法474条第3項では第三者は債権者の意思に反して弁済することはできない」と定めており、また元「徴用工」や「慰安婦」に対する慰謝料を含む損害賠償債務は「その債務の性質が第三者の弁済を許さないとき」にあたると判断される可能性もあります。ですからわが国民法に関する限り、元「徴用工」や「慰安婦」が反対の意思を表明する限り、かの財団が肩代わりして支払うことはできません。
私は韓国民法に通暁しているわけではないので、自信はありませんが、ネット上に公開されている韓国民法第469条によると「①債務の弁済は、第三者もすることができる。ただし、その債務の性質又は当事者の意思表示が第三者の弁済を許さないときは、この限りでない。②利害関係のない第三者は、債務者の意思に反して弁済することができない。」とあり、これはわが国民法と同様に考えてよいようです。
従って、一人でも元「徴用工」(遺族)が反対する限り、最終解決には至りません(報道によると供託云々ということが取り沙汰されていますが、弁済できないときに供託などできません)。それのみならず韓国ギャラップが10日発表した世論調査の結果によると、韓国政府が発表した元「徴用工」に関する解決策について、賛成は35%、59%が「日本の謝罪と賠償がなく反対」であったこと、尹錫悦(ユンソンニョル)大統領の支持率は34%(前週比2ポイント減)、不支持率は58%(同3ポイント増)、不支持の理由では、元徴用工問題への対応が16%と最多であったということであり、前回の「慰安婦合意」のときより厳しい状況です。
それにもかかわらず16日には尹大統領が来日、日韓首脳会談が行われる由、もしそこで手打ちをしようということなら風車をめがけて突進するドン・キホーテそのものではないでしょうか。』(深草徹FB 2023年3月11日)
【山中人閒話目次】
・深草徹さんの「徴用工問題――それでも風車をめがけて突進するのか」 深草徹FB
・総務大臣松本剛明様 「記録」を「記憶」で覆すのは公文書管理法の文書主義(第4条)をないがしろにするものです 醍醐聰Twitter
・総務省文書の放送法解釈変更は氷山の一角! 安倍官邸は同時期、あの手この手で言論弾圧 古舘、国谷、岸井が次々降板したのも… リテラ
・高市早苗はもう詰んでいる――高市氏の主張(しかもウソ)は総務省の公文書の信頼性を自己否定するものです 醍醐聰Twitter
・美浦克教さんの「焦土を軍服の天皇が視察、終戦までさらに5カ月~東京大空襲から78年の教訓」 ニュース・ワーカー2
・現職共産党県役員としてははじめての共産党福岡県委員会常任委員の神谷貴行氏の松竹氏除名見直しの訴え かみや貴行のブログ
・全人類への破滅をもたらすろしあのザポロジエ原発への攻撃で現実を見つめ、目を覚ます最後の機会が訪れた 内海信彦FB
・盛田常夫さんの「なぜ20世紀の社会主義社会で市民社会の倫理規範や人権意識が育まれなかったのか(下)」
・深草徹さんの「徴用工問題――それでも風車をめがけて突進するのか」 深草徹FB
・総務大臣松本剛明様 「記録」を「記憶」で覆すのは公文書管理法の文書主義(第4条)をないがしろにするものです 醍醐聰Twitter
・総務省文書の放送法解釈変更は氷山の一角! 安倍官邸は同時期、あの手この手で言論弾圧 古舘、国谷、岸井が次々降板したのも… リテラ
・高市早苗はもう詰んでいる――高市氏の主張(しかもウソ)は総務省の公文書の信頼性を自己否定するものです 醍醐聰Twitter
・美浦克教さんの「焦土を軍服の天皇が視察、終戦までさらに5カ月~東京大空襲から78年の教訓」 ニュース・ワーカー2
・現職共産党県役員としてははじめての共産党福岡県委員会常任委員の神谷貴行氏の松竹氏除名見直しの訴え かみや貴行のブログ
・全人類への破滅をもたらすろしあのザポロジエ原発への攻撃で現実を見つめ、目を覚ます最後の機会が訪れた 内海信彦FB
・盛田常夫さんの「なぜ20世紀の社会主義社会で市民社会の倫理規範や人権意識が育まれなかったのか(下)」
Blog「みずき」:盛田常夫さん(在ハンガリー、経済学者)の初期社会主義社会の市民の倫理規範の構築と人権意識の問題を考えるうえでの重要な手掛かりとなる問題提起だと思います。人間が人間としての日常生活を営むうえで必要不可欠なこんな基礎的なことがなんでこれまで知らされてこなかったのか? いや、部分的には報道されていただろう。それを私たちは知らなかったのか、知ろうとしなかったのか? これも市民社会的倫理規範や人権意識が育まれなかった問題と関係があるだろう。
盛田常夫さんの「なぜ20世紀の社会主義社会で市民社会的倫理規範や人権意識が育まれなかったのか(上)」
『社会主義時代の遺物
ロシアのウクライナ侵攻が長引く中、ロシア軍の装備や指揮系統の不備や欠陥があからさまになり、他方で制圧した市民への残虐行為や略奪行為が次々と伝えられる。装備や兵器のレベルの低さや、装備の欠陥や量不足は今に始まったことではないし、兵士の行動規律が緩いのも昔からである。第二次世界大戦で東欧諸国を「解放」した赤軍兵士や、ハンガリー動乱後のソ連軍の市民への蛮行(略奪や凌辱)やソ連の労働キャンプへの連行は、当時から良く知られていた。当時も、兵士はどこへ進軍するのか知らされていなかったし、ハンガリーに到着した後ですら、そこが同じ社会主義国のハンガリーだと知らない者が多かった。だから、現在の状況はソ連崩壊を原因とするものではなく、ソ連時代から続く社会的特性に起因しているものだ。
確かに社会主義体制崩壊後の市場経済化で、旧社会主義国の消費財市場が一挙に活性化し、国民の消費生活は一変した。ところが、消費生活上の変化に比べて、国家機関や公的組織の設備や仕事ぶりには大きな変化が見られない。戦後ほどなく改築あるいは新築された病院や学校のメインテナンスが蔑ろにされ、老朽化が激しい。それは軍隊などの国家的組織についても言える。設備全般の老朽化が進んでいても、それを改築したり新設する財政的な余裕はないし、社会組織を立て直す原理やインセンティヴが著しく欠けている。
たとえば、地区の拠点病院の多くは、建物も設備も野戦病院並みの状態である。日本ではほとんどの中規模の病院にMRIやCTが設置されており、大学の獣医学部にすら人間用のMRIやCTが備えられている。しかし、ハンガリーでは全診療科を擁する大きな拠点病院でもMRIを備えておらず、古いCTが1台あるだけだ。CT検査ですら混雑して待機時間は長い。さらにMRI検査を受ける場合には、医師の依頼状をもらい予約をとって郊外にある特定病院へ出向く必要がある。
このように、社会主義時代の組織的経済的貧困が、現在まで尾を引いている。それはハンガリーだけでなく、すべての旧社会主義国について言える。これらの社会的組織の改編や設備更新には膨大な費用がかかるので、国民経済の発展レベルを超える公的資金を投入できない。だから、消費生活の表面的な変化は進んでも、病院や学校の設備更新がなかなか進まない。ソ連・東欧社会主義崩壊から30年も経過するが、どの国でも、国家機関や学校・病院などの公的機関の設備や組織の状況は、社会主義時代からあまり変わっていない。だから、軍や兵士の装備の状態が良くないことも容易に想像がつく。
病院や学校にトイレットペーパーがない
今でも病院に入院するときはトイレットペーパーや石鹸などを持参する(もっとも、石鹸を持ってくるという衛生観念はなく、石鹸なしで済ませるのがふつう)。入院食があまりに貧弱なので、多くの患者の家族は毎日食事を届ける。監獄並みの食事は今も昔も変わりない。半世紀以上も同じメニューでないかと思われるほどである。社会主義時代から病院にはトイレットペーパーも石鹸も置いていない。少し前までは、廊下に設置されたテレビに鎖が付けられ、盗まれないようにされていた。もっとも、古いテレビでもう映らなくなっていて、鎖につながれたまま放置されていたが。今では費用節約から、テレビは設置されていない。
150年以上も前に、ハンガリー人医師センメルワイスは産褥熱の原因が、医師の手洗いが不十分であることを発見した。医師からの細菌感染が産褥熱を惹き起こすことが明らかにしたのだ。それから1世紀半近く経つが、医師の手洗いは守られても、一般患者の衛生問題は蔑ろにされている。これが社会主義を経験したセンメルワイスを生んだ国の現状である。
トイレットペーパーがないのは病院予算を節約するためだけでなく、すぐに盗まれる(という社会主義時代の苦い経験)からだ。病院と同様に、トイレットペーパーを備えていない学校も多い(教員用のトイレには備えてあるが、生徒が利用しないように鍵がかかっている)が、こちらは予算がないからだ。購入の優先順位が低いのだ。入院患者が退院するときに、医師は「治療報告書」を患者に手渡す。少し前まで、病院のプリント用紙(購入費用)がなく、患者にA4用紙を持参することを要請するところもあった(学校ではコピー用紙の購入費用が、常に問題の一つになっている)。
今でも病院を風刺するビデオが出回っているのは、大きな改善が見られないからである(https://www.facebook.com/watch/?extid=NS-UNK-UNK-UNK-IOS_GK0T-GK1C&mibextid=2Rb1fB&v=913369449696119)。
このビデオは入院に際して、患者がトイレットペーパー、発電機、輸血用血液、A4用紙を持参したことを受付に伝える。「ノックをするな」という不愛想な受付嬢が、担当医はウガンダの病院のような状態に愛想をつかして、開業医になったことを伝える。担当医の代わりに、YouTubeで勉強した子供の医者を勧めるというパロディである。受付嬢の愛想のなさと、病院の悲惨な状況をパロディで描いたもの(実際、有能な医師の多くが民間クリニックに移っている)。
ところで、ハンガリーの名誉のために言っておけば、トイレットペーパーがないのは何もハンガリーに限ったことではない。ほとんどの社会主義国でもそうだった。それだけ貧しかったのだが、それを「おかしい」と主張する人もいなかった。今でもそれを不思議に思う人は少なく、病院にはトイレットペーパーがないのが当たり前という前提で入院の準備をするが、それが一因でほとんどの病院のトイレの状態はとても衛生的とは言えない。
コロナ禍で中国広州の隔離病院がテレビに映し出されたときに、やはりトイレにペーパーが備えられていないことが分かった。そして便座にビニールを巻き、ガムテープで止めてあった。経済発展が進む中国でさえそうなのかと思ったが、少なくとも便座を清掃しやすいようにしている工夫がみられた。東欧諸国では便座が汚れていても、この程度の工夫すら思いつくことはない。
外来患者の受付窓口がない
体制転換から30年も過ぎたが、病院の外来患者受付システムは旧体制時代のままのところが多い。ほとんどの病院では外来患者が担当医師の診療室前に待機し、看護師がドアを開けたときに、保険証を手渡すようになっている。しかし、多数の患者が我先に保険証を渡そうとするので、看護師に保険証を受け取ってもらうのは至難の業である。外国人がこの争いに勝つことは不可能だ。そうなると、いつまで経っても診療を受けることができない。ハンガリー人ですら、数時間待っても診療が受けられず、家に戻ったという話をたびたび聞かされる。こうした状況に憤慨して、大声を上げる人はたまにいるが、大概の人は文句を言わず、黙って家に帰る。社会主義体制40年の歴史は人々の批判的精神を奪い、体制崩壊から30年経っても委縮した精神に変化はない。ただし、医師とのコネがあれば、診療はスムーズに受けられる。こういう状況ではコネが蔓延しても仕方がない(コネ社会現象)。
だから、外資系企業は特定病院と契約を結び、駐在員が優先的に診療を受けるようにしているが、一般の外来患者が診療を受けるのは簡単ではない。病院側が受付体制を工夫すれば良いと思うのだが、社会主義時代から病院では医師が絶対的権威を持っており、すべてが医師の都合で動いている。だから、改善の余地があると思っても、誰も口に出さない。だから、自然に無関心になり、簡単に患者受付のシステムを変えることができない。私はこれを「医師主権」とか「役人主権」と呼んでいる。あらゆる公的機関の組織が官僚化していた社会主義時代の社会的慣行が、未だに多くのところで旧体制の官僚主義(役人主権)的対応として残存している。政治体制が変わるだけでは社会は変わらないと実感する毎日である。』(リベラル21 2023年3月10日)
盛田常夫さんの「なぜ20世紀の社会主義社会で市民社会的倫理規範や人権意識が育まれなかったのか(上)」
『社会主義時代の遺物
ロシアのウクライナ侵攻が長引く中、ロシア軍の装備や指揮系統の不備や欠陥があからさまになり、他方で制圧した市民への残虐行為や略奪行為が次々と伝えられる。装備や兵器のレベルの低さや、装備の欠陥や量不足は今に始まったことではないし、兵士の行動規律が緩いのも昔からである。第二次世界大戦で東欧諸国を「解放」した赤軍兵士や、ハンガリー動乱後のソ連軍の市民への蛮行(略奪や凌辱)やソ連の労働キャンプへの連行は、当時から良く知られていた。当時も、兵士はどこへ進軍するのか知らされていなかったし、ハンガリーに到着した後ですら、そこが同じ社会主義国のハンガリーだと知らない者が多かった。だから、現在の状況はソ連崩壊を原因とするものではなく、ソ連時代から続く社会的特性に起因しているものだ。
確かに社会主義体制崩壊後の市場経済化で、旧社会主義国の消費財市場が一挙に活性化し、国民の消費生活は一変した。ところが、消費生活上の変化に比べて、国家機関や公的組織の設備や仕事ぶりには大きな変化が見られない。戦後ほどなく改築あるいは新築された病院や学校のメインテナンスが蔑ろにされ、老朽化が激しい。それは軍隊などの国家的組織についても言える。設備全般の老朽化が進んでいても、それを改築したり新設する財政的な余裕はないし、社会組織を立て直す原理やインセンティヴが著しく欠けている。
たとえば、地区の拠点病院の多くは、建物も設備も野戦病院並みの状態である。日本ではほとんどの中規模の病院にMRIやCTが設置されており、大学の獣医学部にすら人間用のMRIやCTが備えられている。しかし、ハンガリーでは全診療科を擁する大きな拠点病院でもMRIを備えておらず、古いCTが1台あるだけだ。CT検査ですら混雑して待機時間は長い。さらにMRI検査を受ける場合には、医師の依頼状をもらい予約をとって郊外にある特定病院へ出向く必要がある。
このように、社会主義時代の組織的経済的貧困が、現在まで尾を引いている。それはハンガリーだけでなく、すべての旧社会主義国について言える。これらの社会的組織の改編や設備更新には膨大な費用がかかるので、国民経済の発展レベルを超える公的資金を投入できない。だから、消費生活の表面的な変化は進んでも、病院や学校の設備更新がなかなか進まない。ソ連・東欧社会主義崩壊から30年も経過するが、どの国でも、国家機関や学校・病院などの公的機関の設備や組織の状況は、社会主義時代からあまり変わっていない。だから、軍や兵士の装備の状態が良くないことも容易に想像がつく。
病院や学校にトイレットペーパーがない
今でも病院に入院するときはトイレットペーパーや石鹸などを持参する(もっとも、石鹸を持ってくるという衛生観念はなく、石鹸なしで済ませるのがふつう)。入院食があまりに貧弱なので、多くの患者の家族は毎日食事を届ける。監獄並みの食事は今も昔も変わりない。半世紀以上も同じメニューでないかと思われるほどである。社会主義時代から病院にはトイレットペーパーも石鹸も置いていない。少し前までは、廊下に設置されたテレビに鎖が付けられ、盗まれないようにされていた。もっとも、古いテレビでもう映らなくなっていて、鎖につながれたまま放置されていたが。今では費用節約から、テレビは設置されていない。
150年以上も前に、ハンガリー人医師センメルワイスは産褥熱の原因が、医師の手洗いが不十分であることを発見した。医師からの細菌感染が産褥熱を惹き起こすことが明らかにしたのだ。それから1世紀半近く経つが、医師の手洗いは守られても、一般患者の衛生問題は蔑ろにされている。これが社会主義を経験したセンメルワイスを生んだ国の現状である。
トイレットペーパーがないのは病院予算を節約するためだけでなく、すぐに盗まれる(という社会主義時代の苦い経験)からだ。病院と同様に、トイレットペーパーを備えていない学校も多い(教員用のトイレには備えてあるが、生徒が利用しないように鍵がかかっている)が、こちらは予算がないからだ。購入の優先順位が低いのだ。入院患者が退院するときに、医師は「治療報告書」を患者に手渡す。少し前まで、病院のプリント用紙(購入費用)がなく、患者にA4用紙を持参することを要請するところもあった(学校ではコピー用紙の購入費用が、常に問題の一つになっている)。
今でも病院を風刺するビデオが出回っているのは、大きな改善が見られないからである(https://www.facebook.com/watch/?extid=NS-UNK-UNK-UNK-IOS_GK0T-GK1C&mibextid=2Rb1fB&v=913369449696119)。
このビデオは入院に際して、患者がトイレットペーパー、発電機、輸血用血液、A4用紙を持参したことを受付に伝える。「ノックをするな」という不愛想な受付嬢が、担当医はウガンダの病院のような状態に愛想をつかして、開業医になったことを伝える。担当医の代わりに、YouTubeで勉強した子供の医者を勧めるというパロディである。受付嬢の愛想のなさと、病院の悲惨な状況をパロディで描いたもの(実際、有能な医師の多くが民間クリニックに移っている)。
ところで、ハンガリーの名誉のために言っておけば、トイレットペーパーがないのは何もハンガリーに限ったことではない。ほとんどの社会主義国でもそうだった。それだけ貧しかったのだが、それを「おかしい」と主張する人もいなかった。今でもそれを不思議に思う人は少なく、病院にはトイレットペーパーがないのが当たり前という前提で入院の準備をするが、それが一因でほとんどの病院のトイレの状態はとても衛生的とは言えない。
コロナ禍で中国広州の隔離病院がテレビに映し出されたときに、やはりトイレにペーパーが備えられていないことが分かった。そして便座にビニールを巻き、ガムテープで止めてあった。経済発展が進む中国でさえそうなのかと思ったが、少なくとも便座を清掃しやすいようにしている工夫がみられた。東欧諸国では便座が汚れていても、この程度の工夫すら思いつくことはない。
外来患者の受付窓口がない
体制転換から30年も過ぎたが、病院の外来患者受付システムは旧体制時代のままのところが多い。ほとんどの病院では外来患者が担当医師の診療室前に待機し、看護師がドアを開けたときに、保険証を手渡すようになっている。しかし、多数の患者が我先に保険証を渡そうとするので、看護師に保険証を受け取ってもらうのは至難の業である。外国人がこの争いに勝つことは不可能だ。そうなると、いつまで経っても診療を受けることができない。ハンガリー人ですら、数時間待っても診療が受けられず、家に戻ったという話をたびたび聞かされる。こうした状況に憤慨して、大声を上げる人はたまにいるが、大概の人は文句を言わず、黙って家に帰る。社会主義体制40年の歴史は人々の批判的精神を奪い、体制崩壊から30年経っても委縮した精神に変化はない。ただし、医師とのコネがあれば、診療はスムーズに受けられる。こういう状況ではコネが蔓延しても仕方がない(コネ社会現象)。
だから、外資系企業は特定病院と契約を結び、駐在員が優先的に診療を受けるようにしているが、一般の外来患者が診療を受けるのは簡単ではない。病院側が受付体制を工夫すれば良いと思うのだが、社会主義時代から病院では医師が絶対的権威を持っており、すべてが医師の都合で動いている。だから、改善の余地があると思っても、誰も口に出さない。だから、自然に無関心になり、簡単に患者受付のシステムを変えることができない。私はこれを「医師主権」とか「役人主権」と呼んでいる。あらゆる公的機関の組織が官僚化していた社会主義時代の社会的慣行が、未だに多くのところで旧体制の官僚主義(役人主権)的対応として残存している。政治体制が変わるだけでは社会は変わらないと実感する毎日である。』(リベラル21 2023年3月10日)
【山中人閒話目次】
・盛田常夫さんの「なぜ20世紀の社会主義社会で市民社会的倫理規範や人権意識が育まれなかったのか(上)」
・韓国政府の財団肩代わり策は被害者の尊厳回復にはならない!――強制動員真相究明ネットワークの声明
・放送は誰のためにあるのか? 放送法を取り戻す 小西洋之 金平茂紀 ChooseLifeProjectオンライン
・井田泉さんの「新しい道 【尹東柱の詩 3】」
・盛田常夫さんの「なぜ20世紀の社会主義社会で市民社会的倫理規範や人権意識が育まれなかったのか(上)」
・韓国政府の財団肩代わり策は被害者の尊厳回復にはならない!――強制動員真相究明ネットワークの声明
・放送は誰のためにあるのか? 放送法を取り戻す 小西洋之 金平茂紀 ChooseLifeProjectオンライン
・井田泉さんの「新しい道 【尹東柱の詩 3】」
Blog「みずき」:『高市早苗様
あなたはご自分が登場する総務省行政文書は「捏造だ」とおっしゃる。しかし、あなたが総務大臣として国会で「停波」処分という強行発言をされた(2016年2月8日)のは当該文書に記された「民放相手に徹底抗戦するか」という発言(2015年2月13日)を実行されたものではないですか? あなたが登場する総務省行政文書を「捏造」と主張されるのなら、「虚偽公文書作成等」(刑法第156条)で、関係した総務省職員を刑事告発しなければならないのではありませんか? その場合、起訴に至るに足る証拠をお持ちなのですね?』(醍醐聰Twitter 2023年3月9日)
『高市氏がどう言い繕おうとも、これが「報道の自由度の国別ランキング」という指標でみた日本の現実です。総務大臣時代の彼女の停波発言は2016年2月、今回問題になっている総務省文書に記載されているやり取りは主にその前年のものですね。』(辻野晃一郎Twitter 2023年3月9日)
あなたはご自分が登場する総務省行政文書は「捏造だ」とおっしゃる。しかし、あなたが総務大臣として国会で「停波」処分という強行発言をされた(2016年2月8日)のは当該文書に記された「民放相手に徹底抗戦するか」という発言(2015年2月13日)を実行されたものではないですか? あなたが登場する総務省行政文書を「捏造」と主張されるのなら、「虚偽公文書作成等」(刑法第156条)で、関係した総務省職員を刑事告発しなければならないのではありませんか? その場合、起訴に至るに足る証拠をお持ちなのですね?』(醍醐聰Twitter 2023年3月9日)
『高市氏がどう言い繕おうとも、これが「報道の自由度の国別ランキング」という指標でみた日本の現実です。総務大臣時代の彼女の停波発言は2016年2月、今回問題になっている総務省文書に記載されているやり取りは主にその前年のものですね。』(辻野晃一郎Twitter 2023年3月9日)
【山中人閒話目次】
・高市早苗がどう言い繕おうともこれが「報道の自由度の国別ランキング」という指標でみた日本の現実だ (辻野晃一郎Twitter
・澤藤統一郎さんの「安倍晋三とその取り巻きによる、「不都合な放送」に対する介入が事件の本質である。」 澤藤統一郎の憲法日記
・美浦克教さんの「放送法「政治的公平」の新解釈は、特定番組を念頭に置いた「表現の自由」への攻撃~総務省行政文書が「捏造」なら責任を問われるのは高市元総務相自身」
・上昌広さんの批判はこの医系技官を十分に知った上での批判でしょう――WHO 葛西健事務局長を解任 不適切行為で NHKニュース
・戦下のウクライナメディア 政権に不利な報道自己規制や批判と事実を手に戦う ウクライナ・プラウダ編集長、セウヒリ ムサイエワさん 朝日新聞
・今回の鈴木元さんの問題提起は党外にも広く開かれている市田忠義共産党副委員長のフェイスブック上のもの――市田氏の鈴木さんへの名誉棄損は十分に成立する 鈴木元FB
・高市早苗がどう言い繕おうともこれが「報道の自由度の国別ランキング」という指標でみた日本の現実だ (辻野晃一郎Twitter
・澤藤統一郎さんの「安倍晋三とその取り巻きによる、「不都合な放送」に対する介入が事件の本質である。」 澤藤統一郎の憲法日記
・美浦克教さんの「放送法「政治的公平」の新解釈は、特定番組を念頭に置いた「表現の自由」への攻撃~総務省行政文書が「捏造」なら責任を問われるのは高市元総務相自身」
・上昌広さんの批判はこの医系技官を十分に知った上での批判でしょう――WHO 葛西健事務局長を解任 不適切行為で NHKニュース
・戦下のウクライナメディア 政権に不利な報道自己規制や批判と事実を手に戦う ウクライナ・プラウダ編集長、セウヒリ ムサイエワさん 朝日新聞
・今回の鈴木元さんの問題提起は党外にも広く開かれている市田忠義共産党副委員長のフェイスブック上のもの――市田氏の鈴木さんへの名誉棄損は十分に成立する 鈴木元FB
2023.03.08
今日の言葉ーー「番組が政治的に公平かどうかを最終的に判断するのは政府」という政府の見解は明らかに放送法に背理する。どんなにおかしな番組であれ、そもそも政府が番組内容に白黒をつけようとするのはおかしい。
Blog「みずき」:安倍政権以来の政府の言論抑圧政策は決して許されてはならないものだ。しかし、高市早苗はその言論抑圧の先兵となってきた許されない人物だ。
田玉恵美さん(朝日新聞記者)の多事奏論
『それにしても気になるのは、政府が番組内容を「判断する」という言葉を平然と国会で口にしていることだ。
法律が政治的公平を求めているのだから、国が見定めて、違反した人をとがめるのは当たり前だと思う人もいるかもしれない。通信障害を起こせばNTTだって怒られるし、スピード違反をすれば私も罰金を取られる。それと同じではないか、と。
だが放送法1条が示すように、この法は放送局の自律を保障するためにつくられている。政府が番組の中身に口を出し始めると、結局今回のように個々の番組の是非まで政府が判断するという話になり、事実上の検閲に近づいてしまう。
それゆえ、放送内容に問題があった場合、放送局に文句を言うべきなのはあくまで視聴者であって、政府ではない。放送局が謝罪するにしても、その相手は国ではなく視聴者であるはずなのだ。
だからこそ、放送界は放送倫理・番組向上機構(BPO)もつくり、政府からの直接の介入を避けながら自主自律の道をさぐってきた。
だが、高市答弁からもわかるように、政府は監督色を強める一方だ。放送法ができた1950年の国会では、「放送番組に対する検閲、監督等は一切行わない」との考えを示していた。しかし1993年には、番組が政治的に公平かどうかを最終的に判断するのは政府であると明確に述べるようになった。このスタンスはいまも変わっていないのではないか。事実と異なる放送をしたことを理由とする行政指導もやむ気配がない。
どんなにおかしな番組であれ、そもそも政府が番組内容に白黒をつけようとするのはおかしい。その大前提を忘れないでおきたい。』(朝日新聞 2023年3月8日)
田玉恵美さん(朝日新聞記者)の多事奏論
『それにしても気になるのは、政府が番組内容を「判断する」という言葉を平然と国会で口にしていることだ。
法律が政治的公平を求めているのだから、国が見定めて、違反した人をとがめるのは当たり前だと思う人もいるかもしれない。通信障害を起こせばNTTだって怒られるし、スピード違反をすれば私も罰金を取られる。それと同じではないか、と。
だが放送法1条が示すように、この法は放送局の自律を保障するためにつくられている。政府が番組の中身に口を出し始めると、結局今回のように個々の番組の是非まで政府が判断するという話になり、事実上の検閲に近づいてしまう。
それゆえ、放送内容に問題があった場合、放送局に文句を言うべきなのはあくまで視聴者であって、政府ではない。放送局が謝罪するにしても、その相手は国ではなく視聴者であるはずなのだ。
だからこそ、放送界は放送倫理・番組向上機構(BPO)もつくり、政府からの直接の介入を避けながら自主自律の道をさぐってきた。
だが、高市答弁からもわかるように、政府は監督色を強める一方だ。放送法ができた1950年の国会では、「放送番組に対する検閲、監督等は一切行わない」との考えを示していた。しかし1993年には、番組が政治的に公平かどうかを最終的に判断するのは政府であると明確に述べるようになった。このスタンスはいまも変わっていないのではないか。事実と異なる放送をしたことを理由とする行政指導もやむ気配がない。
どんなにおかしな番組であれ、そもそも政府が番組内容に白黒をつけようとするのはおかしい。その大前提を忘れないでおきたい。』(朝日新聞 2023年3月8日)
【山中人閒話目次】
・どんなにおかしな番組であれ、そもそも政府が番組内容に白黒をつけようとするのはおかしい――放送法めぐる内部文書 「補充的」でも現場の萎縮に 朝日「多事奏論」
・高市よ、四の五の言わずさっさと辞任せよ――高市大臣 放送法文書が“本物認定”も『内容が不正確』と辞任否定…『ゴールポストを動かすな』とネットで批判殺到 女性自身
・思想や表現の自由が認められているはずの日本において不当な圧力を感じている人が少なからず存在する 阿古智子FB――中国“海外警察”、背景には何が 実態と現状を分析 NHK BS キャッチ
・桁違いのスケール、波状的、市民主体(政党頼みでない)が日本と大違い――仏で反年金改革デモ、128万人 「歴史的動員」過去6回で最多 共同通信
・ウィシュマさんの命日の翌日「入管法改悪案」を閣議決定――懲りない人たち。この「改正案」は必ずつぶさないと 高世仁のジャーナルな日々
・どんなにおかしな番組であれ、そもそも政府が番組内容に白黒をつけようとするのはおかしい――放送法めぐる内部文書 「補充的」でも現場の萎縮に 朝日「多事奏論」
・高市よ、四の五の言わずさっさと辞任せよ――高市大臣 放送法文書が“本物認定”も『内容が不正確』と辞任否定…『ゴールポストを動かすな』とネットで批判殺到 女性自身
・思想や表現の自由が認められているはずの日本において不当な圧力を感じている人が少なからず存在する 阿古智子FB――中国“海外警察”、背景には何が 実態と現状を分析 NHK BS キャッチ
・桁違いのスケール、波状的、市民主体(政党頼みでない)が日本と大違い――仏で反年金改革デモ、128万人 「歴史的動員」過去6回で最多 共同通信
・ウィシュマさんの命日の翌日「入管法改悪案」を閣議決定――懲りない人たち。この「改正案」は必ずつぶさないと 高世仁のジャーナルな日々